この小説は外伝というよりかはifの小説なので、本編よりかは優先順位が低い為、先送りみたいな事と、一部推理小説みたいな事になったので、かなーり長くなりましたのでこれ程長くなりました。
引き続き、応援してくれると嬉しいです
怪盗、それは自分の美学に誇りを持った泥棒と言われており、小説や物語の中では華やかなものとして描かれているフィクションみたいな存在だと思っていた。
このロイヤルが誇る城のダンスホールの中で、煌びやかなシャンデリアの上に乗った黒いコートで身を包み、黒いマスクで姿を隠した怪盗が、俺の目に映っていた。
あまりにも突然の出来事に俺は見ている事しか出来ず、ここにいる皆も唖然としていた。
怪盗は地面から高く離れているシャンデリアの上に乗っているのにも関わらずバランスを崩さず、ただ高らかに笑いながら手に持っている黄金の王冠をこれみよがしに見せつけていた。
「こんばんは、人間とKAN-SENの皆々様。予告通り、この黄昏の王冠は貰っていきます」
「わ、私の王冠! 返しなさい! この泥棒!」
エリザベスさんが地団駄を踏みながら怒っているのに対し、怪盗はエリザベスさんを見ようとはせず、多くの人に視線を向けるような体勢を維持していた。
(エリザベスさんは眼中に無い……? それにしてはちょっと違和感が……)
いやそんな事考えている暇は無い。とにかく今は怪盗を捕まえて盗まれた王冠を取り戻す事が先決だ。
だが、怪盗はジャンプしても届かないシャンデリアの上に乗っており、何も出来ない俺達を馬鹿にするかのような笑い声を上げた怪盗は、シャンデリアに煙玉を叩きつけ、煙で自分の姿を消した。
「しまった……!」
「今すぐ大扉を閉めなさい!」
エリザベスさんの指示に近くにいたメイド達は急いで扉を閉め、怪盗を倒そうと剣を構えたが、怪盗が扉に来る気配は無く、シャンデリアの上の煙が晴れるとそこには怪盗の姿は無かった。
「逃げた……? 嘘だろ?」
出入口は完全に封鎖した。あそこに意外にここから出れる場所も無い。
「どうやって逃げたんだ……?」
「ウォースパイト! 今すぐ城内に警報! 出入り口を封鎖なさい!」
「はっ!」
エリザベスさんの号令の下で城内に警報が鳴り響き、しばらくの間廊下や庭、城の至る所が警報とKAN-SEN達が走る音で埋めつくされた……
_1時間後
「ウォースパイト、怪しい奴は?」
「いえ……残念ながら、アールセヌと思わしき人物は居ません。ですが、城外に繋ぐ橋はあげたので逃走は不可能かと……」
怪盗アールセヌ。ロイヤルの方ではかなり有名な怪盗であり、予告状を出してはそのお宝を必ず盗むという、まさに怪盗の何相応しい人物だと言う。
そんな怪盗が今日この夜、エリザベス理事長……いや、女王がいる城へと入り、エリザベス女王がいつも被っている王冠を盗んでしまったのだ。
盗まれたエリザベス女王は焦りながらもこの城に警報をならし、警備を強化してこの城から誰一人として外に出す事を許さなかった。
幼い姿でも、女王は女王という事だろうか。王冠を盗まれたとしても冷静な対応していた。
城から街に出るための大橋も上げてしまっており、ここから外に出るのは不可能だ。何故なら、あの大橋こそが外に出る為の道なのだから。
城内の廊下には警備の饅頭やKAN-SEN達が血眼になって怪盗アールセヌを探しているが、事件から一時間経っても見つからなかった。
まさかただの旅行……いや、エリザベス女王に無理矢理ロイヤルに行かされたんだけど、こんな事になるとは思わなかった。
今は警戒体制で事件現場……つまり、パーティーを行っていた部屋に残されていた。勿論俺だけじゃなく、その時間その場にいた人全員ここに集まされていた。
そこには勿論、食事前に部屋を抜けたある1人の男も呼び出されていて、全員その男の人に疑いの目を向けていた。
「……んで、俺がいない間に怪盗が出てきたと」
「貴方がそうじゃないのかしら、マーレ」
被害者であるクイーン・エリザベスさんがなんの疑いも無くマーレさんに対して、つき倒す様な強い言葉でマーレさんに疑いの眼差しを睨みつけていた。
今回、盗まれたのはエリザベスさんがいつも被っている王冠だ。
話によると、あの王冠はロイヤルの貴重な宝石や金銀で装飾された物であり、ロイヤルの中で最も価値のある宝石だと言われているらしい。その為、セキュリティはエリザベスさん直々に決めた物を使い、エリザベスさん自信が管理していたらしいが……まさかこのパーティー中に盗まれるとは、本人さえも考えてなかった事だろう。
「んな馬鹿な」
呆れた口調でマーレさんは疑いの言葉を跳ね除け、そのまま空いているテーブル席に座った。弁明も何も無く、ただ傍若に否定する立ち振る舞いに疑いの目を持っていた人達は、次々とマーレさんを問い詰めていった。
「マーレさん、勘づいていると思いますが貴方が怪盗だと疑われているのです。ここはどうか弁明の1つでもして下さい」
全体的に少し暗い青色のドレスコートに赤と白のラインが入った肩掛けを着こなした金髪の淑女、フッドというKAN-SENが疑いを持ちながらも弁明させたい気持ちが伝わってくる。
「だったら弁明するが、俺にはアリバイがある。丁度そこにアリバイを裏付ける片目が隠れているメイドが証人だ」
マーレさんは扉の近くにいた片目が隠れているメイドさんに指を指し、特徴を言われたそのメイドはこちらに振り返った。
「あれはシェフィールドね、ちょっと来なさい!」
エリザベスさんがシェフィールドというメイドを呼び、走る事はせずマイペースかつ丁寧な立ち姿で優雅に歩いていくと、エリザベスさんに頭をさげ、メイド服のドレスを両手で少し摘みながらたくし上げながら片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま挨拶をした。
ロイヤル特有の挨拶を見た俺はまじまじとシェフィールドを見ると、視線に気づいたシェフィールドはこちらに目を向けた途端、眉をひそめて嫌悪の視線を向けた。
「何か用でしょうか、害虫様」
「がッ……!? え? 俺害虫って言われた?」
いきなり見ず知らずの人に害虫って言われた思わず泣きそうになり、頭の中では? マークで埋め尽くされ、何が何だか分からなくなってきた。
「失礼しました、今のは冗談です害虫様」
「ほ、本当に……?」
感情や声に抑揚があまりない事から本当に冗談には聞こえず、繰り返し問いかけようにもシェフィールドさんは何も言わず無視を貫き通した。
「それよりもシェフィ、マーレのアリバイを裏付けられるって本当?」
「はい。あの方はパーティー開始時の午後18:00から停電が起きた19:30頃までは近くの広場で確認しており、その後警報がなった19:40分頃から今に至っても同じです」
「つまり、俺が怪盗っていうのは、有り得ないって訳だ」
確かに、停電が起きた時点でマーレさんとシェフィさんが一緒に居たのなら、そのどちらもが玉座に戻るのは不可能だ。
つまりマーレさんが容疑者から外されたという事になる。
「俺から言わせて貰えば、優海くん以外の奴ら全員怪しいけどな」
「何ですって?」
「え、俺以外?」
俺からしてみればありがたい言葉だけど、マーレさんはこの場いる全員を敵に回す程の爆弾発言により、玉座はザワついた。
「私達が怪しいってどういう事かしら?」
一番に反応したのは、エリザベスさんの隣にいたKAN-SEN、ウォースパイトさんだ。確かエリザベスさんとは姉妹艦だが、その関係は学友だ。
側近としていつでもエリザベスさんの隣に経ち、彼女を守る騎士なんだけど……何故かスカートを履いてないのは何故だろうか。
そのせいで下着が見え隠れしていて目のやり場に困ってしまうが、本人は差程気にしてはいなかった。
そんなウォースパイトさんはマーレさんの言葉を気にかけ、その真意をマーレさんは答えた。
「怪盗アールセヌは変装の名人だ。前もってこの中にいる誰かに変装していてもおかしくないだろ」
マーレさんの言い分に皆は納得してしまい、互いに疑いの眼差しを向けていた。
明らかに空気が更に重くなってしまい、居心地の悪い空気にさせた本人に駆け寄った。
「い、良いんですかマーレさん。そんなこと言って……皆少しピリピリしてますよ」
「良いんだよ。寧ろ互いに警戒心を持てばそれだけ細かい所に気がつけてかえって怪盗は動きづらい。これで下手な動きはしないだろう」
「な、なるほど……」
「まぁもしかしたら変装してないかもしれないけど」
「いやどっちなんですが!?」
「けど、優海君には変装出来ないのは確かだ。いくら姿形や声を真似たとしても、動きや口調までは誤魔化せない筈だ。正直、この屋敷の中で一番信頼していい人物と言えるな」
確かに俺はここに来たばかりで予定では本来俺はここに居ないから筋は通る言い分で説得力がある。
だけど、俺から貰える情報量はかなり少なすぎる。怪盗に関しても、事件当時に関しても俺は何も知らぬ、何も出来なかったのだから。
「という事は……よし、決めたわ! ベル!」
「はい、陛下。ご主人様、こちらをお召下さい」
エリザベスさんが指を鳴らすと同時にベルファストさんが綺麗に畳まれた茶色の服を俺に渡してきた。
恐る恐る服を広げてみると、首から体だけを羽織る様な上着に、ベレー帽の様な帽子と……パイプ……いわゆるタバコの様な物があった。
まるで探偵服のよう……というか、明らかにそれだった。
「これを着てって事ですかね?」
ベルファスト先輩は笑顔で頷き、軽く頭を下げながら上着を羽織り、帽子を被ってパイプの作り物を加え、虫眼鏡を持った新米探偵がここに誕生した。
これが漫画やアニメだったら『テッテレー』とか、『ババーン』見たいな効果音が鳴るんだろうなと考えながら思わずカッコつけてポーズを取った。
「似合ってないわね」
エリザベスさんからの第一声がそれで思わず転げ落ちてしまった。
「そっちが用意したんでしょう!? で、何で探偵服着させるんですか? これじゃあまるで……俺が探偵として怪盗を捕まえる見たいな……」
「みたいじゃ無くて、実際そうするのよ」
言葉の理解するのに数秒かかり、その数秒の間頭が働かず、動き出さのに数秒かかった俺が出たのは、冷や汗と苦笑いだった。
「えーと……どうして俺なんですか?」
「そこの礼儀知らずが言った通り、この屋敷の中でアンタが1番信用出来るからよ。アールセヌは変装の名人、誰に変わっているか分からない今、貴方がやった方が良いのよ」
「で、でも……」
「でもじゃない! やるのよ! これは女王命令! 私の言うことは絶対なんだからねっっ!!」
杖を叩き、それほど王冠を取り戻したいのかエリザベスさんは無理やり俺を探偵に仕立てあげ、最早やるしかない雰囲気となってしまった。
いやいや、謎解きとかしたことない俺が現実の謎を解ける訳が無いけど……メイドさんや他の人達からは期待の眼差しが向けられ、逃げる訳にも行かなかった。
「うっ……分かりました。とにかく、頑張ってみます! ええと……み、三笠おばあちゃんの名にかけて!」
なんかどこかの漫画でこんな台詞があった筈……勝手に名前を借りてごめんなさい、三笠おばあちゃん……。
「へくちっ! ううむ、夏風邪か? それにしても、ロイヤルにいる優海は元気にしているのだろうか……帰ったら、スイカでもご馳走しないとな」
多分どこかで三笠おばあちゃんがくしゃみをしたと頭を過ぎったけど、早速調査を開始する事にした。まずはここ、事件現場の玉座を詳しく調査した。
まずは状況を整理してみよう。
まず、盗まれた物はエリザベスさんが被っていた王冠。
この玉座の広間でパーティーをしていた時、突然明かりが消えて停電となってしまい、全員がパニックになったその時、明かりがついた直後にエリザベスさんの王冠が盗まれ、その後シャンデリアの上から怪盗が現れ、そのまま煙に紛れて姿を消したのだ。
この場にいた全員の持ち物を検査した所、暗視ゴーグルや暗闇の中で光る目印は無い。
つまり、本当に何も見えない暗闇の中で王冠は盗まれたのだ。
一連の流れから1番気になったのは……あのシャンデリアの上にいた怪盗の存在だった。
そもそも、怪盗アールセヌはどうやってシャンデリアの上に立つ事が出来たのだろうか?
怪盗が乗っていたシャンデリアはここから高さ20m以上はあり、どう考えてもジャンプしても届かない。
しかもここには上へ続く階段も無く、天井から通れる通路も何も無い。つまり、上に行く手段は無く、シャンデリアの上に乗ろうとすれば、何か道具を使わないといけない。
だけど道具と言っても、ここはパーティーで使った長いテーブルとかあるし、シャンデリアの上に乗ろうとした人なんて居ない。
しかも、ここにいる全員のボディチェックはすましており、ワイヤーの様なものを持っている人は誰一人としていなかった。
うーん……分からない。頭を悩みに悩ませた所を、マーレさんが気にかけてくれるように肩を置いた。
「あのシャンデリアが気になるのか?」
「はい。怪盗は停電の後にあの大きなシャンデリアに居たので、どうやってあそこに行けたのかなって……」
それにどうやって降りたのかも知りたい。
怪盗は煙を出した途端に消え、出入口の扉が開かれていたから多分直ぐにここから逃げ出したと思う。そう考えたから、今は警備の人やKAN-SEN達がくまなく屋敷の中を探しているけど、未だに見つかってはいない。
それに、怪盗が居たところを調べれば何か分かる筈だと俺は考えたけど、乗れないのなら仕方ないと肩を落としていると、マーレさんは肩を回し、何かの準備をしていた。
「よし優海君、俺が手で飛び台を作って君を持ち上げるから、それと同時に飛んでくれ。君の身体能力なら、あのシャンデリアに届くだろ」
「それならマーレさんの方が良いんじゃ……」
身体能力だけならマーレさんの方が高いから、その方がいいと考えたが、マーレさんは手を横に振った。
「俺だと証拠隠滅で怪しまれるだろ。だから、君が行くべきだ」
「そこまで言うなら……」
激しく動く前に準備運動を軽くし、マーレさんも準備が出来たのか腰を落として両手で飛び台を作り、俺はマーレさんに向かって全力で走り、マーレさんの手に足を乗せ、同時にマーレさんは思い切り俺を投げ飛ばす様にしてシャンデリアに吹き飛ばした。
他の人達が少し小さな悲鳴をあげると同時にシャンデリアに向かった飛んだ俺は見事シャンデリアにしがみつき、何とかシャンデリアの上に乗る事ができた。
シャンデリアの上に乗っても意外と揺れる事が無く、相当しっかり固定されていると分かり、早速シャンデリアを細かく調べると、シャンデリアのような綺麗な物とは無縁な物が見つかった。
それは親指と人差し指でつまめる程黒くて小さな物であり、ガラス張りのレンズがあり、知っているもので例えるとカメラのレンズの様ものだった。
「なんだろうこれ……」
何か操作しようとしてもうんともすんとも言わず、言ってしまえばガラクタみたいだった。だけどこれだけ綺麗に、しかも玉座で使われるシャンデリアでこんなガラクタ自体あるのがおかしい。
他にも何か無いかと探していると、中央部分にも何か見つけた。そっとハンカチを介して物に触れてみると、物は何かのスティックであり、丁度何かボタンがある。
ここで何か分からないボタンを押すのは怖いので、下に降りた時に使ってみよう。
他には……もう1つあった。何故かシャンデリアに不自然な傷があった。
細い糸で擦られたような傷が一直線に引かれており、ちょうどエリザベスさんが居た辺りから扉の方に向かっている。
しかもこのキズは1つでは無く結構沢山あった。どれも何度も擦られているような形跡だ……シャンデリアをあげる時に、うっかり傷をつけた……なんて考えにくい。
そもそも、こんなふうにシャンデリアを横断するような傷、故意じゃないとそうそうつけられ無い。一応写真に残しておこう。
他にこれといった物が見当たら無いので、シャンデリアの調査を終え、降りますと一声かけてから俺は地面へと降り立った。
幸い地面は赤い絨毯に敷かれて居たため、着地の衝撃はそれ程無かった。
「なにか見つけたのか?」
「こんなのがありましたけど……」
早速俺はマーレさんにシャンデリアで見つけた何かの機械を渡すと、マーレさんは何か思い当たる節があったのか、その機械が何なのか答えた。
「ホログラム装置か。これがシャンデリアにあるって事は……」
「俺達が見た怪盗はホログラム……?」
「恐らくな。それに煙もそうだろう。現に煙幕の後に発生する粉もテーブルや料理についてないしな」
でも、なんの為にホログラムを使ったんだ? そもそもどうやってこんな高い所に装置を置いたのだろうか。
どこから調べていこうか悩んだ結果、まずはどうやって装置を置いたのかを調べる事にした。
あのシャンデリアを設置する為には、それなりの設備が必要な筈だ。多分、業者とかそうでも無い限りは。
「あの、誰かこのシャンデリアを最近触った人とか分かる人居ますか……ね?」
恐る恐る分かったら手を上げるようにと示すように右手を上げると、俺に合わせて手を挙げてくれた人がいた。
手を挙げたのはベルファスト先輩であり、コツコツと背筋を伸ばし、優雅にこっちに来てくれた。
「その事でしたら、昨日の昼過ぎ程に業者の方々がシャンデリアの点検にまいられました」
となると、装置を設置したのはその時だろうか。これが何を意味するか分からないけど、怪盗は前日ここに来た事がある事はこれで明白だ。
恐らく業者の1人に紛れこみ、屋敷の内装やお宝のありかを確認するために。
だとしても、これがどうやって何も見えない暗闇で王冠を盗み出した証拠にはならない。
それに、何故わざわざホログラムを用意した理由が分からない。
姿を見せつけたかった……? 皆が視線をホログラムに向けられたその隙を狙って王冠を盗んだ……いや、これは違う。
だって怪盗のホログラムが見えたのは
それなのにわざわざ姿を見せたのは、それ程気を逸らす為に必要な何かがあの瞬間にあったから……?
もう少しで何かが掴めそうな気がする……けど……
「うぅ〜頭がこんがらがるー!」
酷く荒い深呼吸をして考えを纏めようにも、思ったように上手くいかず、焦りばかりが生まれた所をベルファスト先輩がそっと俺に紅茶を渡してくれた。
「ご主人様、焦るのは分かりますが一旦落ち着きましょう。私も微力ながらご協力致します」
「ベルファスト先輩……ありがとうございます」
渡された紅茶を1口飲むと、頭がスッキリするような爽やかな味わいだった。重桜では飲めない紅茶に感動しながらも、ベルファスト先輩は行き詰まっている所を纏めてくれた。
「ご主人様、差し支え無ければ1つ考えがございます」
「提案?」
「ええ。……怪盗アールセヌは本当にこの部屋から出たのでしょうか?」
「え? どういう……」
「シャンデリアの上にいたアールセヌはホログラムだと言うことは……」
ベルファストさんは パーティ内にいる皆さんに目を向け、俺に耳打ちした。
「まだアールセヌはこの中にいるかもしれません」
「えぇ!?」
俺もこの部屋にいる全ての人に目を向け、疑心暗鬼が体の内側から少しづつ溢れ出した。
「だったら王冠も……?」
「それはまだ分かりません。ですが、下手に動いてアールセヌを刺激して行動を取らせる訳には行きません。今は緊張状態であちらも動けない筈……頼みます、名探偵様」
「と言われてもなぁ……」
消えた王冠の行方とその窃盗方法、ホログラムの怪盗……そして、怪盗の正体。
この3つの謎が解明すれば、全てが分かる。1つずつ解きほぐしていこう。
「でも気になるのはアレだよなぁ……」
俺はもう一度シャンデリアを眺めながら、写真に残しておいたシャンデリアの傷を見た。
なんでこんなものがあるんだろうか? 見た所かなりの数がありけどほぼ同じ位置に傷が付いており、しかも意図的だ。
位置関係からして、エリザベスさんとウォースパイトさんがいる場所から部屋の大扉へと一直線に何かを繋いだような感じだ。
……まさか、シャンデリアに細い紐を引っ掛けるようにして、王冠を盗んだ……?
いや、無理だ。そう盗む為にはまず王冠を王冠に糸を通さなければならないし、紐を通すルートの直線上には俺がいる。
これをしたとしても、紐を使って王冠を宙ずりにして犯人の手元に行く前に、俺に王冠がぶつかってしまう。
暗闇の中で何かにぶつかった様子は無い。それに紐を使ったとしても、暗闇の中で王冠に紐をつける事が出来るのは……あの人しか居ない。
けどあの人は王冠を持っていないし、この場にいる全員も同じだ。だとしたらどこかに隠した……けどどこに?
「……ちょっと部屋の外に出ようかな」
もしかしたら手かがりが掴めるかもしれないと思い、扉を開けて周りを見渡し、調査を行った。
壁や床に傷とかは無く、よく清掃されていた。ロイヤルメイド隊の腕が素人でもよく分かる仕事だった。
「ちょっとシリアス! また貴方は……」
「もうしわけありません……」
「ん?」
隣の部屋から誰かの怒鳴り声が聞こえ、隣の部屋に足を運ぶと、中には2人のメイドさんがいた。
1人は白髪のショートヘアーに、もう1人は少しだけ薄い青色のロングヘアーに、白髪のメイドさんを型どった様なぬいぐるみを腰につけており、2人とも自分の背丈程の大きな剣があった。
2人は俺の存在に気づくと、小さく頭を下げて挨拶をした。
「ご、ご主人様! お初にお目にかかります!」
「こんばんは誇らしいご主人様」
「う、うん……えーと……」
「申し遅れました。私は1学年、軽巡・シリアスと申します。ロイヤルメイド隊でございます」
「はじめましてご主人様、2学年、軽巡・ダイドーと申します。ロイヤルメイドとして御身にご奉仕させてくださいませ」
「1年のシリアスに2年のダイドー先輩か。よろしくお願いします」
「先輩だなんて……私の事はダイドーと申し下さい、ご主人様」
「と言ってもなぁ……」
ご主人様と言われる様な人じゃないし、一応先輩なんだからその辺りはきっちりしたい。
「あの、何か叫んでいたけどどうしたんですか?」
「あぁ、実は……」
ダイドー先輩が部屋の奥にある化粧台の方に目を向けた。
化粧台には口紅などが揃っており、多分ここは控え室的な部屋なのは間違いない。
だが、化粧台にあるべきものが無くなっていた。
それは鏡だ。
鏡があったであろう四角い窪みが存在感があり、俺でも何が無くしたのか分かるぐらいだった。
「すみません、パーティが始まる前にあったここの鏡が紛失してしまい……それでシリアスと揉めて……」
「鏡が……?」
「はい、ですから私がこの大鏡を代用しようと……」
シリアスさんは自分の背丈と同じ大きさの鏡を持った。
「だからそれは大きすぎるのよ!! これと同じぐらいの大きさでいいのよ!」
なるほど、揉めていた理由はそれか。
「……鏡?」
この1文字が何か引っかかり、頭の中で推理の糸が繋がり始める。
「……シャンデリアの傷」
まさかと思い、急いでパーティー会場の扉のドアノブを調べた。
そして予感が当たった。確かに内側のドアノブにそれがあった。間違いない、犯人はあの人だ。
だが証拠が無い。
やり方がかなりシンプルな分、証拠を残す手段でも無い。あの人を犯人と指摘しても、しらばっくれて終わりだ。
「証拠……証拠は……」
「どうしたんだ?」
「マーレさん……」
マーレさんが気にかけるように俺の元へ歩いた。
「その様子じゃ、犯人が分かったようだな」
「はい。でも証拠が無くて……」
「証拠か……そうだな……重桜にはこういう言葉があるだろ? えーと……なんだっけ? はっさく?」
「ハッタリですかね? それは蜜柑の種類です」
「そうか。でもハッタリで案外何とかなるんじゃないのか。相手が『本当のアールセヌ』なら、自白するはずだ」
「本当の……?」
「あぁ。多分君の推理は間違ってない。あとは気負いするな」
マーレさんは俺の肩をポンと叩き、パーティー会場の部屋へと入った。
「皆! 優海くんが犯人分かったって言ってるぞー」
「ちょっとぉぉ!?」
マーレさんの言葉に全員がざわめき、慌ててマーレさんの口を閉ざさせた。
「ななな何言ってるんですか貴方っ!?」
「え、だって分かったんだろ? 犯人」
「本当なの!?」
エリザベスさんが玉座から降り、ものすごい形相で俺に近づていた。
期待に満ちながらも、責任を求める力強い目。
生唾を飲み込み、自分に置かれた責任や重圧が今になってようやくはっきりと感じた。
エリザベスさんからだけじゃない、皆からも同じ様な目を向けられた事にようやく気づいた。
この目は犯人以外、最初からみんなに向けられていた。この茶色い探偵服を着たその時から、皆。
その責任を飲み込むように深呼吸をする。この空気に味があるとすれば、珈琲のように苦いだろう。
けど飲み込む。飲み込まないとダメなんだ。いきなり探偵……その紛い物でも、任されたんだ。探偵は探偵であり、おれはその役目を自分の意志で受け止めた。
「じゃあ、言います。俺の考えを。けどその前にベルファストさん。ちょっと頼みたいことがあります」
「はい、何なりと」
ベルファストさんにある物と事を頼み込むと、ベルファストさんは快く了承し、直ぐに物資の調達をしてくれた。
「それよりも犯人は誰なの?」
エリザベスさんは待ち焦がれるように言いながら、玉座へと戻っていった。
まだ確証も無ければ証拠も無いが、俺の考えでは犯人はあの人で間違いない。
全員に目を向け、ひとつ咳き込んでから人差し指をその人に向けた。
「犯人は……貴方です、ウォースパイトさん」