ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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今回は最後に、挿絵があります!


第三十一話 外面と内面の相互作用

 …あの後、俺らは無事に流れに乗せられて思わず溺死しかけた。あの野郎、絶対にこれまともな帰宅パターンじゃねぇだろ!

 そして結果、俺らが休んでいた宿の食堂付近の池から現れる羽目になった。

 

 …一応、宿主の方から変な目で見られたが、ハジメ達という前例があったためか、何とか見逃してもらえた。

 

 そうそう、ハジメ達と言えば、なんかシアが水をがぶ飲みをしてしまい、危うく死ぬところだったらしい。そこでハジメが人工呼吸を施し…

 

 興奮したシアが思わず宿の目の前でおっ始めようとしたんだとか。

 クソぅ…そんなラッキースケベなシチュこそスマホで保存させて、あいつの黒歴史に収められるというのに…ミレディのところで長居した唯一にして最大のミスだっただろう。

 

 それより、今俺は自分の部屋で一つの実験を行なっていた。今はネアとシアは入浴中、ハジメ達は…お楽しみの最中だ。

 

 ベッドの上で右手を前に出し、小さく詠唱を行う。

 

森羅万象(ホロプシコン)…第20楽章、因子模倣」

 

 因子模倣により、完全なるコピーされたマスケット銃が現れる。迷宮での出番はゼロだったが、今度からこの銃はメインに使っていきたい。

 

 だが、前回の使用で課題点は見つかった。それが威力強過ぎに対する、俺の腕の耐久もたない問題。

 

 今回はこれを改善すべく一手に興じる。使うのは、つい先日手に入れられた最新の魔法。

 マスケット銃に通すイメージで、頭に入ってきた言葉をそのまま発した。

 

「第5楽章…空地転変」

 

 第5楽章空地転変。それは物体に係る重力を0にし、自由にかけることの出来る魔法だ。

 これにより人や物体に掛かる重力も調節でき、結果物体の浮遊まで可能となる。

 

 結果はすぐに現れる。ゆっくりだが、銃の重さが減少する。消費の魔力を強めると、銃が完全に俺の手元から離れた。

 成功だ…俺の前でフヨフヨと空中浮遊するマスケット銃に内心第歓喜だ。

 

 これはいけるぞ…銃の負担を無しに扱えるようになるかもしれない。それなら、俺の耐久も気にしなくて済むからな。

 

 そばで見ていたアルタイルも息を吐きながら感想を述べた。

 

『概ね成功だな。加えて銃の円滑な浮遊移動も行いたいところだ。君の負担も増えるがね』

「だなぁ…まぁ、幸い俺の動かす武器は遠距離だ。お前のように器用じゃなくても何とかなる」

 

 こいつはサーベルを何本も高速で相手に追従させたり、自身の周りに高速回転させて縦にしたり…とにかく器用に動かしていたな。

 だが、俺のマスケット銃は相手を狙って撃つ。良くも悪くもそれしかできないので移動の心配入らなさそうだ。

 

 それでも重力魔法での課題は多く残っているけどな。未だに”重力付与”なるものはできないし、ミレディみたいに体を浮遊させることもできない。

 

 だが、この先の戦い次第で必要になってくるのは間違い無いだろう。特訓あるのみ…だな。

 

「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだけどよ?」

『藪から棒に何だ…まさか余にこれ以上厚かましく教えを乞うつもりか?』

「流石にそんなことはしねぇよ…お前に聞きたいのは、ネアのことだ」

 

 銃を因子に分解しながらふと、気になっていた事を尋ねることにした。だが一部の言葉で僅かに彼女の顔がこわばる。もしかして地雷だったか?

 それでも、ネアの件については今のうちに話しておきたかったからな。

 

『…ネアとの事なら余は特に何もないな。彼女の訓練次第では、或いは──』

「そう言う事じゃねえ。お前のネアに暴露したことだ」

 

 …ネアと近づくことができた出来事でもある、アルタイルによる完璧かつオブラートのかけらもない弾劾論破についてだ。

 あの時、俺の帰還も遅かったらネアは死んでいただろうし?精神的にもキツかったであろう彼女にノーガードの言葉責めは問題になるだろう。

 

 なるんだけど…はぁ、なんでこいつはこう…

 

『…余は事実を述べたまでだ。彼女の隠し事がそもそも問題であり、この先を行く上ではいずれにせよ必要な言葉だとも言える。そこに何か問題はあるか?』

「あぁ、全くないぞ」

『………』

 

 …何か言いたそうにしている。いや、何か言い返そうとしていたのだろうか。

 口をぱくぱくさせる姿はとても珍しい。そのままアルタイルは俺をダンマリと見て…何処か不満げに頬を膨らました。

 

『…君にしては賛同的のように聞こえるな』

「まぁ、お前の行動は正直、間違っていなかったと思う。いつかは彼女に向き合う必要はあっただろうし」

『…むぅ。何故か腹立たしいな。もっと君らしく正義の心に酔いしれて無防備な言い返しが来ないとは…』

「俺をどっかの正義バカと勘違いしてるのか?」

 

 まぁ、天之川なら絶対に言うだろうけど…ってか、そもそも彼ならネアの過去を許すこともない気がする。

 身にもない言葉でことを丸く収めようとして、結果彼女を追い詰めたりするだろうな…

 

 って、あのバカはどうでも良いんだよ。今はアルタイルの言葉についてだ。

 確かに、お前の言葉はキツかった。流石にネアに対して適切な言葉じゃなかったし、推理に調子に乗ったのもいただけないが──

 

「お前って本当に優しいんだよなぁ」

『待て、どうして脳内でそのような変換される。気でも狂ったか』

「いや、お前の方こそ気づいていないとは言わせないぞ?あいつの状態が一体誰に似ているかとかな?」

『…』

 

 1人で抱え込んで、誰にも頼る人がいなくて…そのまま押し潰れされそうな少女。一体どこの誰の創造者の話だろうな?

 

 要するに、アルタイルもネアにシンパシーを感じていたのだ。彼女なりの仮説か出来上がった時…その時に思ったはずだ。

 

 彼女を自分の大好きな人みたいに逃げて欲しくないと。

 

 だからその場合、自分の状況から逃げずに乗り越えてもらいたい、そう思ったはずなんだ。結果思いっきり追い詰めたけどな…

 

「お前の口数が少なかったのもそう言うことだろ?ねあに申し訳がなくって話しづらかった」

『……』

「いつの間にかネアのことナチュラルに呼んでるし、あいつが瓦礫に潰された時も思わず叫んでたし」

『…玩具は丁寧に扱う主義だからな』

「はぁ、もっと素直になった方がいいぞ?ツンデレでもこう、限度ってものがあるからさぁ──」

『フン!!』

「ったぁあ!!」

 

 と、急な衝撃に後頭部が悲鳴をあげる。部屋に叫び声がも黒してしまったが、そんなのどうでもいい。

 めちゃくちゃ痛い打撃に頭を抱える。後ろから今ぶったかれたよな?頭をさすりながら後ろを振り向くと…

 

 何故かそこにあった。見覚えのある、1メートルにも及ぶ長さのサーベル。獅子の紋章が取っ手についており、空が誰のものであるかは一目瞭然だ。

 

 何で…お前のサーベルがあるんだ?

 

「お、お前!いつの間にサーベルを実体化させられるようになった!?」

『重力魔法を手に入れたからな。君と同じ論理で生成ができるようになったのだ…それで?余が一体何だと?』

「…その調子で、ネアにも接してやれ」

『……』

 

 …まぁ、そのサーベルについて本当は聞きたいこともあるけど、今はこれくらいにしておこうか。俺らの部屋に近づいてくる魔力反応が1人いるからだ。

 そして扉のノックされた。外から感じる魔力的に…やっぱりネアだな。扉を開けると案の定ウサミミが最初に目に入ってきた。

 

「ん?ネア、どうかしたのか?」

「はい、少しお部屋にお邪魔してもいいですか?」

 

 風呂上がりで可愛らしい寝巻き姿の彼女は流石ハウリアと感じた。帝国民に同調したくはないが、愛くるしいのは確かだな。

 

「ああ、全然いいぞ?」

『…それにしても、君はシアはいいのか?彼女と同じ部屋だろう』

 

 まだ少し違和感を持っているのか、アルタイルがそんな質問をする。するとネアは少し苦笑い気味に答えた。

 

「あー、シアさんは今ハジメさんの部屋へ潜入を試みているようです…」

「…まぁ、今の時間あの2人イチャイチャしているだろうからな」

『彼がそれに気づかないことは考えづらいが…』

 

 まぁ、すぐに気づくだろうな。あいつ、初めて俺らに見られたあの一件から周囲への警戒を強くしてるし。

 もうドア越しだろうが、屋根裏だろうが、どれだけ彼が最高なシチュにいても秒で気づくくらい魔力感知に長けてるだろう。シアもその洗礼を受けるんだろうなぁ…

 

 何せ、その洗礼…俺も受けたし。脳天へゴム弾…痛い。

 

 気を取り直して、確かにネア1人じゃあ寂しいだろう。アルタイルの事もあるし、入れようか。

 

「まぁ、扉前で会話するのもなんだし、入りな」

「ありがとうございます」

 

 彼女を招き入れ、部屋は3人となる。ベッドの上にポスンと軽く座る彼女に俺はそういえば、と確認しないといけないことを思い出した。

 

 俺らの目的やハジメ達の目的…彼女の過去など色々整理がついた今なら聞くべきだろうな。

 

「俺達もそろそろここを離れるんだが、お前は結局、着いて来るんだな?」

「はい。これからはクオンさんの旅で力をつけて…皆さんにしっかりと謝りたいです」

 

 しっかりと俺の目を見てネアは答える。本当の目標を見つけた今、彼女のこれからの指針はたったようだ。

 それに、と彼女は俺だけじゃなくアルタイルにも目配せする。

 

「アルタイルさんの言葉も、クオンさんの言葉もどっちも私を現実に戻してくれました。このままだと、私は何も出来ずに、何も成さずに死んでいたかもしれないです…ありがとうございます」

「『……』」

 

 ペコリと謝罪も兼ねたお辞儀に俺らは驚いていた。

 

 思ったよりも逞しくなってやがる。自分の過去を乗り越えようとしている時点で、もう着いてくる資格はあると思うけどねぇ…

 

 そこのところどう、姫君さん?

 

『…フッ、それで余の教育から逃げることが許されないが、君はそれでも来るか』

「勿論です!アルタイルさんもよろしくお願いします」

 

 ふんす、と鼻を鳴らす彼女に、アルタイルに笑みが入る…よーし、2人の関係も変に拗れずに済んでよかった。

 そして、こいつが一緒に旅をするなら進呈してやらないといけないものもあるな。

 

 因子収納から一つの長袋を取り出す。

 

「……それなら祝いの品を渡さなきゃな」

「?」

 

 ネアは何かいまいちピンときていないようだな。袋を取り外しながら俺は続けた。

 

「いや、2つ目の迷宮をクリアした訳だろ?ネアにとっては1つ目をクリアしたことになるし」

「ですです…まぁ、皆さんに引っ張って貰いっぱなしでしたが…」

 

 いいや、足なんか全然引っ張っていない。むしろ、成長度はシアに並ぶ一位じゃないかと思っているくらいだ。

 まぁ、褒めても謙遜するだろうからそれ以上は言わないがな。

 

「という訳で、俺から2つほどプレゼントしようかなぁと」

『……重力魔法を手に入れて脳に影響でも出たか』

「普段の俺への考えがよーく分かったよアルタイル」

 

 ちょいとこいつには俺への態度認識の確認が必要そうだなぁ?

 …ここで突っかかってたら進まねぇな。袋の開封が進み、だんだん中のものが見え始めた。

 

「ってことで、先ずはハジメからのプレゼントだな」

「ナグモさんからです?珍しいですね…」

『補足すると、南雲殿に依頼をした久遠からだな。本来は余が容認するまでは与えないつもりだったが?』

「ま、それでも必要な装備品だから受け取れ」

 

 完全に袋からその武器を取り出し、全貌が明らかになる。黒い刀身に銀色が添えてある柄。鞘から抜けば漆黒の頭身が更に現れて顔が照らされる。

 

 長さは50cmほど…だが、それが2本手元にある。この世界にはないであろう美しさにネアは目を奪われていた。

 

「剣…です?でも薄い…それに見たことも無い黒色です」

「ハジメの技術が詰まりまくった一品だってよ。刀って言うんだが、これを2本やるよ」

 

 刀にしては短いんだがな。でも2本あることでネアは二刀流になれるのだ。

 今回、ネアの素早さや能力を考慮した結果、刀をはじめとする剣術も可能ではないかと考えた。

 

 元々アルタイルの訓練でも使用していたし、既に適性は感じられたからな。

 あの時はなまくらの不良品だったが正式参加となれば話は別だ。彼女にふさわしい武器が必要となる。

 

 案の定、彼女は首を振りながらもらうことを拒否しようとしたが。

 

「こ、これほどの武器…私には不相応では無いです?」

「フィジカルの塊であるシアがあれを持ってるんだ、お前も使う資格はあると思うぜ?」

 

 第一、あいつのハンマーとか高性能すぎるからな。ロケランも発射できるし。

 それに比べればこの武器はハジメが刀の試作品として作ったに過ぎない代物で、効果もない。

 

 だから本当はもう少し質の良いものを渡すべきだったんだがな。でも、これからの旅で心強いのは間違いない。

 

 ネアはしばらくもらうのを迷っていたが、やがて二つの柄をしっかりと両手で握った。

 

「…ありがとうございます。2本とも大切に使います!」

「おう…ところで、それ名前ないらしいからお前が付けていいらしいってあいつからの伝言だ」

 

 まぁ、名前も刀だけじゃあ物足りないしな…俺の銃ですらマ○さん銃って名前だし。

 

『2つの名刀…南雲殿曰く、試作品だそうな』

「あぁ、確かモデルは村正の刀らしいぞ…二刀流なのは勿論──」

 

 ロマンだな、うん。分かるぞー。歴代の代物を名前に付けたくなるハジメの気持ちもわかる。

 多分、このままあいつなら0号とか、アルファとか付けてカッコよくネーミングしたはずだ。

 

 ネアは俺らの情報を聞いて少し頭を唸らせて──

 

「……じゃあ、ムッくんとマッさんで」

「『…………』」

「よろしくです、ムッくん、マッさん」

 

 …うぉう。これは予想外…まさかお笑いコンビみたいなネーミングになるとは。

 というか、もしかしてネアってネーミングセンスないの?アルタイルもそうだったけど、まさかお前もか…

 

 この先、彼女に名づけされる武器が少し心配になるのだった。

 

 気を取り直して、今度は俺からだな。少し大きな袋を因子収納から取り出す。

 こういうのもアレだが…俺のはハジメのより絶対にいけてる自信がある。そのまま袋をネアに渡しながら、ベッドから立った。

 

「続いて、俺からのプレゼントだ。ほれ」

「これは、袋?開けてもいいですか?」

「おう…それじゃあ一旦外出るから、アルタイルは着付けの手伝いをお願い」

『むっ、余の必要があるのか』

「へ?」

「それと、それがネアの戦闘服になるから、よろしく」

「え?」

 

 未だに疑問顔のネアを置いて、俺は外に出る。さて、彼女にどれくらい似合うのかが楽しみだ。

 

 俺の力作である──彼女の新しい戦闘服に。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「で、これがその結果…だな?」

「……ん、それで…」

「ネ、ネアちゃん…大丈夫ですぅ?」

 

 三者三様。わかりやすいリアクションをしたハジメ達だが、その目線は一人のハウリアへと移っていた。

 まぁ、当の本人にとってその視線は毒なのだろうが。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 顔をトマトのように赤面させている姿は以前の彼女からは見られない激レアでは無いのだろうか。このまま爆発するんじゃないか心配なレベルだ。

 

 旅立ちの日に新調した装備で合流した俺ら。俺とアルタイルは通常通りだが、いよいよ正式メンバーになったネアが新しい戦闘服を披露することになった。

 周りからの視線も思わず彼女に向いており、それがハウリアであるだけでは無いのは明らかだ。

 

 注目を浴びている理由は、その異世界ではあまり見ない格好にあるからだろう。

 

 着物を、和を基調としたスタイル。赤と黒の布地が重なり、小柄な体にピッタリフィットしている。しっかりと柄付きで、よくこんな着物生地を見つけられたなと褒めたい。

 まぁ、刀を使うんだし、動きやすい格好にした方がいいかなぁと、ね?

 

「ね、じゃないです!クオンさんの鬼!悪魔!破廉恥!」

「いやぁ、至高だ…こんなに着物とどストライクな子、なかなか居ねぇぜ」

『欲望に身を任せた結果が、あれか…まぁ、似合ってはいるぞ』

「は?は、いるんですね!アルタイルさんが、はと!」

『…あぁ、似合っては、いるぞ?』

 

 歯切れの悪い返答…おーいアルタイルさんや、お前もこれ系は好きだろ?

 

 だが彼女はその言葉で更に手で顔を隠すことになった。いや、それでも服は隠れてないんだけどな。というか、紺色の髪が垂れて赤とのコントラスト…うーむ、これは100点。

 赤い花の髪飾りも相まって、物凄い似合っている。

 

 もう俺はアルタイルの端末で大量のデータを収めている。ここまで俺の傑作が似合う子はそうそう居ない。

 すると眺めていたユエさんがチョイチョイとハジメの袖を引いていた。

 

「……でも、違和感がある」

「ユエ?」

「『着物』は来ている種族が過去にいた…けど、その服は少し違う」

「…へぇ、それに気付くとはな」

 

 ユエさんの指摘通り、本来の着物とは少し違うスタイルに仕上がっている。何せ、本来隠れているはずの美脚が正面から見えているのだから!

 

 そう、着物だけには収まらない、最強の混合ジャンルを今、ここに!!

 

「この服装、そう!新しいジャンルとして制作した、着物とゴスロリのハイブリッドなのさ!」

「堂々と胸はられても困るですぅ!!」

 

 ネタの雄叫びに似た悲鳴が響くが、そんなの今のハイテンションな俺の耳には入らない、入らせない。

 

 そもそも着物ドレスというハイブリッドはもっと流行るべきだ。妖美な美しさは何方も兼ね備えているもの。それを合わせるのになんの抵抗がある!

 

 その証拠に、如何にも洋風な要素が散りばめられている。

 着物の場合は大抵足まで全てを覆うので、アウトドアには厳しい。男性用でも然り。流石にネアや俺みたいに跳ぶ、動作が厳しいのだ。

 

 かといって、女性侍のような褌にしたスタイルもいけ好かない。というか俺は別のがいい。

 

 そこで、着物はあくまでも上半身、腰から下はフリルスカート仕様にしたのだ。実際動きやすい格好はこれか、ズボンなど重みの少ない物だからな。

 だが!ここで終わる俺じゃない。無論、工夫を凝らして改造している。

 

 それがスカートのフリルの途中までを着物生地にするところ。これにより黒のフリルが違和感なくメインの着物に溶け込むことになった。着物ドレスというジャンルは存在するが、それを自然に取り入れると中々様になってる。

 

 他には…あっ、萌え袖にしてる。袖にもフリルを付けてキョンシーみたいな仕上がりだ。

 

 …何か後ろのハジメの視線が物申したい感じになっているが、お前が色々な機能もつけてくれたんだぞ?

 この着物に隠されている機能、次の戦いで活用できればいいな。

 

「お前、すげぇな…ここまで欲望に忠実なコス…戦闘服は中々作れねぇよ。手伝った俺が言うのも何だがな」

「フッ、やっぱりゴスロリは避けられねぇからな。戦闘服じゃなかったなら、もう少しアクセを増やすつもりだったんだが…」

「私は着せ替え人形ですか!?」

 

 おお、ネアのツッコミがいつも以上にキレッキレだ。服を変えたことで心機一転したのかなっと。

 因みにゴスロリ要素は増やせればもっと出来た…布生地の薄い黒手袋をつけたり、カラコンを付けたり、リボンや花などで華やかに…

 手持ちのフリル傘なども欲しいな、それだと外見受けがさらに良くなる──

 

 ……うん、それは今度また機会があったらにしよう。今は戦闘面をメインに考えた結果、着物とゴスロリの比率は8:2ってところか。

 

 端末から呆れた声がした。アルタイルだ。ネアの衣装に思うところがあるのだろうが…

 

『文句は多いだろう…だが、戦闘面でもかなり理に叶っているのだ、ネア』

「へ?」

「ああ、流石にガワだけじゃあ意味がないからな」

 

 例えば上の着物、下のスカートというスタイルは動きやすい。

 特に着物の萌え袖には彼女の宝物庫も存在し、宝物庫というチートアイテムを相手に見せずに出すことが可能。

 

 これで例えばハジメの銃をいきなり乱射すれば戦うメイドさん、基、戦うキョンシーちゃんの感性なのだ!

 

 ちゃんと刀掛けの金具も別途でついているし、帯で自分の意思で体のフィットをいじることができる。見た目に反して通気性の良さ、着脱の便もあるのだ。

 

「そ、そんな機能が…」

「そうだ。これにはハジメにも手伝ってもらったんだけどな」

「おう…だがこれはこいつの案をそのまま作っただけだ。だからそんな目で見るんじゃねぇ」

 

 ネアのみならず、シアまで細目で見られるハジメは放っておき…うん、サイズも問題ないようだな。

 

 するとアルタイルが俺へふと質問してくる。

 

『それにしても、久遠も余の知らぬ間にこのようなものを作っていたとは…』

「ああ、前にお前らが訪れた服屋あっただろ?あそこに原案は依頼しててな」

「『いつの間に……』」

 

 あの店、店員さんがゴツい見た目しているだけで、扱っている布地はどれも質の良いものだった。

 今考えてみれば、ライセン祭迷宮での戦いでシアの衣服がボロボロにならなかったのが何よりの証拠だ。

 

 それにあの人、俺の趣味に理解を示していた…あんな装いだからこそ、「こっち側」の存在だ。異世界も捨てたもんじゃない。

 

「ま、そういう事だ。嫌なら他のを用意するけが、これ以上の傑作はそう生まれねぇぜ?」

「傑作じゃなくて珍作です…まぁ、いいですけど。実際、戦闘服……いや、アーティファクトに並ぶ性能じゃないです?」

 

 周りの視線に気にしながら、しかしどこか嬉しそうにしている…?

 あれ、羞恥心マックスだったけど、案外慣れれば問題ない感じか?それはそれで製作者として嬉しい限りだが…

 

「それに、クオンさんからのプレゼントですから」

「…そうか、なら良かった」

 

 …俺が作ったから嬉しいようだ。少しはにかんで袖で顔を隠そうとする姿に周りからガシャーンと音が鳴る。

 

 oh.やべぇ、想像以上に様になってやがる。このままだと情緒までトリップするぞ。それほどこのウサミミ少女の破壊力は壮絶だった。

 

 隠すために彼女の頭をワシャワシャ撫でると更にニコニコする…やっぱり可愛いなこいつ。

 ハウリアではあるが、この応対は猫を想像してしまう。愛でてる気持ちが凄いな…

 

 …後ろの3人もニヤニヤしてなきゃ最高に良かったんだが。

 

「…何ニヤニヤしてんだよ」

「別に?ただ、お前らいつの間にそんな関係になったと思ってな」

「ん…ライセン大迷宮で、進展?」

「はぇ〜、ネアちゃんが、一之瀬さんに惚れちゃいました!」

 

 そんな関係ってなんよ…まぁ、心は以前より開いてくれたし、距離感も近くはなったが…

 3人の生暖かい視線に耐えれず頭を撫で続けるのだった。ワシャワシャ。

 

「…あの、クオンさん。少し恥ずかしいです」

「あっ、悪いな」

『…君もか、垂らしめ』

「……?」

 

 ネアの照れの混じった声で手を離したが、何故かアルタイルにそっぽ向かれた。え、俺そんなに触りすぎてたか?

 

 …まぁ、ネアから何かしら気を引かれてはいるのだろうが…マサカネー…

 

「それで、次の場所はどこになるのです?」

「あぁ、ハジメと相談した結果、目指す先はフリューレンだ。そこに次の試練があるからな」

 

 魂魄魔法はもう少し後になるかもしれないが…うん、今はハジメに着いていく方が後々動きやすいと判断した。

 出来ればすぐにアルタイルを現界させたいが、人女があるからな…計画的に物事は進めなきゃならないからな。

 

 さて…あっ、忘れてたな。ネアの方へもう一度振り向き、これからの旅への挨拶と行こうか。

 

「それじゃあ、これからよろしくな…ネア」

『この旅路に精々、一興となって変革を見せることだな…ネア』

「はい。よろしくお願いします、クオンさん、アルタイルさん」

 

 俺たちは3人になり、旅を再開する。

 




ちょいと補足…

一之瀬久遠
→今回の迷宮で仲間になったネアとアルタイルの関係を良好に戻す合作をしており見事に成功。彼自身、アルタイルの気持ちは正確に汲み取っており、もう少し素直になればと考えていた。尚、ネアの服については完全の趣味である。彼は何と…何と、重度のゴスロリフェチだったのだ!(それでも今回はかなり抑制して服を作った)

アルタイル
→彼女はネアにそれなりの言葉をぶつけてしまい内心申し訳なさを持っていた。が、久遠にフォローされながらもネアとの関係は持ち直すことができた。彼女は成長している。被造物だった頃の人間に対する憎しみにのみ囚われていた彼女から。少しづつ、少しづつ、彼女は人らしくなってきている。

ネア・ハウリア
→「こんな服…やっぱりクオンさんは変態不審者さんですっ!!」
挿絵
【挿絵表示】


上の挿絵はAIで適当にキーワード入れて生成した後、自分でいくつか手直しさせています。何回もAIにかけているので、さすがに誰かのパク絵にはなってないと思いますが…もしあれば即刻削除します。まぁ、あくまでもネアちゃんはこんな子だぞ〜ってイメージつけば良いですし。

さて、一応2章本編はこれにて終了。残りは外伝ですね…むしろ、こっちが本編までもあるけど。

ではでは〜

この先欲しい要素は?

  • バトル(肉弾戦)
  • バトル(森羅万象などの頭脳戦)
  • ラブコメ(もっとヒロインを前にだせ)
  • ギャグ(ネタを増やせ)
  • マミる(もっと血流そうぜ?頭とか)
  • アルタイル(単純明快)
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