魔法少女リリカルなのはBlack   作:黒崎ハルナ

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Act.4 Encounter. And extermination. 遭遇。そして殲滅

 たった数分。たった数分で賑やかだった酒場は血生臭い戦場へと変化した。

 

「野郎ども! パーティタイムだ! 誰1人として生かすんじゃねェぞ‼︎」

 

 否、戦場などと言った互いが対等の場ではない。一方的に、圧倒的に相手を蹂躙し尽くす光景が目の前に広がっていた。

 鼓膜が破れるような耳を劈く爆発音の後、複数の男たちがイエローフラッグにいた客たち全員に向けて銃撃を開始する。規則正しく、容赦なく撃ち込まれる鉛の雨は近くにいた不運なやつから順番に命を奪っていく。

 

「ここに居る連中は揃いも揃ってクズばかりだ! くたばったとこで誰も困りゃしねェ! かっちり殺して死人しか残すな‼︎」

 

「ま、間違ってはないな」

 

 運が良いのか悪いのか。偶々トイレの為に席を外していた俺は、店内の惨劇をトイレの扉越しに見つめながら1人呟いた。さっきから、ちょくちょく流れ弾が扉を貫通して来るので安全とは言えないが、少なくともあのドンパチの最中に居るよりはマシだろう。

 

「どうすっかなァ……」

 

 襲撃が来るのはある程度予想はしていた事だし、昼間の一件から連中がロアナプラ処女であることや手段が少々過激であるのもわかってはいた。

 しかし、それにしても早い。

 予想ではもう少し遅いと踏んでいたのだが、半日足らずでこちらの場所を特定するあたり、連中のバックは予想どおり大きそうだ。

 そう思考していた中で通信が入る。直ぐに画面を開くと、額に青筋を走らせたイエローフラッグ店主バオの姿があった。

 

『やいコクトー! またてめーらか! 何度ウチをぶっ壊せば気がすむんだよ!』

 

「あー、4回目だっけか?」

 

『7回目だよクソったれ! さっさとあの煩いのと一緒に出てけ! どうせてめーらの客絡みだろ! 余所でやれ余所で!』

 

「え? だってここくらいしかぶっ壊しても大丈夫そうな場所無いし」

 

『確信犯かよ! お前ら後で修理費請求すッからな⁉︎』

 

「あいよー」

 

『軽い! 全く善意を感じねェぞ! オイ⁉︎』

 

 バオの叫び声が銃声の中に消える。時折画面から離れているので、たぶんカウンターをバリケードにして応戦してるのだろう。

 

「心配しなくてもちゃんと片付けるって」

 

 バオからの文句を軽くあしらい、腰のベルトに付けたホルスターから今朝メンテしたばかりの愛銃を引き抜く。

 全身が銀一色に染められた小型拳銃S&W M_36を改造したカスタムモデル品。

 

 テンドリック・スペシャルモデル。通称 銀翼。

 

 同型機の一つM_60を彷彿とさせるグリップから銃身まで銀に染められたカラーリングに加えて、使用者の魔力を通せる材質を使用することで擬似デバイスとしても運用が可能な優れものである。……もっとも、肝心の使用者である俺の魔法の才能が絶望的なので後半部分は完全に宝の持ち腐れ状態なのが惜しいとこだ。

 元となったS&W M_36は俺の故郷ーー地球では小型リボルバーの代名詞とも言うべき存在であり、その最大の特徴は本来は装弾数6発が一般的なリボルバーをあえて5発にしていることだろう。これによって、他の6連装リボルバーと比較しても圧倒的に小型化されたこの銃は携帯するのに非常に便利な代物となっている。

 とはいえ、現在ロアナプラで普及されている銃の多くは自動式と呼ばれるもので、リボルバーの倍以上の装弾数を有している他、専用のマガジンさえ在ればある程度の連射も可能な上に反動も少なく、弾丸の交換も非常に簡単に行えるなどリボルバーと比べて美点が多い。正直な話、この街で銃を携帯するなら間違いなく自動式をお勧めする。

 

 では何故わざわざそんな使い辛いリボルバーを、しかも装弾数の少ないコイツを使っているのかと問われたら、もの凄く単純な理由で、初めて使った拳銃がコイツだったのだ。12のガキだった時に初めて人に向けて撃った銃がこの銀翼であり、以来11年間使い続けているというだけの話である。

 そういった経歴から俺の愛銃となっているウェンリー・スペシャルモデルこと銀翼。

 右の手に銀のリボルバーを握り、弾数を確認する。

 鉄火場に立つとユーリが嫌な顔をするので、あまりドンパチはしたくはないが、今回は仕方ない。

 

「てか、シュテルかレヴィはどうしたよ? あの2人ならあんな雑魚連中一瞬で片付けれるだろ」

 

『ふざけんなチクショーが! あの2人が暴れたらクレーターしか残らないだろうが! 手前が俺の店を隕石でも落ちた場所みたいにでもしたいって言うなら話は別だがな‼︎』

 

「はは、ひでぇ言われよう」

 

『お前らが本気で暴れたらデカいクレーターしか残らないってのは、この街じゃ一般常識なんだよ!』

 

 バオの小粋な冗談に笑って答え、ようやく止まった銃声に俺は重い腰を上げた。

 視線の先には照明が銃弾で割れた所為で真っ暗になった店内が映る。

 

 ……人数は10…いや、12ってとこか。

 

 暗闇の中、暗視スコープを付けた集団を確認した俺は集団に向けてゆっくりとリボルバーを構える。

 

「さあ、始めようか」

 

 開始のゴング代わりに隠れていたトイレの扉を勢いよく蹴破り、俺は武装する集団の中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーハリがねェな。

 

 突撃部隊の指揮を任された男は欠伸を噛み殺しながら内心でこの仕事を引き受けた事を少々後悔していた。

 仕事に退屈を感じるようになったのは何時からだったか。

 元々男にとって殺しはゲームと同じであり、命の奪い合いができるからと傭兵として戦地を己が住まいにしたのはごく自然な事だった。

 だが、ここ最近ーー特に4年前に起きたJs事件後からは目に見えて仕事に退屈を感じ始めるようになった。理由ははっきりとわかる。

 ハリがないのだ。

 どうせ奪う命ならもっと生きの良い、それこそうっかりしてたらこちらが喰われてしまうような相手。

 男が求めるのはそんな相手と仕事だった。

 

「制圧完了です大尉」

 

「チェックしろ。まだ生きてるやつがいるかもしれねェ。俺は生きてるやつが大嫌いなんだ」

 

 部下からの報告を聞いて男は誰にも気づかれずに眉をひそめる。このボンクラは何を聞いてたんだか?制圧完了?まだ生きてるやつの声が聞こえるじゃねェか。

 内心のイライラをサングラスで隠して、部下たちと暗い店内を暗視スコープ越しに見渡す。

 静寂と言っていいほど静かな室内。確かに一見すれば制圧完了だ。

 だが、長年の経験からわかる。まだ生きているやつは多い。

 部下たちに指摘する意味も込めて、瀕死の近くにいたやつの頭に撃ち込む。血を流して動かなくなった死体を見てため息を吐く。

 

 その時だった。

 

 勢いよく扉を蹴り破って突撃してくる黒い影を視界に収めたのは。

 数は1人。

 やけくそに突っ込んで来た自殺志願者か。

 そう思っていた男の考えは僅か数秒で覆された。

 

「ーーーーーーッ⁉︎」

 

 一瞬、ほんの一瞬だけだが影がいきなり視界から消える。どこに消えた?と困惑する暇もなく、再び視界に影を収めた時には一発の銃声と共に部下の1人が眉間に風通しの良い穴を空けて力無く倒れていた。

 自分たちは間違いなくこの道のプロだ。自覚もあるし、死線と呼ばれるソレも経験してきた。

 今だって不用意に離れるような真似はせず、奇襲に対応できるように固まって集団を1つの個として周囲を警戒していたのだ。

 ーーそれなのに。

 そこまでしたプロの自分たちがあっさり殺られた。

 その事実に男は驚愕しーー

 

「いいねェ。いいじゃねェか! オイ⁉︎」

 

 ようやく出会えたハリのある相手に歓喜で口元を上げた。

 直後、男は手にした銃の引き金を引く。しかし、影は死体となった元部下をこちらに放り投げることで射線から離れる。

 

「ちッ」

 

 死体から血が飛び散るのを見て男は舌打ちを1つ落とす。部下を盾にされた事にではなく、死んでも尚自分の邪魔になった部下に対しての舌打ちだった。

 

「おらッ! 生き残りがいたんだ! 手前らも働けやァ⁉︎」

 

 何時迄も指示待ちをする自分の部下たちに怒り混じりに指示を飛ばす。

 男の激に、集団は1つの個として息の合った射撃を開始するが、それで影が止まる事はなかった。

 乱射される弾丸の雨を抜けて、影はカウンターに隠れる。

 無数の弾痕が無造作に刻まれていくが、防弾性能でもあるのか弾丸はカウンターを貫通させるまでに至らない。

 それでも撃ち続ける自分の部下たちに、影は片腕だけを出して発砲する。

 デタラメな撃ち方な筈なのにこちらが見えているかのごとく近くにいたやつから順番に影の放った銃弾の餌食となっていく。

 気がつけば個は再び集団に戻されていた。

 隊列を崩された隙を見逃すことなく、再び影がカウンターから飛び出す。

 そこでようやく男は影の招待をその目に収めた。

 見た目からしてまだ20代そこそこの男。

 暗闇の所為で暗視スコープ越しだが、相当の手練れである事はわかる。

 的確に、それでいて素早く人を殺す手際は正直な話で見事なものだと男は思った。

 

「いいねェ」

 

 頭の先からケツの先まで沸騰する感情を隠すことなく、歓喜に表情を染める。

 

「頃合いだ! ずらかるぞ!」

 

 影が叫ぶ。

 どうやら逃げるらしい。冗談ではない。ようやく出会えたのにふざけるな。男の笑みが深くなった。

 

「ルシフェリオン!」

 

「バルニフィカス!」

 

 逃すまいと手にしてる銃を男が構えるよりも先に新たな2つの影ーーおそらくは仲間ーーが手に魔導師の証たるデバイスを握り現れる。

 驚くことに現れた2人は女だった。どちらも若い。

 髪の短い女は炎を。長い女は電気の塊を魔法で生み出すと、それを室内のど真ん中でぶつけ合った。

 結果、起きたのは自分が最初に投げた手榴弾とは比較にもならない大爆発。

 半壊したイエローフラッグにトドメをさすかのごとく、容赦ない真紅の業火が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 適当に暴れて、隙を見てドロン。

 手筈としてはそんな感じであった。

 暴れる役に俺。隙を見つけ、注意を引き付けるのはシュテルとレヴィ。逃げる足を確保するのはディアーチェ。

 事前に打ち合わせをしたわけではないが、そこはこの街に来て8年来の付き合い。言葉にせずとも互いの意図はなんとなくわかる。

 そのおかけでなんとかその場から逃げるのは上手くいった。

 そう、上手くいったのだが…………

 

「…………やり過ぎだろ」

 

 ディアーチェが運転する車の中でちらりと後ろを振り返れば、焚き火のように燃え上がるイエローフラッグが見える。

 確かに逃げる為に注意を引けとは言ったが、何もここまでしろとは言っていない。と、言うかあそこにはまだバオがいるんだが。

 

「あッ! 追っ手だ!」

 

「駄目ですよレヴィ。追っ手ならデストロイしないと」

 

「りょーかーい!」

 

 あ、うん。そうだった。ウチの戦闘員たちはそうだった。

 後部座席の窓から身を乗り出して、楽しそうにパイロシューターと電刃衝ーー高速射撃が可能な魔力弾ーーを乱射して追っ手の車を爆破している2人を見てため息を吐く。

 

「して、これからどうする?」

 

 隣の席ーー運転席でハンドルを握るディアーチェの問いに少しだけ悩む。

 正直なところ、かなり行き当たりバッタリな成り行き任せのプランだったのだが、今回の襲撃で更にアドリブを追加されてしまったのだ。

 となると否が応でも慎重になるしかない。

 俺は後ろをーー現在進行形で追っ手の車をジェノサイドしている馬鹿2人に挟まるように座るクルツとアーシャに声をかける。

 

「酒でも飲んでゆっくりと、なんて最初は考えてたんだが、状況が変わっちまった。単刀直入に言うが、あんたらの目的はなんだ?」

 

 とたん、クルツはこちらを強く睨み、アーシャは力無く俯く。

 わかりやすい態度だことで。

 

「そう睨みなさんなって。さっきも言ったかもだが、俺はぶっちゃけあんたらの理由には興味はない」

 

「だったら……」

 

「ただし、目的の方には興味がある」

 

「……どういう意味だ?」

 

 首を傾げたクルツの問いに内心で「食いついた」と笑う。

 

「なーに。知っての通り俺たちはしがない運送屋でな。金さえ払ってくれたらどんなヤバいブツでも運ぶんだ。それが違法な武器や薬や、はたまた“人”でもな」

 

 ここまで言ってわからないような2人ではない。クルツという青年もアーシャという少女も、頭の回転は他人よりも良い。

 数秒の思考の後に、絞り出すような声でクルツが言う。

 

「つまり、俺たちを運ぶと?」

 

「ご明察。ただし、その分報酬は貰うけどな」

 

 何せその為に助けたんだからな。と付け足す。

 側から見たら非常に恩着せがましい事この上ないが、実際にこうして2度に渡り俺に助けられている2人には効果テキメンだろう。

 特にクルツはウェンリーのトコでの一件でもそうだったが、義理堅く誠実な性格の持ち主だ。とても犯罪者には見えないが、今回はそんなのはどうでもいい。

 

「どうしてそこまで回りくどい事をする。こう言ってはアレだが、俺を管理局に引き渡せばそれなりの金になるぞ?」

 

 いや、まあ、そうなんだけどね。

 クルツが言っている様に賞金首を管理局に持っていけば、それだけで金になる。というか、ぶっちゃけその方が早い。

 ただ、俺の場合は少し事情が違う。

 なにせ法律上では俺は何年も前に死んでいる事になっているのだ。そんなやつが身分を証明できるわけがない。一回限りのパスポートなんかの身分証明書くらいなら無理すれば作れるが、流石に時空管理局に直接となるとそれも難しい。

 その意をどう上手く説明するか悩み、濁すように言葉を出す。

 

「こんな場所に長い間いるんだ。こう見えて、管理局にバレたら面倒な事も結構あるのよ、俺たち」

 

「だからこんな手の込んだ真似を?」

 

「まあ、ね」

 

「そうか……」

 

 かなり無理がある誤魔化し方だったが、それでも多少の信憑性があったのか、クルツは1人納得してくれた。

 それから、唾を飲むほどの間の後、クルツはゆっくりとその目的を話しはじめた。

 

「……3週間前の話だ。俺は偶然だが、ある研究機関に迷い込んだんだ。

 元々俺は……、いや、気持ち的には今もだが、時空管理局の末端局員だった。末端だったから、そこまで優秀なやつではなかったのは自覚していたし、その研究機関にも研究に関する資料データを渡す為に派遣されただけだった」

 

「それは大したものだ。あの365日フル出勤、サービス残業当たり前。就職率98パーセントのブラック企業にいたなんて」

 

「否定したいのに否定できないのが悲しいな」

 

 万年人手不足に悩まされている時空管理局。部署によっては本当にそんなブラック企業も真っ青な職場もあるとか。

 

「それで? そんなブラック社員がどうしてブラック企業に追われるようになったんだよ」

 

「派遣された研究所で運悪く迷った俺は、偶々その研究をまとめてある資料室に入った。そこで見たのは、その研究所が非合法な、それも人体実験を行っていたというデータと彼女がその研究のモルモットにされていたという事情だ」

 

 そこまで話してから、クルツはアーシャと視線を合わせた。

 予想通りと言えば予想通りの内容。それは2人の関係を見ればよくわかった。情報ではクルツはアーシャを人質にして研究データを盗んだ容疑で窃盗と誘拐の罪にかけられている。しかし、この2人はどう見ても誘拐犯と人質の関係ではない。

 まるで、そう。囚われの姫を救う騎士のようなーー

 

「なるほど、それでモルモットにされてた姫君を悪の手から攫ったわけだ」

 

「ああ。ただ、そこまでだった。後に待っていたのは管理局から存在を抹消された上での追いかけっこ。この3週間は文字通り気の休まらない日々だったよ」

 

 自虐気味な笑みを浮かべるクルツ。それだけで3週間という決して短くない時間の中で彼が精神的にかなり追い詰められていたのがわかる。

 殺りたくない殺しを何度もした。

 重ねたくない罪を重ねた。

 そんな中でも正気を保てたのは、きっとクルツ自身がそれを正しいと信じているからだろう。

 

「それでも俺は間違った事をしたとは今でも思ってはいない。だから俺はミッドチルダに戻って来たんだ」

 

 まさか、わざわざ自分から出頭する為に来たとは言わないだろうな。それなら今すぐこの2人を車から叩き出そう。そう考えていた俺だったが、クルツは予想とは少し違う提案をしてきた。

 

「2日後、ミッドチルダ首都クラナガンで聖王教会の関係者たち、それも重役の人たちが集まる会合がある。俺はそこに行ってアーシャを聖王教会に保護してもらうつもりだ」

 

「…………聖王教会か。確かに悪くはない」

 

 今まで沈黙を貫いていたディアーチェが口を開く。

 見れば追っ手は撒いたようだ。

 

「元々聖王教会はミッドチルダ北部にベルカ自治領を構え、時空管理局とも友好関係ではあるが、管理局が迂闊に手を出せない様に独自の政治を行っている。時空管理局の不始末なら管理局に言ったとこでもみ消されるのは明らか。ならベルカの聖王教会に、と言ったところか」

 

 クルツはこくりと頷く。

 

「他人任せと言われたらそれまでだが、俺はコレに賭けるしかない」

 

「なるほど。つまり俺たちは、あんたら2人をその会合とやらの現場に運べばいいんだな?」

 

「無理だろ? 会合には管理局の警備だっている。そんな中……」

 

「んだよ。そんな事でいいのか」

 

「……は?」

 

 ぽかんとするクルツに俺は人差し指を突きつける。

 

「引き受けるぜ。その仕事。無事にあんたらを聖王教会のお偉方に会わせてやる」

 

「しかし……」

 

「しかしもかかしもねェよ。はっきり言えば、そんな簡単な仕事で驚いてるくらいだしよ」

 

 にッと笑うと、やがてクルツは情けなく顔をくしゃげて頭を下げた。

 

「すまない。報酬は幾らでも払う。だから……君たちを雇わせてくれ」

 

「任された。今からあんたは俺らの依頼主様だ。運び屋エルトリアは確実にあんたらの荷を届けることを約束するぜ」

 

 契約成立。しかも依頼料はお任せ。

 その事実にガッツポーズをしたくなる衝動に駆られたが、そこはプロとしてグッと我慢する。

 

「ディアーチェ、ルート変更だ」

 

 忙しくなる。

 アドリブだらけの台本に、ようやく道標が出来た事に俺は笑う。隣に座るディアーチェは「悪党が」と言い、後ろに座るレヴィは「お仕事だ!」とテンションを上げ、シュテルは1人静かに「久しぶりに稼げますね」と笑った。




クリニーング代3000ドル。
お店の修理費5万ドル。
死体処理代1万ドル。
店主バオさんの胃薬プライスです。
バオは正直キレていいと思う。絶対に反省はしないだろうけど

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