日本国召喚&エイティシックス クロスオーバー(仮)   作:凡人作者

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やあ皆お久し振り、三ヶ月待たした凡人だ。
すまない、モチベーションが全然上がらなかったんだ、すまない。多分この状況ずっと続くだろうから迷惑掛けるね。

こんな作品をお気に入りしてくれた16人の読者方、評価をくれたZERO零氏に感謝申し上げる。有難うございます。


世界会議

先進11ヵ国会議

世界会議ともG11とも呼称される、二年に一回の周期で行われる大国間による国際会議である。主に五つの列強が主体となり、オブザーバーとして六ヶ国の文明国が持ち回りで参加する事となるのだが。

最近では主に自国の自慢大会と他国への罵倒嘲笑大会へと化しており、国家間の話し合いの場とはとうてい言えない程にまで堕落しきっているのであった。

 

しかしそれもまた仕方がない事と言えよう、かれこれ録な進展も無く惰性で会議を続けていた都合上、今となっては話すことと言えばこの様なしょうもない小話程度ぐらいなのだ。

そして歴史が経つにつれて、各国が今まで道理のやり方で国家を存続出来るようになったのも原因の一つであった。文明圏での出来事は文明圏内で終始するようになり、第一、第二位文明圏が第三文明圏をそっちのけで自文明圏の問題を優先するのと同じように、第三文明圏は第一、第二文明圏よりも自文明圏を優先する…………。これが今まで続いたパーパルディア皇国の増長の原因であった。第一に第三文明圏でパーパルディア一国が無双していたからこそ、他文明圏はかの国だけを相手にしていた。故に、先進11ヵ国会議は硬直を招いたのだ。

 

しかしながら今回の世界会議は、今までよりも状況がまるで違う様相を見せる事になる。パーパルディアの滅亡とそれに呼応しての新たな国家群の確認、列強最下位レイフォルの滅亡と新たな強国の出現、波乱になることは間違い無しなのだが。

その国家群以外の各先進国の大使は、愚かにも何時もの自慢話大会逆張大会に精を出そうと考えていたのだ。

これも、会議の硬直ゆえであった……………。

 

 

 

 

 

 

港町カルトアルパスに建てられた一際豪華な建物、高官や他国の来賓を迎える為に設置されたホテルが存在する。世界会議を開催する都市であるために、他国の重鎮に無礼が無いようにと、時の神聖ミリシアル皇帝が自国の優位性を誇示するためにと、特注で作らせたのがこの帝国ホテルであった。

日本人的に言えばローマ建築と表現した方が分かりやすいであろう、如何にもファンタジー作品の建物だと言える。

フロントに佇む大理石で仕立てられた巨大な柱は、全高30mにも及び観光名所としても知られていた。

 

ホテルにも関わらず観光名所としての意味合いが強いのは、やはりミリシアル皇帝直々と言う面が強いからかもしれない。たしかにこのホテルは勿体ないからと使用されはするが、重鎮達の待合室の意味合いも強いのだから、普段は国政を司る(つまり日本で言う所の国会議事堂)アルビオン城もかくやの厳重な警備が敷かれ、ベッドメイキングを行う用務員ですら厳選し専用の合鍵が持たされる程の超機密主義、それ故に一般人は離れた場所から帝国ホテルを眺めるしか無いのである。

 

そのホテルの窓から西日が差し込める一室には、一人の男性がテーブルに足を置いて読書に耽っていた。

左半分が白髪で埋め尽くされ、所々で皺が目立つ利発そうな顔、しかしながら身体を鍛えてはいるのかガタイは凄く良い。学者の様な顔付きにはまるで似合わない身体には、安物のシャツを来ているので何処かのセールスマンに見える。

 

彼は欠伸をしつつ文字の羅列を眺めているが。時間を気にしているのか、眼鏡の奥の細い目をギラリと輝かせ、何度か時計の針を確認していた。そしてある頃合いになって、彼は紅茶に口を付けつつ読んでいた本をゆっくりと閉じる。

するとタイミングを合わせたかのようにドアがノックされ、自分を呼び出す女性の声が分厚い木製の板ごしに響いてきた。

 

「エルンスト首相、お時間です」

「あぁわかった、いま行くよ」

 

エルンスト・ツィマーマン、ギアーテ連邦の初代大統領にして、革命家としてギアーテ帝国を崩壊させた軍人である。

転移前までは自分の信条と政治的意図の為に"暫定"大統領を名乗っていたのだが、ギアーテ連邦やその他諸国の一斉異世界転移による大規模な混乱を受け、誰も彼の後任をやりたがらなかったが故に、正式に初代連邦大統領にして連邦軍最高司令官の座に付いた男である。

 

そんな男は椅子に掛けた皺まみれの安物のスーツを羽尾い、自室から出て秘書を伴いつつ、諄くなる位に長く無駄な装飾に溢れた廊下を渡る。彼は自分の後ろを従者の様に付き添う秘書から今日の予定を聞き、面倒臭いと言う雰囲気を醸しつつ一言漏らした。

 

「今日はとんと忙しくなるなぁ………」

「本来は外交官が行うべき案件です、首相自ら赴く事は無かったと思いますが………」

 

本来、先進11ヵ国会議は国際会議でこそあるが、一国の大統領や国王が場に赴くと言う出来事は今まで一切無かったのである。他国が国のトップの変わりに外交官を派遣するのに対して、ギアーテ連邦以下第三文明圏の新興国の首脳が出向すると言う異例の事態が起こったのは、一重に第三文明圏並びに東方文明圏外の状況がイレギュラーであった事と。

そして最も蔑まれている第三文明圏の、まして新興国に対して"ケジメ"と"新人いびり"を行う為でもあった。招待状を寄越してきた神聖ミリシアル帝国、ムー、エモールの三ヶ国の大使がやけに高圧的で品位に欠けた態度を取ってきた事から窺い知れる。

ただしロア=グレキア連合王国はレギオンとの戦争が加熱している為に国王の来訪はパスしており、ノイリャナルセ聖教国は鎖国に近い状態である事から一応の言葉を伝えるだけに留まっている。今回ばか正直に会議へ向かう事となったのは、ギアーテ連邦、日本国、レグキード征海船団国群、ヴァルト盟約同盟の四ヶ国と相成ったのだった。

 

「仕方ないじゃないか、先方の要求なんだからさ。まー、私も言いたい事が幾つか有ったし好都合なんだけどね」

「勘弁してください、下手すれば外交問題に発展しかねますよ?」

 

一応は世界のトップである神聖ミリシアル帝国から参集を強要されているのだから、エルンストと言えど渋々顔を出さねばならないのである。

それに今のフィルアデス大陸並びにロデニウス大陸の現状を伝えるのには、世界の要人が集い、異世界の全ての人々が注目する先進11ヵ国会議は、世界に訴えかけるのに格好の場であったのだから仕方ないとも彼は思っていた。

しかしエルンストは根っこからの革命家かつ理想主義者である、つまりそれは反骨精神が強いとも言える性格。舐められたら舐められっぱなしでは気が済まない、やられたらやり返すべきと考えているのが彼であった。

 

「元々相手側から振られた失礼なんだ、これぐらいやってもバチは当たらないと思うけどね」

 

この性格が、かつて他国に戦争を挑み、なおかつ他の国や友好国へも喧嘩を売ろうとしたギアーテ"帝国"上層部に猜疑心を抱き、そして恒久的平和を求めて自らの主に刃を向けた男の本性である。

 

「首相、お待ちしておりました」

「うん、ご苦労さん」

 

エルンスト達は途中から合流したSPを伴い、エレベーターによってフロントまで移動する。一面ガラスの玄関の向こうには、既に多数の人集りが出来ていたのが見て取れた。

恐らくこの国の記者の類いだとは一発で解る。魔射器と呼ばれるこの世界特有のカメラを持つ者や、先端に球体が付いている杖を持った美人のエルフ、メモ用紙とペンを構え一言も逃さないよう構えるメガネの獣人と十人十色の光景であった。

 

「いやはや、大層なお出迎えですなぁエルンスト首相」

「…………武田首相…………」

 

いつの間にエルンストの隣に立ち、皺が多くなった顔で胡散臭く笑うのは、彼と同じように招待を受けた日本国首相武田実成であった。公務で多数の記者やカメラマンに追いかけ回された経験を持つ武田は、どこの国でも、まして異世界であっても同じ光景を見る事になるのかと、その笑顔の奥は酷い憂鬱が渦巻いていた。

 

「それにしても物好きな奴等だな、俺にとっちゃこの世界の方がよっぽど奇妙でならねぇんだが………」

「我々の常識と奴等の常識は違うのだ、それが彼等にとっての我々への興味へと繋がっているのだろう。仕方もあるまいよ」

 

レグキード征海船団国群の事実上のリーダーとなったイシュマエル・アハヴ大佐と、ヴァルト盟約同盟議長コンラッド・ヘプナーもまた護衛を引き連れて合流してくる。こうして第三文明圏より参集した錚々たる面子は、世界の荒波へ挑戦すべく玄関へと歩みを進める。巨大なガラスのドアが近付くに比例して、外の喧騒は鼓膜を痛める程の大きさになって行く。

 

そしてエルンスト達がホテルより姿を表した時、歓声は最大限の音量となり、カメラのフラッシュは砲爆撃を思わせる程の激しさで光輝くのであった。彼等が迎えのリムジンへ乗る為に作られた道は両脇を警官が固めるが、それは津波をギリギリで防ぐ防波堤を思わせる光景であった。

 

「オハタイト・タイムズです!今回の世界会議に対する意気込みは!?」

「ミリシアル・ニュースポストです、始めて踏みしめる外国の土の感想は!?」

「おいッそこまでだ!不用意に要人に近付くんじゃない!!」

「我々はニューストルキアの者です、エルンスト首相一言を!!」

「コラッ!!線からはみ出ようとするんじゃない!戻れ!!」

 

人の塊を必死になって食い止める警官達に少しも目もくれず、記者の質問と言う雑音にも一向に反応を見せず。彼等はこれと言って不都合も無く。各々方は振り分けられたリムジンへと乗り込むのであった。

 

「フム、内装やそこソファは我が国の物と勝るとも劣らずって所かな?あんまり高級車乗らないからわかんないけど……」

 

エルンストは内装のあちこちを覗き込んだり、座り心地を確かめる為に座ったままジャンプしてみたりと、一見子供にしか見えない行動に秘書は呆れて目を細めていた。

それも仕方無い事である。彼は自分のスーツだけでなく、公用車も一般庶民が所持する物を乗用していた。これは彼のイメージ戦略の一つであり、諸侯や貴族よりも民間人を重んじる人間だと民衆に思わせる事を狙っていたのだ。

…………長年貴族や政治家専用の公用車の内装に携わっていた職人達は、彼の任期中は手持ち無沙汰気味である上、初代大統領の乗用車を作ると言う名誉に与れなかったので、彼等からは絶賛不人気な政治家になってしまっているのだが………。

 

「にしても、このカルトアルパスの街並みは面白い事になっているなぁ。ビルも有るしモダンな住宅街もある、なんと言うか今と昔が混在している様な姿だ」

 

窓越しに流れる、広い道路の向こう側の風景を観察しつつ、彼は物思いに耽っていた。彼の思考の裏にあるのは、愛すべき祖国の首都ザンクト・イェデルであった。

 

一部だけが異常に栄え、雲を突き破り蜃気楼に揺れる高層ビルの群れ

 

貴族の悪趣味がふんだんに詰まり、中では毎夜彼等が豪遊の限りを尽くし明かりが途絶える事がない豪邸群

 

ビルとビルの狭間に混在し、犯罪と闇金と売春婦とマフィアがのさばる、貧困故に行き場を無くした者達が作る貧民窟

 

余り想像して気持ちいい風景ではなかった。

こんな街を少しでも無くし、高貴も下賎も無く、誰もが明るい明日を目指して歩める都市を増やそうと義憤を露にし、革命へと行動を起こしたのだが………。

 

「何事も上手くは行かないよなぁ」

「は…………?如何成されましたか?」

「いや…………独り言だよ」

 

秘書に話した所で彼女の気分が悪くなるだけだと考え、自分の心の中を吐露する事をぐっと彼は飲み込む。

革命してすぐに勃発した戦争ゆえに、当初の理想がおざなりとなり、何も変わってない変われない、挙げ句には力ある者や革命に賛同した者達の下克上が頻発し、目の前の驚異が有るのにも関わらず内乱の危険性を孕んだ祖国の話を秘書にして何になるのか?である。

余談だがこのギアーテ連邦の国情は日本の専門家からして、もしエルンストがナポレオン並みのカリスマ性とビスマルク並みの外交能力が無ければ、たった数日間で内部分裂を引き起こし、貴族や諸侯に軍閥と別れて十数年は内戦をしていただろうと言われる程に、首の皮一枚繋がった状況と言われている。

 

彼の憂鬱を他所にリムジンは目的の場所へ人を運ぶ任務を着実に進めて行くのだった、後部座席の主が後に波乱を引き起こす事なぞ全く予想せぬままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国文化館の中に存在する国際会議場は、通常なら何時もの様に各国の自慢話大会の筈だった。しかしこの同心円状に席が設えられた薄暗い室内は、後に世界の命運を180度に変えた場所となるとは一体誰が予想しただろうか?それは場面の一つ一つを逃さまいと、必死にカメラを向けるカメラマンも。

まして今回重要な報告を行う、未来予知をウリとした全高2mの竜人種の大男ですら予知できぬ事であるとは、なんとこの世界は滑稽で茶番で喜劇に塗れた世界だろうか。今頃この事態の張本人たる、異世界の神々ですら自分が仕出かした失態に頭を抱えているに違いない。

 

「エモール王国のモーリアウル氏、発言を許可する」

「エモール王国のモーリアウルである。今回は、皆に伝える事がある。重要な事であるため、心して聞くがよい」

 

中央の議長席に座るリアージュに発言を促され、エモール王国の指定席に座っていた大男、モーリアウルに各国の代表が注目し、場が静まれば、魔道マイクに乗せられた彼のしわがれて年老いた声が会場に響く。その音色はまるで他者に威圧感を与えるような、余り聞いて気持ちいいとは言えない。挙げ句さらに声のトーンを下げて物々しく喋るのだから尚更である。

 

「先日、空間の占いを実施した」

 

その言葉を耳にして各国の大使達は気を引き締める。エモール王国の占いは的中率98%、ほぼ確実と言って良い。会議は基本的にこの占いを元にして今後を決めて行くのだ。

 

「その結果だが……古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国が近いうちに復活するとの結果が出た」

「「「な!!!!」」」

 

ラヴァーナル帝国、その単語が出ただけで世界の要人達は絶句し、目に見えて顔を真っ青にしていった。

 

「な……なんてことだ!!」

「伝承が本当ならば、我らが抗する術はないぞ!!」

 

会議場はざわめき、各々方が隣接する人間と話し掛け、議会とは別に身勝手に今後の対策を検討し始める始末であった。かつての魔法帝国に散々トラウマを植え付けられた彼等にとって、今回の占いの結果は相当にヤバいと言うものだった。何時もの様に自慢話大会でもしてさっさと帰ろうと考えていた彼等が、真面目に脳細胞を活用させねばならない事態だ。

しかしギアーテとアニュンニールの二ヶ国から来た人間は、その喧騒を他所に密かに笑みを浮かべ。ギアーテのついでで来ただけの三ヶ国のトップは、はぁそうですかと言わんばかりに無関心が目に見えた顔をしていた。

 

「時期や、場所は、空間の位相に歪みが生じており、判然としないが、我らの計算だと、今から4年から17年までの間にこの世界の何処かに出現するだろう。

奴らに、どれほど抗する事が出来るのか、伝承がどれほど本当なのかは不明だが、奴らの遺跡の高度さが、その文明レベルの規格外の高さを物語っている。

各国は、いらぬ争いをする事なく、軍事力の強化を行い、世界で協力して古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国復活に、準備をするべきである」

 

 

 

 

 

 

「くっくっくっ……ハーっはっはっは!!!」

 

 

 

 

 

 

突如魔導マイクで増幅させられ、嘲笑を多分に含んだ笑いが議会場を蹂躙し、全ての人間の目は一点に集中される事となった。

張本人のついでで来た三ヶ国のトップですら、何事か?と気でも狂ったか?と言った感じに怪訝な目を向ける。ただし張本人はそんな視線も気にせずに笑い続け、最終的に咳き込んで爆笑を止めた。

 

「貴様!何を笑って……」

「失礼、発言よろしいですか?」

「「はぁ!?(このタイミングで!?)」」

 

まさかこのタイミングでいきなり発言をし出したのは今回初出席のギアーデ連邦代表、エルンスト・ツィマーマンだった。第三文明圏の田舎者かつ新参者の男が一体何用なのか?魔法帝国の問題を遮ってまで彼が伝えたい事はなんなのか?議長のリアージュは彼の無礼を敢えて受け流し、寛容にも発言する許可を与えた。

なお余談だが最後の反応には、日本からの代表である武田も入っていた。

 

「……ギアーデ連邦の国家元首か。会話を遮ったのはこの際受け流すが、なんだね?それともこの場で会話を遮るというのがどういう事か知らないのかね?」

「いえ、そういう事ではありませんが、僕にはこの場を借りて言わせていただきたい事があります。それこそ魔法帝国よりも重大なことが」

「……なんだと?」

 

またしても室内はよどめきに溢れた、まったく何の事やらわからないと言った体である。そんな体たらくのあり様に、エルンストは心底危機感の無い彼等を軽蔑し、思わず溜め息が出かける程であった。

 

「第三文明圏の惨状を、知らないとは言わせませんよ。皆さんの国も情報収集か何かで知っているでしょう?かのパーパルディア皇国が謎の機械勢力に数日で滅ぼされた事を」

 

エルンストの発言によって、やっと彼等は得心したと言った感じであった。だがそれと同時に"それがどうした?"と疑問の視線を彼に向ける者も数名おり、エルンストの苛立ちはますます募っていくばかりであった。顔に出さないだけ彼は交渉が出来たが、隣に座る武田の目には額の青筋がよく見えており、もう少しで暴発でもするのではないかと肝を冷やし始めていた。コンラッドは一連の出来事に苦笑いを浮かべるしかなく、イシュマエルの場合は半分ニヤ付いた顔で議会の面々を眺めるだけである。

 

「謎の機械勢力は、僕たちギアーデ連邦が一番よく知っています。それがこの世界にどれだけの脅威になるか、警告させていただきたいと思いましてね」

「……ま、ばら蒔いたのはコイツの祖国だがな……」

 

冷やかすようなイシュマエルの小さな呟きを無視して、エルンストは説明を続ける。未だに議会連中は彼が発言する意図と言うものをつかみ損ねていた。

 

「彼らは"レギオン"と呼ばれています。端的に言えば無人で動いて作戦行動をする、暴走機械です」

「暴走する……無人の機械?」

「そんな馬鹿な……魔王のような生物でもないのか!?」

 

つい数ヵ月前トーパ王国を脅かしたノスグーラ、古代の魔法帝国の兵器とはまた別種の機械の存在を知り、異世界の面々は自分達の常識や知識の範囲外を知る事となる。

 

「ええ、生物ではありません。彼らは我が国の前身国が作り上げた、完全自立の無人兵器です」

 

一部の国々はエルンストの発言に疑問を感じる、つまる所自分達で作った兵器でパーパルディア皇国を滅ぼしたと言ってる事では?と。その反応を見て武田は一種の親近感を持つ、まぁおかしく思うよなと。彼もギアーテ連邦とのファーストコンタクト時に似たような説明をされて、何を言っているのかまるで解らなかった程だ。

 

「我が国の前身……ギアーデ帝国時代の話ですが、彼らが開発したレギオンは、その膨大な戦力を用いて周辺国に戦線を布告しました。

しかし、その指揮権を持つ指揮官が、我が国で起こった革命により全滅。その結果、命令を止める者が居なくなり彼らは周辺国全てに対して侵攻を続ける暴走機械となったのです」

「暴走だと………?」

「おいこりゃどう言うこったい」

 

それではまるで兵器が自ら意思を持ち、持ち主に歯向かう物じゃないかと各国要人は各々隣に座る者と会話を始める。

この三ヶ国の殆どは兵器と言えばマスケット銃や魔導器、前装砲を指す事である。最も技術力を持つ神聖ミリシアル帝国、二番目に技術力を持つムーですら誘導弾を筆頭とした無人兵器を所持していない。

ただミリシアルから出頭したリアージュは辛うじて、過去の魔法帝国に伝承に誘導"魔光弾"の存在を知っては居たが、あれは"魔光弾"と言う"弾"であって、エルンストが言う機械勢力とはまた違った物であった。

 

「我が国はそんな状態でこの世界に"転移"しました。レギオン、それが機械勢力の名称です。それが未だに数百万台が残ったままです。

結果、彼らは周辺国であった第三文明圏に侵攻し、パーパルディア皇国は滅びました」

 

そこまで言いきってエルンストは一旦台の上にある水を一口飲み、そして少し深呼吸してこの会議場の面々に、すなわち世界各国をゆっくりと見据えて"警告"を発したのであった。

 

「レギオンがどれだけこの世界を脅かす存在感、賢明な皆様なら分かるはずです。そこで我が国は、各国の力を合わせレギオンに立ち向かうべきだと、この国際会議の場を借りて警告いたします」

 

最後までエルンストが言いきった時には、会議場は重苦しい空気に包まれ、そして沈黙が場を支配した。誰しもが一言も発言せず、ただ数分、数時間も経ったかのような感覚に襲われる。元々会議場が若干薄暗く、明かりと言えば柱に備え付けてある魔導灯ぐらいの場所なのだから、気分の悪さだけが覆っていた。やっとエモール王国からの大使、すなわちエルンストに発言を遮られたモーリアウルが発言を求めた。その顔には彼に対する軽蔑を含んだ表情だ。

 

「発言よろしいか?」

「どうぞ」

「エルンスト殿は第三文明圏を助けるべく、各国が軍隊を出すべきだと言っているようだが、それは馬鹿馬鹿しい事だと忠告しておく」

「……何故ですか?」

 

エルンストにとってモーリアウルの発言こそ、最も意味が解らない。目に見えた危機を伝えたのにも関わらず、馬鹿馬鹿しいとはどう言う事なのだろうか?少なくとも彼が、無論もっと別の世界に居た日本の世界であれ、国と国との連合は他国の危機にいち早く駆けつけ、手をさしのべる事ぐらいはやっていた。

覇権国家たるアメリカ、ロシア、中国の三大国家ですらやっていた事である。

なおサンマグノリア共和国は選民思想が来る所は来るまでトチ狂った国家であり、災害に疲弊したのが弱小国であれば火事場泥棒的に宣戦布告して自国の領土とするクソ国家であったが。

 

「世界会議に出るような文明国が、文明圏外を助ける?そんな無駄な事をしている場合じゃない、我々は魔法帝国に備えなければならないのだ」

 

それがこの世界の掟、この世界の絶対なる常識。

会場に密かな笑い声が靡く、この場において一番の門外漢はギアーテ連邦だったのだ。

 

「……皆さん平気で笑っていますが、じゃあ何故先ほどの魔法帝国の件に関してはこの世の終わりみたいな表情をしたのです?」

「それは!空間の占いが的中率9割以上の未来予知だからだ!」

「古の魔法帝国がどれほど強大で恐ろしい存在だった事か……!新参者の貴様らにはわからんと思うが……」

「………ではそれが事実だったとして、それが起こるのは何年後ですか?」

 

異世界各国面々の嘲笑に一言二言ぐらい何か言ってやろうかと思ったエルンストだったが、本題から逸れる事だけが目に見えて解ったので敢えて無視して、過去の魔法帝国の存在が今現在のレギオンよりどれ程驚異なのかを問い質す。

ある者は恐怖で過剰に体を震わせていたり、逆ギレに近い激情で反応をして来た為に僅かに引いたが、場の雰囲気に負けじと彼等に言い返す。

 

「先程モーリアウル氏は、少なくとも"4年先"だと言いました。4年後の事より、今起きている惨事を優先するべきではないでしょうか?どうしてそれが考えられないのでしょうか?」

「なんだと!?その言い草は!!」

「おいよせ」

 

彼の煽るような発言に思わずいきり立って立ち上がる代表が居たが、隣人に諭されて渋々着席する。隣人の自分に対して可愛そうな目を向けてきた事に関しては、自分には預り知らぬ事だと無視して更にエルンストは会話を続ける。

 

「なんです?それとも文明圏外如きにわざわざ出征する必要はないと?あの大陸で殺され故郷を失った無垢な市民達を見捨てるとでも?それでは国際社会の意味がない」

 

エルンストは元居た世界の常識を説くが、異世界各国の面々からすればそれは諄いのだ。軽く頭に血が登っている彼には、各国大使の表情の変化には気付けてはいないのだが。場を客観的に見ていた武田、コンラッド、イシュマエルには、場の雰囲気が相変わらず此方が不利に傾いている事を把握できていた。

いい加減双方を止めなければ暴発してもおかしくない状況であり、火薬庫の上で火遊びをしているのも同じである。見かねた武田が仲裁しようと挙手しようと仕掛けた時、誰かの発言が着火剤となり、等々周りを巻き込んで爆発してしまうのだった。

 

「……貴様らギアーデは新参者だから分からないと思うが、この世は弱肉強食だ。強者が弱者をわざわざ助けてやる必要はないのだよ」

「そうだそうだ!新参者が偉そうに!」

「郷に入っては郷に従うのが道理であろう!」

 

とうとうやりやがった、武田は己の愚鈍ゆえに時機を逸した事を理解した。恐る恐る隣の盟友を振り返り、そして振り返ってしまった事を何よりも後悔する事となった。

エルンストの顔には一切の表情が無くなってしまていたのだ、それは怒りの沸点が振り切れた事により生じるのだと、誰かがそんな事を言っていたなと武田は現実逃避をし始めていた。

そんな武田を他所に、エルンストはゆっくりと深呼吸を行い、そして世界に対してのギアーテ連邦の総意を、彼等に叩き付ける行動を起こした。

 

「それが!馬鹿馬鹿しいと言っているんだぞ!」

 

 

 

「人を、他者を助けることになんの理由が必要か!自分の国さえ良ければそれでいいとは、自分勝手にも程がある!呆れるね!」

 

堤防が決壊した津波の如く、怒涛の勢いで捲し立てるエルンストの"言撃"。その勢いは先程まで威勢よく攻め立てていた異世界の大使達を一瞬で黙らせ、恐れおののかせて反撃の手段を奪う。こんな事ぜってぇ内の国会じゃやれねぇだろうなと、現実逃避気味に武田は考えるのだった。

 

「文明圏外だからと言って人の命を平気で見捨てるようなら……」

 

状況は完全にエルンストの物、誰も彼のスペースを乱す事は出来ない。呆気に取られた大使達を、奥に炎が渦巻いていると錯覚させる程の眼力と共に、彼は宣言する。

 

 

 

 

「こんな世界の人類なんて、滅んでしまえばいい」

 

 

 

 

 

絶句、この会議の場に居た全員に電流が迸った。まさかこの男の口からこの様な発言が出てくるとは、この場にいた全員は驚愕し、そして言葉を失った。人類は滅んでしまえば良いとの言葉のインパクトは、それ程までに強烈かつ不自然であったのだ。エルンストが会話を再開させるまで、誰一人として発言する事はできない。エルンストが、エルンストの為だけの場を作り出すことに成功したのだ。

 

「座して滅ぶのが嫌なら、彼らを、力無き市民達を助ける。それがあるべき国際社会じゃないのか?」

 

語り掛けるような言葉を、誰一人としてまともに文と文を解釈して、判断する事が出来ない。世界各国の要人達の脳は滅びてしまえば良いとの発言だけに占領させられ、まともな思考力や議論する力を失っていた。

 

「貴様……いい加減にしろ!」

「文明圏外風情が!我々に説教するとは何様のつもりだ!」

「幼稚な理想論を押し付けるな!貴様それでも国家元首か!」

 

非難轟々とは正にこの事であった、彼らは怒りに体を震わせ、激情の感情に口を委ねて激しくエルンストを非難した。

彼がやった事と言えば先程のエモール王国の発言に対する意趣返しに近いものであったのだが、滅びてしまえとの発言だけが非常にクローズアップされ、本来の意図を曲解されるだけに終わってしまった。

 

「発言よろしいですかな?」

 

ここで新たな発言者が現れた、一瞬にして視線はその人物に集中する。その刺すような視線の数々を一点に引き受けたのは、世界で二番目に強大な国として知られるムーであった。

リアージュは思わず呆気に取られていたが、数秒経って脳が再起動したのかムー国外交官ユウヒに対して発言を許可するのだった。

許可を得てユウヒは起立し、そして会議場を見回した後、ムー国としての意見を静かに宣言し始めていた。

 

「ムーです。我が国もギアーデ連邦の意見に賛同し、魔法帝国よりもレギオン勢力に対して対策するべきだと警告します」

 

まさか第三文明圏側に強力な国が味方に付くことになろうとは、またもや会議場はざわめきで覆われた。人一番に狼狽したのは、ムーと同じ第二文明圏に属するニグラート連合とマギカライヒ共同体からやって来た外交官であった。

この二ヵ国は技術力や国力に関して言えば、この世界の基準からしてそこそこ強力な物を保持してこそいるが。世界に五つしかない列強、その中で二番目のムーが第三文明圏側に立つと知れば、必然的に彼等に追随しなければならない。

追従しなければどうなるか?と言われれば、それは勿論ムーが第三文明圏に手厚い支援を行えば、かの国から輸入される高精度な機械や整備パーツの流入量が減らされる事となり、今まで享受してきた利権や技術が全てパーになるのだ。

 

「レギオン勢力は第三文明圏を荒らしすぎた。一刻も早く手を打たなければ、海を渡って我々の大陸にも侵攻してきます。これは世界共通の脅威なのです」

 

ユウヒの発言に少なくともエルンスト達第三文明圏の面々は、顔を明るくさせてお互いを見合わせる。影響力が大きいであろう国のフォローが入れば、世界各国の支援が多少なりとも円滑に進む事は想像に難くない。

この世界で孤立していた彼等にとっては、少しでも味方を得る事が最重要課題であった。日増しに数を増加させて行くレギオンに対して、こちら側も頭数を用意しなければ対応できない。今後の戦争進行に良い調整を入れることが出来るだろう。

 

「なに!?列強第二位ともあろう国が、この外様に与すると言うのですか!?」

「何をもってそんな!!」

「本国の国民はきっと反対するでしょうよ!?」

 

余程都合が悪いのか、内政干渉一歩手前の発言を行う大使が数人でたが。ユウヒは我関せずと言った体で、堂々と椅子に座り腕を組んで相手を睨み付けるだけであった。第二列強だからこそ強気に出れる態度であり、その様を見れば取り付く島もないと言った感じで、リアージュ達に着席を命じられると大使達は渋々退かざるをえなかった。

 

シエリア「…………(ど、どうしよう!完全に宣戦布告のタイミングを逃した!)」

 

なおシエリアはこの喧騒に流され、帝国政府からの勅命である宣戦布告を行うタイミングを逃していた。この事が多少なり帝国の利になろうとは、歴史と言うのは皮肉である。

 

 

 




描いてみて思ったけど、コイツら騒いでばっかだな。

RIM-156 SM-2ER氏、誤字報告ありがとう。意味わからん間違いしてたわw
それと疑問を投げ掛けてくれたNN/NN氏も有難う、エルンストそう言えば大統領だったわ。
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