私の可愛い妹の一人、比叡はかの有名なGT-Rに乗っていマス。比叡のGT-Rは速い上にカッコよくて希少価値のある個体だったり…私のコルベットも負けてないけどネー!!!!!!!!
「よし、今日も気合い!入れて!行きます!」
ここは金剛姉妹の部屋、二番艦もとい次女である比叡は、これからどこかへ出かけるようだ。寮から駐車場に向かい、自分の車の鍵を開ける。外装の派手さを考えると少し地味に思える内装を眺めつつ、比叡は車のキーを捻りエンジンを掛けた。
(今日も一発始動!冬場は掛からなくなったらどうしようって不安になるのよね〜)
比叡が乗るクルマは言わずと知れた名車中の名車、BNR34型スカイラインGT-Rである。かつてGr.Aで最強を誇ったRB26DETTを心臓に持ち、強靭な4WD装置であるアテーサE-TSで武装した「スカイライン」として最後のGT-R。名車の最終モデルらしく、かなり手の込んだ出来となっている。正しく、日本が誇れる『戦艦』とも言えよう。
比叡の駆る34Rは、99年式の初期モデル。その中でも最もレアと呼ばれるライトニングイエローという黄色の個体である。このカラー、後期型には存在せず、新車時非常に人気の無かったカラーの為、66台しか製造されていない珍しいカラーなのだ。
「Hey!比叡!今日はどこに行くんですカ〜?」
「あっ金剛お姉様!これから少しドライブに…」
現在時刻は朝の6時、オフの日は大半の人が寝ている為、コソコソと出掛ける支度をしていたがどうやら気づかれてしまったらしい。
「んもー水臭いネ!私も連れてってヨ!」
「お姉様…!」
…なんだかんだでお姉ちゃんLOVEな比叡は喜んで金剛を乗せて街へと繰り出した。
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「比叡姉様のGT-Rはそれ程改造してないのね。」
「そうなんですか?」
その数時間後、金剛四姉妹の部屋では、3番艦榛名、4番艦霧島が遅めの朝食を摂っていた。二人は、姉達がどこかに出掛けたことを察して2人でお茶を啜っている。
「あの個体は元広報車なの。」
「そうなんですか?榛名、全然分からなかった…」
カラーコード『EV1』と呼ばれるライトニングイエローの広報車は数台あったとされているが、その中でも比叡が購入したのが、最上級グレードであるV-specと呼ばれるスポーツグレードである。
V-specは、標準車をベースに、フロント側に樹脂製、リヤ側には市販車初のカーボン製のアンダーディフューザーを採用。本車で初採用されたマルチファンクションディスプレイもV-specと標準車で表示内容が異なる。アクティブLSD・ATTESA E-TS PRO等もV-specのみの装備になる。
余談であるが、BNR34は標準車よりV-specを始めとした上級、又は特別仕様車の方が多く製造されており、標準車の方がレアになっている珍しいモデルでもある。
「NISMO製のサスペンション、マフラー、ホイール(LM-GT4)。あと、クリアウィンカー(後期用)と後期V-specⅡボンネット(NASAダクトが開き、カーボン製になる)くらいで基本的にはノーマルに準じた仕様だった筈よ。」
「やはり希少性ゆえに手をあまり付けてないのかな?」
「…単純に出撃で忙しいからだと思う。」
「あー…」
この鎮守府で比叡、金剛は最古参に当たる高練度の戦艦だ。最近は深海棲艦もあまり見かけなくなったが、今でも時折演習相手からの希望で演習に出る事もあるし、難関海域出撃の際はほぼ必ず出撃している。対して榛名、霧島は姉2人と比べると着任がかなり遅くなってしまった為、時折出撃する程度となっていたのだが、前途の通り出撃回数が減ってしまった今では、こうして2人でお茶してる時間の方が長かったりする。
「私も車、欲しいんですけどピンとくるモノが無くて…」
「榛名はたまたま良い出物があったので買っちゃいました!」
「え!?何それ聞いてないんですけど!!!!」
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「比叡のGT-Rは快適ネー!」
「そりゃお姉さまのコルベットと年数が違いますもん…」
横須賀市街を抜け、横浜方面に走る34R。信号待ちでも目立つカラーということもあり、写真を撮られたりする事も多かったり多くなかったり。
「最近はこうしてゆっくりする時間も増えてきたから嬉しいですね。」
「ティータイムの時間も自然と増えた気がしまース!」
「私は少し食べ過ぎてバルジ付いちゃったかも…」
そんなこんなで、インターから首都高に上がる34R。ゆっくり走っているのだが、周りの車が見たさ故か前を避けて行っている、製造台数が100台もない希少カラーのGT-Rは何処でも目立つのだ。
「この方面は…もしかして大黒?」
「お姉さまご名答!大黒PAです!」
大黒PA、車好きならほぼ大半が知っている関東圏の車好きにとってメッカ(?)みたいな場所である。一昔前はスピーカーを爆音で鳴らすワンボックスだったり、湾岸線を猛スピードで攻める走り屋の愛機だったり、横の埠頭で夜な夜なドリフトに勤しむセダン等、少しアブナイ雰囲気の車達が多かったと言うが、ここ最近は新旧、国産外車問わず色々な車が集まる。どうやら比叡は鎮守府メンバーの集まりで呼ばれたらしい。
「それだったらC2持ってくれば良かった…」
「初めから言っていたら良かったですね、すいません。」
「まぁ次回持ってくれば良いしネ〜」
大黒PAに入るイエローに輝く34R。PAの中でもかなり目立つ車ではあるが、流石に平日の早朝ではそれっぽい車は疎に見られる程度で人は少ない、その中でも端の方に数台集まっているのが見えた。
「おはようございます!遅かったですかね?」
「比叡さんおはようございます、私達も今着いたところですので大丈夫ですよ。」
今日集まった面々は香取、鹿島、電、暁、夕立、時雨、そして、最近鎮守府に着任したアトランタとホーネットもいた。今日は新たに着任した二人と横浜や東京方面に観光しに行くとの事らしい。
「香取…何というか、イメージと合ってるちゃ合ってるけどスゴい厳ついネ…」
「あら、金剛さんの車の方が派手だと思うんですけど。」
「確かに、香取姉さんのクルーはちょっと過激ですよね。今日は暁ちゃん達乗るんですから安全運転で…」
「流石に解ってます。私からしてみたら、たまにネジ吹き飛んだ走りする貴女こそ心配よ。」
練習巡洋艦香取の愛車は日産・クルー。わからない人向けにざっくりとした説明をすると、日産がかつて販売していたタクシー・教習車等向けのセダンである。本来は保守的なオジサマ方が好む何の変哲もないセダンなのだが、香取のクルーはガンメタに塗装され、フェンダーは叩き出されてたり、フロントバンパーから覗くインタークーラーらしき物体があったりとかなりのヤンチャ仕様になっている。
「ひえー…」
「姉妹揃って教習車ベースってのは良いけど、両方とも普通に過激なんだよね。」
「鹿島さんの車もすごく速かったっぼい!」
同型艦鹿島の愛車はトヨタ・コンフォート。クルーと共に生産終了した今でも、教習車やタクシーで使われるセダンである。車が全然知らないという人にも、画像を見せると『あー。あの車か!』という程街中でも見かける頻度は多い。もしかしたら『教習車で乗ったよ!』という人もいるかもしれない。
そんなコンフォートだが、一つだけ過激なモデルが存在する。そのモデルこそ鹿島の愛車なのだが、紹介はまたの機会にさせて頂こう。
「日本らしい車に乗って、観光ってのも中々乙なものでしょ?」
「いやまぁそうだけど…」
「ジャパニーズチューンドって恐ろしいわね…」
ある意味では一番日本に馴染みのある車と言っていい車ではあるが、初来日の二人にとって、少々二人の車は過激だったようで既に若干疲れているように見える。
「今日は雷門や東京タワー、スカイツリー等見回ってから首都高の夜景を見て帰宅って感じです。」
「ふむ…でもこれ…」
「『電車の方が良いんじゃないか?』と思ったんですよね?」
「ええ、車だと渋滞や駐車料金で苦労しそうなので。」
東京という街は、日本の首都にあたるだけあって、交通量の多さも半端ではない。昼間は至る所で渋滞が発生し、その渋滞を切り抜けてたどり着いた駐車場も良い値段だったりするので、普通に電車等で来た方が安上がりには済むのだ。
「それはそうなんですけど、都会の満員電車は辛いですし…」
(いや、それは特急使ったら解決するのでは?)
「鎮守府の経費で駐車料金も降りるって言うからドライブがてら観光案内しようかなって。」
(絶対ドライブしたかっただけだこの人達…)
香取&鹿島の闇が垣間見えた所で、今回の目的地に移動することにした。
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「街中を走るとやっぱり目立つネ…」
「まぁ…色が色ですし、前にいるクルマたちも派手ではないけど目立ちますから。」
日も暮れかけな18時半、3台は横浜にあるみなとみらいに向かって走っていた。道中も何人か同乗人のシャッフルをしていたが、最後はホーネットとアトランタが比叡の34Rに乗る事となった。
近年は海外でもコレクション需要として値段が上がり続けている第二世代GT-R。その中でも、限定車を抜くとかなりレアなライトニングイエローのBNR34は、日本人は兎も角、観光に来た外国人客の目を惹き続けた。クルーやコンフォートは現在でも日本国内で馴染みの深い車ではあるが、外国人には余り見向きされないという。
「今日一日色々あったわね…」
「うん、でも充実した1日だったと私は思うよ。」
「企画したのは香取さんでしたが、楽しんでもらえたなら私も嬉しいです!」
浅草の雷門では…
「すごくデカいわね!商店も沢山…!」
「雷ちゃん連れてきたら良かったです…」
「読みで見たら電ちゃんもかなり近いと思うんですけどね〜。」
と電が姉妹を連れて来なかったのを若干後悔し、スカイツリーでは…
「これがスカイツリー…凄く高いわね。」
「エレベーターもすごく速いっぽい!」
「あっこらナイトメア!着いたからって走っちゃ危ないよ…!」
と観光客である筈の二人が夕立の面倒を見たり、秋葉原では…
「お姉さん達可愛いね!良かったらウチで働かない?」
「アッすいません、観光案内中なので…」
「さっきから鹿島さんめちゃくちゃ声掛けられてない?」
「流石有明の女王ネ…」
「有明の女王…?」
「何でもないネー!」
鹿島がスカウトマンの勧誘を受けまくったりと、短いながら賑やかな1日となった。
「この車は見た目派手だけど、中は意外と大人しめなんだね。」
「まぁ、歴代GT-Rは大体こんな感じですよ。でもこれが良いんです。」
「『羊の皮を被った狼』ってヤツかしら。こっちでは『スリーパー』とか言ったりするけど…」
「GT-Rって車はいつの代も開発者が明確な目標を持って開発しているから好きなんですよね〜。」
1999年と言うと第二世代GT-R登場から10年、21世紀という新しい時代が幕を開けようとしていた頃。R34のGT-RはFRベースの4WD、Gr.Aレースが無くなった後では中途半端かつ重すぎる直6エンジン等、如何にも旧態依然なスタイルで出てきた事は否めない。況してや、日産の経営が一番危うかった時期のモデルという事もあり、トランクの鍵穴等コストカットが行われてる場所もあったりする。
だがしかし、あくまで『スカイライン』あってのGT-R、『スカイラインという制約の中で如何に速い車を作れるか』を目指して開発されたのはR34だって変わらない。第二世代GT-R最終モデルとしてその当時の持てる技術全てを注ぎ込んで製作されたのは紛れもない事実だ。最後まで『スカイラインGT-Rらしさ』を市販モデルだけではなく、レースモデルにも押し出していた事がR34という存在を特別なものにしているのだろう。
その証拠にスーパーGTの前身に当たる全日本GT選手権(JGTC)では、ライバルであるJZA80スープラは軽量ハイパワーな3S-GTEに換装、同じくNA1型NSXは元が3LのV6であるC32Bをミッドシップに搭載する和製スーパーカーとして開発されたクルマという構図の中、いくらJTC時代に無敗を誇ったエンジンを排気量を上げた所で、重いRB26DETTに勝ち目がないのは明白だっただろう。だが、2002年8月の市販モデル生産終了時までレースモデルでもRBエンジンを使用し続けた。明らかに不利と判断しても『市販モデルと違うエンジンを積む事は許されない』というプライドから2003年5月にVQエンジンに載せ替えるまで、JTC時代から数えて11年も使い続けた。それだけGT-RとRB26というエンジンの繋がりは大きかったのだろう。
「直列6気筒が最近は見直されて各社ポツポツと出すようになりましたが、このクルマみたいに何かの使命を持って生まれる直6というのはもう存在しないと思うと、少し寂しいですよね。」
「それでも、今でも直6を求める声があるからこそ、こうやって新しい車への搭載も始まってるのはあると思うナー。」
時代によって人々の求めるものは変わってくる。勿論変えないと時代に合わなくなってきたりするが、このスカイラインGT-Rというクルマは、その時代を変えた後もその名を轟かせ続け、本来の目的とは少し違う方向だが、ここ最近、またGT-Rの時代がやってきたというのは紛れもない事実だろう。
人々の心に深く残るクルマは、歴史が変わろうとも忘れ去られる事はないというのを今日は身をもって実感した所で、今日の旅は鎮守府というゴールに向かった。
比叡×BNR34
外装:後期用クリアウィンカー、後期用カーボンボンネット、NISMOエアロ
内装:フルノーマル(MFDの画面を一度変えてるとか)
エンジン:エアクリーナー(純正置き換えタイプ)、NISMOヴェルディナオーバールマフラー
駆動系:フロントLSD(NISMO製1.5way)、アテーサETSコントロールユニット(Z-tune仕様)
足回り:NISMO R-tuneサスペンション、後期V-specⅡブレーキローター、
ホイール:LM-GT4(ブラック) 18インチ( F.R共に9.5J)