私のRに影響されて、赤城さんがR32を納車したそうですが、その個体はちょっと珍しい仕様らしいです。
詳しくは本編で!
…ちょっと雑なCMっぽくなっちゃいましたかね…?OK?良かった。
それではどうぞ!
「GT-Rを買った!?」
「ええ、今明石さん達に部分的に修理してもらってるんです。」
ここは鎮守府の食堂。いつも通りモリモリの白米をガッツガッツと食べる赤城がポロッと言った一言に、厨房から話を聞いてた鳳翔は驚く。確かにクルマを探しているとは聞いていたが、本当にRを買ってしまうとは…と鳳翔は驚き半分、興味半分で色々聞いてみる事にした。
「事故歴も無くてオリジナル塗装って言うんで買ったんですよ〜。」
「年式って何年かわかりますか?」
「89年8月登録でした、ネットで調べたらR32って型式の初期に製造された個体らしいですね。」
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BNR32。このクルマを知らないクルマ好きはまず居ないと言われる程の名車中の名車である。トヨタ・セルシオ、ユーノス・ロードスター等魅力的な新型車が数多く発表された平成元年、その中でも特に煌びやかに輝いていたのは、紛れもなくこのBNR32型スカイラインGT-Rであろう。
KDR30型のRSターボ、HR31型のGTS-RでグループAを戦ってきた日産が、持てる技術の全てを費やして投入した最強マシン。それがこの新世代(第二世代)と呼ばれるGT-Rだった。1990年までにシャシ性能で世界一を目指す事を目標とした『901運動』の集大成とされたこのマシンは、専用エンジンして用意されたRB26DETTエンジンを始め、画期的な4WDシステムであるアテーサET-S、ドイツのニュルブルクリンクサーキットで徹底的に鍛えられたシャシを持ち、それまでグループAツーリングカーレースで無敵を誇っていたフォード・シエラコスワースRS500をデビュー初戦で2週遅れとぶっちぎり、当初の開発目標である『2年間グループAで負けないクルマ』をあっさりと無敗で乗り越えて4年弱戦い抜き、最終的に参加者が全員GT-Rに乗り換えて事実上のワンメイクレースになった事が原因で、グループAレースが1994年で終わってしまい、蓋を開けてみれば4年弱で29戦29勝。『GT-Rの敵はGT-R』とまで言わしめた恐ろしいモンスターマシンである。
挙句の果てに海外のレースに殴り込みで参加し、各地で優勝を掻っ攫った。あるレースでは速すぎて『TV映りが悪いから何とかしろ』とTV局から苦情があったり、またあるレースではその速さの余り、翌年からレギュレーションで4WDを禁止にしてしまう所まで現れるといった状態だった事もあり、海外でも『GODZILLA』の愛称で非常に人気な車種である。
'89年8月というのは、R32のGT-Rが販売を開始し始めた時期なので赤城が入手したのは初期ロットの一台となる。
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(ほぼ間違いなく初期ロッドの1台ね。珍しいものを…)
ここまで聞いてたら初期型の32Rを買っただけで済むのだが、赤城は少しおかしな事を言い始めた。
「そういえば、販売店の人が少し珍しい個体だと。」
「珍しい個体…?」
「車体色が赤なんですけど…」
「あぁ、レッドパールメタリックなんですね。確かにそれは珍s「ソリッドの赤なんです。」…え?」
R32型と呼ばれる8代目のスカイラインには、レッドパールメタリック(ワインレッド)は存在するものの、それ以外にカタログで赤が存在した事はない、なのに赤城はソリッドの赤の個体を買ったという。
「オールペンだろう思って状態確認の為にカーペットを一度剥いだんですけど、アンダーコートも残ってるし、下も全部ソリッドの赤。なんか変ですよね?」
「フルレストア車…?」
「ですかねぇ…でもオリジナルって言ってますし…」
二人で悩んでいると、来店のベルが鳴る。ふと見ると珍しく提督が明石と夕張を引き連れて店内に入ってきた。
赤城を見るや否や明石と夕張はダッシュで駆け寄り声を掛ける。
「赤城さん!珍しい物を見せて頂いてありがとうございます!!」
「今日は奢らせて下さいね!!!」
「え?え?」
「都市伝説とまで言われた『ソリッド赤のR32』見事に引き当てて!凄いなぁ〜。」
「「都市伝説!?!?」」
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「…なるほど、だから存在自体が幻とされた訳なんですね。」
「いやぁ…実在するとは思ってもみなかった。鳳翔さん、おつまみ頂戴!」
「はい、少々お待ちくださいね。」
「俺もいいもの見れたわ…。」
話を聞くと、ソリッドの赤というのは、本来R32型のスカイライン(GT-Rを含む)に存在しないカラーだが、平成元年に製造された個体の内、極々一部がカラーコード301というソリッドの赤で塗装されたそうだ。『出来る限りポルシェの赤に近く』というオーダーで調合されたという逸話が残っている所からも、かつてのS54A-Ⅰとポルシェ・904の頃からのポルシェとの因縁が残っているとも取れる。
業界関係者向けにのみ製造されたと言われるこの色のR32。正確な製造数は判明しておらず、4台とも7台とも言われているらしい。うち一台はGT-Rではなく4ドアのGTSとも言われているが詳細は不明で、正に幻のR32といっても過言では無いだろう。
整備を担当していた夕張等も不審に思い、コーションプレートを確認した結果、正規の赤だと判明し、工廠で夜通し発狂&どんちゃん騒ぎして二人揃って大淀に〆上げられたのは伏せておく。
「そんな珍しい個体だとは全然知りませんでした。」
「赤のGT-Rって言うと、ケンメリのRが有名だから知名度がないのよねぇ…」
歴代で唯一レースに出れなかった悲運のR。GT-Rシリーズ2代目のKPGC110型、通称「ケンメリR」に設定された赤色も、総生産台数197台(公式)の内7台しか存在しない。世間ではケンメリR自体の珍しさも加わりそちらの方が有名になっており、R32の赤に関しての知名度はほぼ無いに等しいのだ。
「レア度で言えばそれ以上だからな。」
「ですよね〜。私もはじめてみましたし。」
「そう言えば、メンテナンスの方は?」
「あぁ…盛り上がりすぎて伝えるの忘れてたけど、問題なかったですよ。」
赤城のGT-Rはショップの人曰く業者オークションで落として店頭に並べたとの事で、詳細はあまりわからない状態だったのだが、見た所、マフラーと車高調が入っている以外はほぼフルノーマル。オマケに車庫保管だったらしく、定番のダッシュボード割れや塗装面の劣化は見受けられなかったそうだ。
「一応オイルとか冷却水は交換時期に達していたから変えたけど、特段ヤバイ場所もないし、普通に乗れると思います。」
「安心しました。これで鳳翔さんとのドライブも楽しめますね。」
「赤城さんとのドライブも楽しみですね。」
その日はそのまま5人で飲み明かして話した。因みに鳳翔、赤城を除いた残りのメンバーは下呂なのでビール一杯で撃沈したそうな…
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数週間後、赤城のGT-Rと鳳翔のGT-Rが鎮守府の駐車場に並んだ。同じ『スカイラインGT-R』を名乗る2台だが、第一世代と第二世代の間にある16年という年月は車を一変させた事を改めて実感させられる。
標準車が持つメッキなどの装飾装備は外され、エアコンなどの快適装備から助手席のシートベルトすら無く、ホンモノのレーシングカーであるR380のGR8型エンジンをベースにしたS20型…『レースで勝つ為』だけ生まれてきたクルマで、それ以外は二の次。扱いも特殊で素人にはエンジンも掛けられないとまで言われた。
第一世代…特に箱スカのRは、当時のTSレースでライバルを蹴散らす為に生まれた地上を走る戦闘機、と言った所か。
それに対して第二世代は、標準車と比べても豪華な装備、エアコンも勿論存在し、エンジンは豪州で製造されていたRB24をベースにGr.A規定に合わせて作られた最強と名高いRB26DETT型…同じく『レースで勝つ為』として生まれたが、豪華装備が存在する『値段相応のGTカー』という側面もあるように感じる。
第二世代のR32は、Gr.Aレース、ひいては世界を席巻する為に生まれた。飛行機で例えるとコンコルドのような超音速旅客機と同じような存在と思う。
そんな2台のGT-Rを前に、ドライブに行くと聞きつけた龍驤と加賀がやってきた。
「あら、龍ちゃんと加賀さん。」
「よぉ、元気しとるか?」
「ええ、非番ですし、これから2台でドライブに行こうかなと。」
「私も着いて行っていいかしら?」
「ええ、勿論。」
加賀は非番であるが、龍驤はガッツリ執務中であるはずの時間。提督はどうしたのかと鳳翔が尋ねた所…
「あー…明石、夕張と一緒に二日酔いで潰れててロクに業務回せる状態じゃなくてな、さっきまで看病してたんよ。」
「あら、提督は大丈夫なのですか?」
「今はちょっと瑞鳳に面倒見てもらってる。また後で戻るよ。」
「…提督ってそんな下呂でしたっけ?」
そもそもここの提督はあまり酒を飲まない。嫌いではないものの、四六時中車に乗ったり弄ったりしてるせいでほぼ飲む機会が皆無なのだ。酒を呑む提督の姿を知る者はこの鎮守府に住む艦娘の中でもほんの一握りだったりする。
「下呂…ですね。そもそも好んで飲まないので慣れてないってのもあるかもですけど。」
「酒に慣れもクソもあるかいな…」
「というか、龍驤さんは戻らなくても大丈夫ですか?」
「あっといけない、そろそろ戻らんな瑞鳳に怒られちゃうね。」
またなーと言って執務室に戻る龍驤を見送った後、3人はクルマに乗り込んでドライブに行くことにした。加賀は赤城のRに乗り込んでいる。
「…なんだがしっくり来ますね。」
「???」
加賀の謎発言に違和感を感じつつも、2台のRはスルスルと鎮守府の門を通って走って行った。
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赤の32Rの後ろを走る鳳翔の箱スカ。エンストやガクガク動くこともなく、信号待ち等もスムーズに走る前のRに、少し違和感を覚えた。
「赤城さん、免許取ってMT乗っていなかった筈なんだけど…」
嘘である。確かに赤城が初めて買ったのはATのダイハツ・エッセ(L235S)だったが(買い物&食べ歩き用に安価で購入した。)、その後RはMTが多いという事を知ると、すぐにMTの練習をする為に、時折萩風のスズキ・キャリー(DA16T)で練習をしていた為、Rに乗り換えてからも意外とすんなり操作できていたのである。勿論、クラッチの重さやシフトフィール等の違いもあるが…
「ソリッド赤の32は初めて見ましたけど、これはこれで映える鮮やかな色ですね。」
今まで赤のR32はレッドパールメタリックしか見た事のない鳳翔にとって、このソリッド赤のR32は新鮮に見えた事だろう。ただ鮮やかなだけではなく、当時の技術陣が世界のクルマに対抗する為、このクルマにどれだけ力を注いだのか、その情熱を表す赤でもあると鳳翔は思えた。
だからこそ、開発主任の伊藤修令氏が著書で語っていた『GT-Rのライバルが現れる事を期待していたが、現れる事は無く、そのままグループAというカテゴリーが消滅してしまったのは残念であった。』という言葉は本心だったのだと理解できる。彼は一人勝ちなGT-Rよりも、かつてのマツダ・サバンナのような強力なライバル達と切磋琢磨して進化していくGT-Rが観たかったのではないか、と…
その点ではこのBNR32型は不幸だったとも取れる。最もその願いは次代のBCNR33、BNR34型で叶う事になるのだが。
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桜井氏が開発を担当していた頃のスカイラインのスポーツモデル…特にGT-Rは非常にスパルタンなモデルだった。2Lという制約の中でいかに速くあるべきか…それを追求したモデルとも言える。
それに比べると、伊藤氏が設計したこのR32型のGT-Rは、速さは勿論、ロングツーリングカーとしての実力も兼ね備えており、このようなツーリングでも暑かったり寒すぎたり苦しい思いを(基本的には)する心配はない。
「もう結構前のクルマの筈なのにそこまで現代のクルマと遜色ないのね…」
「ええ。私ももう少し古臭いモノを想像してたんですけど、エッセと特に遜色ないというか、こっちの方が断然快適なんですよね。」
辺りが夕焼けに染まる海岸線を一定のペースで走る2台のGT-R、この時間は休日なら混んでいるものの今日は平日。クルマの通行量も疎なので2台は快音を響かせながら走っていた。
「こうやって鳳翔さんとゆっくりドライブするのもいつぶりでしょうか。」
「私が来た辺りから鎮守府は徐々に忙しくなっていったものね…」
「ええ、あの頃は大変でした…」
赤城がこの鎮守府に赴任してきた頃、正規空母は赤城しかおらず、他にいるのは鳳翔と龍驤だけだった。あの時はまだ深海棲艦の数も多く戦いは激戦だった為、内地でのんびり過ごす時間もほとんど存在しなかった。やがて日本の海域から深海棲艦が姿を消した辺りでようやくのんびりとした時間が訪れた。これが約20年程前の話になる。
「私や加賀さんは改二になった数少ない正規空母でしたから、その後も国外派遣も多くて…」
「フィリピンは今でもしょっちゅう行きますね…もう現地に行きつけの店が出来ちゃいました。」
「あ、今度そこ私に紹介してください。」
「食べ過ぎなければ…」
艦娘として生まれて早30年程が経過し、40代も見える距離に立たされた。そろそろ『戦い』以外のモノにも目を向けようと興味を持って買ったクルマは、かつて、船だった頃に取り扱っていた戦闘機の血筋を引くクルマだった。やはりどこまで行ってもこの仕事から逃れられない。
「…そう思うと嫌に思ってるように聞こえてしまうかもしれませんね。」
「実際の所はどうなんですか?」
「楽しいですよ、『艦娘』って仕事は。」
人を護り、人に感謝してもらう。言い換えてしまえば艦娘だけでなく、世の中に存在する職業の大半はこのサイクルの繰り返しであろう。だが、この仕事はそのサイクルを感じさせる機会が非常に多い。国を守るが為に生まれた彼女は、自らの取っての幸福はこれだと信じて疑わなかった。
「今度は自分も楽しみつつ、周りの人も楽しめる人生にしたいですね!」
「えぇ…私もそういう人生にしていきたいわ。」
今までの自らの幸福に更にプラスして、そこに周りの人も幸福にする。まだまだ人生の道のりは長いからこそ、周りも自分も幸せになって欲しい。今までのサイクルに追加された新たなサイクルは、赤城に新たな世界を見せてくれる事だろう。
『戦い』しか知らなかった1人のドライバーと1台のクルマは、ようやく第二の人生を歩めそうである。
赤城×BNR32
外装:リップスポイラー同色塗装
内装:フルノーマル
エンジン:BLITZ製ブーストコントローラー&ターボタイマー、フジツボ製マフラー(VVV)
足回り:オーリンズ製車高調(問題はなかったもののもうちょっとソフトな乗り心地に変更予定)
ホイール:ノーマル