ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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第二十九話 話し合いは場所作りから

 大迷宮に静寂が訪れる。もう、他のゴーレムが動く気配はなく、本当に戦いが終わったことを実感する。

 

 今回も大変なボス攻略だったな。隣で死んだように倒れ込んでいるネアに慰労の言葉と共に手を差し出す。

 

「ネア、お疲れ……ってか……大丈夫か?」

「はぁ……はぁ……か……てたんです、ね」

 

 地獄のように長く感じたな……今回の戦いで脚も体も見るも無惨な状態に変貌している。頭から胴体へ縦長の傷が入っており、利き足は全身の骨にヒビが入って肉も腱が幾つか切れている。

 

 ネアも脚は同じようで、初めて使ったリニューアルは彼女に負担が大きすぎたと思われる。お互いに歩くのもままならないが、ネアには神水を薄めたポーションで、俺は因子再生を少しづつ掛けて治療することにした。

 

「さっきはありがとな……正直、俺1人で対処は無理だったから」

『態々、気障な台詞まで吐いていたくらいだからな』

「あ……はい。間に合ってよかったです」

 

 あの時、諦め枯れていた時に瓦礫の山からネアが飛び出してきた時は驚いた。足からは血を流していたのに、無理矢理そこから抜け出して俺のところに向かってきたのだ。

 

 そして更に、彼女はもう一段階進化した。俺が使っていた武術……リニューアル技……完コピしたのだ。

 

「お前にリニューアル技が使えるとは……アルタイル、お前の言ってた才能はこれか?」

『そうだ……が、これは余の想像は超えていたな。一眼で相手の動きを模倣する再現能力はこの世界でも稀有な物だ。他の武器の扱いも頷ける』

「……ありがとうございますです……まぁ、クオンさんの技を真似しただけで体から変な音出ましたけど」

「あー、テコンドーって体が相当柔らかくなきゃできないからなぁ」

 

 俺もこの技を地球で教わった時は悶絶したものだ。一年はまともに足を上げられなかったっけ……

 テコンドーの師匠……元気にしているだろうか。性格的に明るいままだったらいいんだけど。

 

 だからこそ、ネアの適応には驚きだけどな。こいつから感じていた違和感は、多分リニューアル技巧を使用できるから感じたシンパシーかもしれない。

 

 あー、ついでにネアなら師匠、絶対に喜んでテコンドーを教えてあげそうだな。こんな可愛いウサミミっ子がいたらテンション上がるだろうし。

 

 少し、元の世界の思い出に浸ろうとしたが、俺らへ近づく足音で我に帰る。ハジメたちも瀕死からの回復はしているようだ。

 

「ネアちゃん!勝ちましたね、すっごかったですよぉ!」

「わっ……もう、シア姉さん……抱きしめる力強いですよ……待ってください!身体強化が無意識に!クオンさんヘルプ!ヘルプミーです!!」

「ぎゅ〜〜〜〜〜!」

 

 早速、シアが喜びのハグをネアにしていた。そのまま受けるネアは恥ずかしそうにしながらも嬉しいみたいだ。

 ……何か絶叫も聞こえるけどそれは喜びで気持ちが昂ってるんだろうなぁ。よかったよかった〜……

 

 ちゃんとシアにチョップしつつ、ハジメのところに戻っていった。こいつもサラッと新武器を持ち出したり、”限界突破”なる能力に目覚めたり、この迷宮で進化を遂げていたな。

 

「お疲れ……にしてもお前、パイルバンカーなんか作っちゃって……俺、あんな武器を用意してるだなんて知らなかったぞ?」

「まぁな、そこはお楽しみってやつだ。それに、実際に目にしてかっこよかっただろう?」

「ったり前だろ!あのゴツい見た目からのチャージ音はクセになる……今度ライセンの岩とかにぶっ込みてぇな」

「いいな、それ……ついでに威力の調節と魔力の効率も──」

「……2人とも、話は後で」

『今はあれ、に注目するべきではないのか?』

 

 あのまま熱くなって語り合うのはやぶさかでなかったが、どうやらまだやるべきことがあるみたいだ。2人で彼女らが指差す方を見ると、そこには核を破壊されたミレディ・ゴーレムがいる。

 

 するとその目にまだ光があることに気づいた……攻撃できるほどの力はないと思うが……

 

「見たところ核の残り香ってなやつか?おいたわしや……解放者の残念さは後世にも残るのか〜」

「ちょっ、やめてよぉ~、ジワジワきそうなところが凄く嫌らしいなぁ」

「で?〝クソ野郎共〟を殺してくれっていう話なら聞く気ないぞ?」

 

 ハジメは銃を構えながら言葉をかけるが、何となく苦笑めいた雰囲気をミレディは出した。

 

「言わないよ。言う必要もないからね。話したい……というより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……君の望みのために必要だから……」

「全部ね……なら他の迷宮の場所を教えろ。失伝していて、ほとんどわかってねぇんだよ」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

 いよいよ、ミレディ・ゴーレムの声が力を失い始める。

 

 ……死ぬ直前に思い描いているのは一体何だろうか。今まで長い時を、指名、あるいは願いのために生きてきた彼女の景色は俺らに分からない。

 でも、彼女の言葉1つ1つにはその重さがヒシヒシと伝わってきた。他のみんなも何か感じるものはあるようでミレディへの目線が変わり始めている。

 

 ミレディは、ポツリポツリと残りの七大迷宮の所在を語っていく。フリューエン……神山……メルジーネ……本当に嘘はついてないように感じるな。

 

 ……だかど何か、怪しいな。さっきから俺のセンサーに引っ掛かってる。

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいじゃねぇの。あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

 ハジメが代わりに疑問を言ってくれた。するとミレディはまたもや弱々しくも苦笑を漏らした。こっちがこいつの素ってことか?

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……」

「おい、こら。狂った神のことなんざ興味ないって言っただろうが。なに、勝手に戦うこと前提で話してんだよ」

 

 ハジメの不機嫌そうな声に、ミレディは意外なほど真剣さと確信を宿した言葉で返した。

 

「……戦うよ。君が君である限り……必ず……君は、神殺しを為す」

「……意味がわかんねぇよ。そりゃあ、俺の道を阻むなら殺るかもしれないが……」

 

 神殺し、ねぇ……さっきから気になるワードがやっぱり出てくるな。この世界の神がよっぽどのクズなら、それ相応の疑問も溢れてくる。

 ……後で聞いてみようか。

 

 若干、困惑するハジメにミレディは、その様子に楽しげな笑い声を漏らす。

 

「ふふ……それでいい……君は君の思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

 

 いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。死した魂が天へと召されていくようで、悲しくも神秘的な光景である。

 

 その時、おもむろにユエさんがミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「何かな?」

 

 囁くようなミレディの声。それに同じく、彼女は囁くように一言、消えゆく偉大な〝解放者〟に言葉を贈った。

 

「……お疲れ様。よく頑張りました」

「……」

 

 それは労いの言葉。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。

 

 ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

「……ありがとね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉を贈りながら、〝解放者〟の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

 

 辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにシアが光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

 

 シアに続き、どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わすユエさん。2人とも、ミレディの意志を労りたい余裕も出てきたようだ。

 

 ……でも俺は知っている。多分あんな感じのキャラは両方が素なのだ。うざったい調子のいい性格も、真面目な時も……で、あいつみたいなエンターテイナーがこんな終わりを望むか?

 

 望むだろうなぁ……こんなシチェーション、最高な終わり方だもんね?

 

「なぁ、アルタイル……お前の魔力反応に何かないか?」

『……ここにはもうないな。ゴーレムは迷宮の一部へと還元されたようだ』

「……ってことはここにはあいつの魂はないわけだ」

「え?え?クオンさん、どういうことです?」

 

 地球組はもうこの後の展開が予想できていた。何も知らないネアに説明しようとしたが、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついた。

 

 先ずは進もうか。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つ跳び乗った。

 移動中の待っている間、アルタイルが説明を始める。

 

『ネア、あの解放者殿の雰囲気は道化師……いや、芸者と言うべきかな。彼女は決して相手に自信のペースを渡さないのだ』

「?……はい、確かクオンさんもペースメーカーって言ってましたね……そういえば、雰囲気が似てましたね。軽口叩きあってましたし……え?まさか──」

「あぁ……だからだな。彼女の性格からして──」

 

 ……浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。

 

 くぐり抜けた壁の向こうには……

 

「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。マスコットとしていそうだなぁ。

 

「「「……」」」

「だろうと思ったよ」

「まぁ、あんなしんみりとした展開で終わらせるはずないからなぁ……」

 

 綺麗に別れた反応。ネア、シア、ユエさんはパチクリと瞬きをし、俺、ハジメ、アルタイルは知ってた、と呆れていた。

 

 ここまでの設定の込んだ死亡演出は中々できたもんじゃない。この迷宮のアトラクションチックな罠しかり……こいつの芸能気質はトップクラスだ。

 

 だから色々こいつとは話が合いそうなんだけどなぁ。

 

 案の定、ルンルンとナチュラル煽りを盛大に放つ小さなゴーレム……ミニ・ミレディにシアたちは感動と返せとばかりに攻撃を放っていた。

 

 あーあ、何やってんだか。

 

 この白い部屋はおそらく魔法を受け取る術式があるはずだ。奥の扉はミレディの居住スペースにつながっているのだろうか。

 

 そして上に見覚えのあるダクト……あれ、ここってもしかして──

 

「このまま愉快なデザインになりたくなきゃ、さっさとお前の神代魔法をよこせ」

「あのぉ~、言動が完全に悪役だと気づいてッ『メキメキメキ』了解であります!直ぐに渡すであります!だからストープ!これ以上は、ホントに壊れちゃう!」

 

 おう……本気でミニ・ミレディが壊されそうになっている。ハジメの義手によるアイアンクローにジタバタもがいていた。

 これ以上ふざけると本気で壊されかねないと理解したのかミニ・ミレディもようやく魔法陣を起動させ始めた。俺らもその中に集まる。

 

 今回はミレディ本人が俺らの試練を見送っているから魔法が直接俺らの脳に刻まれる。

 

 今回手に入れたのは重力魔法。粗方、予想はできていたが、ミレディが戦闘中に使っていた魔法だ。物体を引き寄せたりする他、重力を重ねがけすることで速度の調整などもできる。

 

 あの瓦礫の攻撃はかなりやばかった分、この魔法の持つ攻撃性と応用性は計り知れない。俺もハジメもそれぞれの戦闘に大きなパワーアップが期待出来る。

 

 ものの数秒で刻み込みは終了し、あっさりと俺らはミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れた。

 

「ミレディちゃんの重力魔法、上手く使ってね……って言いたいところだけど、君は適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

「やかましいわ。それくらい想定済みだ」

 

 まぁ、神代魔法にも適性の概念はある。生成魔法を考えてみよう……ハジメには歴世があるが、ユエさんはからっきしだ。

 俺は全部そつなくこなせる……その代わりに適性の恩寵はハジメらより少ないけどな。ほとんどの能力は森羅万象(ホロプシコン)に吸い取られるのだ。

 

 その後、ミレディは皆んなの適性も図ってくれた。中には可哀想なやつもいて……

 

「デカウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

「ん……」

「うぅ……頑張った報酬が体重の増減だなんて……」

「赤髪君は金髪ちゃんほどではないけど、重力の付与くらいなら出来るよ……チビウサギちゃんは……う〜ん、物の重さは変えられるかな?でも基本は適正なしで」

「まぁ、半分は恐らく森羅万象(ホロプシコン)のおかげだろうけどな」

「物の重さ……うーん、想像しにくいです」

 

 と、全員が満遍なく扱えるわけなかった。シアなんかは特に酷い。体重の増加も減少も、使い所を誤ればデメリットの方が多いんじゃないか?

 

 一方、ネアの能力は……これもデメリットは大きくないものの、スピードタイプのネアに重さ増加は厳しいな。この先の旅で使いこなせるようにしなきゃな。

 

 と、もう迷宮での公な目的は終えたが、ハジメはまだだったらしい。直ぐにミレディのボディを捕獲し、上下に振る。

 

「おい、ミレディ。さっさと攻略の証を渡せ。それから、お前が持っている便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱物類も全部よこせ」

「……君、セリフが完全に強盗と同じだからね?自覚ある?」

「あっ、因みにこいつの価値観はオルクスからの受け売りだぞ?あの迷宮、サバイバル性高かったからなぁ」

「オーちゃぁ──ん!!」

 

 完全に仲間から風評被害を受けてしまっているミレディはガックシしながらも仕方がなく指輪から鉱石やら、部品やらを大量に取り出した。元から俺らに渡す分はあったんだろうな。

 

 ……だが、ハジメがそれを自身の宝物庫にしまっている間、彼女は浮遊タイルの一つに乗って空中に浮かび上がった。

 

 あ……この予感はまさか!

 

「ネア、ちょっと失礼……」

「え……ちょっ──」

「さぁて、帰った帰った〜……嫌なものは、水を流すに限るね☆」

 

 ハジメ達はミレディの行動に首を傾げるが、それも一瞬。直後、ダクトの穴から大量の水が途轍もない勢いで流れ始めた。それは天井のみならず、壁の四方からも溢れてくる。

 

 水の勢いは収まることなく、むしろ渦を巻いて激流と化す。すかさずユエさんが皆んなを”来翔”で浮かび上がらせようと試みたが、ミレディの重力魔法でかき消された。

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

 

 あーあ、あいつら綺麗に流れていったな……確かにこの状況、まるで誰かの汚物だ。

 

 ハジメ達は捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていった。穴に落ちる寸前、仕返しとばかりに何かを投げたようだが。

 

 そしてハジメ達が穴に流されると、流れ込んだときと同じくらいの速度であっという間に水が引き、床も戻って元の部屋の様相を取り戻した。

 

「ふぅ~、濃い連中だったねぇ~。それにしてもオーちゃんと同じ錬成師、か。ふふ、何だか運命を感じるね。願いのために足掻き続けなよ……さてさて、迷宮やらゴーレムの修繕やらしばらく忙しくなりそうだね……ん? なんだろ、あれ」

 

 汗などかくはずもないのに、額を拭う仕草をするとミニ・ミレディはそう独りごちる。 

 そして気づいた。壁に突き刺さったナイフとそれにぶら下がる黒い物体。何だろう?と近寄り、そのフォルムに見覚えがあることに気がつく。

 

「へっ!? これって、まさかッ!?」

 

 まぁ、グレネードだろうな。あいつの手製だし、威力はここを黒焦げにする程度はある。

 さて……1つここは彼女に歌詞を作ろうじゃねぇか。

 

「間に合わ──『森羅万象(ホロプシコン)』……え?」

 

 手榴弾は爆発する直前、外的力によって押さえつけられる。そのまま大きな力は圧縮するように小さくなっていき、いつの間にか青いポリゴンとなって虚空へ散っていった。

 

 圧縮……重力魔法を全体にかければこんなふうに威力を抑えられるのか。悪くないな……魔力効率は悪いけど。

 

「ふぅ……これが重力魔法か。使い勝手は良さそうだが、こんな感じでいいか?」

『概ね問題ない。最も、その能力の真価が発揮されるのは武器を使用する時だがな』

「けほっ、けほっ……クオンさん、せめて何が来るかは教えて欲しかったです」

 

 俺らはずぶ濡れになりながらもミレディのトイレ式退場は逃れられた。ネアの言葉は尤もだが、ミレディの準備が予想以上に早かったし許してくれ。

 

「えぇ──っと………………なんでまだいるの?」

 

 素っ頓狂な顔を──いや、無表情だけどフィーリング──しているミレディの方へ向いた。多分、あの一撃で全員流せた気でいたのだろう。

 

 残念でした、対処法は既に練ってたんだよね〜。

 

「そりゃあ、お前に聞くことまだあったからな」

「いやいやいや!さっき思いっきり水で流したんだけど?ザッパーって流したはずなんだけど?」

 

 ああ、それかぁ。確かに中央に吸い寄せられるから危なかったけど、案外攻略法はあった。

 だって彼女、ついさっき俺らに重力魔法をくれたんだから、早速使うしかないでしょう?

 

「何、お前の行動は予測できてたし、俺らは体重を何倍にも重くしただけだ。ネアは肩車させてな」

 

 激流は俺を丁度飲み込む程度にしか深くならなかった。ミレディが逃げれるスペースが必要だったから当然か。

 なので部屋の角隅に移動しネアを上に乗せた後は、取り立てホヤホヤの重力魔法で自身を重くした。

 

 重力が何倍にも跳ね上がったことでその場に固定することに成功。足が地面に少しめり込んだし、相当負荷がかかっていたが耐えれば勝ち。

 激流をものともしない強固な体が完成したのだった。

 

 これならアリジゴクのように、中心へと流される心配はない。ハジメらは中央付近にいただけに、俺らは脱出するための時間をとることが出来たのだ。

 それを聞いたミレディはゴーレム越しでも分かる程、口をポカンと開けている様子だった。

 

「そんな攻略法があったなんて……というか何、重力魔法の使い方もう取得したの?」

「まぁな。お前の重力魔法でさらに位置を固定してくれたし、後の問題はどれだけ水の中で潜れるかだからな」

 

 生憎、俺は奈落での肉体改造で肺活量は超人レベルだ。アルタイルは謎の防水機能を所持している……スマホの域を超えていやがる。

 

 後はネアを肩車させれば超安全。本人は急過ぎますって愚痴を吐いていた気もするが……激流のせいでよく聞こえなかったことにしよう。

 

「っていうか、何でここのギミック知ってたのさ!魔力的にも完璧に隠してたんだけど〜?」

「そうですよ!クオンさん、南雲さんより早く気づいてましたし……」

「あぁ、それは普通にこの場所にいったことがあるから」

「「?」」

 

 2人は揃って疑問符を上げる中、ため息と共にアルタイルは続けてくれた。スマホの画面を、とあるページに変えながら。

 

『ネア、迷宮のダクトによる攻略があったことは忘れていまい』

「へ?…………まさか!?」

 

 ネアは何かに気づいたようで、スマホに顔を覗かせる。そこにはマッピングされた迷宮の全体像が。

 そしてちょうど迷宮の中心から、この世界の排水溝らしき管がつながっているのも確認済みだ。

 

 ここを通じることで最低限の水は確保できるようになっていた。そして何故か水の出口の幾つかにここが入っていたのだ。

 

 つまり、ここにきた時点で何かしらのトラップは予想できていたのである。

 順に説明した後、2人の反応は驚きというより、呆れの方が大きかった。

 

「むむむ……あの時の探索が役に立った……納得し難いです」

「君たちさぁ……それ完全にルール違反だよぉ?何、勝手に迷宮の内部図を作っちゃってるのさ」

「ここに近道しても魔法は手に入れられないし、別にいいだろ?それよりも……」

 

 因子収納からハジメのクナイを取り出す。付属していたグレネードは既に解除済みだが、それを防いだのは紛れもなく俺だ。

 そのことを察したのか、ミレディの表情が物凄く嫌な顔に変わったが構わず提案した。

 

「ほら、手榴弾も無力化してやったんだ。もう少しくらい居てもいいだろ?こっちもまだ利きたいことあるんだよね〜」

「はぁ〜〜〜〜……分かったよーもう!!」

 

 ヤケになった彼女はそのまま壁越しにあるボタンを押した。白くて気づかなかったがミレディの住処はこの部屋だけじゃないようだ。

 

 ってことで……もう少しだけ、彼女から情報をもらおうとしようかな?

 

「それで、何が聞きたいのさ?あの錬成師とわざわざ距離取ったんでしょ〜」

「ん?……そうだな──」

 

 流石、話が早い。ネアが俺に二度見するのを他所に、俺は初めから決めていた目的のために質問した。

 

「──異世界の物が世界の現界する……そのための条件について聞きたいことがあるんだ」




ちょいと補足…

一之瀬久遠
→解放者と面々で話し合える機会を眈々と狙っており、マッピングもその一環だった。ハジメと久遠の持つ神代魔法を手に入れる目的は違う。ハジメは元の世界へ帰るため…久遠は約束した相棒を人として世界に現界させるため。僅かなズレがこの先どう及ぼすのかは世界すら分からない。

ミレディ・ライセン
→現在を生きる唯一の解放者。超ハイテンションな煽り口調でペースを持っていくが、似たような感覚を持つ久遠には効果薄めでちょっと不貞腐れてる。後、トイレ流しの刑も回避されて今度は迷宮の罠を増やすことを決意した。この先に挑戦する者には更なるストレスとトラップが襲いかかってくるだろう。

アルタイル成分が…圧倒的に足りない!!

いや、違うんですよ(先制攻撃)最初はとっとと真鍳ちゃんの力で出しちゃおうかなぁって思ってたんですよ?でも物語的にちょっと無理あるかなーとか?ネアちゃんをもっと前に出したいなーとか考えてたら…ほとんど出番がない状態や(すっとぼけ)…そろそろグイグイっと出すよ!多分!!

ってことで次回はミレディと学ぶ、世界の心理教室〜

この先欲しい要素は?

  • バトル(肉弾戦)
  • バトル(森羅万象などの頭脳戦)
  • ラブコメ(もっとヒロインを前にだせ)
  • ギャグ(ネタを増やせ)
  • マミる(もっと血流そうぜ?頭とか)
  • アルタイル(単純明快)
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