直近で就活に追われ、中々小説が投稿する事が出来ず、ながらか更新が出来ずに休載的な事になってしまって申し訳ございません。
最近ようやく就活が終わった為、少しづつですが投稿のペースを元に戻そうと努力いたしますので、どうか皆さんこれからのご愛読の方、よろしくお願いいたします。
今日は学園の終業式、つまり夏休みの始まりだ。
『初めて』の夏休みだからワクワクが止まらず、夏休みはどんな事をしようかと頭の中ではもう予定が立てていた。
学園長の言葉も終わり、後は家に帰れば夏休みの始まりだ。今日は特に学園に用とかも無いから早めに帰ろうと荷物をまとめようとしている最中、携帯が振動した。
授業中は必ず携帯はマナーモードにするという決まりがあるから、着信音は鳴らずに振動が通知音代わりだった。
だがその振動が止まらず、まるで携帯が意志を持っているかのように振動は途切れることを知らなかった。
原因はKAN-SEN達からの連絡だった。
指揮官という珍しさや、これまで交流してきたKAN-SEN達が、俺の事を話しているそうで、学園で俺の事は知らない域まであるせいで、早速KAN-SEN達からの夏休み中のお誘いが来たのだ。
『ねぇねぇ指揮官ーユニオンに遊びに行く予定あるー? 夏休み海行こーよ』
『ご主人様、ベルファストでございます。夏期休暇中お暇でしたら、付き合って欲しいことが……』
『優海くん〜夏休みは、お姉さんと一緒に海に行かない? 昔みたいにね♡♡』
『指揮官、夏休みは新作ゲームの耐久を……』
いや多い。多すぎる。通知数が10を超えて一気に50までに増えそうな勢いになり、これは返信だけで1日が潰れてしまいそうだ。
とにかく、日時が決められている所を見て被らないように予定を組まないとダメかなぁ……これは。
そんな鳴り止まないマナーモードの通知に隣の席に居たジャベリンが興味深そうにして眺めていた。
「わぁ! 指揮官やっぱりモテモテですねー。うーん、これならお誘いは遠慮しようかな〜」
「ん? いやいや、別に大丈夫だよ。何とかして予定を組むか……ら……ううん……」
送られてきたメッセージを見る度どんどん予定が埋まっていき、奇跡的に日時や場所が被っている所は無かった。
が、問題は場所だった。ユニオンにロイヤル、はたまた鉄血にアイリス等、これまで交流してきたKAN-SEN達の陣営にお邪魔する形が多かった。
だけど、移動には勿論お金がいる。陣営間の移動は主に船や飛行機を使う事が多く、そのどちらもそれ程お金をかけなくても良い。だけどそれを繰り返していけば勿論使うお金は多くなり、あんまりお金が持っていない俺にとってこれは死活問題だった。
それに時間もそうだ。仮にまずロイヤルの予定を済んで、次にユニオンでの予定を済ます事になれば、最低でも4時間ぐらいはかかる。
予定もキッチリだから、心身ともにしんどくなるのは目に見えてはいた。
「うーん、どうしようかな……」
なるべく予定をキャンセルはしたくない。だけど時間やお金がそれを許してはくれなかった。現実的な問題を考えれば考えるほど、全ての予定を受け入れるのは到底不可能だと悟り、しぶしぶ断る予定を決めようと携帯を見たその時、校内のスピーカーからアナウンスが流れた。
『連絡です。指揮官、天城優海。至急、理事長室に来てください。繰り返します。指揮官の天城優海は、至急理事長室に来てください』
「え、俺?」
突然の呼び出し、しかも理事長室にって言った。
職員室なら分かるけど理事長室って一体何なんだろうか。珍しいアナウンスで教室に残っていたKAN-SEN達も俺の方に顔を向かせ、心当たりが無いか聞いてきた。
「指揮官、何かやったとかー?」
その問いに俺は首を横に振った。校則違反とかしてないし、学校外でも問題をした覚えもない。
逆にそれが怖くなり、もしかしたら知らず知らずの内にやらかしたと考えると、胸の奥が冷たくなり、冷や汗をかいた。
「えっ、どどどどどうしよう……」
「と、とにかく理事長室に行きましょう! 私もついていきますから!」
焦りながらもとにかく急いで理事長室へと足を運んだ。
道中でアナウンスを聞いたKAN-SEN達に何かあったと言われたりもして、俺は何度も心当たりが無いと答え、そうするうちにエレベーターの前に立った。
エレベーターと理事長室は繋がっており、このエレベーターで最上階に行けばそこが理事長だ。
恐る恐るボタンを押すと、直ぐにエレベーターの扉は開かれ、ゆっくりと中に入った。
理事長室には一部の人しか入れず、ジャベリンとはここでお別れになってしまう。心配そうに見つめていた。
「指揮官、ジャベリンはここで待っていますね」
「うん。じゃあ行ってくる」
まるでどこか遠いところに見送る様な感覚でジャベリンと別れ、エレベーターは最上階を目指していく。
上昇していくエレベーターの窓には、学園の全体像の景色が広がっており、懐かしい気持ちになった。
そういえば、この学園に始めてきた時もこうして学園をここで見下ろしていた。あの時はどこかどうなっているか分からなかったけど、今となってはすぐに分かる。
向こうに見えるのが重桜の寮でその近くには剣道場。
テニスコートの近くにはプールサイドやちょっとレアな飲み物がある自販機があるなど、自分の庭のようにどこに何があるのか鮮明に言える。
やがてエレベーターは止まり、最上階へと辿り着くと扉は開かれ、目の前に赤い絨毯が敷かれた高級感溢れる部屋が広がった。
「し、失礼します」
一礼をして部屋に入ると、目の前にいるクイーン・エリザベス理事長が長い回転式の黒椅子を回し、俺の方に体を向けた。
「来たわね。貴方に渡したい物があったから呼び出したわ」
「わ、渡したい物……?」
「それがこれよ。こっちに来なさい」
そうしてエリザベス理事長が手に取って机の上に置いたのは、白い手帳……いや、パスポートだった。
パスポートにはアズールレーンのマークが描かれており、外見的には大きな特徴と言えば白色なぐらいだ。
エリザベス理事長に一声かけてから俺は白いパスポートを手に取り、中を見てみると中は普通と変わらなかった。最後を除いては。
パスポートの最後のページを開いてみると、ある文章が記載されていた。
﹁この者を学園在中の指揮官として証明する﹂
その下にはサインをサイン欄が4つあり、その欄にはユニオン、ロイヤル、重桜、鉄血と書かれており、その欄には何も書かれていなかった。
「えーと、これは……?」
「見れば分かるでしょ。パスポートよ。以後、陣営間の移動はそれを使う事で、船や飛行機の費用は無料になるわ」
「む、無料!?」
あまりにも破格な事に俺はつい驚いて大声を出してしまった。だけどエリザベス理事長はその事を予見していたかのように笑い、更に得意気に話した。
「しかも、ホテル等の滞在費用も一部免除されるわ。それがあれば、好きなだけ色んな所に行けるわ」
まさかの滞在費用までも一部免除という、誰もが喉から手が出る程の物を持っているという事実を理解してしまい、心做しかパスポートが物凄く重くなった様な気がした。
そのぐらいこのパスポートには価値があるのだ。その辺の宝石よりもずっと。
「指揮官ってだけで、こんなに手厚い援助が受けられるんですか?」
「そうよ。その分貴方に期待しているって事だから」
「期待……ですか?」
「貴方、指揮官試験を受けた人がどれぐらいいたか覚えてる?」
そう言われ、俺は試験会場の光景を思い出した。
面接の時、筆記試験の時、体力試験の時……それぞれの記憶を思い返してみると、同じ人に出会った覚えは無い。会場は複数ある事と、全ての陣営でこれが開催されたという事を考えると……
「50万人ぐらいですかね……?」
「ハズレ。3000万人よ」
「さ……!?」
予想と60倍違った数に驚きを隠せなかった。
「私達も馬鹿じゃない。3000万人の中から当てずっぽうで貴方を選んだ訳じゃ無い。数多くの人間の中から、貴方が最も指揮官としての才があった。だから選ばれたのよ」
改めてそう言わされると、自分が……指揮官とは如何にして重大な役割なのか身に染みた。勿論、重大な役目とは思っていた。だけど如何に考えが小さかったのか思い知らされた。
「その様子だと、まだまだ指揮官としての認識が甘いみたいね。そこで、貴方には夏休みの課題を出すわ」
「課題?」
「最後のページにある空欄のサインは見たでしょう?」
確かに理事長の言う通り、空欄のサイン欄が4つあり、よく見る4大陣営のシンボルが掲載されていた。
「貴方の課題はこの夏季休暇中、ユニオン、ロイヤル、鉄血、重桜の各陣営の代表者に、指揮官として認めたサインを貰うことよ」
「は、はぁ……?」
要は夏休み中に4人のサインを貰えば良いのかな……? なんか課題と言うには簡単というか、拍子抜けというか……。意図が分からなかった。
「ピンと来ていない顔ね。そのサインは、貴方が正式に指揮官として認める為の書類見たいなものなのよ」
「え? て事は俺、まだ指揮官として認められて……」
「ないわよ」
「……えーと、理事長って確かロイヤルの代表者でしたよね? ここにサインが無いって事は」
「認めてないわよ」
たった4文字と7文字の言葉が俺の胸を突き刺さった瞬間だった。まさかの事実に膝が崩れ落ち、両手を床に置いてそのまま四つん這いで惨めに泣いてしまった。あとめちゃくちゃ悲しい。ガーンという効果音が俺の頭に叩きつけられたような衝撃だった。
「仕方ないでしょう。多くの人間から選ばれたと言っても、たった2,3ヶ月で指揮官と認められる訳ないじゃない」
ぐうの音も出ない最もな発言だった。確かに自分達の命を預ける立場の人をそう簡単に認める訳にも行かないからなぁ……俺が逆の立場だったらそうしたかもしれないし。反論する気は無かった。
むしろそれを受け入れようとする姿勢になった。今認められていないなら、今後認められるようにすれば良いのだから。
「でも、認められるって具体的に何をすれば……?」
「簡単よ。各陣営の代表者が貴方に課題を出すの。その課題を出せばクリアってわけ。そういう事だから、早速貴方には課題を出すわ!」
エリザベス理事長は杖を回して先を俺に突き付け、いきなり課題を出そうとしていた。
ちょっと待ってとも言えず、心の準備すらさせて貰えない強引な事に、女王みたいな我儘さを覚えた。
だけど断れる立場でも無い。生唾を飲み込んで課題を聞く姿勢になると、エリザベス理事長は口を開けた。
「ロイヤルは常に優雅さが求められるもの。そしてロイヤルで1番優雅なのは……分かるわよね?」
「いや、知りませんけど」
優雅さとか言われてもいまいちピンと来なかった。言葉の意味は分かるんだけど……実態と言うか、どういうのが優雅なのかは分からなかった。
「あ、ても1番優雅って言葉が似合いそうなのはベルファスト先輩かなぁ……」
出会ってきたロイヤルKAN-SENの中で最も優雅という言葉が似合うのはやはりベルファスト先輩だった。
一つ一つの動きが洗練されていて手を動かしているだけでも思わず見入ってしまった。
そんなベルファスト先輩を思い返している最中でエリザベス理事長が思い切り机を叩きつけ、俺は肩を上がらせて驚いてしまい、目を丸くさせた所にエリザベス理事長は王冠の付いた杖を俺に向けると、顔を真っ赤にさせて怒っていた。
「この馬鹿! 何でベルファストを選ぶのよ!」
「え? だって俺が出会ってきた中で一番優雅そうなのがベルファスト先輩ってだけで……」
しかしエリザベス理事長は俺の言葉を聞かずに思い切り杖で頭をぶん殴ってきた。本物の金で出来た杖だからか頭の上に星が浮かぶ程の衝撃で目が回ってしまい、それでもエリザベス理事長は話を続けた。
「もう頭に来たわ! 今日から貴方は下僕よ下僕! ロイヤルの中で誰が1番優雅なのかみっちりと教えこんでやるんだから!」
「げ、下僕〜?」
ふらつきながらも何とか聞き取れた言葉を繰り返すと、エリザベス理事長は頷きはせずに俺を見下ろすように顎をあげた。
「そうよ、下僕よ。げ ぼ く! 明日、ロイヤルに来なさい! これは女王命令よ!」
「明日って……そんなの急に言われても……」
「何? 下僕の癖に女王様の命令を聞けないって言うのかしら?」
あまりの高圧的な態度に思わずムッとしてしまい、理事長だろうとなんだろうと反抗心が沸いた。
「下僕下僕って……そんな風に上から人にとやかく言うのはダメなんですよ!」
「なっ、私に向かって意見するなんてとんだ無礼者ね! とにかくロイヤルに来る事は決定事項よ! それに、代表者のサインを貰わないと、指揮官権限は剥奪されてアンタは退学になるから、注意しなさい!」
「…………ん? 今なんて?」
「ロイヤルに来る事は決定事項よ!」
「違います! もっと後の方です! サインとかどうのこうのってところです!」
「代表者のサインを全員貰えないとアンタは退学よ」
「……えっ?」
聞き間違いと信じたかったけど、エリザベス理事長の顔を見る限り嘘では無さそうだ。
冷や汗が止まらず、急いで代表者の事について思い返そうとしても、そもそも俺はユニオンと鉄血の代表者にそれ程あった事ない。というか、重桜で行われた迎春の儀で一目会ったぐらいだ。
これがもしアイリスとかの全陣営を含んでいたら、キツかったというか間違いなく全員にサインを貰うのは不可能だったかもしれない。
「やっと自分の立場を分かったようね。アンタは最初にロイヤルの代表者……すなわちこのクイーン・エリザベスのサインを貰わないと、この学園から退学になるって事。素直に私の言う事を聞くのが吉じゃなくて?」
「なんかやり方がこざかしくて優雅じゃない!」
「はぁー!? 最初に道を示そうとしているんだから感謝しなさいよ!」
「それは有難いけど嬉しく無いです!」
「なによ! とにかく、明日ロイヤルで私の城に来なさいよね! 出ないとアンタを死刑にするんだから!」
エリザベス理事長は長椅子に座って椅子を回転させ、俺に背を向けた。
少し理不尽と思いながらも、サインを貰わなければこの学園から退学となり、指揮官の権限が剥奪されるという事は、二度と指揮官にはなれないという意味で間違いない。
仕方ないと思いつつも、俺はエリザベス理事長に一礼し、エレベーターに乗って1階へと戻っていく。
ゆっくりと降りるエレベーターの中で膝を崩し、どうした物かと悩みに悩んだ。
さっきも言ったけど、俺はユニオンと鉄血の代表者とは一目しかあった事ない。サインを貰うにしても、まずはその代表者に認められなければサインは貰えないし……そもそも会う方法を考えなければならない。
というかそれ以前に……まずはエリザベス理事長にどう認めて貰うかが重要だ。
夏休みは40日……1つの陣営で使える時間は10日程だ。それまでに4大陣営の代表者にサインを貰える方法を考えなくちゃならない。
「初っ端からの夏休みから大変な事になりそうだなぁ……」
そう呟くと同時にエレベーターが1階に辿り着き、扉が開かれると、ジャベリンが前に立って待っていてくれた。
「おかえりなさい指揮官! どうでしたか? 何か言われましたか?」
「言われたというかなんというか……ちょっと大変な事になったかも」
「えぇ!? 何か、ジャベリンに出来ることがあれば言ってくださいね!」
ジャベリンの献身的な優しさが身に染みる。思わず泣いてしまいそうだ。
……そういえばジャベリンってロイヤルのKAN-SENだったけ。なら、早速出来ることがあるかもしれない。
「ねぇ、ジャベリン。帰りながらロイヤルの事について教えてくれないかな。明日ロイヤルに行く事になって……」
「い、いいい一緒に帰るですか!?」
ジャベリンは頭からボンッと湯気が飛び出す程顔を赤く染め、アワアワと手足を動かして挙動不審になっていた。
俺、変な事言ったっけ……? とにかく落ち着くようにとジャベリンを宥め、ジャベリンは深呼吸して落ち着いてくれた。
「ふぅ……ぜ、是非一緒に帰りましょう!」
「良かった。じゃあ帰ろうか」
「は、はい!」
何故かジャベリンの顔は赤くなったままだったけど、帰り道を一緒に歩き、ロイヤルの事について話してくれた。
明日から気を引き締めないといけないなぁ……。