マガツキノウタ〜現代異能ファンタジーエロゲ世界で何故かようじょに懐かれる件について〜   作:鳥居神棚

11 / 52
性別問題

「は、はぁ!??僕は男だけど!??」

 

数十秒後、硬直から解放された奏は大きな声でヤツカの問いかけを否定する。

男なのだから男の格好をしているのは不自然ではない。それは、確かにそうだ。

 

仮に女性だとしても、別に疑問に思うことではない。漱も、奏が男の格好をしていることに疑問を感じているわけではないのだから。

 

彼が疑問を感じているのは俗に言う、『お前、女だったのか……』問題の方だ。エロゲ主人公であると言う認識を置いておいても、数年間友人をやってきていて、実は女だった、なんて疑惑が浮かべば混乱もする。激痛の中で見た幻覚だと言うことにしておきたい気持ちもあるくらいだ。

 

対してヤツカは、恐らくは男女の価値観が昔、それこそ『男とはこうあるべし』『女性とはこうあるべし』と誰もが認識していた時代のそれに近しいのだろう。

 

故に純粋に男の格好をしていることに疑問を抱いた。

 

どちらにしても、『九十九奏が女である』と言う前提でなければ成り立たない話である。

 

「だよなぁ……。んじゃあやっぱアレは激痛で見た幻覚か」

 

「いえ、あるじさま。ごゆうじんさまは、たしかに、おなごでございますよ?」

 

奏の主張を素直に信じた漱とは対照的に、困り顔で奏を見て、漱の顔を見つめるヤツカ。

 

漱の目には、少なくとも今の奏の姿は男であることになんの違和感も感じないが、ヤツカの方はそうではないらしく、はっきりと断定さえしていた。

 

まるでその目には普通に女性のものに見えているようですらある発言である。

 

「……はぁ」

 

重ねられた言葉に、動揺を通り越して、逆に冷静になったらしい奏はやるせなさそうにため息を吐く。

何か思い当たることがあったのか、諦めたような様子だ。

 

「仮にも神様……ってわけだ。甘く見てた僕が悪いかもだけど。それでいつから?」

 

「いわかんは、はじめておあいしたときに。あるじさまをすくっていただいたさいには、かくしんを。わたくしは『やもりのいちぞく』にございますから」

 

ゆったりと、真っ直ぐに目を見て答えるヤツカに、奏は納得したように声を漏らす。

 

「ああ、土地神の目の前で隠し事してるようなもんか……。でも、漱に勘付かれたのは納得いかないけど」

 

土地神、というよりは守り神であるヤツカは、自分が守るべき家の中であれば、その内部の異変を察知、排除することができる。

 

そう言った『権能』があることを察したのだろう。けれど、漱の方に見抜かれたのは納得がいかなかった。

 

なんせ今でこそマガツキとなって普通の枠から外れたとはいえ、彼は一般人だ。勘付くことすら出来ないはずなのだ。少なくとも、これまではずっとそうだった。

 

「お前が助けに入ってきてくれた時、思いっきり女の姿だったんだけど……」

 

不満げに漱へと視線を送る奏に、困惑したような表情を向ける。

実際にそうだったのだから、仕方がない。夢、幻の類ではないのだとしたら、隠してきた真実を見てしまった、ということになる。

 

「はは、いやそんなワケ。確かにあの時はいつもの妖具はつけてなかったけ……ど……」

 

言いながら、奏は何かに気が付いたのか、言葉に勢いがなくなっていく。

 

気付いた、というよりは思い出した、というのが相応しいだろうか。

 

「僕は馬鹿か、漱は再現者だ。『みた』んだから確実……」

 

ぶつくさと言葉を呟き始める奏に、ヤツカは首を傾げて、漱はああ、と声を漏らす。

 

ゲームにおいて九十九奏は安倍晴明の再現者でありながら、妖に憑かれたマガツキでもある。と言っても妖の力は強力無比、というわけではない。なんせ原典においてはただ家に上がり込んでお茶を啜るだけの比較的無害な存在なのだ。

 

その名はぬらりひょん。設定上、『自分への認識を歪める』という能力を有していて、この力は精神干渉のようなものだと語られていた。

 

漱に影響しなかったのも当然である。『再現者』として得た強い精神性は妖、怪物からの干渉を受けても自己が揺らがない程のものであり、単純に相性が最悪なのである。

 

「あの日の僕はいつもの『視覚を誤魔化す』妖具……まあ、無害な妖刀みたいなもんだけど、それをつけてなかった。だから自分の能力で『男としてしか認識しない』ようにしてたんだけど、お前には効いてないんだな」

 

頭の中が整理できたのだろう。漱が怪物に襲われた日、何故女であることがバレたのか、確信を得たらしい。

 

効いていない、と言われてもいまいちと漱はピンとは来ない。ただ、漠然とそうなんだろうな、と理解はしていた。

 

「ワンチャンスに期待してたとはいえ、普通に考えれば只の人間が精神汚染に特化した化け物の支配から逃れられる訳がないからな」

 

そう、妖、怪物の中でもトップクラスの精神干渉力を持つのが負の感情を込めて作られた妖刀を始めとする『道具』がベースとなってる化け物だ。

 

その為、それを乗り越えられるとしたら特殊な条件が必要になる。漱の場合は再現者となったことで得た強靭な精神性。それが妖刀の干渉を弾くことが出来た。

 

「なあ、お前が得た記憶は誰の物だ?」

 

尋ねる奏の様子は真剣そのものだった。




明日からのfgoのレイド楽しみだなー!!だなー!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。