ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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だいぶ長くなったなぁ…戦闘シーンは前後編に分かれます。


第二十七話 ペースメーカー

「なるほど……色々突っ込みたいところはあるんだが、とりあえず理解した。あいつがシアと真剣な話をしているのも納得だ」

「そういうことだ……まぁなんだ、シアの戦闘の支障にはならないと信じてる。ネアもそこのところ良く言っておいたし」

 

 俺とハジメは迷宮の入り口前でこれまでにあったことを共有していた。隣にはユエさんもいる。

 

 そして少し離れたところにシアとネアが話をしていた。ネアが頭を下げて何か言っており、今までのことを誤っているのだろう。

 一方のシアは慌てるや否や、ネアのことを暖かく抱きしめて何か伝えている。この調子だと仲がこじれる心配なないようだ。

 

 たとえ血が繋がっていなくても彼女らは「家族」だろう。互いに成長していく姿……実に尊い。

 

「おい、何勝手に感傷に浸ってんだ。お前の寄り道を許すだとは一言も言ってねぇ」

「ん……私たち心配してたよ?ずっと3人に会えなかったから」

「それは……でもハジメ、迷宮の完全攻略を放ったらかす時のもどかしさは分かるだろ?あの、何か痒いところに手が届かなくてムズムズする感覚!」

「…………っ」

『南雲殿、この愚者の口車に懐柔させられるな。もう少し何か言ってやれ』

 

 フッ、やっぱりこいつもゲーマーの血が流れていらぁ……やっぱり完全攻略はマストである。ユエさんとアルタイルのジト目がこれでもかと突き刺さるが華麗に躱す。

 

 すると、2人の足音が聞こえてきた。どうやら話し合いは終わったようだ。

 シアは……あぁ、やっぱり問題ないようだ。俺と目が合うとキザなウインクまでかましていくくらい元気。

 

 本当にネアのことは気にしていない……じゃなくて、受け入れた上で許したんだな。やっぱり彼女は妹思いのいい姉じゃん。

 

 それじゃあ、俺はネアの方に話を聞くことにするか。

 

「お疲れ……それでシアとの関係は問題ないか?」

「はい……逆に、感謝されちゃいまいした。悲しいこと以上に、嬉しいことがやってきましたって……」

「『あー』」

 

 2人揃ってハジメたちのところに移すと、シアと仲慎ましい様子が見られた。

 この出来事は果たしてハウリアにとって良かったのか……倫理とか問うたらアウトなんだろう。でも、現に幸せそうにしているシアや、魔改造された愉快なハウリア達を見ていると、良かったと思えるのかもしれない。

 

 だから、ネアはそういった過度な重みは背負わず、なすべきことを成せばいい。

 

「お前も強くなろうぜ?そして普通にいつも通りの日常を過ごせばいい」

「……まだ、受け入れられないです……けど、頑張ります」

 

 うん、それでいいんだよ。少しでも笑顔になっているお前を俺はこれからも協力してやるから。仲間は絶対に守ると今一度決心したのだった。

 

 その後、ハジメからネアや俺へ追加の武器+「やっぱり無しには出来ねぇ」の拳を頂き、全員万全の状態でボス部屋へと入った。腹パン、イッタ〜…

 

 中は大きな空間となっていて、今までで1番だな。天井も高く、壁一面にはゴーレムが設置されている。

 ハジメが言うにはこいつらには核となる心臓がない。誰かによって操られているのだとか。

 

 ってなると、ここはボスが絶対にいるってわけで──

 

『久遠!』

「っ!!」

「逃げてぇ!」

 

 アルタイルの警告。反射的に俺はネアを抱えて前に駆け出した。隣にはシアが2人を奥へ押し込んでいる。

 

 直後──

 

 ズゥガガガン!

 

 俺らのいた所へ隕石のような爆音がした。振り向けばそこには赤熱化した何かが落下しており、床もろとも破壊して突き抜けたのだ。

 

 あっぶねぇ……初見殺しもいい所だ。あんなの魔力のないこの状況で受けたら1発で死ぬぞ。

 

「サンキュ、アルタイル」

「アルタイルさん、久遠さん、ありがとうございますです」

『礼の言葉はあれを倒した後だな』

「っ……」

 

 彼女の言葉で正面を向いたら、そこにボスがいた。

 

 宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手は赤熱化したヒートナックル、左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 

 これが……ボスかぁ、まぁ迷宮ではど定番だけどデカすぎるだろ……

 そしてゴーレムの出現と同時に、壁に配置されていた子分達も俺らを囲むように飛来した。剣を構えて静止する……王の前で敬礼する騎士かのように。

 

 これがまともに戦うボス戦か。気を引き締めていかないと……死ぬな。

 

 さぁ、ゲームの始まりだ。

 

 

 

 

「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

 

 

 ……ん?

 

 

 

 凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。しかも内容が……あぁ、なんか自意識過剰系だな。

 

 一瞬で察せた。このボス、多分迷宮の主で……絶対にウザいタイプだ。

 

 その謎テンションで硬直する俺らに、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

「えっ、お前知らないのか?今の時代会釈とかで済ましてるんだぜ?最低限を下回って、ゼロ反応が主流になってきている」

「えっ!何それ外の世界そんなに変わってるの!?」

 

 もちろん、嘘である。地球は百歩譲っても、トータスの世界ではそんな文化全く浸透していない。でも意外に信じているあたりこいつ迷宮から全然出てないな?

 

「いや、嘘だが?丁度今考えた、引きこもりが地味に信じそうなジョークだが?いやぁ、まんまと引っかかってくれるもんだねぇ〜」

「ムッかァ!それ結構刺さるからやめたまえよ〜!超絶プリティなミレディちゃんでも泣いちゃうぞ!女の子を泣かせるなんてイケナイ子だぞ!」

「お前涙腺機能ねぇだろ」

 

 シクシクと鳴き真似する……ってかよくもまぁその巨体で細かい芸当できるな!

 あー、いるよなぁ。こんな感じで相手にペースを持っていかれるタイプのボス。現にネア、シア、ユエさんなんかは分かりやすく”?”を浮かべている。

 

「……まぁ、冗談はこんなところにして……俺らはお前の迷宮で神代魔法を手に入れる為に来たんだが……お前本来死んでる筈だよな?」

「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……」

 

 誤魔化そうとしているが、俺らは知っている。オルクスで見つけたオスカー・オルクスの日記……そこにしっかりと彼女の名前も載っていたからな。

 

 そのことを同じく理解しているハジメが今度は答えた。

 

「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ? というか阿呆な問答をする気はない。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」

「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」

 

 ……「神代魔法」の言葉に彼女の雰囲気が変わった。先ほどのふざけた態度とは一変、特有の威圧が俺らに降り注ぐ。

 

「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ」

「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、隣の子の爪の垢を煎じて飲みたまえー」

 

 偉そうなのはお前も同じ……ってか、お前みたいなやつに敬語なんか使ってやるか……

 

 ……隣の義手の彼の心の中を代弁しました。

 

「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」

 

 最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。内心驚いているが表情には出さずにハジメが問い返す。

 

「なんだ?」

「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」

 

 至ってシンプルな問いだが、そこには彼女が生きた今までんお時間に対する重みが感じられる。

 あんまりふざけた回答はできないようだ。

 

「俺の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している……お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」

「あぁ、右に同じく……別にトータスを潰すだとか、神の味方するとかは考えていないぞ。あんまりあんたらの迷惑にはならないと思うが、そこのところどうなんだ?」

「……」

 

 一体何を考えているのか……ゴーレム故に考えは読み取れないが、間違いなく試している。俺らが神代魔法を取得するに値する人物かどうか。

 

 そして何かに納得したように「そっか」と呟いた。俺らの答えは取り敢えず聞き入れてもらえたみたいだ。

 

 でも、直後に雰囲気も戻る。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ!見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

「脈絡なさすぎて意味不明なんだが……何が『ならば』何だよ。っていうか話し聞いてたか? お前の神代魔法が転移系でないなら意味ないんだけど? それとも転移系なのか?」

 

 ミレディは、「んふふ~」と嫌らしい笑い声を上げると、「それはね……」と物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。

 

 こいつ……ファイナルアンサーした相手に答えを告げるみの○んたじゃないか!知っているのか!?

 

「教えてあ~げない!」

「死ね」

「うおっ!いきなりかよ!?」

 

 ハジメが問答無用にオルカンからロケット弾をぶっぱなした。いつの間に出現させたんだよ……

 火花の尾を引く破壊の嵐が真っ直ぐにミレディ・ゴーレムへと突き進み直撃する。

 

 ズガァアアアン!!

 

 凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。もうもうとたつ爆煙。ふ〜、相変わらずの威力だこった。

 

 ハジメの持つパワーに特化した武器の一つだな。これで簡単に沈んでくれて欲しいが……

 

「やりましたか!?」

「待て何故それを言った!?」

『シア、それはフラグというのだが……』

 

 シアが先手必勝ですぅ! と喜色を浮かべたが、発言が完全にアウトだ。

 その証拠に、煙の中から赤熱化した右手がボバッと音を立てながら現れると横薙ぎに振るわれ煙が吹き散らされる。

 

 煙の晴れた奥からは、両腕の前腕部の一部を砕かれながらも大して堪えた様子のないミレディ・ゴーレムが現れた。ミレディは、近くを通ったブロックを引き寄せると、それを砕きそのまま欠けた両腕の材料にして再構成する。

 

 磁石のようにパーツがゴーレムの身体に戻る……面倒な再生能力だな?

 

「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」

 

 そう楽しそうに笑って、ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターを射出した。言葉とは裏腹に、とんでもない武器を持っているようで〜。

 

「早いな……予備動作もなしかよ」

『重力魔法の応用か……恐らく武器に重力を一つの方向へ欠けているぞ』

 

 とりあえず俺らは、近くの浮遊ブロックへ散開してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、その内のハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻った。

 

 周りの瓦礫はミレディのゴーレムの回復へと使われる……なるほど、リサイクル機能もあるんだな?結局、ボスを倒さないといけないわけだ!

 

「ネア、ハジメに渡された武器を抱えたまま俺に捕まれチャンスが来たらそれをぶっ放せよ」

「っ!はいです」

 

 ネアに俺の首へ腕をかけさせる。これなら1人分断されずに済む。まぁ、俺の負担も大きくなるけど。

 

「やるぞ!ミレディを破壊する!」

「んっ!」

「了解ですぅ!」

 

 ハジメの掛け声と共に、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。

 

 同時に、大剣を掲げたまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ハジメの掛け声を合図にしたかのように一斉に動き出した。その数は50体ほど。

 

 頭を俺らに向けて一気に突っ込んでくる。なるほど、これがハジメの言っていた攻撃パターンか!

 

 突進してくるゴーレムに開始早々、リニューアルをぶっ放した。強烈なサマーソルトで振動伝播だ。

 

 クオン・リニューアル──踵上げ打

 

 ゴーレムの身体に振動が行き渡り大破した。だが、このままだといずれ再生するだろうな。

 

「あはは、やるねぇ~、でも総数50体の無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」

『戦闘中の減らず口……まるでお前のようだな』

「お前こそ戦闘中にディスるなっつーの」

 

 相変わらずの口調でミレディが再度、モーニングスターを射出した。今度は回転して横から俺らを襲ってきた。俺やシアはその場で他の瓦礫へ翔び立つ。

 

 一方のハジメは、その場を動かずにドンナーをモーニングスターに向けて連射した。

 

 ドパァァンッ!

 

 銃声は一発。されど放たれた弾丸はなんと六発だ。お得意の早打ちで発された弾はモーニングスターに直撃する。幾ら鉄球とはいえ、あれだけの攻撃を受ければ起動はそれる。

 

 同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。

 

「見え透いてるよぉ~」

 

 そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。

 物理法則なんて無視した動き、気持ち悪いなぁ……

 

「くぅ、このっ!」

 

 当然、予想外の方向へ目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させる。なるほど、爆発移動ってやつか!

 薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。

 

 ズゥガガン!!

 

 咄嗟に左腕でガードするミレディ。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。だが、腕はその破壊にもかかわらずシアを吹き飛ばした。

 

「きゃぁああ!!」

「シア姉さん!」

 

 悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。背中のネアが思わず叫ぶが、何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えて、更に反動を利用して近くのブロックに不時着した。

 

 ……もしかして、あいつこの迷宮で体幹が恐ろしく鍛えられていないか?

 

「……シア姉さん、凄く強くなってないです?」

『十中八九、ユエとの訓練だろう。あれは彼女が生き残れるように特化したものだからな』

「正直、あいつの進化を見てると俺らの感覚がバグってきたな」

 

 さっきの爆発移動しかり、受け身しかり……先頭における条件反射と判断能力がずば抜けている。普通はあんなに成長しないはずなんだが……

 

 案外、戦力で置いていかれるのは俺らかもしれない。

 

 一方のハジメは、〝宝物庫〟からガトリング砲メツェライを取り出す。そして毎分12000発の死を撒き散らす化物を解き放った。

 

 ドゥルルルルル!!

 

 六砲身のバレルが回転しながら掃射を開始する。独特な射撃音を響かせながら、真っ直ぐに伸びる数多の閃光は、縦横無尽に空間を舐め尽くし、宙にある敵の尽くをスクラップに変えて底面へと叩き落としていった。

 例えその猛攻から逃れても、ユエさんの水のレーザーにより、やはり尽く両断されていく。殲滅力は流石だな。

 

 俺?いや、マスケット銃を出すのに魔力が圧倒的に足りないのだが?ユエさんの用に水筒は無いし。

 

 2人によって瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。

 少ししたら復活するのだろうが、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊する時間は充分稼げた。

 

「ちょっ、なにそれぇ!そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」

 

 ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを聞き流し、メツェライを宝物庫にしまいながら、再びドンナーを抜きながら、声を張り上げた。

 

「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ!あれを破壊するぞ!」

「んなっ!何で、わかったのぉ!」

 

 再度、驚愕の声をあげるミレディ。まさか、ハジメが魔力そのものを見通す魔眼をもっているとは思いもしないのだろう。

 

 ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明した事だし、このまま畳み掛けるとするか。俺は瓦礫に足を踏み込み、助走をつけ始めた。ここで一旦突破口となろうか!

 

「ネア、しっかりと捕まってな!」

「へ?ちょっ!!」

 

 跳躍、一気にミレディとの距離を縮める。狙うのはあいつの右腕……モーニングスターを壊すくらいなら、その持ち手ごとぶち壊してやる。

 

 塗油薬による最大加速での一撃、喰らえや。

 

「フン!ぶっ壊れろ!」

 

 クオン・リニューアル──踵落とし爆

 

 轟音と共にミレディの手に叩き込む。その威力はハジメのオルガンに劣らないパワーだ。打撃地点を中心に亀裂が字入り、ものの数秒で完璧に壊れていった。

 

「っしゃあ、右腕打ち取ったりぃ!」

「んなぁ!!パワーどうなってるのさ!?」

 

 そのまま彼女の腕に着地する。ネアがなんか目を回しているが、多分俺の踵落としで回転も入れちゃったからなぁ……

 

 だが、周囲を飛び交うゴーレム騎士も今は十体程度。このまま波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。背後からはハジメがレールガンを携えて接近している。今度はゼロ距離射撃でコアまで攻撃を届けるつもりだ。

 

 だが、そう甘くはなかった。上空から何かが見えてくる。

 

「ハジメ、上だ!」

「うおっ!……チィっ!!」

 

 ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。

 

 あの天井も動くのかよ!?……いや、今考えればこの部屋全体は彼女が最も戦いやすい状態のはずだ。

 つまりは彼女の重力でここにある瓦礫や床も動くってことかよ……

 

「悪趣味なステージだこった。ボス接待はどこの世界でもイラつくな!」

「あんまり言ってることはわからないけどぉ〜、このくらいでへこたれてちゃあ君たちにはあげられないよぉ」

 

 ミレディはそう言いながら、右腕を振り払って俺を場外に吹き飛ばした。流石にあそこには長くいられなかったし、大人しく他の瓦礫に到着する。

 

 するとゴーレムの背後から迫っていたシアが、強烈な一撃をミレディ・ゴーレムの頭部に叩き込もうと跳躍する。

 

 事あるごとに怪しげな光を放つ目を頭部ごと潰そうという腹か。

 

 ミレディ・ゴーレムは、シアの接近に気がついていたのか跳躍中のシアを狙ってゴーレム騎士達を突撃させた。宙にあって無防備なシア。

 

「……させない」

 

 だが、これまたいつの間にか移動していたユエさんが、〝破断〟によりシアを襲おうとしているゴーレム騎士達を細切れにしていく。

 

「流石、ユエさんです!」

 

 そんなことを叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、シアは極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。これなら──

 

 だが、アルタイルが何かに気づいたか警告した。

 

『いや、あの攻撃でも足りないぞ』

「パワーでゴーレムが負けるわけないよぉ~」

 

 ……そりゃあそうか。相手は仮にも巨大ゴーレムだったな。巨体に備わっているパワーと耐久は舐めちゃいけないんだった。

 

 その証拠に、ミレディ振り返りながら燃え盛る右手をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。

 

 ドォガガガン!!

 

 シアのドリュッケンとミレディ・ゴーレムのヒートナックルが凄まじい轟音を響かせながら衝突する。発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。

 

 衝撃に俺やユエさんも距離を取る。彼女はシアの近くに、俺はミレディの頭上に、だ。

 

「こぉののの!」

 

 突破できないミレディ・ゴーレムの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込める。しかし、ゴーレムの膂力にはやはり敵わず、振り切られた拳に吹き飛ばされた。

 

「きゃああ!!」

 

 悲鳴を上げるシア……だが予想していたようにユエさんが横合いから飛び出しシアを抱きとめ、一瞬の〝来翔〟で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。

 

「中々のコンビネーションだねぇ~」

「だろ?もっと褒めろよゴーレム」

 

 余裕の声で、自分を見上げるユエとシアを見下ろすミレディ・ゴーレム。彼女の視界には一体どれくらいのものが写ってるだろうな?

 

 何せお前の目ん玉に対物ライフルが構えられているのだから。ゴーレムの突起にぶら下がりながら現れた俺に彼女は反応したが、遅い。

 

「はぁ!?ちょっ──」

「ネア、ファイヤー!!」

「射っですぅ!」

 

 バァァン!!

 

 ゴーレムの頭……その中で防御力の低い両目をネアのライフルがぶっ放した。ハジメが作成していた対物ライフルは、今回彼女に持たされていた。

 

 対物ライフルの持つ攻撃力は魔力なしの、完全に錬成技術のみに頼って極めた逸品だ。範囲は小さいものの、その威力は俺のマ○さん列車砲に負けない衝撃を持つ。

 

 彼女の1射は確かにミレディの眼光へ突き放たれた。ネアはハジメがオルカンをぶっ放すところを見ていた。そこで射撃の雰囲気は理解していたが……

 

 中々、上等じゃあねぇか!とても初めて武器を扱うものには見えねぇぜ!

 

 だが、反動は彼女1人では持ち堪えられない。ってことで俺も一緒に跳んで威力を殺していく。去り際に一言添えてやった。

 

「次の一撃へい、お待ち!!」

「おう、これでっ!!」

「!?」

 

 視界を満足につかえないであろうミレディの懐には心臓部に巨大な兵器:シュラーゲンを突き付けているハジメが其処にいた。

 そのままシュラーゲンから紅いスパークが迸る。ゼロ距離でぶっ放せ!!

 

 ドォガン!!!

 

 ミレディの驚愕の言葉はシュラーゲンの発する轟音に遮られた。ゼロ距離で放たれた殺意の塊は、ミレディ・ゴーレムを吹き飛ばすと共に胸部の装甲を木っ端微塵に破壊した。

 

 シュラーゲンの威力は最大為ではないものの、ゼロ距離なら無事なわけない……ないんでけどなぁ。

 

 俺とハジメはそれぞれの方法で着地する。俺は上手く攻撃できたネアを労わりながらハジメの元へ駆け寄った。あいつの側にユエさんとシアも到着している。

 

 あのボスの結末を見守りながらしかし、ハジメは苦い教場でアルタイルに質問してきた。

 

「アルタイルさん……あのデカブツ、まさか仕込んでんのか?」

『……君の武器はオスカー・オルクスの洞窟から生成しているのだろう?となれば──』

「そうそう、アザンチウムのことも知ってるよねぇ〜」

 

 そこには、全くの無傷のゴーレムが立っていた。どんだけ頑丈なんだよ、このボス。

 だがそれもそのはず、アザンチウム鉱石はこの世界に存在する最も高い高度を持つ鉱石だ。

 

 俺もオルクスの洞窟でその凄さを体感している……リニューアル技でもアザンチウム板版を壊せなかったからな。

 あれはトータスの○ブラニウムと言っても過言じゃない。

 

 だが、オルクスで既に発見されていたのだ。錬成師が対抗策を考えていないわけないな?

 

「ハジメ、あれに対抗できる武器はあるんだろ?」

「まぁな……だが準備に幾らかの時間はかかる。他はあいつの足止めに専念してくれ」

「「「了解!」」」

 

 さすが、しっかりとプランはあるようだ。それに周りも俄然、気合が入る。打開策があるならばそれを実行するまでだ。

 

 が、それは相手の耳にも入っていたようで……ミレディは「えー」っと嫌がるように答えた。

 

「でもでも〜そろそろ終わりにしよっか……流石に多勢にミレディちゃん1人はちょっと面倒だからねぇ……」

「皆さん!避けてぇ!降ってきます!」

「あ?……っ!!おいおいおいおい……」

 

 天井から凄まじい音が鳴り響く。見上げれば天井からパラパラと破片が……じゃない。それだけじゃない!

 

 天井そのものが、バラバラになって落ち始めているのだ。俺たちの方に向かって。

 そうか……この部屋、ボスに有利な構造してるって言ったもんなぁ……だからこれもそのギミックの1つなんだ。

 

 背中をつたる汗がやけに感じる中、これをかました張本人はニヤけながら俺らに告げたのだった。

 

「ほらほらぁ、これくらい避けなきゃダメだよ〜?全部の天井を一斉に落とすくらいこのミレディちゃんにでもできるんだから……これくらい、生き残らなきゃね?」

 

 ……どうやら俺らの命運はこの攻撃を耐え凌げるかかかっているようだ。




ちょいと補足…

一之瀬久遠
→久しぶりにリニューアル技の登場。実はこの創作の遅延原因にもなった「リニューアル技」の定義がごちゃごちゃになっていましたが、ようやく整理が着きました。今までのリニューアル技名も幾つか変わっているかもしれません。また、今後の話でリニューアル技について詳しく解説する話も入れます。久遠のメイン武器なんだし、ここはしっかり描かないといけなかったのに雑にしてたツケが出てしまった…

ネア・ハウリア
→今回、ようやく戦えるくらいになったものの、久遠の判断で常に彼のそばで戦うことを条件に同行することになった。対物ライフルの使い方は持ち前の適応能力で1発完コピ。戦闘中故に久遠は気づいていないが、スマホの軍服少女はその適応の高さに少しばかり感心している。シアとの関係は良好…あとは可愛いシーンを出しまくるだけだ!

はい、いつもより長くなりましたね…おまけに久遠のリニューアルの再定義やら色々と忙しくなりました。でも取り敢えずは続けて書いていきます!

さぁさぁ、次回でミレディ戦、決着!!

ニアさんの設定はどっちに寄せる?

  • 原作(茶髪、メガネなし、小顔)
  • 今作(橙色、メガネあり、インテリ風)
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