ありふれた物語の森羅万象   作:RASっさん

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 遅くなりました〜、自分の納得いくように書こうとするとどうにも時間がかかってしまいますね…

 今回は我ら姫君のアルタイルが活躍します!(色んな意味で)

 それではどうぞー


第五話 2人っきりイベ、見逃す奴いるぅ!?

 メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

【オルクス大迷宮】は所謂チュートリアル迷宮。改装が深くなるごとに魔物が強くなるシステムだ。この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

 魔石は魔法陣の材料になる魔物の体内に存在する石で、核でもある。強い魔物ほど魔石が大きく、実際魔物の魔石をぶち壊せば死ぬんだとか。

 

 だけど魔石は良質な物でもある。大きい魔石は高い金額に変えることができる。なので魔石を壊さずに魔物を狩る……と、中々面倒くさいことをしなければならない。

 

 俺らは魔物を倒すことだけ考えればいいので、魔石はぶっ壊してもいいらしいが……何だろう、冒険者っぽく行きたい俺としては魔石を綺麗な状態で倒したいと無駄なプライドが湧き上がっている。

 

『それで命を失うなど言語道断ではないか』

「まぁ、そうだな。命を第一に考えて進まなきゃ行けないから、多少は妥協しなきゃな」

 

 そうアルタイルと話しながら、宿泊宿の廊下を歩いている。もう時刻は夜。皆が就寝に入ろうとしている中、俺とアルタイルは外に出ようとしていた。

 

 外の空気を吸いたかったってのもあるが、勿論脱走計画について話し合うためである。

 

 2階の開いた場所に出て、夜風を浴びる。都会のような明かりがない夜空には満天の星空が映っており、思わずその場で見惚れてしまいそうだ。

 ここに来て数少ない良かった事かもな。

 

 だけどここで物思いに耽っている場合じゃない。スマホを取りだしアルタイルと対面する。

 

「この迷宮で俺の実力がだいたいどのくらいか分かる。だからここが俺のターニングポイントだな」

『具体的にはどの魔物を線引きとするつもりだ?』

「そこなんだよなぁ……」

 

 図書館で見つけた魔物などが乗っている図鑑ではドラゴンを殺れるくらいの強さで金ランク……つまり冒険者で最も高いランクになる訳だが、間違いなくドラゴンは倒せない。

 

 となると【オルクス】の層によって出てくる敵が基準になるか。

 

「先ずは……第1層だな」

 

 現時点で注目の敵になるのは序盤で必ず出会うラットマン……レベルが5もあれば倒せるはずだ。ここで少しでも俺が生き物を殺すことに躊躇したら、ここを離れないことにする。

 

 だってそうだろ?敵を殺すことに慣れなきゃこの世界では生きていけないんだから。

 

「そしてここが突破出来たら……ロックマウントとか、トレントとかが中層の敵らしいな」

『大方、それらを単独で倒せるならこの世界に順応していけると思うぞ』

 

 なるほど……じゃあアルタイルのお言葉に甘えてそうするか。ロックマウントらは20層後半で現れる敵のはずだ。

 

 ロックマウントは擬態能力を持っていて筋力が高かったな。俊敏は遅いから、俺と相性はいい。

 トレントは木がそのまま魔物化したような存在。生命力の源である根っこを切り取れば容易に倒せる。

 うん、【オルクス大迷宮】の4分の1突破出来たら離れるって決めよう。

 

 うーん、何だかあっさりしてるな。条件も至ってシンプルだけど、本当に大丈夫なのか?そう自問自答していたら、スマホから呆れた様子の彼女が映っていた。

 

『君は他の者と違い芯の通った人間だ。余の権能を使える者であり、何よりこの余が認めているのだ。オルクスなど雑作ない』

「そこまで言うか……一応この世界で最高峰の迷宮のはずなんだが?」

『そもそもこの世界の尺度で考えること自体が問題だ。無限にとってどのような数値や難易度もも比べるに値しない』

 

 うわぁ……その言葉食らうと何も言えねぇわ。だって森羅万象の利便さをこの前痛感しちゃったから。

 

 あんな強力な能力が無限にも存在するって聞いたら確かに世界の垣根くらい越えられそうだなあって思えちゃうよ!

 だけど、そうだな……少しは自信を持って明日挑むか。

 

 さて、積もるべき話はもうしたし……外の風も肌寒く感じてきたな。

 

「そろそろ戻って寝るか!いやぁ、あのベットで寝るの楽しみだなぁ」

『ほぅ?てっきり久遠は王国での寝具から離れずにいると思っていたが……』

「あー、まぁすごく気持ちいよ?だけどここのベットは庶民的なやつだから、地球での感触を思い出させてくれるんだよね」

 

 柔らかさや包容力は王国が段違いだが、ここのベッドは無性に落ち着く……実家にいるような安心感。

 そんなこんなで部屋に戻ろうとしていたら、外から声が聞こえてきた。

 

 何やら短く一定の速度で叫んでいる。同時に風を着る音も聞こえてきて、それは素振りだと分かった。

 

 同じくそれに気づいたアルタイルが眉を顰める。

 

『成程……どうやら君と同じような子が居るようだ』

「そうだな……ちょいとばかし寄っていくか」

 

 1階に降りるのが面倒なのでそのまま2階から飛び降りる。地球なら上手く宅地しないと骨が折れてしまうが、異世界によりそこはもう心配ない。声のする方へ向かう。

 

「ふっ!ふっ!ふっ!」

 

 素振りしている一人の剣士。一振り一振りに気持ちがこもっており、静かな夜に彼女の空間が形成されていた。

 相変わらずこいつの剣は綺麗なんだよなぁ……剣術だけなら俺を遥かに超える技術を持っており、最近は一度も勝ってなかった。

 

 頃合いを見計らい、彼女が剣を降ろしたところで声を掛ける。

 

「よっ、本番前日にも素振りか?身体を壊すんじゃねーぞ」

「覗きとは趣味が悪いわね……自分の体は自分が一番理解しているから、大丈夫よ」

 

 剣を振っていた雫はそのまま刃を鞘に仕舞い、木に体を傾ける。うーん、美女が木に寄りかかる構図、絵になるねぇ。

 

 だがどうやらいつものような素振りではなかったようだ。表情も心知らずか暗い。

 

 暫く夜の風があたりを包み込む。

 俺やアルタイルは何も言わないし、雫も何か考えているようで目を閉じている。

 

 やがて静かに口を開きながら、こんな質問を問いかけてきた。

 

「一之瀬君は……こんな日が来るって知っていたのよね?」

「……というと?」

 

 ……いや、やっぱりしっかり者の彼女は理解しているようだ。重い言葉を出すのに躊躇していたようだが、意を決してそれを放つ。

 

「私たちが……命を取る……つまり人を殺すってこと」

「……まあ、普通に考えたらそうだろ?あの時も言ったが、ここでは人殺しに加担させられるんだよ」

 

 魔人族と人間という敵対関係が存在する以上、互いに戦うのは避けられないし、現代科学が発達していない以上、抑止力が存在しない。

 よって戦争は避けられない事態なのだ。イシュタルのじーさんが俺たちを呼んだからには戦争に加担するのは必須事項。

 

 だから俺は最初に最低限の条件を設けたんだ。ここにいる奴らがトラウマを抱えないように。だが……

 

「戦争に参加するのは別にいいんだよ……俺は責任は取らないし、死ぬのも勝手にしろってんだ」

「かなりの言いようね……でもそのくらいの強さがないと多分無理なのよね」

「それは人それぞれだろ。俺はまぁ……明日の戦闘次第でその決断をするつもりだ」

 

 それが第一層突破の条件だ。これに少しでも抵抗を感じたなら、俺は潔く諦める。だが問題ない場合は、先程のプラン通りに行く。

 

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「お前は覚悟ができているのか?」

「……正直わからないわ。イシュタルさんの話を聞いていた時はここにいて何もしないよりは……って思ってたけど」

 

 ああ、まぁあのバカの扇動もあってみんな変な希望を抱いちゃったときね?全く現実を見ろっての。

 すると今度はアルタイルが彼女に話しかける。

 

『雫、君は素直になるべきではないか?』

「素直に?」

『余が言える身でもないが、強く体裁を作るものはその分中は脆い。君は常に周りを支える支柱であった……それ故に誰よりも傷を感じやすく、君が負う必要のない責任まで感じてしまう。地球ではそれでも君は強かった……だがここは異端の地だ。状況も変わってくるし、君にかかる負担も尋常ではない』

「……」

 

 今までにない声色で話すアルタイルからは、三年前の、あの時の彼女を彷彿とさせた。

 アルタイルは過去に誰もが感じないような絶望を設定として経験している。誰にも頼れず、誰にも助けてもらえず、そのまま最悪の終わり方を経験しているのだ。被造物の呪いというべきか……創造主の感じた思いまで伝承してしまう。

 

 だからアルタイルは誰よりも絶望を、憎しみを、恨みを持っている。今はそれを全て受け入れているが、当時はそれで地球が終わりかけたのだ。

 今の雫の、何もかも1人で背負っている姿が似ているのかもしれない。

 

『最後まで君の信念を貫くのも結構。しかし余は誰よりも人間の弱さを知っているつもりだ。そして君を気に入っている……だからこそ君に素直になってほしい。命をつなげてゆくには、捨てなければならないものもある。君がこの饗宴に参加する理由に過去の楔があるのなら、それを一度全て忘れて君の本来の気持ちで考えてほしい』

「……本来の気持ちね……私ってそんなに抱えているように見えるかしら?」

『最低でも人間の許容量を超えている』

「うわぁ……」

 

 雫が俺に目線を移し、本当?と聞いてくる。

 いやぁ……バカに脳筋に天然の3コンボを常に抱えている。おまけに面倒見のいい、気配りのできるお姉さんタイプ。道場の名前を背負っていて、八重樫家の一人娘。

 

 ──うん、背負いすぎというか、潰れてもおかしくない状態だな。何度も頷いたら、雫は思わず顔を顰める。

 自覚し始めたのだろう。予想以上の苦労人だぞ、お前は。

 

『……まぁ、明日は別に問題ないだろう。騎士団の方々もいるのだからな。しかし覚えておくがいい……選択の残り時間は刻々と迫っているのだからな』

「わかったわ……ありがとう、アルタイルさん」

『フッ、ただの気まぐれだ』

「滲み出てくるツンデレ」

『久遠、黙れ』

 

 雫は背伸びをしながら寄りかかっていた木から離れる。どうやら肩の荷が少し軽くなったらしい。明日の戦闘に影響が出ないなら何よりだ。

 もうここにいる必要はないな。彼女も素振りは集中するためにとっていたようで、もう今から寝室に戻るようだから、送って行くことにした。

 

 宿の廊下を2人で歩いていると、ある人の扉を通り過ぎる。だがそこで俺はふと思い出した。そういえば……

 

「あっ……!」

「?どうしたの?」

 

 ハジメの部屋の前で止まり、扉に耳をそばたてる。二人が不思議そうにしているが、俺は今この部屋の中での展開が気になって仕方がない。

 

 あいつと香織……二人の展開が。

 

「ちょっと、一之瀬君?」

「シッ……今ハジメの部屋に香織が居るはずだ」

「っ!?」

 

 雫の目が一気にマジになる。おそらくこの一言で一気にオカンのスイッチが入ったのだろう。かという俺も完全に親モードに入っている。

 

「そういえば香織、南雲君の部屋に行くって言っていたわね……」

「ああ、俺も夕食にこっそり聞いた……本人はハジメと大事な話がしたいって言っていた」

 

 言っていたが?いやいや、ご冗談を。このまま終わるわけねぇよな?

 絶対何かが起こるはずだ。そして彼女は夜遅いこの時間にハジメに会いに行ったのだ!

 

 静かな夜、2人っきりの部屋。大事な話。何も起こるはずがない。

 

 そしてそんな最高の条件下でお送りする2人っきりのイベント……これを見逃す奴いるぅ?

 

いねえよなぁ!!

 

『傍から見ると変質者だぞ久遠』

「いや、やるでしょ普通!やっと2人がくっつくかもしれねぇのに、見守らない奴がいるか!」

『君は彼らの保護者か』

 

 改めて突っ込まれるが、この際認めよう。かれこれ2年、香織の一方的な想いと、それをものともしないハジメ。

 2人の恋(というより香織の恋)が始まって早2年、全く進展のないこの状態に付人である俺たちはすっかり保護者と化していたのだ!

 

 その証拠にほら、もう1人の方を見てくださいよ、アルタイル。

 

「……」

『……雫。君も聞き耳を立てるのは女性としてどうかと』

「へ?……いえ、ただあちらで南雲君が香織に変な事をしていないか確かめているだけよ?そう、決して2人がいい感じになて精を出す2人の声が聞きたい訳じゃないわ……」

『くっ、迂闊だった……香織の事になると見境なしだったな』

 

 アルタイルが思わず天を仰ぐ。常にしっかりしており、周りへの気遣いもできている雫は、親友の恋事情には弱い。もとより香織を応援し続けていた、そしてこの時間はまさに大一番の時なのだ。

 

 ……というか、そもそも雫は他の女子よりよっぽど女の子らしい性格だ。こんな恋の爆弾ネタを放っておくはずが無い。

 

 2人でドアに張り付いて事のあらましを見守っている。側から見れば変質者に違いない。

 

「どうだ、聞こえるか?」

「今のところは話し声……くらいね。まだ本番には行ってない……?」

「流石にドア越しとなるとキツイな……よし……」

『……久遠、何故スマホを持ち出している?まさか余をドアの隙間から流すつもりか!?』

「……ふっ、異世界のドアの作りが甘いようだな。それともお前のスマホの薄さに感謝すべきか……」

『待て!余に1夜中2人の行為を見ていろと言う気か!余は何も出来ないのだぞ!そもそも余には──』

「アルタイルさんお願い、親友の千載一遇のチャンスなの。事の結末を見守って欲しいわ」

『くっ、愚者が何故こんな時に居ないのだ!』

 

 多分愚者(勇者)は部屋でゆっくりしている事だろう。あいつのことだ、よっぽどの事がない限りこっちに気づくことはない。

 その現状にアルタイルが歯噛みするが、どちらにせよ彼女に助けは来ない。

 

 ほーら、スマホだからこそできる仕事だぁ!

 

とっとと行ってこい!!

『待っ──』

 

 静止の声を無視してスマホを綺麗にドアの下をスライドさせる。今の俺ならスライド中の音さえ無音にできる!滑らかな床を滑るようにスマホは滑って言ったに違いない。

 カーリングの日本代表も惚れ惚れするような投げだった自信がある。

 

 よし、このまま彼女の状況報告を。ここでまさかイヤホン無しの会話が可能になるとは。

 

「アルタイル、どうだ?」

『……綺麗に滑って行った。君には無駄に才能があるのかもしれないな』

「うんそだねー」

『古い!そのネタは数年前だぞ!』

 

 いやぁ、流行語大賞になってたりしたじゃん?そういう言葉使ってみたいじゃん?

 だけど、無事にアルタイルを送り込むことができたようだ。二人も侵入者に気づいていないようで、話し声は続いている。

 

「それで、どうなってる?」

『余を無視するか……はぁ、視界は暗いから何も見えない。明かりもつけていない状態での会話のようだ』

「明かりなしでの会話だとよ、雫」

「いいわね、何時でも始める気満々じゃない」

 

 雫が静かにガッツポーズした。大変珍しい。

 だけどいい状態だ。このまま2人のどちらかがきっかけを作れば……

 

『……話し声は落ち着いているな。部分的にしか聞き取れないが……『守るよ』……『守る』……は聞こえたな』

「マジか!騎士様姫様関係的なやつか!このまま行け、行け!」

「香織、頑張って……南雲君も男を見せなさい!」

 

 俺らは2人で、廊下で盛り上がっている。今は夜だから人は居ないが、誰かに見られていたら間違いなく通報ものだと思う。

 

 南雲が襲うのか?それとも香織が誘うのか?どちらでもいい、とにかくイベント進め!

 このまま2人ができちゃうのではないか?長年の戦いに終止符が打たれるのではないか?そんな期待まで抱いてしまったその時だ。

 

 アルタイルから警告が脳に響く。

 

『むっ……足音が聞こえる。おそらく香織が向かっているぞ』

「は?雫、撤退だ!」

「え?え?」

 

 すかさず彼女の手を取り廊下の角へ。うぉう……雫の手ひんやりしてるわ〜……じゃない!

 

 廊下の角まで距離を取り、初めの部屋の扉の方を覗く。すると少しして扉が開いた。中から出て来たのは香織。

 そしてそのままドアからひょっこり顔を出したハジメと一言、二言交わした後部屋から離れていく。扉もハジメが見送った後パタリと閉じてしまった。

 

 ……え、終わり?

 

『どうやら香織は本当に南雲殿と会話をするためだけに来たようだな……』

「マジかよ……ハジメもここがチャンスだってのに……」

「香織ぃ……」

 

 四つん這いになりたい気持ちだ。こんなにも最高のシチュエーションで何も起こらないとか、ギャルゲーとかだったら間違いなくクレーム物だぞ?

 2人揃ってはぁ、とため息をついてしまう。たとえ場所が異世界でも彼らは平常運転のようだ。

 

 仕方がない……なんだかんだでここにも長居しすぎた。

 明日も早いし、ここで解散かな。

 

『……おい、それで余の事はどうするつもりだ』

「あ……あー、うん、明日迎えに行く」

『……久遠、後で覚えておくがいい』

 

 そういえばどう回収しようか全く考えていなかったな。アルタイルがそんなに見つからない場所だったらいいなだけど。ハジメに見つかったら後々面倒くさくなる。

 このままどうにかして隠れていてほしい。そしたら明日の朝一こっそり取りに行くから。

 

「一之瀬君、扉が開いたわ」

「ん?ハジメか?」

 

 思考を中断し、雫に言われるまま扉の方を見ると確かに開いていた。だが暫くすると勝手に閉じてしまい、何事もなかったかのように静かになる。

 なんだったんだ?一体。

 

「おーい、一之瀬」

「っ!?……って浩介じゃねぇか、驚かせんなよ」

「いや、普通にきただけなんだけど……まあいいや、部屋に送り込んだスマホを返しておこうかなと」

「おー、マジ?サンキュー……ん?」

 

 横から現れた浩介に俺たちがビクッとするものの、彼からスマホを受け取る。どうやら優しいことに彼が届けに来てくれたようだ。

 

 …………んん??

 

「遠藤君、貴方南雲君と相部屋なの?」

「ん?あぁ、そうだけど?」

「……確かに俺の部屋が一人部屋だもんな」

 

 現在のクラスは転移した人限定で奇数であり、宿は2人部屋で構成されている。そのため1人はハブられ物が出るわけで、アルタイルの存在を秘匿にしたかった俺はその役に自らなることにした。

 

 雫は香織と、天之川は龍太郎と一緒のように、ハジメは浩介と一緒だったとなる。シンプルかつ当然の事実だ。

 

 だが、そこで疑問が生まれる。あの部屋にはハジメと香織、浩介がいたということか?

 思わずそんな彼を凝視してしまう。

 

「「…………え?」」

『遠藤殿は先程までずっと部屋にいたようだぞ?現に余も彼に拾われたからな』

「えっ、じゃあお前ハジメと香織の一部始終をずっと部屋の中で見てたってことか?」

「まぁな。あいつら自分の世界に入りやがって、俺の存在なんか背景扱いだぜ?」

 

 はぁ、リア充め……とため息を浩介はついてそんな境遇のない自分に落ち込んでいるが、それより彼が発した事実に俺達は唖然としていた。

 

 確かにこの時間帯、ハジメの相方も部屋にいることは当然だろう。

 しかしここまで存在感無くしていることができる物なのか……いや、こいつなら出来るのか。現に俺らはずっとこいつ無しで話を進めていたからな。

 

 そして当たり前のようにアルタイルのスマホを取り、初めにもバレずに扉を開け、なおかつ俺らのそばまで来た。異世界で鍛えられた五感でも全く気付かないほどあっさりと。

 

 日に日に浩介の影の薄さが神がかっている……

 今までは普通に気付けていたのだが、本気を出した浩介を俺は見つけられるのか……多分無理だろう。

 

「それじゃあ俺は戻るぜ、おやすみ」

「お、おう、じゃあな」

「また明日ね……」

 

 1人でそのまま帰っていく浩介の背中を見ながら、俺たち3人は揃って同じことを思ったのだった。

 

(((今、あんたが一番恐ろしいよ……)))

 

 そうして、夜が更けていく……




ちょいと補足

一之瀬久遠
→香織のハジメに対する気持ちにはすぐに気づいた。なので何回も自然に2人だけのシチュエーションを作ってきたが、ことあるごとに失敗する。それでも2人のカップリングを成功させるために奔走する。

八重樫雫
→香織がハジメと仲良くなりたい際、一緒に付き合わされている。最近香織がハジメの趣味を理解しようと本屋に行き、真っ先に危ない暖簾をくぐりに行こうとして慌てて止めに行った。久遠と2人の時はよく香織の天然とハジメの鈍感を愚痴にしている。

アルタイルの過去
→アニメ「Re:CREATORS」の本編と同じ過去です。簡単にいえばアルタイルが人間に絶望し、創造主のいる世界、地球を破壊しようとしたって感じです。結果は失敗、人間に対して思うところはあるものの、暴走することは無くなった…そして何故か知らないけど久遠のところに行き着いた、となってますけどね。アルタイルの過去編はこの物語にも関わらせたいので、詳しく書く時があるかもしれません。

 前半シリアスに出来たかな?まぁ、タイトルからしてネタ回なのは薄々気付いていたことでしょう。毎回ありふれの原作でこのシーンを見ると「2人ともここまで行って何も起こんないのかよ…」って思っちゃいまして。思わずこの作品に入れちゃいました。

 次回は【オルクス大迷宮】ですね。アクション、そしてシリアス度が高めになるでしょう。私の身体持つかなぁ…

Re:CREATORSは皆さんどのくらい知ってますか?

  • 全く知らん
  • 名前くらいなら…
  • 水篠 颯太はクソメガネ(=知ってる)
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