私の尊敬する金剛お姉様は、アメリカを代表するスポーツカーに乗っています。ただ、この車がちょーっと面倒なモノなんですよね…出掛けた先とかで結構困るんですよ〜
っとと、話はこの辺りで、それでは、本編、気合い!入れて!行きましょう!!
「テートク!ガソリン下さイ。」
「ガソリンくらい自分で…いや、お前の車はちと特殊だったか、着いてきてくれ。」
ここはある鎮守府の司令室。そこにはイギリス生まれ日本育ちの高速戦艦である金剛と、その金剛にべったりくっ付かれている提督の姿があった。提督は引っ付いてくる金剛を引っぺがし、一緒に鎮守府裏の油庫に向かう。
「ったく…なんであんなメンドクサイの買っちゃったんだか。」
「カッコいいでショ?」
「まぁ否定はしない。夢のある車であるのは事実だしな。」
提督はそう言いながら、油庫横に停めてある一台の車を見た。クリーム色の流麗なボディライン、特徴的なヘッドライト、そして光り輝く『427』と書かれたエンブレム。
シボレー・コルベット。巨大大国アメリカを代表するスポーツカーで、知名度も高く、全世界に熱狂的なファンを持ち、その証拠に親元のGMがコルベット博物館を作るほどである。その2代目に当たるC2型が金剛の愛車。コルベットとしてのキャラ性が確立されたモデルとも言える。
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初代コルベット(以後C1)は流麗なスタイリングのコンバーチブルを売りにしていたのだが、いかんせん動力性能が同クラスのモデルと比較しても力不足だった。終わりの方には元々の直列6気筒モデルを蹴落とす感じで4.3LV8モデルも登場して問題を解決したが、黎明期のFRP(強化プラスチック)製のボディパネルのチリなど、その他の問題はまだまだ山積していた。
2代目コルベット(以後C2)ではサブネームにスティングレイ(Sting Ray)の名が与えられた。アカエイ科という意味だが、これは当時の開発担当者が釣り好きだった事が理由だとされている。C1で問題視されてた問題は粗方片付いたのもあり、コルベットはここからアメリカの自動車産業黄金期の中で飛躍的なスピードで進化していった。
「しっかしまぁ…よくこんなの見つけてきたよな。」
「たまたまデス、中古車見ててビビっと来たんですヨ。」
「ふーん、あ、これ添加剤。」
「ありがとうございマス!」
油庫から提督が取り出したのはガソリンの給油時に入れる添加剤、これを混ぜる事でガソリンのオクタン価を上げることができる。金剛はそれを受け取ると、助手席のグローブボックスに入れ、リヤガラス下にある給油口を開けた。しばらくすると、給油ホースを持った提督が姿を表した。
「これだけの為に作ったもんな。まぁ損では無いから良いけどさ…」
「逐一添加剤入れるのメンドクサイデス…」
そして、金剛のコルベットに給油を始めた。燃料タンク自体めちゃくちゃ大きい訳でもないので、暫くすると給油は終わり、ホースを引き抜き、金剛が蓋を閉めた。
「ありがとうテートク!」
「どういたしまして。この後は何処かに?」
「いや、テートクと出かけたいかなぁ…って。」
「出るなら乗せてもらおうか。」
「!」パアアアアアア
(わかりやすいなコイツ。)
その後、鎮守府裏でゴムの焼ける匂いと、火事かと見間違う程の白煙が目撃されたそうだ…
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「しっかしこのコルベットはいつ乗っても速いなぁ。シャシダイで幾つだっけ?」
「540psでしたネ。」
「L88様様だなぁ、大事にしろよ。」
「ハイ!」
ここで金剛が駆る特殊なC2の紹介を。
このコルベットはただのC2ではなく、C2末期の1967年に登場したL88エンジン搭載車。このエンジンは当時存在したGTレースに出場する為の車両という意味合いが強く、エンジンはレース用をデチューンしたL88型を採用した。その為、レース用ガソリンの給油が求められており、103オクタン価以上のガソリンを入れないと調子を崩してしまう(日本のスタンドで給油できるハイオクのオクタン価は高くても100前後)。なので、普段は添加剤を携行しているのだが、めんどくさくなったのか、明石や夕張と結託して提督に直談判し、レーシングガソリンを仕入れてもらうことにしたという過去を持つ。
レース用に開発されただけあってL88型のポテンシャルは凄まじく、当時の世間の目や保険料(パワーが高くなれば高くなる。)の割増を避けられないとの事で、公式では400psとなっているが実際はそれ以上出ているのが普通であり、大体+100ps前後は優に出ていると言うから驚きだ。
因みに、始めの方にエンブレムとして出た「427」という数値は、このエンジンの排気量をインチに直したものであり、通常のccに戻すと7Lという化け物スペックな数字が出る。C2コルベットもモデル毎に色々なモデルが存在するが、金剛の乗るL88搭載車は20台しか製造されておらず、過去にはオークションで7800万の値段を付けたこともある非常に価値の高いクルマなのだ。
「一体こんなお宝どこで手に入れたのやら…」
「アメリカ本国の個人売中古車雑誌に掲載されてたのを知り合いが連絡してくれて。」
「あー…そのパターンか。」
マトモに買ったらそれこそ数千万のクルマ、幾ら艦娘の給料が良いからとは言え、到底払いきれない金額を払わないといけないのは考えなくてもわかる話だ。だが、ごく稀に『中古車で買って詳細を知らない』、『クルマの価値がわからない』等の理由で異様に安い値段で出回る物件というのもある。金剛のコルベットが正しくそれで、元々は亡くなった老夫婦の主人が乗っており、維持しきれなくなった夫人が断腸の思いで出品した…という経緯があるそうだ。
「関税とか諸々含めても1000万行きませんでシタ。」
「まーじか、超バーゲンプライスだな。」
「んで、詳細知らなくていざ実物見たら…」
「…L88、ビックブロックエンジンだった、と。」
「ハイ…凄いんですけど、ガソリンとかの問題は結構面倒デス。」
「致し方ないけどなぁ…」
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飛び出したのはいいものの、特に行く宛もなかった二人は、鎮守府から少し離れた工業地帯にやってきたが、何やら周りが騒がしい…
「ん?あれば…」
「ゼロヨンですネ…オー。」
「やってるやってる。この辺りは住宅とかもないし、夜中は工場止まるからあまりトラックも来ない。昔っから結構盛んなスポットなんだよね。」
「…」
ゼロヨンで全力疾走しているR達を見て、金剛は少し考える。手元に来て早2年、サーキットには一度行ったものの、ゼロヨンというものを一度もやったことが無い。このコルベットの実力を見るには絶好の機会なのでは、と。
「ウーン…」
「行きたいなら行けばいいんじゃないか?」
「!!!」
ストリートという事は完全なる違法行為、本来なら間違っても軍人が言ってはいけない発言ではある。
「良い…んですか?軍人としては…」
「まぁ〜俺とて散々やった身分だし、バレなきゃ問題ないよ、バレなきゃね。」
提督の真っ黒な裏話はさておき、今回は用意も何も出来ていないという事で見学することにした。目の前でロケットのように飛び出していくクルマ、闇を切り裂くようなエキゾースト音、今まで経験したことの無い非合法の世界は金剛の目には何もかもが新鮮に映った。
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帰り掛け、金剛は提督に話し掛けた。
「海の上では深海棲艦との争いしか見えないデスけど…陸ではああ言ったことも行なっているンデスね。」
「ん…行われてるというか、起きているというか、ね。」
ふと金剛は思った、戦艦『金剛』ではなく、1人の少女として自分が生きていたらどうなっていただろうと。
…しかし、その考えはすぐに無くなった。何故なら、コルベットを探してた理由が、先代の戦艦『金剛』がコルベット級戦艦だった事であることを思い出したから。先代『金剛』、そして巡洋戦艦として登場した二代目の『金剛』。かつての歴史があってこその自分が、そしてこの特別なコルベットがある。仮に艦娘ではなく、普通の娘として生きてたらこんな出会いはしなかっただろう。
「私は楽しいデスよ、鎮守府での生活。」
「なんだい藪から棒に…まぁいい事だ。」
ここで出会った仲間や提督、そして姉妹との出会いを大切にしながらこれからも共に歩んでいきたいと思った金剛であった…
金剛×C2(L88搭載車)
フルノーマルなので記載なし