魔法少女リリカルなのはBlack   作:黒崎ハルナ

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ここからリメイク前と大きく変わっていく予定。


Act.1 A trouble is always come with a promise.トラブルはお約束と共にやってくる

「馬鹿か? いや、馬鹿だったな貴様は、しかも取り返しのつかないレベルの馬鹿だったな」

 

 中央道路から外れた横町、チャルクワンの市場を抜けた先、サータナム・ストリートにある小さな酒場に駆け足で行くと、早速の毒舌で迎えられた。案の定だ、木製の丸テーブルに小さな体で陣取るように座っていた人物ーーディアーチェ・K・クローディアはお怒りの形相でこちらを睨んだ。

 ディアーチェとの出会いはーーぶっちゃけ当時の事はある理由からよく覚えていないのだがーー9歳の時で、その付き合いはかなり長い。付き合いの長さではユーリと同じか、下手したらそれ以上であり、縁は深いと言えるだろう。尊大で無駄に偉そうな口調とは裏腹に昔から世話焼きで意外と乙女な思考をしている彼女を親しい友人は「王様」なんて冗談混じりに言う。ちなみに俺も偶に言う。俺の魔力色を連想させるような銀色の髪と宝石と勘違いしそうな翡翠の瞳。小柄ではあるが、ユーリとは違って可愛いよりも美しいという印象が強く、第一印象はデキる大人な女なイメージを他人に与える彼女だが、騙されてはいけない。ディアーチェは見た目とは真逆にへっぽこなのだ。もちろんそれを本人に言ったら俺が酷い目に合うのは確定的なので、口が裂けても言わないが。

 ともあれ、今の俺がいるのは間違いないなくディアーチェのおかげであり、世話焼きな彼女に自分が何度も助けられている為、俺は総じて今でもディアーチェに頭が上がらない。

 そして、そんなディアーチェは俺やユーリが所属する運び屋エルトリア商会の所長だったりする。

 

「馬鹿とは酷いな。それはレヴィのアイデンティティーだぞ。せめてアホと言え」

 

「おいアホ」

 

「やばい。真正面から言われると結構傷つくわ、それ」

 

 俺はディアーチェが陣取る丸テーブルに向かい合うように座った。既に頼んでいたのか、ディアーチェの手元には透明な液体の入ったグラスが置かれていたので、それに習うように近くを通りかかった従業員らしき男性を引き止める。

 

「ウイスキーをロックで」

 

 ロアナプラでは昼からでも酒を飲む素晴らしい風習がある。その為か、昼間でも大抵の酒場は開いているし、客入りもそこそこ良い。

 

「昼間から随分と強いのを頼むな」

 

「そうか? 普通だろ」

 

 ちなみに余談だが、ロアナプラの住人の大半はビールとミネラルウォーターの区別がつかない人種ばかりで、早い話が酒豪が多い。ミルクの代わりにビールを飲んで育てられた、なんて冗談はロアナプラ住人の小粋なジョークの定番だ。

 

「まあいい。…………それで、遅刻の言い訳はなんだ」

 

「ナンパしてたら遅れた。ちなみに失敗」

 

「死ね」

 

「容赦ねェな、おい」

 

 相変わらずウチのボスは手厳しい。

 基本的に身内には甘々な彼女だが、昔から俺にだけはセメントな態度を取ってくる。以前、本人に聞いたら「なんとなく気に食わない」だそうだ。解せない。それでもこちらが困ってたら無条件で助けてくれるし、今みたいに2人だけで出掛けたりもするので嫌われてはいない筈である。……たぶん。

 

「ふん。金も稼がずに女の尻ばかり追いかけているやつを優しくする道理はない」

 

「仰る通りで」

 

 酒場には自分たちを含めて5人に満たない数の客がいた。4月頭のど昼間から呑気に酒を飲むなんて、良い時代になったもんだとしみじみ思う。……実際は単純に仕事が無くて暇を持て余しているだけだが、気にしてはいけない。

 

 ーーカラン。

 

 注文したウイスキーがテーブルに置かれたのと、ほぼ同時のタイミングで来客を告げるドアの鐘が鳴った。音に釣られてドアに視線を向けた俺は驚く。なんてことだ。見覚えがある。とんでもない、なんと先ほどナンパに失敗した女だ。

 向こうも俺の存在に気がついたのかこちらと目が合うと、驚いたような申し訳ないような表情を浮かべた。

 

「知り合いか?」

 

 と、ディアーチェが訪ねて来たので、

 

「今話したナンパしようとした女」

 

「可哀想に…」

 

 まて。それはどういう意味だ。

 今直ぐに反論したかったが、それどころではない。俺は再び視線を戻す。

 女は一度頭を下げてから、カウンター席に歩いて行った。

 

 ーー隣にいる男と一緒に。

 

 俺はがくんとテーブルに項垂れた。

 

「男連れだったのね……」」

 

 俺は心底落ち込んだ。どんなに良い女でも男がいたら手を出さないのを信条にしている俺にとって、ショックな事実である。夢なら覚めて欲しいものだと切に願う。

 

「…………あ?」

 

「どうかしたか?」

 

 もう一度だけ女がいるカウンターを見る。2人は何か話している所為で顔は見えず、背中しか見えない。

 恋人にしては華やかさが感じられないが、人前で所構わずイチャつくよりはマシだと無理矢理に納得する。

 

 …………気のせいか。

 

「いや、なんでもない。後で傷ついたハートをユーリに慰めて貰おうと思ってな」

 

「貴様、いつか刺されるぞ」

 

「俺的には刺されるよりも挿す方が好みなんだが」

 

「一度本気でユーリに刺されろ」

 

「大丈夫だ。既に一回刺されてる」

 

「駄目だこいつ。我が思っていた以上に重症だった」

 

 その時の事はあまり覚えてはいないけどな。と付け加え、俺はウイスキーに口をつけた。

 軽蔑の眼差しを向けるディアーチェを横目に、何か面白い事でも起きないかな。とか、考えていた時ーー

 

 急ブレーキをかける複数の車の音が店外から聞こえた。

 

「あらら……」

 

 窓から見えた車からは複数の男が見慣れたヤバい物を抱えて降りる姿があった。それだけでこれから何が起きるのかが簡単に予想がついた俺は、手元にあるウイスキーの入ったグラスを持ってテーブルの下に潜り込んだ。

 

「お、おい⁉︎」

 

 ディアーチェが驚いたような声を上げる。そういえば今日の彼女はスカートだった。なるほど、薄いピンクか。慌てて足を閉じたので一瞬しか見えなかったのが残念だ。

 

 刹那、窓ガラスが割れる音と鉛玉が飛ぶ銃声が昼間の酒場に木霊した。

 

「なッ!」

 

 ディアーチェが素早くテーブルの下に潜る。2人もいたら流石に狭い。

 荒れ狂うように舞う木屑とガラスの破片と銃弾。

 どうやら外にいる連中はマシンガンの類いを持ち込んでいるらしく、規則正しい連射音が狭い店内に響く。

 

「昼間っから派手なことで」

 

 飛び交う弾丸をBGMにグラスに口をつける。銃撃が中々止まないあたり、複数人が交代で連射しているのだろう。俺の故郷の歴史的偉人に似たような軍略をした人がいた気がする。名前は忘れたけど。

 

「おい」

 

「ん? なんだよ」

 

 くいくいとディアーチェに服裾を引かれたので向き合う。翡翠色の瞳がこちらを睨んでいた。

 

「貴様、また何か仕出かしただろ」

 

「してねェよ。誤解だ」

 

 小さく小声で「……たぶん」と付け加える。考えられるのは先ほどナンパの際にフルボッコにしたチンピラ連中からの報復だが、果たして報復一つにここまで派手に動くだろうか?答えはNOだ。ましてやこの近くには黄金夜会が一角、ホテル・モスクワの事務所があるのだから、少しオツムが良いやつならそれが賢くない行動だと理解するはずである。

 

「怪しいな」

 

「部下で仲間で幼馴染みの言葉を信じてあげて」

 

「……この前同じことを言ってたやつを素直に信じた結果、ヴェロッキオのトコと揉めたんだが。誰か知ってるか?」

 

「なんだと⁉︎ 酷いやつもいたもんだな。そいつはきっと嘘を吐くと碌な人間にならないって近所の牧師に習わなかったんだろ」

 

「今凄い勢いで自爆したぞこいつ」

 

 ジト目でこちらを見るディアーチェに変な興奮を覚え始めた頃にようやく銃撃が止んだ。

 しんと静まり返った酒場にはアルコールとタバコの煙の代わりに血生臭い血の臭いと、木屑によってできた粉塵が舞っていた。どうやら生き残ったのは自分たちを含めて5人ほどみたいだ。運悪く鉛玉を頂戴したバーテンや従業員、客の連中に同情する。

 

「……いたか?」

 

 昼間の酒場を惨劇な血風呂にした連中がズカズカと店内に入って来た。その手にはゴツい銃を握り、センスの悪いサングラスが光る。

 

「駄目ですね。ハズレみたいです」

 

「……ッち!」

 

 部下らしき男の報告を聞いた男が舌打ちを打った。

 どうやら連中、誰かを探しているらしい。しかもタチの悪いことに死体でも構わないときてる。

 

「仕方ない。一旦引くぞ」

 

 よしよし。いいぞ。そのまま帰ってくれ。そしてできれば二度とエンカウントしないでくれ。

 心の中でそう願っていたら、久しぶりに天に願いが通じたのか、連中は素直に引いていく。

 と、その時だった、

 

「なにしてる、さっさとズラかる……ぞ?」

 

 部下の1人の首が突然勢いよく宙に舞った。

 昔のパーティゲームに使う黒ひげの人形みたいに男の首が飛ぶ。直後、噴水のように血が飛び散り、首が無くなった体が床に倒れる。

 

「いっ……いたぞ! こいつだ!」

 

 首を跳ねられた男の後ろには、太刀に間違いそうなくらいに巨大なナイフを持った男ーーあの女のツレーーがいた。

 連中は叫び、銃を構える。が、見た目通りなゴツいエモノは見た目通りに構えるアクションが遅い。

 1人が銃をスライドさせるよりも速く、2人の首が飛んだ。

 その光景にビビるやつに男は一気に近づき、

 

「ひいぃ‼︎」

 

 躊躇無く首を跳ねた。

 

「おー、怖ッ。まるで切り裂きジャックだな。殺しに躊躇いがない」

 

「たしかに手慣れてるな……いや、というよりは慣れてしまった、が正解か」

 

 男の一方的な殺戮を見たディアーチェがそんな評価を下す。首ばかり狙っている、というよりは一撃必殺を追求したらこうなってしまったと言わんばかりの殺し方。驚くべきは人の首を固定せずに力任せに両断できる怪力。

 だが、その動きには若干の素人臭さが残っていた。まるで短期間の間に休む間もなく命の奪い合いをしてきたような動き。そして、その推測はおそらくは正しい。

 

「難儀だねェ。きっと苦労してんぜ、あいつ。ま、自分で撒いた種みたいだし、このまま頑張って追っ払ってもらおうぜ」

 

 グラスの酒はもう残り少ない。散乱したボトルの中に無事なのが無いのかを探してはみたが、残念なことにボトルは全部割れてしまっていた。

 

「なにを呑気な」

 

「いや、だってそうでしょ。あの殺られてる連中、街の流儀を知らない余所者だ。下手に首突っ込んでも碌なことにならないだろ」

 

「…………」

 

「そんな目で見んなよ。だいたい、誰を助ければいいんだ?リンチしようとして、逆にリンチされてるあいつら?それとも、どう見ても助けのいらなそうなあの男?どっちに味方してもヤバそうだぜ」

 

「…………そうだな」

 

 眉間に皺を寄せたままディアーチェはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ」

 

 血生臭い部屋の中で男は息を切らしながら最後の1人の胸にナイフを突き刺した。刺されたやつは痛みから体をジタバタと数回バウンドしたが、やがて力尽きたのか、陸に上げられた魚の様に動かなくなる。それが戦闘の終わりを意味していた。

 約10人余り。銃器で武装した男10人をたった1人で全滅させた男は、肩で呼吸しながらも生きていた。

 

「はぁ……はぁ……うッ!」

 

 男は突如襲う酷い嘔吐感に口を押さえながらその場にしゃがみ込む。胃を逆流する不快感を必死に押さえる。

 

「クルツ!」

 

 カウンター奥から女が男の元に駆け寄った。心底心配しているのが表情から容易にわかる。

 

「……終わったみたいだな」

 

「だな」

 

 ようやく狭いテーブル下から出られたことに俺は喜んだ。長い時間しゃがんでいたので、さっきから背中と腰が痛い。軽く伸ばすと、パキパキと骨が鳴った。首をついでに数回鳴らし、改めて問題の2人を見る。男の方は意識を保つのもやっとみたいだった。

 

「で、どうするんだ?」

 

 ディアーチェがそう尋ねてくる。どうするも何も、俺は最初から関わるつもりなんて微塵もないのだ。さっさとこのまま帰りたい。

 

「クルツ! しっかりして! クルツ!」

 

 ドサリ、とクルツとかいう男が意識を失い倒れた。

 何度も女が心配そうに体を揺するが、荒い息を吐くだけで、反応がない。たぶん極度の緊張感からくる疲労が限界に達したのだと思う。

 

「で、どうするんだ?」

 

 再度のディアーチェからの問い。否、最早問いではなく確認に近い。彼女は俺がどうするのか初めからわかっていたのだ。

 面倒くさい女。初めから答えもやり方も先んじて知っているくせに、ワザと教えないで同じ答えに行き着くのを黙って待っていやがる。本当に面倒くさい女だ。少しは他の女を見習ってーー

 

 ーー冷静に考えたら俺の周りの女って大なり小なり面倒くさい女しかいなかった。

 

 改めて再確認した事実にため息が出る。

 

 なによりーー

 

 

「何かお困りですか?お嬢さん」

 

 少々芝居クサく手を伸ばしながら件の2人に近づく俺も相当面倒くさいやつなんだよな。

 

 

 




最後の方が若干駆け足プラス無理矢理になった気がする。
更新遅れたのは、なのセンのVSデュエルの所為。
感想、アドバイスお待ちしてます。
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