憧れの太陽へ手を伸ばす   作:まむれ

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2話

「頑張ってね盛光」

「あのさ、しょー姉」

「なに?」

「ここ、学校」

「うん」

「皆見てるけど」

 

 四方八方から突き刺さる視線。そらぽっと出の新入生が去年優勝に導いた部長とタメで話してたらそうなる。ましてやAR/MS中は性格がアレっちゃう人だから、部活中に人間らしい一面を見せるのが珍しいのもあるのだろう。

 

「てー姉、引き取ってあげて」

「はいはい昌ちゃん、みっちゃんに迷惑かけちゃダメ。ほらスイッチスイッチ」

 

 ずるずるとしょー姉を引っ張っていくてー姉――参社院 諦(さんしゃいん あきら)――を感謝の気持ちを込めて見送る。じたばたと手足を振っているがこうなったてー姉には無意味だ。数メートル先でちゃんと立たせたと思うと次の瞬間には表情を引き締め、ぼーっとしていた部員達に指示を飛ばして働かせていた。ああうん、生で改めて見ると違和感凄いな……あと名前を呼びながら叫んでるけど悉く訂正されてるのはなんでだ。

 

「ちょっといいか?」

「うん?」

 

 頬を掻いて苦笑いしていると、後ろから肩を叩かれたので振り返る。

 第一印象は軽薄そうな奴だな、という失礼な感じだった。こちらをじろじろと睨み、値踏みするかのような視線を向けてくるのは頂けない。いや、やってもいいんだけど、解らないようにやれって話だ。

 

「部長――参社院さん達と知り合いなのか?」

「一応幼馴染ってやつなんだ」

「幼馴染!? へぇ~~……なあ、AR/MSは経験者か?」

「そりゃまあ、一応それなりには」

「公式戦に出たことは?」

「あ~~~~…………」

 

 すっと目を逸らす。いやなんつーかさ、連携が苦手だったんだよな……あん時の俺はマジで全部一人でやりゃいいだろって思ってたし、実際そっち方面から興味があればウチに来ないかって内々の打診はあったんだが。

 

「その反応で大体わかったよ。ショップとか行ったりは?」

「あ、それなら通ってたぜ、常連が強い人多くてさ~! まあ二割勝てればよかったぐらいかな」

「……えぇ? 二割で良い方?」

 

 うんまあ、疑問に思うよな。でもほんとあの人たちイカレポンチで、爺の大剣に射出されて飛んでくる孫とか、嫌な予感がしたんでって完全死角外からの一撃を逸らす人間卒業おめでとうございますな人相手に安定して勝てる方が難しいから、マジで。

 だからな、「大したことなさそうだな」って顔するのやめてくれ。俺の表情筋がお仕事始めちゃうだろうが。

 

「そうかそうか! ま、参社院さんの知り合いだからって何でも出来る訳じゃないもんな! まあなんだ、部活内で足引っ張ってくれなければそれでいいさ!」

「…………」

「幼馴染を支えたいって気持ちは大事だけど、実力が伴わなきゃやっていけねえ、特にここ(黒木々葉)じゃあな」

「……………………」

 

 んなこたあ誰よりもわかってんだよ、同じ新入生(多分)に言われなくてもよぉ、こちとら何年二人の幼馴染やってると思ってんだ。

 すっと無言で装備を整える。今回はサポート専門で行こうかと思ったが、どうしてもぶちのめしたい敵が出来たから近接用の刀を一本チョイス。その分の防具性能は控えめにして、召喚魔法の効果は出来る限り下げないように調整する。これが魔法による召喚だったら体力にもリソースを割かなければいけないし、何より持続時間が足りないかった。

 

「名前」

「あ?」

「名前、聞いてもいいか?」

「おっとわりぃな、押上 昇(おしあげ のぼる)、そっちは?」

 

 押上と名乗った金髪君の差し出して手をガッチリ握り、笑顔で力を籠める。

 

目白 盛光(めじろ もりみつ)。大丈夫、何があっても恨みっこ無しで行こうぜ!」

 

 

Ateam

life

Job

Mejiro

6000

famly

Kanzaki

12000

Sam

Toyoshima

12000

Sam

Kaidou

11000

Ashi

Takashima

9000

Shamn

Nishi

11000

Shamn

VS!!

Bteam

life

Job

Oshiage

12000

Sam

Inba

14000

Sam

Sengakuji

14000

Sam

Suidoubashi

8000

Miko

Mita

12000

Shamn

Shinagawa

11000

Shamn

 

AR/MS.....Now loding.....COMPLETED!!

 

 

「ふむ……」

 

 というわけで戦闘が始まったのだが、オーソドックスな森林地形、仲間は前衛二人中衛一人に後衛二人とバランスが良い。

 堅実にやれば一方的に負けることはなく、ぶっちゃけると俺がいるので相手に化け物が混じってない限り勝てるはずだ。例えばあの人外共みたいな存在に鍛えられた奴とかな。

 

「あー目白、だっけ?」

「ん?」

「す、すごい恰好だな」

「……あーこれには理由があって」

 

 ちゃうねん。近寄ってきた侍の男子生徒の声に目を合わせず答える。申し訳程度に胸部や手足を覆っているだけで肩やお腹、太ももとかは露出しているのでどんな言葉をかけるか慎重に考えているのだろう。理由があると言われても、どんな理由だと突っ込みたくて仕方がないに違いない。

 

「ライフも低いし見たところ防御力もなさそう、完全後衛職って感じ?」

「後衛ってのは間違いないけど近接も出来るぞ」

 

 ほれ、と腰にぶら下がる刀を指す。

 

「ほんとは支援に徹しようかと思ったんだけど、喧嘩売られちゃったから」

「喧嘩……?」

「失敗したりしたけど、それでもたった一年とは言え俺の夢が叶うってのに解りきったことを今更言ってくる金髪ヤローにだよ」

「お、俺金髪なんだが何か言っちまったか?」

「あ、ごめん、君じゃないんだ。さっき俺に話しかけてきた奴がいてね」

 

 後衛職でありながら近接用の武器を持つ俺を見る男子生徒の目はあまり良くない。ましてや防具も肌を曝け出して性能が低いと一目でわかるものと来れば、さもありなん。

 わかるぜその気持ち。俺だって俺以外の奴が同じことやってたら何リソース無駄にしてんねんって思うし、ましてや初見同士でチームを組んでる今なんかは実力がわからないから尚更だ。

 でもすまんな、俺の気分は高ぶってる。昔の俺とは違うとしょー姉に見せるべく、てー姉も巻き込んで秘匿し続けた新生幼馴染のお披露目なのだから。

 なんせ二年だぞ? いくらしょー姉が忙しいと言っても二年も三人一緒にAR/MSを遊ばず、しょー姉の頼みも断って隠し通してきた。

 

「任せろ、今の俺は過去一で燃えてるから。せいぜい見返してやるさ」

「お、おう……まあ一回目だしな、そんなに言うなら任せてみてもいいだろう。」

「そこの二人ー! 始まるから作戦会議したいけどいい?」

 

 更に四人、今回のチームメイトが手を振りながら近寄ってきて、俺の姿を見てぴしりと固まる。

 

「説得は任せろ。AR/MSは楽しんでナンボって教わってきたからよ」

「お前……良い奴だな。名前は?」

「神崎だ。神崎 辰則(かんざき たつのり)、よろしくな」

「おう!」

 

 良い奴と言われて鼻の下を擦る神崎に、さっきの金髪くんとは違って心から歓迎するように握手を交わす。

 それじゃあ信じてくれた仲間のためにも一層力入れちゃいますか、負けられない理由がまた一個出来ちゃったな。

 

 


 

 

「諦ちゃん……?」

「いや私に聞かれても……あんな姿は初めてみたよ」

 

 観客席にて、黒木々葉学園の双柱となる双子の姉妹は気まずそうにフィールドを眺める。

 幼馴染として何年も可愛がっていた少年が、SNSに乗せたら肌色で検索から除外されそうな姿で佇んでいる。横に立つ男子が残りの四人に何事か説明しており、少年も必死に頭を下げてお願いしているのは微笑ましい光景だが、コスチュームで全て台無しだ。

 確かに黒木々葉は昨年のAR/MS高校大会で優勝している。そんな学校のAR/MS部にやってくるのはガチ勢が多く、そのような人種は合理性に欠けるような装備を見て気前よく許す方が珍しい。

 

『それじゃあまずは期待に応えるよ』

 

 観客席にだけ聞こえるように設定されたスピーカーが、わくわくした表情でのたまう少年の声を届けてくる。

 続く少年の動作は迷いがなく、小さい声で紡がれた詠唱はフィールドのマイクでは拾えずノイズとして処理されて観客には聞こえない。

 それでも。

 

「――馬鹿な!」

 

 そんな叫びは誰の声だったか。

 僅か数秒。本来であればきちんとした手順を踏み、相応の時間をかけて執り行う召喚魔法が、たったの数秒で完了して六芒星の陣から式神が這い出てくる。更に同じ手順でもう一度、こちらも完璧なショートカットで色違いの式神がフィールドに降り立ち、先のショートカットが偶然の産物でないことを周囲へと知らしめた。

 実際、昌は二度行われたそれに我が目を疑った。

 なるほど、確かに魔法やスキルにはカードをセットして詠唱やスキル名を叫ぶ一連の手順をショートカット出来る設定がある。ただし、セットや詠唱の隙を実質無くすそれらは一般的には高等技術。再現のためのモーション、淀みなく意味を理解して紡ぐ詠唱と、何より出来ると確信する気持ちが必要な、それこそプロの世界で扱う技術であり、まかり間違っても高校一年生が使えるとは思えないもの。

 だが現実にそれは目の前で行われ、少年のチームは数的有利を得る事が出来た。

 

「て、諦ちゃん、なにあれ? 盛光、いつの間にあんな、あんな!」

「落ち着いて昌ちゃん、スイッチスイッチ」

 

 とは言え、それが出来ると知っていた(あきら)だって内心では驚いている。

 前に見た時より精度、質共に段違い。連続して成功させた挙句、今も召喚魔法を続けて最早群れと言って差し支えないレベルになっている。男子三日会わざればとよく言うが、それにしたってこれは出来過ぎだろう。

 参社院 昌(さんしゃいん あきら)参社院 諦(さんしゃいん あきら)、二人で可愛がってきた弟分が自分の与り知らぬところで成長――ましてやAR/MSで――していることに思うところがないわけではないが、ひとまずは歓迎すべきことだった。まず間違いなく、自分たちと同じチームに引き入れても反対されないのだから。

 眼下では召喚された式神が四方へと散って敵の炙り出しを始めている。他の召喚タイプと比べて持続時間へのリソース消費が少ないのが式神の特徴であるが、代わりにその他の能力へ振れるリソースも抑えめになっている。

 

「これは斥候職もクビになっちゃうかも」

「……うん、そのままならね。けどみっちゃんのあれ、消費も激しいから……今回はインパクト重視じゃない?」

 

 諦の言葉通り、個人のリソースが決まっているルールの、それも最序盤であれ程の消費をするのはデメリットが大きい。敵を見つけたからと言って試合が決まるわけではなく、その後の試合の流れの中で予想外の戦局に陥った場合のリカバリーとして取れる手が狭まってしまう。そもそも、斥候職に任せればいいしいなければいないで各々でリソースを出し合えばいい話だ。

 これがキツネ狩り(フォックスハント)形式ならば話は別だが、今回の形式は相手チーム全員を倒すまで試合が終わらない殲滅戦ルール。文字通りパフォーマンス以外に意図が見えないものであり――

 

 その結果、式神に遭遇した相手チームがタカを括って酷い目に遭った。

 

『お、ま、ふざけ……!』

 

 式神を迎撃したアタッカー全員に等しく付与されたデバフの表示。代わりに全く減っていないライフ。嘆きの声は漏れなく被害を受けた敵チームのものだ。

 

「えげつない……」

「私たちの知らないところでみっちゃんすっごい性格が捻じれちゃったみたい」

「持続とデバフに全振りしてるのかな? ダメージ自体は全然ない……うわぁ」

「余計にタチ悪いわね……」

 

 この時点で一番正解なのはとにかく逃げる事。式神召喚は術者付近からしか発動できない上に、持続力にリソースを割けるとしても開幕でスタート地点から敵チームへ飛ばすには相応の時間がかかる。

 いくら新入生とて黒木々葉AR/MS部の扉を叩いたもの者。相談する時間すらなく示し合わせたように全員が頷きあって走り出す。

 

 そして、彼らをあざ笑うかのように現れる式神の小隊。

 

「式神の開幕特攻は師匠直伝だけど、やっぱ初見の奴にはよく効くね」

 

 先頭を走る生徒の顔が驚愕の色で染まる中、元凶(盛光)は接敵して消える式神の反応を確認して口角を歪めていた。

両手に持った札を投げる動作が組み込まれているので遠隔起動こそ出来ないものの、盛光が慕う師匠が扱う召喚魔法よりはショートカットの難易度が低く、数もばら撒きやすい。何より和風ファンタジーの世界観にマッチするのが決め手だった。

 無視すればデバフが上書きされ、処理しようとすれば僅かでも足止めされてさらに新手が現れる。六人全員が盛れなく弱体効果を受けるのにそう時間はかからなかった。

 

「俺を過少評価した奴は今どんな気持ちしてんだろうなあ」

「目白の師匠なんなんだよマジで」

「なんなんだろうねほんと……」

 

 俺もあの人はおかしいと思います。

 チームメイトが仲間に向けるようなものではない目で見てくるのを咎めるばかりか、共感を以て答える辺り自覚はきちんとある。まあ、その気にさせた相手が悪いのだと盛光は責任転嫁し、式神を追う相手チームへと迫るのだった。

 

 

 

 

 

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