サリーのロボトミーコーポレーション   作:エリック

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#? ごめん、ありがとう。そしてさようなら。

布団の中で身をよじらせ、モルティは目を覚ます。

そして言う

「夢を見ていた」のだと

夢の中でモルティは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、見たこともないようなオシャレなインテリアに囲まれ、ソファに座って自分じゃ買わないような観葉植物を愛でていた。

 

明らかに女性物の小物もいくつか見られ、2人分の食器がシンクに並んでいる。

 

「そうか……妹を【巣】に連れてこれたのか。」

 

妹の姿は見えないが、部屋の様子から俺は直感した。

しがないネズミになるしか無かった俺とは違い、妹は要領が良かった。

人畜無害な相貌とよく回る頭でツヴァイ協会やらシ協会に現地の情報提供者としていろいろ聞かれていた妹のことだ、不在なら大学院にでも行っているのだろう。

 

「将来はどこかの協会に入って、お兄ちゃんを楽させてあげる!」なんて言っても裏路地の連中にバカにされないほど出来が良かった妹が教育を受けたなら、ひょっとしたら【頭】にだって入れるのかもしれない。それはさすがに兄バカだろうけど。

 

あぁ、本当に頑張った。ここまで来るのは本当に長い道のりだった。

 

見るだけでおぞましくて吐きそうになる化け物を管理したり、仲間がイカれて同士討ちを始めたり、

死体を貪って肥大化する肉の塊を鎮圧したり、死んだ仲間が異形になって襲ってきたり……

 

最後には俺をこの会社に導いてくれたあの人と再開して……

 

「アレ?それから、どうなったんだっけ?」

 

思い出せない。確かに会ったはずなのに、言葉を交わしたはずなのに。

 

「大丈夫……思い出せ……今までやってきたじゃんか。」

 

「また何か悩んでるの?モルティくんは優秀だけど、もっと私を頼ってくれてもいいんだよ?」

 

背後から声がした。

とても懐かしい、少ししか聞けなかった、

けれど、一生忘れることはないであろう優しい声が。

 

「デボーナ!」

 

「うん、そうだよ。久しぶりだね。」

 

今まで考えていたことなど吹き飛び、俺は急いで声の主に振り返る。

するとそこには彼女がいた。

 

もう二度と会えないと思っていた彼女はいつもの困り眉で照れくさそうに微笑む。

 

「モルティくん、最近は後輩さんも増えて頑張ってるよね。情報チームのチーフに抜擢されるなんて、やっぱりモルティくんは優秀なんだねぇ。」

 

そうだ、俺は情報チームで皆を引っ張る、チーフの役に抜擢された。

結構作業も安定するようにはなってきたけど、まだまだこれからのペーペーだ。

 

「デボーナがいれば、お前がチーフだったろうさ。」

 

「ううん、そんなことないよ。私はおっちょこちょいだし、モルティくんほど胆力もないから、きっとどこかで失敗してた。」

 

彼女が真っ直ぐ見つめて言うものだから、俺の方も少しくすぐったい。

 

……分かっている。これは夢だ。

俺の願望が生み出した妄想だ。

 

だってデボーナは、俺のせいで死んだんだから。

だってデボーナは、俺を恨んでいるはずだから。

 

こんなに俺に都合のいい言葉を並べてくれる目の前の人物(デボーナ)は、全部俺の妄想だろう。

 

それに、死んだ人は二度と生き返らない。

天下の【A社】ですら、それには逆らえない。

 

 

でも、

 

 

それでもいい気がした。

彼女ともう一度話せるなら、ずっと胸に(つかえ)ていたこの気持ちをぶちまけられるなら、夢でも良かった。

 

「……ごめん。」

 

「???どうしたのモルティくん?なにか、謝られるようなことあったっけ?」

 

「俺にもう少し学があれば、俺がもう少しだけ実験計画をちゃんとしてれば、お前にあんな思いをさせなかったのに……ごめん、辛い思いをさせて。」

 

俺の実験計画で、彼女は死んだ。

彼女が死んでから、俺は実験計画をより詳細に、注意点や禁則事項まで丁寧に盛り込むようになった。

あの時それができていれば、彼女は死ななかったのに。

 

「……いいよ。別に気にしてないから大丈夫。」

 

「でも、俺がもう少し丁寧に書いていれば……っ!」

 

その先の言葉を遮って、デボーナは首を横に振る。

 

「私だって、あの時は思慮が足りてなかった。あの小鳥がアブノーマリティだってことを忘れて、普通の鳥と接するみたいに作業してたから、石を撒く時とか攻撃された時の対応とかが雑だった。」

 

俺は何も言えなかった。彼女も苦しんでいたのに、俺は彼女の後悔を分からずに、ずっと自分だけ悲劇のヒロインぶっていたんだ。

 

何も言えない俺からデボーナは数歩下がる。

彼女が俺から離れていく。

 

「だから、モルティくんが気に病むことじゃないよ。私が、失敗したんだ。」

 

デボーナはいつもの困り顔で、でも目に涙を溜めて満面の笑みを浮かべた。そして、悪戯っぽく口の前に人差し指を当てて「ダコタさんには内緒ね」なんて言う。

 

「あぁ、あの人には言えないな。」

 

だから俺も、人差し指を口の前に当てた。

 

目の前がボヤける。前がよく見えない。

彼女と会うのはこれで最後かもしれないのに、俺の視界はどんどん滲んで歪んで、光と色が溶け合う。

 

あぁ、こんな顔、見せたくはなかったのに。

 

また、2人で笑いあって作業に行きたかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬に水滴が伝わり、モルティは目を覚ます。

そして言う

「夢を見ていた」のだと

 

穏やかで優しい、暖かい闇のような夢を




この話は、本編や元動画とは全く関係のない、私の欲望垂れ流し小説です。
ですから読み飛ばしても全く問題はありません。

投稿日(11月20日)はデボーナさんの一周忌です(元動画の投稿日の話)

彼女の死が、私がこの物語を書くきっかけでした。ネビルくんとブラウンちゃんが死んだのは私が二次創作を始めたてで、まだ他の二次創作に手を出す余裕がなかった時だったので書きませんでした。

けれど、結構ちゃんとしたものが書けるようになった時に好きなコンビの片割れが殉職してしまったとなれば、もう書くしかないですね。
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