もしも、アズールレーン学園に入学したら   作:白だし茶漬け

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荒野の中のロマン

 海の上をまるで氷の上にいるかのように滑っていた。

 不規則に動く地面を難なく滑り、まるで踊るかのように海の上を滑る夜空の中、何かと戦っていた。

 誰かは分からない。けど向こうには確かな敵意があった。やらなきゃやられる。

 そんな危機感が体を突き動かし、俺は目の前の何かと対峙する。

 けど、武器が無い。せめて刀でもあればと願うと、右手に刀が生み出される。

 

 これならばと刀を握りしめ、俺は果敢に攻めこもうと前に出て懐に入る。

 相手はこっちの接近にひるみ、隙が見えた瞬間刀を振るうと、暗くて見えなかったその姿を目に捉えた。

 

 灰色の髪に、軍帽の様な帽子。黒いコートを着た彼女の顔を見て、俺は刀を振る手を止めた。

 

「エンタープラ……」

 

 彼女は何も言わずに弓を引き、光の矢が俺を貫こうと輝いた。

 

「──っっ!!」

 

 意識が覚醒し、目を力強く開く。

 あまり知らない天井と窓の外に差し込む日差しで夢から覚めると実感する。

 

「……汗で服がびしょびしょだ」

 

 恐ろしい夢だった。未だに恐怖の対象である海の上にいたのはまだしも、エンタープライズさんと戦ったなんて……。

 

 しかも、本気の戦いだ。模擬戦とか訓練とかでも無い、本気でやる命のやり取りだった。

 

 まだ心臓が激しく動き、手も震えている。エンタープライズ先輩に対してではなく、俺自身武器を向けた事への恐怖が未だにこびり付いていた。

 

「時間は……まだ6時か」

 

 クリーブランド先輩の誘いは9時頃だ。早めに起きるにこした事は無いけど、ちょっと早い。

 とは言っても2度寝する気にもなれず、慣れない土地で1人で歩くのも危険だ。

 

 ここはホテルで時間を潰そうと思い、服を着替えて部屋から出てホテルの散策を始めた。

 

 

 

 

「……まぁ、朝早い時間から空いている施設はあんま無いか」

 

 流石にまだ朝早いから、準備中と書かれて閉まっている施設が多く、これでは時間を潰す事も出来ない。

 部屋に戻って綾波に教えてもらった携帯ゲームでもしていようかと思っていると、向こうの方から足音が聞こえてきた。

 

 足音の数は1つで、ふと足音がする方向に顔を向ける。足音の主も俺に気づいたのか、お互いの顔が分かる距離で立ち止まった。

 

 足音の主は腰まで届いた長い白髪で色素の薄い肌を持ち、口元を隠せるほど高い襟を持つ黒い服を着た赤い目の女性だった。

 今まで出会ったユニオンの人たちと違い、物静かでミステリアスな雰囲気が珍しいと感じ、思わず目で追って軽く会釈した。

 

 彼女もこんな朝早くホテルのロビーで一人でいる俺を珍しがっているのか、目を細めてじっとこっちを見てきた。

 

「な、なにか?」

「貴方、指揮官よね?」

「え、は、はい。……てことは貴方はKAN-SEN?」

「私はコロラド。3年の戦艦クラス」

「コロラド先輩……」

 

 通りで見覚えが無いと思ったわけだ。3年の面識はほとんどなく、交流はまだない。

 コロラド先輩はこんな時間からこの場所にいる俺を見て不審に思ったのか、目を細めてじっと見つめていた。

 

「指揮官が一人でいるのは危険。早く部屋に戻れ」

「コロラド先輩は?」

「私はたまたま起きて歩いていただけ。私が送っていくから、早く来て」

 

 コロラド先輩の強い口調と鋭い目ににらまれ、俺は背筋の伸ばして起立し、コロラド先輩の隣で自分の部屋に続く道を歩いた。

 

 少しの間の静寂が続き、折角3年のコロラド先輩と話せるチャンスが出来たんだ。何か話そうと頭の中で何か話題を思い浮かべ、思い浮かんだものを片っ端から投げかける。

 

「……コロラド先輩は普段何を?」

「訓練」

「趣味は? 俺は……将棋とかのボードゲームが好きです」

「無い」

「そう……ですか」

「……」

 

 気まずい。会話が膨らまず、このまま何も交流できずに部屋に戻って解散になってしまいそうだ。

 折角3年とお話してるのに有耶無耶にして終わらせたくない。せめて一個でもコロラド先輩の事が分かるような会話をしたいと、思わず足を止めて考えた。

 

「なにしてるの」

「え? ああ、コロラド先輩の事を知れるような質問を考えて……あっ」

 

 思わず考えている事を口にしてしまった俺は慌てて口を手でふさいだ。

 けど、時は既に遅く。コロラド先輩はこっちを細い目でじっと見ていた。

 

 踏み込みすぎちゃったかなと涙目を浮かばせる。ああ、きっと突き放されるんだろうなと覚悟を決める。

 

「長門の言った通り、変な人ね」

「へ? 長門……?」

 

 なんか知っている子の名前が聞こえた様な気がして、名前を反芻する。

 

「長門を知ってるんですか?」

「あぁ。同じビッグセブンの戦艦だから」

「ビッグ……セブン?」

 

 聞いた事ない単語に首を傾げると、コロラド先輩は信じられない物を見たような顔をして目を丸くさせた。

 

「指揮官なのにそんな事も知らないの……?」

「ご、ごめんなさい」

「ビッグセブンというのは、絶大な火力を持った7隻のKAN-SENの戦艦の略称。ロイヤルではロドニーとネルソン、重桜では長門と陸奥。そしてユニオンでは、私コロラド、妹のメリーランド、ウェストバージニアで7隻よ」

「へぇ〜長門って、重桜の神子もしているのにそんな凄い称号を持ってるのか……すごいなぁ」

 

 呆れながらもコロラド先輩はビッグセブンについて説明してくれた。ビッグセブンは他にも戦艦として誇りある称号らしく、戦艦にとっては憧れの的らしい。

 

「ビッグセブン同士だから長門と交流が?」

「一応の面識がある程度だ。そこまでの交流はない」

「ち、因みに俺の言葉どんな風に言っていたんですか?」

 

 あの長門の事だから余程の悪口では無いと思うけど、変な人扱いされていたと思うと逆になんと言われるか不安しかない。

 

 生唾を飲み込む程にコロラド先輩の言葉を待ち、彼女は長門の話を思い返しているのか、首袖を持って記憶を辿っていた。

 

「かなりのお人好しで……子犬のようだとも言っていた」

「こ、子犬!? 俺のどこが子犬なんですか!?」

「そういう所だ」

「子犬って……俺そんなに小さいかな。平均的な身長はある方だと思うけど」

 

 そうして歩きながら少しだけ話をつづけた後、俺の部屋にたどり着いてしまった。この扉を開けて、はいさようならはまだしたくなく、俺はドアノブに触れずにいた。

 

「……あの、ありがとうございます。わざわざ送ってもらって」

「気にしないで。指揮官を守るのが役目だから」

「それでもです。コロラド先輩は優しい人だ」

「は?」

「え?」

 

 何か的外れな事を言ったのかコロラド先輩は首を傾げ、俺の言葉を疑った。

 

「だって、初対面の俺をここまで送ってもらったんですから」

「……」

 

 コロラド先輩は何も言わず、そのまま立ち去ってしまった。大声で言うにはまだ早い時間だったから、お礼は少し小声で言うしか無かった。

 

「ありがとうございます。コロラド先輩」

 

 

 

 

「……本当に変な奴だ」

 

 たまたま見つけて、指揮官が一人でいるのは危険だから部屋まで送っただけ。それがKAN-SENとして当然の行動だ。呼吸と同義。ユニオンは自由の陣営。だが、その自由の解釈が歪み、無法者が溢れかえっているのがユニオンだ。

 

 指揮官を狙い、自分の人生を変えようとする人間もいる。このホテルにも少なくともそんな奴が存在する。

 

 現に私と指揮官が出会う直後、死角から身柄を捕まえようとする人間がいたが、私がいると分かって即逃げた。

 

 それなのに当の本人と言えば、全く警戒心が無かった。上の空で、自分の事よりも他人優先。自分が狙われている自覚すら無い。

 

 それに……KAN-SENを人間と同じように接する特殊な人。

 

 _ありがとうございます。コロラド先輩

 

「……感謝されるのは久しぶりだ」

 

 胸の奥がこそばゆくなりながら、私は朝日が昇るまで喉奥で歌を歌った。

 

 

 

 少しの二度寝をした後、ルームサービスでベーコンエッグを食べ終えた俺は、クリーブランド先輩から駐車場に呼び出された。

 どうやらバスなどの公共機関を使わずに移動するらしいけど……。

 

「おーい指揮官ー!!」

 

 車にも似た大きなエンジンの音とクリーブランド先輩の声が聞こえてくると、タイヤが2つついている銀色の何かに乗ったヘルメットを付けた人が俺の前でタイヤを擦りながらブレーキした。

 

 ヘルメットを外し俺の前に顔を見せたのは、クリーブランド先輩だった。

 

「よっ、待たせかな?」

「いえ全然。あの、それってバイクってやつですか?」

 

 前面にかけて赤いラインが施され、青色のマークに星が散りばめられたデザインをした二輪車、バイクを指さした。

 

「あぁ、これはスクーターって奴で。バイクとはちょっと違うかな。指揮官はこれ見るの初めて?」

「重桜ではあまり見ないので、実物は初めてです」

 

 スクーターと呼ばれた物を物珍しさからじっと見つめ、自然と心が高揚してきた。

 

「もしかして、これに乗れるんですか?」

「そっ! 小型だけどちゃーんと馬力はあるからしっかり捕まってよ」

 

 クリーブランド先輩は俺にもう1つのヘルメットを渡し、早速スクーターに乗って後ろの空いているスペースをポンポンと手を叩く。

 ヘルメットを付け、クリーブランド先輩の後ろに乗って落ちない様にクリーブランド先輩の肩を掴む。

 

「痛くないですか?」

「ううん全然! むしろしっかり捕まってて」

 

 クリーブランド先輩はニヤリと笑い、右手のハンドルを捻るとエンジン音が鳴り響く。

 スクーターが小刻み震えると同時に、スクーターのタイヤが回り始め、前へと勢いよく進んだ。

 

 自転車とは比べ物にならない加速に体が揺れる。空気の壁を体に当たりながら、クリーブランド先輩と共に走り出した。

 

 車と違い、体全体で風がぶつかる感覚が心地良い。

 窓も何も無い開放的な空間で走り抜け、ユニオンの高層ビル街を抜け、一気に開けた場所へとスクーターは駆け抜ける。

 

「ははっ、すごい!」

「でしょ? 指揮官も免許取ってバイク乗ってみたら?」

「バイクか……」

 

 周りの背景が茶色くなり、荒野が広がっていく。重桜とは比べ物にならない程に広大な大地はユニオンの存在感を示し、自分が如何にちっぽけなそんざいだと思い知らされると同時に、大自然の偉大さがビリビリと伝わる。

 この場所で自分の意思で思い切り風のように走れると思ったら、それだけで楽しくなった。

 

 

「ところで、今どこに向かってるんですか?」

「ん? それはね……ウエスタン・ランド!」

「ウエスタン・ランド……?」

「指揮官、ユニオンの事知りたいんだろ? だったら、ユニオンの歴史を楽しく学べるあそこが最適と思って……あ、見えてきた! あそこ!」

 

 クリーブランド先輩の目線を追うと、遠くに何か大きな岩の様な物を背にしたテーマーパークと、それを示す看板が見え始めた。

 看板には確かに【ウエスタン・ランド】と書かれていた。

 

 一面に広がる荒野の中で煌びやかに輝き、賑わいが耐えない場所はかなり目立っているが、遊園地の様なアトラクションは見当たらない。

 

「一体どんな場所なんだろう……」

 

 ここから飛んで入りたいほど楽しみが止まらない。前にいるクリーブランド先輩はそんな俺の気持ちに答えるかのように、スクーターのスピードを上げて駐車場へと向かった。

 

「さっ、着いたよ指揮官! ここが【ウエスタン・ランド】さ!」

 

 クリーブランド先輩の背後に荒野を背にしては木でできた家や西部劇で見た事あるようなガンマンの格好をした人達で溢れかえっていた。

 

「ここはガンマン時代を再現していて、その時の情勢を体験しながら学べるテーマーパークさ」

「あのガンマンの格好やドレス姿の人達は?」

「あれはここのレンタルした服を着てるんだ。受付の近くにあるから、せっかくだから来て行こ!」

 

 受付近くにあったレンタルスペースに移動し、俺はサイズを見比べて貰いながらもガンマン服に着替える。

 着慣れないジャケットと革のブーツを履き、これで俺も見た目だけは立派なガンマンになった。

 

 時を同じく、クリーブランド先輩も男勝りなガンマン衣装がバッチリ決まっており、俺よりも遥かに着こなしていた。

 

「おー! 指揮官、似合ってるじゃん!」

「クリーブランド先輩もとっても似合ってますね」

「えへへ。じゃあ早速中を案内するよ」

 

 クリーブランド先輩に手を引かれ、向かった先は小さな映画館の様な施設だった。

 チケットを購入するのは機械ではなく受付の人からのチケットを貰い、一昔前の映画館にタイムスリップしたみたいだ。

 

 どうやらここで昔のユニオンに付いて学べられるそうで、上映時間は20分程度だ。

 チケットを貰ってスクリーンのある部屋に向かい、投影機が台座に乗っている事に驚きながらも、短い映画を見た。

 

 映画の内容は、ユニオンが結成される前の開拓時代の話だった。

 

 当時のユニオンは、今の様な国ではなく小さな町や村の集まりで、そんな中金脈の採掘がブームになったらしい。

 

 通称ゴールドラッシュ。金を掘り当てて一攫千金を狙う中、次々と陣営内での開拓が勃発。

 金を掘り当てて資金を得て、産業の進歩はどんどん進んでいき、今のユニオンを形どったらしい。

 

 だけどその金を強奪するのも主流になってしまい、その名残でガンマンが生まれた。

 

 己のプライドの為に、依頼者の為に、自分自身の為に、様々な理由でガンマンは銃という名の剣を腰に携えこの荒野の中で歩き続けた。

 

 ガンマンは流浪者だけではなく、警察……昔の時代は保安官という呼び名の人にも通称されており、町や村には銃声が鳴り響いていたそうだ。

 

 ゴールドラッシュが終わりを迎え、ユニオンが爆発的な産業革命が遂げる事ができ、列車や車、俺達の周りで欠かせない物が次々と発展していき、他者との交流もしやすくなった。

 

 その結果、村同士の交流や結託が続いて大きくなり、今の様な法律や制度が生まれていったのであった。

 

(なるほど、ガンマンは自由意志を持った武士みたいなものかな……)

 

 武士とガンマンの精神に似て非なる物を感じた俺は、ユニオンの歴史と共にメモ帳でしっかり学んだ事を記録していく。

 

 まとめると、ユニオンはゴールドラッシュという物で産業の革命的成長を遂げてはいたが、そのせいでまだ法律が届かない村や町には犯罪が絶えず、自己防衛や依頼者等の理由からガンマンは生まれたらしい。

 

「なるほどなぁ……」

「どう? ユニオンの事、少しは分かった?」

「はい。……かなり、無法な時代だったんですね」

「ユニオンの中ではワイルドな時代で、まだまだ法律とかのルールが無かった訳だからね」

 

 今ではこの無法な時代があったのかと疑う程ユニオンは発展していき、銃の携帯は今では一部の場所を除き禁止されている。

 あの危険な時代から一変してこんなにも大きな国を作ったのは、並ならない努力があってこそだ。

 

「どんな人がユニオンをここまで作り上げたんだろ……」

 

 ポツンと呟いた言葉は荒野を駆け抜けた風と一緒になって溶けていき、誰かの耳に届くことは無かった。

 

「ささ、湿っぽいのはここまでにして。せっかくだからこのロマン溢れるガンマンの世界を楽しんでいかない?」

「例えば?」

「あれとか!」

 

 クリーブランド先輩が指を指したのは縦長の道の奥には拳銃を構えた人……いや、ロボットがいたゲームコーナーが目に入る。

 

 挑戦者が現れたらしく、挑戦者はそのゲームコーナーに入り、観客は大盛り上がりすると、ゲームコーナーのスピーカーからMCの音声が流れる。

 

「さぁ、また挑戦者が現れたぞ! この壁に囲まれたルート上にいるロボットの弾丸を避け続け、見事ロボットを倒す事が出来れば、賞金が貰えるぞ! 準備は良いか?」

「おう! 見てろよ〜?」

 

 どうやら相応の自信があるのか、男の人は笑って銃を構える。

 

『なら行くぞ? 3、2、1……スタァァァト!』

 

 ゲーム開始の宣言が鳴ると同時にゲートが開かれ、男は細長い道に立つと同時にロボットが銃を構えると、レーダーサイトの様な物が男の頭に突きつけられる。

 

 男性はレーダー直線状に避けるように体を動かすと、レーダーに沿うようにBB弾が飛ばされた。

 

「今のは?」

「あれは弾丸予想線。予め打つ方向が見えるんだけど、ロボに近づく度に発射感覚が短くなるから、並大抵の反応速度じゃ……」

「ぐえっ!?」

 

 男が中盤あたりで数多くの予想線に充てられると、ロボットは直ぐに攻撃し男性は体中あちこちにBB弾を当てられてしまった。

 

「ああいう風になる」

「だったら遠距離から攻撃すればいいのでは?」

「それも試してる人もいたけど、ロボットが倒せなくて弾切れになるから、結局近づかないとだめなんだよ」

「なるほど……」

 

 弾を当てるのではなくロボを倒すのが条件だから、リスクを取らないと倒せないのか。

 これクリアできるのかと疑っていると、先輩がある提案をしてきた。

 

「指揮官やってみる?」

「え”っ」

 

 銃は苦手で使えないというのに、あんな避けながら撃たないといけないゲームを参加しても、自信は無いんだけど……。

 

「い、いや俺は……あ、クリーブランド先輩が参加すれば……」

「いいからほら! カッコイイ所見せてほしいな~! すみません~次、この人が参加します!」

「先輩!?」

 

 背中を押され、他の客から「お~」という声援と共に、半ば無理やりゲームエリアに移動させられた。

 

「さぁ、次のチャレンジャーは重桜のボーイ! 見せてくれよ、サムライスピリッツ!」

(なら刀を持たせてくださいよ~!)

 

 そんな叫びは心の中でしか響かず、無慈悲にもゲーム開始の合図が鳴ってしまった。

 

 合図と同時にロボットが銃を構え、赤いレーダーサイトが俺の体を当てる。

 

「よけて!」

 

 先輩の言葉に咄嗟に体を横にし、レーダーサイトから狙いを外すと同時に弾丸を避ける。

 

 この隙に一気に距離を詰め、俺が予想以上に早く前に出れた事に、周りの人が大きな声を上げて驚いた。

 

「アイツ、早いな!」

「これはあれだ。重桜のニンジャってやつだ!」

 

 たしかに忍者だったら楽々このゲームクリア出来るのかな? そんな事を思っていると、また次のレーダーサイトが頭に向かってくる。

 とっさにスライディングで襲い掛かるBB弾を避け、ようやく半分の50mまで辿り着いた。

 

 ここから更に銃撃は激しくなり、レーダーサイトが触れると同時にロボットは引き金を引き始める。

 

 レーダーサイトを見てから回避したんじゃ間に合わない。

 とはいえ、この距離で動きながら正確に狙い撃つなんて芸当は無理。

 

(だったら……!)

 

 レーダーサイトの狙いが完璧なら当然その直線状に弾丸は放たれる。

 ならば、逆にこっちから直線状に弾を撃てば……。

 

 走りながら次に来た予想線が俺に当たる前に、予想線に合わせるようにモデルガンの引き金を引き、遅れてロボットは引き金を引く。

 

 結果、互いが撃った弾丸は弾け飛び、俺に弾丸は当たることは無かった。

 

「い、今あいつ飛んできた弾丸を撃ち返したよな?」

「とんだハリキリボーイだ。これが重桜ソウルか……!」

 

 残り30m。ここなら問題ない筈だ。銃を構えてロボットに狙いを定めた。

 

 あとは引き金を引くその時だった。突然どこからともなく爆発音が聞こえ、その衝撃がこの辺りを襲いかかる。

 

「な、なんだ!?」

 

 辺りがざわめき、爆発の衝撃でゲームが中断されてしまう中、クリーブランド先輩が叫んだ。

 

「指揮官大変だ!」

 

 

 

「セイレーンが、近くの海域で出現した!」

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