私の同僚(?)の夕張は私と毎晩夜遅くまで車を弄ってます。そんな彼女の愛車は三菱・リベロカーゴ。それも、ただのリベロカーゴではなく…?
「夕張〜何してんの?」
「あ、明石じゃん、今タイヤ交換してる。」
ここはある鎮守府の工廠。本日は休業日で本来は誰も居ないはずなのだが、ここに二つの陰があった。実験兵装巡洋艦夕張と工作艦明石だ。普段、二人は出撃する機会は殆ど無く、専ら工廠で艤装の製作、加工、修理等をしている。そして、休みの日には二人工廠に朝から集まって車の改造をして、夜に走りに行くのだ。
「夕張のリベロも納車時からは随分と姿も変わっちゃって…」
「まぁ〜見た目は変わっちゃったよね。」
夕張の愛車は三菱・リベロカーゴ。現在、三菱がOEMで細々と製造しているランサーカーゴの先祖に当たるモデルだ。
戦前、財閥として存在した三菱がGHQに解体されたうちの一社、三菱自動車にとって『ランサー』という車は特別な車である。初代モデルからWRC(世界ラリー選手権)に参加し、激動のグループB時代を切り抜け、80年代末に登場したグループA規定の中で、ランサーはグループAのホモロゲーションモデル『ランサーエボリューション』で華々しい戦果を挙げる事になる。『ランエボ』『エボ』と略される同車はⅠ~Ⅹまで存在し、特に1996~1999年(Ⅴ.Ⅵ)はドライバーズタイトルを4連覇した事は、『ラリーの三菱』の名を世界に轟かせた。
そんな最中、1992年から販売が開始されたランサーのワゴン/バンタイプであるリベロは、当時のステーションワゴン人気に押されて出された節が強いが、乗用モデルと商用モデルを一緒にして販売した事が災いしたのか、それ程売れ行きは良くなかったようだ。ワゴンタイプは2000年に生産終了。バンタイプのカーゴも2003年に生産終了した。余談だが、カーゴは日本車で最後に新車販売されたキャブレター車として知られている。
「元はタダで拾ってきた商用バンなのにね。」
「まぁ市役所で使われていたクルマだったし、メンテは一応されてたけどかなりくたびれてたもんね〜。」
人気があまり無かったとは言ったものの、役所等の車両として納品されたリベロカーゴは多い。夕張のリベロも、元は鎮守府近くの市役所で使い古されたうちの一台だった。解体業者に運ばれそうになっていた所を引き止めて回収してきたという。
「初めはノーマルのままだったけど、この間から全バラして急に何かし始めたと思ったら…」
と、横にあるリベロカーゴを見る。顔面は何処か見覚えのある厳つい顔に変わっており、車体もスポット増しをした上でにスニオンターコイズにオールペン、そして、エンジンはワンカム、ワンキャブのエンジンから、ツインカム、インタークーラーターボのランサーエボリューションⅢの4G63に換装されている。このE/g自体もピストンをエボⅨ用に変更していたり、東名パワードのポンカム等色々変更されていた。
「まぁ〜ホントは4G63で4スロ仕様にしようと思ってたんだけど、明石のヤツに対抗するには350ps位は欲しいなーって。」
「まんま、第一世代版『エボワゴン』だね。いや、リベロエボと呼ぶべきか。」
このリベロ、ランサーのワゴン版とあるだけあって互換の効くパーツが多く、夕張もそれをフルに活用し顔面はエボⅢ、リヤフェンダーはフロントに合わせて叩き出し、エンジン&ミッションはエボⅢ用の4G63をフル換装した。リベロの新車時に一部の層で流行った改造でランエボのエンジンや外装を流用するリベロエボというものがあった。今回、夕張はそれを実行したのだ。
第3世代(エボⅦ~Ⅸ)はⅨにランサーエボリューションワゴンが存在する。メーカーが本気モードで作ったワゴンなので、ノーマルのワゴンよりスポットの数が純正で増やされ、リヤフェンダーは専用のブリスターフェンダーに置き換えられ、エンジンも勿論エボⅨの4G63に換装されている。しかし、それ以外にはエボワゴンは存在しない。しかし、リベロはこの中でも第一世代とシャシを共有している関係でフル移植が可能なのである。
「夕張、前に乗っていたやつはどうしたの?」
「あ〜アレは北上にあげたよ。車欲しがってたし。」
…北上の現愛車、もとい、夕張の元愛車もいずれ紹介するとして、今回は割愛させて頂きたい。
その車からリベロエボに乗り換えたのも、明石と定期的に走るミニサーキットで車両の差が大きくなってきた事にある。そこで、マイナーかつそこそこの出力を出せる車として選ばれたのがリベロだった。その証拠にブレーキに関してはエボⅥに設定された特別仕様T.M.E(トミ・マキネン・エディション)のブレンボに置き換えられ、室内を見てもエボⅣ純正レカロや4点式のシートベルトなど、走る上で必要な装備を純正流用を使いながら追加している。
「工作用の荷物載せるためにもワゴンってのは譲れなかったからね〜。」
「確かに…ちょっとデカイ機器載せるってなったらセダンとかクーペじゃ積むのしんどいし、そもそも載らない事もあるもん。」
「まぁリベロもワゴンって考えたらちょっと狭いんだけど…」
「まぁその辺はいいでしょ。」
話しながら慣れた手付きでタイヤ交換を終わらし、そのままエンジンを掛ける。フルコンによる制御の調整が終わった夕張のリベロは静かにアイドリングをする。
「もうセッティング出したんだ、仕事早いなぁ。」
「まぁエボ用のフルコンそのまんま使ってるから、セッティングとかも楽だったよ。」
「へぇ〜」
暖気が終わった頃合いを見て、夕張はリベロに乗り込んだ。内装自体は特に目立つ変更点はなく、強いて言うならダッシュボード上にある3連メーターとMOMOのステアリング、エボⅣのレカロくらいの物。手招きされた明石も助手席に乗り、リベロの慣らし運転が始まった。
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「しっかしまぁ、鎮守府の停まってる車も個性的になってきたよね。」
「まぁ…変な車もない事はないけど。」
快調に走るリベロの様子を見つつ、ここ最近の鎮守府について話す2人。始めはほとんど停まっていなかった駐車場も、ここ最近は一杯になってきて拡張する話も出ている程だ。提督が艦娘の私生活に関してかなり自由にしてくれている事、そもそも地方で土地が余りに余っている事も関係しているらしい。
「まぁそのお陰で工廠もデカくなったし、文句は一切無いんだけど。」
「間違い無いわね。」
「にしても、この間の電ちゃんには驚かされちゃった。ほんとにニーナナ買ってくるとは思ってなかったもん。」
「ね〜。」
こんな感じで二人は話しながらリベロの慣らしを開始した。道中に遭遇したエボⅢのオーナーはこのリベロを見て困惑していたし、休憩先のコンビニでは、高校生に「エボⅢにワゴンってあるんですね!!」と勘違いされてしまった。もちろん、ちゃんと訂正しておいたが。
こうして、初日の慣らしで500km程を走行。今後暫くは5000rpmをリミットに走る事となった。
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「これで明石のインプワゴンともいい勝負が出来るってもんよ。」
「あー…それなんだけどさ。」
「?」
「インプ…売っちゃった。」テヘッ
「oh…」
明石は少し前まで、インプレッサにかつて設定されていたワゴンを所有していた。勿論、ただのワゴンを明石が乗るわけもなく、STiモデルをベースにEJ22用の腰下流用で2.2L化、タービン交換など一通り手を入れた上で、夕張のリベロと同じくLINKのフルコン制御で400ps近いパワーを引き出していたのだが、つい先日の走行会でミッションブローを起こしてしまった所だった。
「初めはインプ直すつもりだったんだけど、同じ水平対抗で面白い出物が見つかったからさ、そっちに乗り換える事にしたんだ。」
「明石がそこまで言う出物は気になるわね…今度見せてよ。」
「良いよ。ただ仕上がるまでもう暫く掛かるかなぁ〜。」
「仕上がったらサーキットね!」
こうして、二人は休暇を消化していく。完成した夕張のリベロ、そして明石の新しいまだ見ぬクルマがサーキットを爆走する日は近い__________
夕張×CB1V改
外装:Fバンパー、Fフェンダー、ボンネットエボⅢ流用、サイドステップ(エボⅢ用を加工)、KP61用TRDっ羽加工流用、ガナドールエアロミラー、サージ(特別仕様車)専用色スニオンターコイズ全塗装
内装:エボⅣ純正レカロ、MOMO36φステアリング、エボ6.5(T.M.E仕様)シフトノブ、エボⅢ純正メーター、Difi水温、油温、油圧メーター
エンジン:エボⅢ用4G63換装、エボⅨ用ピストン流用、ヘッド面研、フルバランス取り、WPC処理、To4-Zタービン、LINKフルコンピュータその他多数
駆動系:エボⅢミッション(強化ギヤ加工済み)、OS技研ツインプレート、AYCキャンセル→機械式LSD(フロント、センター、リヤ)
足回り:HKSハイパーマックスⅡ(車高調)、エボⅥ用ブレンボブレーキ、
ホイール:TE37V(16インチ、F7.5J/R8J)