日本国召喚&エイティシックス クロスオーバー(仮)   作:凡人作者

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取りあえず見切り発射的な作品である、86-エイティシックス-ファンならびに、日本国召喚ファン諸氏には誠に申し訳ないと思う。

設定やらこじつけ、日本国召喚とのクロスを模索する内に、自分が面倒なミリオタが故に、頭が回らなくなり数多くの矛盾やら詰みやらを発見した為、ある程度設定を誤魔化せるオムニバス形式でやる事となりました。ギアーテ連邦と異世界との高度な政治戦を望んでいた読者の方々には、重ね重ね謝罪申し上げます。


プロローグ:時代遅れの最新型たち

その日の西部戦線は穏やかに透き通った水色と、時に紛れる白いか溜まりの下にあった。

 

真上に存在する太陽が、水平線の彼方まで続く草原か、はたまた一つの塊となって転々と存在する針葉樹の森、今や誰も住んでいない牧場の一角に降り注ぐなか、適当に雑草を刈り、同様に太陽が差し込んだ日曜大工が拵えたかに思える木の柵の影が延びる道に、大小様々な影が混じり百を超えようかと思える奇妙な一団が、ただ愚直に列を作り行進していた。

 

奇妙な一団には共通した特徴、どれも四本以上の脚を持ち、気色悪い歩き方は軍隊アリを連想する。銀色の無機質な体躯は、本能で動いているのかに見え、生気を感じさせず亡者の列にも見える。挙げ句、道の一面を埋め尽くす程の量がゆっくりと動くのだから、集合体恐怖症や虫を嫌悪する者が見れば即倒するだろうか。

 

人ならざる物が陽の光を浴び、表通りの闊歩を許されているのならば。人々は影の中にその身を委ね、息を潜めて地上の支配者を羨望し、姑息に生きる事を強いられるのだ。そしていつの日か元々有していた自分達の権利を、機械仕掛けの剥奪者より奪還せしめるべく、静かに己の武器を磨き、復讐の機会を伺い、自らの殺意と憎悪を心の内にしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

してその復讐者達は、一方は道路より5キロメートル離れてるか離れていないかにある針葉樹の中で、その視認性を抑えた低く濃緑の図体に、これでもかと偽装ネットと雑草を身に纏い、5メートルを超える砲身をその簒奪者に向ける。

また一方は見晴らしの良い小山の頂上にて、頭だけを出す稜線射撃の構えを取っていた。彼等もまた上空から確認される際に不自然に思われぬよう、適度に草の数を減らした偽装ネットにて息を潜めている。

同盟国と接触したその瞬間、時代遅れと周回遅れの評価を下された不運なる戦闘車輌、10式戦車がその牙を磨いでいたのである。

 

『21(小隊長車)、こちら23。正面敵TK!!オクレ』

 

「了解、20(小隊前車)、射撃準備、21が射撃次第トラックナンバーに従い射撃せよ、オクレ」

 

ノイズひとつすら無い無線機から、透き通った音色の声が小隊長の鼓膜を震わせ、敵を所定の位置にまで引き付けた事を知らせる。たしかあの声は、最近補充されたばかりの戦車だった筈だ。と余計な事に思考を使うのは慣れゆえか、心に充分な余裕を持たせた彼は規則通りの言葉で命令を送る。雑談や無駄な表現は一つもない、それは彼等が訓練を充実させた公僕の“機械“だからだ。

 

『中隊本部、こちら10。正面敵集団、数にして大隊規模、オクレ』

 

部下からの各々の情報が目の前のディスプレイに表示される、無論この情報は他の戦車のみならず、普通科部隊の隊員が所持する情報端末、果てには連隊司令部や師団司令部にも共有されている。

情報の精査を結果を確認し、小隊長は思わず顔を顰めた。歩兵に相当する斥候型や猟兵型が併せて二個大隊規模(1200個体前後)、文字通り戦車に相当する戦車型も一個中隊(12個体前後)は存在していた。まだ報告数が少ないが対戦車型も中隊規模は存在するだろう。

対して此方は機械化歩兵が一個中隊と、我々戦車小隊の4輌のみである。後は一応対戦車誘導弾部隊が一個分隊程度と言った所か。

 

「キム・ソグォン将軍の故事に倣いますかね?」

「タバコは持ってないし、軍歌を歌ったりや万歳三唱でもしたら国内の"敵"に撃たれるぞ」

 

砲塔の左側に座る砲手が、苦笑いしつつ軽口を飛ばしてきた。それに対して軽口を飛ばし返す小隊長。キム・ソグォン将軍とは朝鮮戦争時に二個中隊をもってして一個師団を食い止めた英雄である、故事に倣うも何も、戦力比的には状況が違いすぎるだろうにと、彼は文句を心の中に収めた。

 

『10、こちら中隊本部。敵が接近するまで一切の攻撃を禁ずる、繰り返す、一切の攻撃を禁ずる』

 

我々と同じく潜伏している普通科隊員、戦車と違い身を守るのは、強化外骨格で仕立てられた12.7mm半薬莢弾に耐えうるだけの装甲しかない彼等は、地を這い泥を啜る重いで身を潜める。

猟兵型に見付かれば、狼が群で鹿を食い荒らすが如く、よってたかって高周波カッターで細切れにされるしかない彼等、その悲惨さは同情してもしきれない程だろう。

 

「徹甲装填!!」

 

小隊長が叫べば、左に座る砲手は慣れた手付きで動作を行う。正面の砲手用パネルにある弾種選択ダイヤルを回す、カチカチと不愉快な駆動音を何度か耳にしたら目の前の表示は徹甲弾。

迷わず装填ボタンを押せば完了、ボタンの打ち間違いのない正確な操作、たかだかこんな些細な事でミスをすれば一発無職は間違いなし、彼等にとっては当たり前。

 

コンベアが回り車内は騒音に包まれる、お望みのAPFSDSが所定の位置まで運びこまれてくれば、ラマーと呼ばれる棒で押し出され薬室に詰めこまれる。

そして閉鎖機が閉まれば完成、何時でも機械仕掛けの虫を刺し殺す滑腔砲の出来上がりと言う寸法である。

 

「装填良し!!」

「よし、砲手わトラックナンバーに割り振られた目標を視認しているか?」

「目標確認」

 

砲手用視察照準装置を覗き込んだ砲手は、小隊長に一瞥する事なく敵を確認し続けた。

平原の地平線は幻想的なまでに緑色だが、それに混じるように点在する鈍色の物体は如何にもナンセンスだと砲手は思う。

可視光カメラと赤外線カメラ、レーザー測遠機を搭載した光学装置は、標的をロックオンした途端に自動追尾する、搭乗員の労力を減らす事を第一の主眼に置いた我が国自慢のシステムなのだ。

 

「(これが最新鋭?笑わせる)」

 

小隊長は心の中で自虐を漏らす、これが我らが親愛すべき同盟国ならば、照準装置を覗き込まなくとも全周囲ディスプレイで何もかもをやってくれるのだろう。彼等がこの機械を見れば古臭いと嘲笑するか、マトモな装備は無いのかと同情されるかどちらだろうか?

世界第二位の技術立国を謳うにしては、余りにも悲しい話だろう。曲がりなりにも転移前は、世界第三位だった我らが日本は転移と言う不幸に重ねてその鼻を折られた、これを喜劇と言わずしてなんと言う。

 

「距離3000に到達次第、砲撃開始」

 

44口径120mm滑腔砲は戦車型レギオン、同盟国将兵がレーヴェと仰々しく呼称する目標へその口を向ける。

呑気に側面を見せる忌々しき奴は、まだ我々を見付ける事は出来ていない。その索敵を全て、女王に控える女中のごとき斥候型(アーマイゼと呼称されている)と猟兵型(グラウヴォルフ)に依存しきっているのだ。

しもべが無能ならば、同盟国将兵に恐れられている女王もまた無能と嘲笑されてしかるべき存在となる。

 

「21射撃する、砲手徹甲、前方TK撃て!!」

 

南無八幡台菩薩、神仏照覧、あぁ屋島の那須与一は何を思ったやら。重量48tですら揺れる激しい衝撃、しかし砲口は一切のブレ無く目標を捉えている。

爆炎と視界を塞ぐ程の砲煙が吹き荒れた頃には、既に槍は獅子めがけて襲いかかる。

 

「命中っ!!」

 

一撃必殺!!

戦車型側面への直撃、如何に正面装甲がRHA650mm相当だとしても、側面装甲はせいぜい35mm機関砲を防ぐ程度でしかない。

当たれば必死のゲイ・ボルグ、10式装弾筒付翼安定徹甲弾は装甲と電子機器の悉くを貫きつつ、弾薬庫へと飛び込んだ。

 

「敵TK撃破!!」

 

砲塔基部から閃光が見えたかと思うと、次の瞬間には爆炎と共に獅子の鬣を思わせる砲塔が空を舞った。

何回か回転しつつ空の旅を満喫していた砲塔が地に落ち地面にへこみを作った後、魔女の釜を思わせる砲塔リングから火柱を天高く上げている戦車型は、60tにも及ぶ胴体を支える為に踏ん張っていた六脚の脚を制御する力を失い、悲鳴にも聞こえる金属音を上げて力無く脱力した。普通乗用車の数十台両分はある重量の胴体が倒れ込むさまは圧巻と言えた。

 

「よし、20続けて撃て!」

「普通科中隊が各個の判断に基づき攻撃を開始しました!!」

 

普通科中隊の言葉を反芻した小隊長は、思わず右手の坂を、すなわち普通科中隊各員が潜伏する方向へ車長用視察照準装置を向ける。

数秒してその地点から白煙が上がり、斥候型と猟兵型が蠢く方向へ何かが飛翔した。

尾を引いたそれは彼等の頭上で炸裂、多数の火を纏った破片がイソギンチャクの様な形を作りつつ降り注いだかと思うと、偶然真下に居た不運な十個の個体は見るも無惨なガラクタとなって活動を止めた。

 

「(おそらく今のはFVか)」

 

僅かな思考の後、発射地点から30mmの曳航弾が小気味よく放たれ、斥候型と猟兵型の区別無く蜂の巣に変えて行った。

反撃に出た猟兵型から76mm対戦車ロケットが放たれれば、下手人が大慌てで発煙筒を発射しつつ、草むらから姿を現す。

 

「(おいおい、堪え性が無いなあの車輌は)」

 

16式機動戦闘車の車体に、89式装甲戦闘車の砲塔を取り付けただけの8輪装甲車。

自衛隊員の間ではもっぱらFVと呼称されるそれ、同盟国がルクスと呼称する(なお自衛隊員は恥ずかしいから止めてくれと言ったが聞き入れて貰えなかった)車輌は、確か新人隊員が人員と共に持ってきた代物だった筈である。

彼等にしては巧みに後退し、稜線の向こうへと姿を隠しているが。最終的には追い立てられ、逃げ場無く撃破されるのは容易に予想できた。

 

「21射撃する、10時方向敵小集団、砲手、榴弾撃て!!」

 

数に物を言わせて装甲戦闘車を追撃するのは良いが、その行動は些か稚拙と言わざるをえない。やはり所詮はロボットである、戦術戦略の面ではどこか遅れてるとしか思えない。

10式戦車に背を向けたばかりに、多目的榴弾を受けるがままとなるレギオン。

遂に交戦圏に入ったのか、普通科隊員の射撃も加わり、弾丸と弾丸の密度はお互いの距離に比例して厚くなってゆく。それはまるで暴風雨を思わせるかのようであった。

 

「警告!21、こちら22。敵小集団がそちらに接近中、おくれ!!」

 

その報告と同時にセンサーの警告音が鳴り響く、敵接近を告げる神経を逆撫でするような耳障りな音。

 

左から接近しつつある、戦車型を七面鳥撃ちにした犯人を破壊すべく現れた多角形のそれを確認し、どうやら我々も人の事が言えないらしいと、小隊長は口に出さず自分を自虐した。

数にして斥候型が20と猟兵型が10、戦車を攻撃するにしては中々の大盤振る舞いだ。敵側に感情が有るのかはわからないが、彼等にとって相当"頭に来た"と言う事なのだろう。

 

「21後退する、20は各個の判断に基づき応戦せよ」

 

冷静に小隊に指示を出しつつも、敵への攻撃を止める事は一切しない。

それは奇しくもロボットにはロボットと言う図式となった、12.7mm機銃とスモークディチャージャーを拵えたRWSにて猟兵型の接近を防ぎつつ、普通科部隊を援護する為にあらかじめ装填しておいた多目的榴弾を発射、しかし敵には学習能力があるらしく、敵は数機程度で分散して被害を抑えようとしていたようだ、忌々しい事に奇襲を仕掛けた時ほど効果を発揮していないように見える。

 

「戦車後退、操縦手後退せよ!!」

 

小隊長の声に弾かれたように、操縦手はクラッチを切り替えた。ガチャガチャとクラッチを切り替える特徴的な駆動音を響かせつつレバーの位置をバックへと切り替え、アクセルをこれでもかと思い切り踏みつければ、10式戦車に乗り込む全ての乗員の体がシートに押し付けられた。

 

「っ!!」

 

 

自衛隊戦車お得意の殺人ブレーキを成しえる技術!!

 

 

そのの応用が48tの車体を高速で後退させる高機動を作り出す

 

 

履帯は白く儚い野花を、踏みつけられても屈しない雑草を巻き添えにし、辺りに泥と砂埃が舞い散る

 

 

巨体が爆音を響かせ後退した時には、哀れ地面は表面が剥げ落ち何も残らない

 

 

「っ!!スモーク射出、スモーク射出!!」

 

猟兵型から対戦車ロケットが放たれる、先程は他人事のように装甲戦闘車へ放たれるそれを眺めていたが。いざ自らが標的にされ、身を守る装甲を貫く可能性を秘めていると考えれば、中々に恐ろしい兵器と言えよう。

幸いにしてこの対戦車ロケット弾は無誘導だったと言う事だ、こちらがスモークや赤外線妨害装置にてレギオンの目を眩ませてやれば彼等は盲撃ちをする他無く、明後日の方向にロケットは飛翔して何処かへ去っていく。尾を引く煙は何処か哀愁を漂わせた。

 

「(さぁてどうするか?流石にこのままではジリ貧も良いところだ)」

 

一撃、二撃と敵の攻撃を回避した所で、最終的に対応が追い付かなくなり、側面辺りに回り込まれて対戦車ロケット弾を撃ち込まれるのが関の山だろう。そういう時の為にアクティブ防護システムを積んではいるのだが、それにしたってロケット弾を撃ち落とす飛翔体の数には限りが有る。日本人特有と言うか、軍人と言う生物の本能的に、そう言う限りの有る兵器は使いたくないのがさがである。

 

「(まぁかといって、ロケット弾を切り抜けた所で、今度はカッターで八つ裂きだろうがな)」

 

かつてフィルアデス大陸にレギオンが上陸した際、同盟国と協同してレギオン掃討を主任務とするフィルアデス方面隊として参加した彼には、数年前の苦い思いでが頭を過った。

それは何とも後味の悪い話であった、とある街にてレギオンを討伐していた際、哀れ猟兵型に囲まれた味方戦車が、身動きも取れず応戦も出来ず、最終的に装甲ごと生きたまま首を刈られたのを目にしたのだ。

 

「(アイツと同じ運命を辿るのは勘弁願いたい物だが……)」

 

またもや衝撃、彼が思考しつつも発する射撃命令の元、未だに力強く120mm砲からは榴弾が放たれるのだが……。ロケット砲を撃ち切った事によりランチャーをパージした猟兵型は、その俊敏性を駆使しつつ左右に跳ねる事により、巧みに榴弾の爆発を避けてこちらに近付きつつあった。

 

「(やっべぇ、この短時間で学習しやがったのかよ!?)」

 

小隊長の額からは汗が流れ、それが伝い顎から水滴となって膝上に垂れる。しかし彼にはたった一粒の汗すら感じる余裕は無い。目の前に迫りつつある"無機質な殺意"、不気味なバイブ音を発する高周波カッターは、確実に自らを地獄へ叩き落とす死神の鎌だ。

 

『援護する、ポイント9-2まで後退せよ』

 

広域多目的無線機(改)に割り込んで来た指示はとても簡潔で要点だけを抜き取っていた、しかも無線機越しの声はどうやら未成年の様で小隊長は面を食らった。何が起こったのか全くわからず、彼は思わず反射的に聞き返した。

 

「なに?貴様は何者だ!?官姓名を名乗れ!!」

「今はその状況ではない」

「なっ!?」

 

彼が必死になって絞り出した言葉はにべもなく一蹴された。小隊長と砲手は思わず顔を見合わせる、その表情には戸惑いが隠せないでいた。

 

「小隊長!!どうすれば良いんですかぁ!?」

「あぁくそ!8時の方向へ後退だ、急げ!!」

 

取り乱した操縦手の必死な声で、小隊長は我に返る。狼狽して何度か自分を振り返る操縦手を見れば、もうどうにでもなれと半ば投げ槍な心境で彼は指定されたポイントへ向かうよう指示する。必死になって敵からのロケット弾を回避し続けた操縦手は、やっと下された明確な命令によって正気を取り戻しつつある。

 

「(さて何が来やがるって言うんだ!?)」

 

指定されたポイントまで到達した彼らは、未だ距離を縮めようとするレギオン達を睨む。少しして猟兵型の一個個体の側面に何かが直撃したのが見え、衝撃で横っ面に吹き飛び、暫くして小規模な爆発が光景が目に入ってきた。その猟兵型を初めとして、自分達を追っていた他のレギオンも後を追うように撃破されて行く。唐突な出来事に小隊長は、ジト目と部下から表現される特徴的な目を思わずを見開いた。

 

「な、何が起こったって言うんだ……?」

 

戦闘中は私語を慎む正規兵たる小隊長は、驚きを隠せず疑問を口に出した。数秒して砲声が耳に入る、これは高初速砲の特徴だと瞬時に彼は気が付いた。猟兵型の爆発の大きさからして、40mm以上105mm以下と予想を立てる。思考に拭ける小隊長の耳に、今度は少女の綺麗な声が無線機越しに入ってきた。

 

『こちら第86機動群、第4普通科中隊、聞こえますか?』

『こちら第4中隊戦闘群の群司令、百田三佐。かのストライク・パッケージの来援に感謝する、あと少しで突破される所だった』

 

中隊群司令と形式的な対応をする相手の声は、この苛烈なる戦場には不釣り合いな音色だった。これがかの『鮮血女王』と悪名高き作戦部総指揮官なのだから、おまけに十代で大佐と来たものである。子供が戦争を担い、尚且つ高い階級とは世も末だなと小隊長は密かに思うのだった。当然である、アニメなら兎も角、現実でこの様な事案が乱発すれば、真っ当な日本人なら世の不条理を嘆くだろう。

 

『今我々の現在地と、レギオンの増援予想をデータリンクで各員の情報端末にインプットします』

「21より20へ、増援として第86機動打撃群が接近中、誤射に注意せよ」

 

手早く部下達に警告を発しながら、小隊長は共有された情報を確認しが、与えられた情報に彼は懐疑の念を抱かずにはいられなかった。情報では後二個大隊程の斥候型と猟兵型、そして先程の倍近い戦車型の到来を予期していた、しかも長距離砲型の(スコルピオーと呼称されている)支援付きと言うオマケが含まれている。そして今我々が再度アンブッシュすべき地点までもが、地図上に記載までされていたのだ。

これは本当に考えて作った奴か?と彼は訝しがる。

 

『中隊戦闘群、こちら中隊本部。打撃群より提供された情報に従い移動せよ、オワリ』

 

御上はこう言うのだ、従う他あるまい、と小隊長は上司の命令に反抗する事なく行動に移した。自衛隊員として私心は一切抑え込み、どのような命令も遂行する訓練を受けてきたのである。後は万事尽くして天命を待つのみだと割り切っていたのだった。

 

「21より20、所定のポイントへ急行せよ、オワリ。操縦手、ポイント6-7へ前身!!」

 

各戦車がいそいそと車体を進める、それに平行して普通科隊員が未だに残存しているレギオンへ攻撃を仕掛けつつ、負傷者の回収を平行して行っていた。なお戦死者の遺体の回収も平行して行う。それは自衛隊員の遺族に遺体を返す意味も有るのだが、レギオンに頭脳を回収されるのを防ぐ意味もあった。

 

「先程、FVが一両撃破されたらしいです」

「先程追い回されていた奴か?」

「いえ、別の奴らしいです。側面から猟兵型にやられて、対戦車ロケットをもろにターレットリングに撃ち込まれたらしいです………」

 

砲手からの何気無い報告で、思わず小隊長は胸を撫で下ろした。これで先程の装甲戦闘車が撃破されたとなれば、自分達は何の為に労力を使ったのかという話にもなるし、なのより目の前の友軍が撃破されると言うのも寝覚めが悪いのだ。

 

『22、所定のポイントへ到着、指示を請う、オクレ』

『23、所定のポイントへ到着、指示を請う、オクレ』

『24、所定のポイントへ到着、指示を請う、オクレ』

 

すべての戦車が配置についた、小隊長は決められた方向へ砲身を向けるよう指示し、情報端末に目を向けて待機する。いつの間にか第86機動打撃群の表示は消え、彼等は行方知れずとなっていたのだった。恐らく敵に電波を特定されぬよう無線封止を行っているのだろう、小隊長は彼等の念の入れように思わず感心した。

 

『シキツウ、こちら第4小隊。ポイント2-1より敵集団来襲、指示を請う、オクレ』

『第2小隊よりシキツウへ、ポイント3-7より敵集団一個大隊規模が来襲、オクレ』

 

普通科隊員からの報告が入ってきたと同時に、腹に響くような重い音が、エンジンの騒音で外部の音が入りにくい筈の戦車の中に響いてきた。それと連動して小刻みに揺れる車体、静止している筈の48tの図体が揺れる程の何か。

 

「小隊長、敵砲兵の事前砲撃ですかね」

「その様だ、ポンコツ共は何としてもここを押し通りたいらしい」

 

先程は無かった長距離砲兵型の155mm砲弾と、自衛隊が復活させて久しいクラスターをしこたま積んだロケット弾が戦場を耕して行く。木々は倒され地面は大きく凹み、このままでは辺り一面が焼け野原に変わるかと思わせる。

 

『クソッ!!第2小隊よりシキツウへ、一個分隊が消滅!繰り返す、一個分隊が消滅した!!』

「やっこさん、念には念をって所だな」

 

余裕を失ったのか悪態を付きつつ報告を入れる普通科隊員、その焦った通信を耳にして小隊長は苦笑する。しかし彼の額には冷汗が浮かんでいた、内心の恐怖を押し込めている様を砲手は悟り、思わず天井を見上げて砲弾が直撃しないよう祈った。

 

「だ、大丈夫なんですよね?この戦車」

「無駄口を叩くなバカ、その時はその時なんだよ」

 

恐怖に震えた声を発する操縦手へ、苛つきながら発言を制する砲手。彼だって不安なのだ、そこへ殊更不安を煽る発言をされれば腹が立つと言う物。操縦手にとっては堪った物では無いが、平等に生物を吹き飛ばす戦場の女神を相手にしたならば祈る他無い。

 

「戦車を信じろ、日本を信じろ」

 

譫言なのか諌めの言葉なのかわからない単語を、小隊長は口にする。こう長時間も砲撃を続けられれば、屈強な大男も精神が参りそうになるのだ。

一応は耐弾試験では155mm砲弾の弾片をしっかりと防ぐ10式戦車だが、その素晴らしい対弾性能を誇る防御力は155mm砲弾の直撃は想定されていないからだ。仮に防ぎきったとしても何が起こるのかはわからない、こう言うのは当たらないに超した事はない。

 

「ん?収まったか?」

 

砲声が止み、一瞬の内に静かになる戦場。だが数秒もしない内に大きな変化が起きる。

 

『第3分隊より小隊本部へ、敵集団来襲!来襲!!』

『第1小隊より小隊本部へ、ワレ敵の突撃を受く、敵の突撃を受く!!』

 

一斉に敵の攻撃を告げる単語が津波のように押し寄せてくる、それは勿論普通科隊員がレギオンの津波に呑まれようとしているからこその喧騒。彼方こちらの悲鳴の様な報告が、普通科以外の自衛隊員の神経を逆撫でする。

 

『23より20、正面敵戦車4、突っ込んでくる!!』

『24より23、囲まれるぞ!!』

 

車長用視察照準装置の先には、戦車型を相手にしつつ後退する三号車の影があった。しかし三号車から見て右側の森からは対戦車型が、静かに主砲を彼等に向け、撃破するタイミングを虎視眈々と狙っていたのだった。

 

「21より23、八時方向に対戦車型、狙われているぞ!!」

『なっ!!』

 

僅か一言、三号車の車長が驚きの声を上げた。それと時を同じくして砲口か光り、飛び出した物体が車体後部を貫いた。

斜め後ろから貫通したAPFSDSは勢いを落とさず、10式戦車の内部を人も機械も関係なくズタズタにした。タングステンの塊は最終的に弾薬庫で止まったのか、戦車の砲塔が高らかに弾け飛んだ。火柱を上げる光景は、先程奇襲した戦車型の末路を目撃した全員に思い浮かべさせた。

 

「クソッ!普通科と86とやらは何処に消えやがったんだ!!」

「無駄口を叩くな!正面敵戦車、弾種徹甲撃て!!」

 

砲手が八つ当たりした相手である、三号車の付近の普通科隊員は何処かへ消えてしまっていた。大量の斥候型や猟兵型に集られて、壊滅したか逃げ散ってしまったのである。

第86機動打撃群は無線封止の為に行方知れず、逃げては居ないのだが味方に対する連携が足りていなかった。

 

『敵砲兵射撃第三派、きまぁぁす!!』

『補給班より中隊本部、弾薬集積所に被弾!集積所に被弾した!!』

 

ここに来て一番聞きたくなかった報告が入ってくる。このレギオンの物量に対して何とか持ちこたえていた要因、事前に大量の敵を予知して出来る限り貯蔵していた弾薬が全て弾けとんでしまったのだ。

 

「我等の進退ここに極まるか………!!」

「んな格好いい台詞吐いてる場合じゃないでしょう!!」

 

小隊長の呟きに対してヒステリックに叫ぶ砲手、彼を一瞥した小隊長はディスプレイを睨んだまま無線機に耳を傾けた。普通はここで撤退を選ぶ筈だが、中隊長からは一言も撤退の二文字が飛んでくる事はない。

たしかにここで撤退を行えば、共同作戦をと取る第86機動打撃群は敵中に孤立するだろう。第一、後退すると言っても敵の猛攻が収まらぬ内に撤退など出来ようかと言う話である。

 

「(まだ打撃群は攻撃を開始しないのか……?このままでは此方が全滅してしまうぞ…………)」

 

まさか冷酷なる作戦部総指揮官が、我々の全滅も織込み済みで作戦を練った訳でもないだろう。そうなれば日本と同盟国の関係はズタズタとなり、今後の戦争継続に支障が出かねない。あの『鮮血女王』さまの上司が黙っては居ないだろう。

 

『第4小隊より小隊本部へ、弾薬欠乏!弾薬欠乏!!』

『小隊本部より第4小隊へ、第2分隊を回す。あと少しだ、何としても持ちこたえろ!!』

「(あと少しと言ったって、あと何分なんだろうかな……)」

 

車長用視察照準装置で確認している先の、普通科中隊第4小隊の光景は地獄絵図と言って良い有り様であった。40名は居たであろう隊員は、敵の苛烈なる銃撃と砲撃により半数以下にまでその数を減らし。装甲戦闘車も5両居たのだが、今はもう穴だらけのガラクタと化し、無惨にも車体の側には首無し死体が転がっている有り様であった。

その情景を眺める小隊長の耳に入る警告音。十時の方向からレーザー照射を受けているらしく、慌ててその方向に視線を向ければ、そこには自分達に砲口を指向する戦車型の姿があった。

 

「(あ、ヤバい)」

 

絶対絶命を覚悟した小隊長、ただ凝視するしか彼には出来なかった。しかし後方から光が飛び上がったと思うと、その光りは彗星のように戦車型に降り注ぐ。突き刺さった光りを浴びた戦車型型は火花を散らし、これまた何度か見た砲塔が吹き飛ぶ様を見せつけられた。その後無数の光がレギオンの集団に殺到、散弾、40ミリ弾、88ミリ弾が辺り一面を多い尽くした。

 

『あぁやった!やったぞ!!』

 

歓喜の声が無線機から響く、チャンネルは確か中隊本部のオペレーターに繋がっていた筈である。戦闘時には決して私語を漏らさず感情を表さずを第一にしていた彼の歓声が、無線機をやかましいスピーカーに変えた。

 

『あ、あぁすみません。第86機動打撃群の後方浸透が成功、敵レギオンとの挟撃が可能です!!』

『よしっ!中隊本部より中隊戦闘群へ、反撃の時間だ!鉄屑の亡霊どもを再度あの世に送るぞ!!』

 

百田中隊長の命令を聞いた瞬間、地の底まで落ちていた味方の士気が回復した。至る所で自衛隊員の吶喊を上げ、レギオンに対して攻撃しつつ前進を仕掛ける。今までの鬱憤と戦友の無念を晴らす為に、全ての部隊が突撃を敢行した。

 

『21より20へ、我々も前進する、普通科の盾となりつつ進軍せよ、ただし機動打撃群との誤射に注意』

 

喚声を聞きつつ小隊長は敵集団後方を覗き込む。強烈なパンチを乱打するかのような砲弾、通り魔の様にレギオンとレギオンの間をすり抜ける同盟国のフェルドレス《XM2 レギンレイヴ》。あるレギンレイヴは高周波ブレードを用いて、戦車型の装甲をマグロの様に捌いていた。

 

「こいつはすげぇ、ポンコツどもが蜘蛛の子の様に散り散りだ」

 

砲手が思わず感激の声を呟くのも無理は無かった、たった一つの戦隊が乱戦に持ち込むだけでレギオンは戦列を用意に崩し。自衛隊中隊戦闘群の射撃を受けて右往左往するだけのレギオン達は、乱戦に参入しなかった残りの第86機動打撃群に、まるで七面鳥を撃つがの如く正確に88ミリ砲で射ぬかれて行ったのだ。

 

「戦闘が終わるのも時間の問題と言う事ですかね……?」

「最後まで気を抜くなよ?うかうかしている時に、側面から対戦車型に吹っ飛ばされるのは御免だからな」

 

操縦手の安堵が混じる質問に、小隊長は渋い顔をしながら諌めた。砲撃される事を想像した操縦手は顔を真っ青にし、そそっかしくハンドルを握り直した。彼が質問するのも仕方がないだろう、先程まで戦場に垂れ込めていた重苦しい空気が、奇襲の成功と数を減らして行くレギオンによって掻き消えて行ったのだから。小隊長もその雰囲気を肌で感じ取って居た、しかしまだ何処か、何かが引っ掛かる気がしてならない。

 

「小隊長、敵が撤退して行きますよ、どうします?追撃を行いますか?」

「今の俺達にそんな余裕が有るか?それよりも周囲の警戒を行った方が良いだろうよ」

「なにか引っ掛かる事でも?」

「いや、別に………」

 

砲手の質問に、彼は曖昧な答えを出さずには居られなかった。確かに敵は撤退を開始し、分散して森の中に姿を消すなり、水平線や稜線の向こう側へと消えて行く個体すらあった。戦闘はこちらの勝利と言う事で、後は残存兵員の掌握と後処理に移るとは思うのだが………。

 

『中隊本部より全部隊へ、集結、集結せよ。各部隊の隊長は隊員数の点呼を取り、本部へ報告せよ』

 

実質的に戦闘の終わりを告げる命令が全ての部隊へと下った、その言葉を聞いて安堵の声を漏らす隊員や、地面に腰を抜かしたかのように座り込む隊員など、十人十色の行動が戦場の跡地で行われた。

当然、それは小隊長車の10式戦車の中とて例外では無い、小隊長はフッと一回吐息を漏らした。砲手はタバコを咥えて背凭れに寄りかかる、禁煙の為にその先端には火は付いてはいなかった。

 

「猿渡小隊長、この後我々はどうなるんでしょうか?」

「さあな、後方に控えてる第4中隊戦闘群に交代か、同盟国のどっかの部隊と交代かって所だろうよ」

 

流石に一日中叱咤し続けると言うのも可愛そうな話なので、小隊長はやっと操縦手にマトモな回答を送った。その言葉を聞いてぱぁと顔を輝かせる操縦手、なんとも分かりやすい男だなと彼は思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『対砲兵レーダーに感!!着弾予想ポイント16-7、付近の部隊は散会せよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!!退避!退避!!」

 

各戦車が弾かれた様に散会を始める、しかしその行動は遅きに失したと言わざるを得ない。油断していた為か、重量48tの巨体は這うように動く事しか出来なかった。

普通科隊員は退避するのを諦めたのか、地面に伏せて爆風を浴びないようじっとしている。付近に着弾しない事を願うしか彼等には手段が残されていなかった。

 

『着弾まで、5、4、3』

 

たったの一秒が、数分にも数時間にも感じる。目の前の全てがとてもゆっくりに見える感覚を、恐怖の中で猿渡学小隊長は感じ取るのだった。

 

 

 

 

 

『だんちゃーーく、今!!!』

 

 

 

 

 

その時、猿渡学は地震の初期微動を思わせる振動を感じ取ったかと思えば、数秒も経たぬ内に激しい縦揺れと、世界が上下逆さまになる気持ちの悪い感覚に襲われた。そしてガンッと鈍い音が彼の鼓膜を叩き、一瞬にして目の前が漆黒に包まれ全ての感覚が消えて行くように感じるのだった。




ひとまずはプロローグ的に、投稿した所存であります。
ひとまずは
ミ帝・グ帝連合艦隊vs電磁砲艦型の海戦
ムー大陸戦線での撤退戦
ヘリが使えないならワイバーンを使えば良いじゃない
等を考えては居ますので、時間が出来たら描いて行く次第でございます。
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