もしも、アズールレーン学園に入学したら   作:白だし茶漬け

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本編がバリバリのシリアス路線でほのぼのがねぇぜ!というか主人公の優海君が全く出てないんだぜ!

ここではシリアス路線はなしの方向性で行こうと思ってるのでよろしくお願いします。
また、あとがきで校則の設定みたいなものを書こうと思ってるので、よろしければそちらの方もどうぞ|´-`)


憧れの先には

 

時はお昼。今日も今日とて姉さん達と一緒にご飯を食べる時間……では無く、今日はモントピリア達に1番上のお姉先輩。クリーブランドという人に合わせて貰う約束をしていた。

 

体育の時間でモントピリアが足をくじき、それを介抱した事がコロンビアからクリーブランドに伝わり、そのお礼が言いたいと今日の昼、学園の広場にて落ち合うことにしていた。

 

(クリーブランド先輩か……どんな人なんだろ )

 

モントピリアが言うには、カッコよくて、騎士という名に相応しいく、頼りがいのある姉貴だと言っていた。

 

やっぱり高身長?男の人に負けないぐらいのイケメンなんだろうか?数々浮かび上がる妄想を浮かべて待っていると、こっちに近づく人が数人いた。

 

 

その中にはコロンビア、デンバー、モントピリアとあと一人、ブロンドのロングヘアにサイドテールをしていた人もいた。あれがクリーブランドだろうか?

 

「あ、いたいた。姉貴、あの人が指揮官だよ 」

 

「うん、始業式の時顔を見てたから覚えているよ。でもこうして会うのは初めてだね。指揮官、私は2年のクリーブランドだ。よろしく! 」

 

クリーブランドと思わしきKAN-SENは俺の想像とは随分と違った人だった。身長は俺よりも低く、女性らしい華奢な手足だった。クリーブランドはフレンドリーに俺と握手を交わし、じっと顔を見ている俺に声をかけた。

 

「ん?どうしたんだ指揮官。私の顔に何か付いてる? 」

 

「いや……なんか、思ったより可愛いなって 」

 

「えっ……!?か、かわ……かわっいい!?」

 

クリーブランドは林檎のように顔を真っ赤にしながら広場の茂みまで後ろ向きまで下がり、隠れるようにその茂みに飛び込んだ。

 

あまりの行動に空いた口が塞がらず、その隙をつくようにモントピリアは俺の脇腹に裏拳を繰り出し、脇腹からの鈍い痛みに襲われてその場でうずくまった。

 

「訂正しろ。姉貴はカッコイイんだ。誰よりも頼りになり、誰よりも強い人だ! 」

 

「いや……でも俺クリーブランド先輩の事よく知らないし…… 」

 

蹲りながらモントピリアに言い返すと、モントピリアは俺の目元に近づき、ある事を言い放った。

 

「だったら放課後、姉貴の勇姿を見せてやる!放課後バスケ部に来い! 」

 

「え……えぇ……? 」

 

こうして、俺は半ば無理やり放課後の予定を確定した。この日の授業はモントピリアの圧を感じながらの授業となってしまい、あまり授業の内容を覚えていなかった。

 

そしてその授業が終わり、放課後を知らせるチャイムがなった瞬間モントピリアから腕を掴まれ、強引にバスケ部の方に引きずられた。助けを求める暇も無く、モントピリアと俺、そして後からデンバーとコロンビアも面白がりながら後を着いて行った。

 

教室から出て、外に振り回されて着いた所は体育館……では無く、学園の敷地内にあるバスケットコートだった。

 

バスケットコートは外に設置してあり、開放的にバスケ部のKAN-SEN達は開放的に活動していた。そしてそしてその隣にはまたもう1つ体育館の様な大きさの館があり、そこもバスケットコートのようだ。どうやら、雨天時等に使うとか何とか。

 

やはりアズレン学園の部活は規模が大きい事に動揺を隠せないが、そんな事をモントピリアは気にも止めずに外のバスケットコートまで連れてこられた。

 

「姉貴! 」

 

「うおっ!?モントピリア?どうしたの? 」

 

突然の登場に汗だくのクリーブランドは驚いてバスケボールを落とし、こっちに向かって走ってきた。

 

汗だくのクリーブランドは顔から流れた汗をバスケウェアの襟部分で拭い、汗が太陽の日差しを反射しているせいか少しばかり輝いて見えて様になっている姿は、汗の臭いなんて気にならない程だった。

 

そんなカッコイイ姿にモントピリアは憧れかつ尊敬しながらも、俺を連れてきた理由を告げた。

 

「今日の昼、姉貴に対してコイツは失言しました。だから、今日は姉貴の凄くてカッコイイ所を見せてやってください 」

 

「え?失言?俺、クリーブランド先輩に何か悪い事言いました……か? 」

 

全く身に覚えのない事だが、もしかしたら無意識に嫌な事を言った事を考えると体から血の気が無くなり、急に寒くなった体でクリーブランド先輩に尋ねた。

 

「あぁ〜多分あれかな〜うーん、別に良いんだけどなぁ〜 」

 

どうやらクリーブランド先輩本人は思い当たる節がある様子だった。だが俺自身そんなこと思いつく訳も無く、クリーブランド先輩に額を擦り付け、土下座の体勢で最大限の謝罪を顕にした。

 

「ご、ごめんなさい!俺、貴方に酷い事言ったようで……! 」

 

「いやいやいや大丈夫だって!それに、ちょっと嬉しかったって思ってるし…… 」

 

「え?最後、なんて言いましたかね? 」

 

「あー、何でもない。それよりもさ、折角来たんだからやってみない?バスケ! 」

 

クリーブランド先輩は手を挙げてボールを要求し、上手くバスケットボールを両手でキャッチし、俺に渡すようにボールを前に出すと、太陽の様な輝く笑顔を向けてくれた。

 

「ちょっとだけ!良いでしょ? 」

 

「じゃ、じゃあ……お願いします 」

 

「そう来なくちゃ!あ、バスケのルール分かる? 」

 

俺はその問いに首を横に振った。

 

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クリーブランド先輩からバスケのやり方を教わり、意外と重たいバスケットボールにも何とか慣れてきだした。

 

「おぉ、指揮官飲み込み早いね。良かったらバスケ部に入らない? 」

 

「そ、そうですか?えへへ…… 」

 

身内以外に褒められて思わず頬を緩めてしまい、心の中で天狗になってしまったが、天城母先輩の言葉を思い出して直ぐに我に帰る。

 

慢心は己を滅ぼす。天狗にならずに高みを目指せと母先輩は言っていた。……だけどやっぱり褒められると嬉しい。ついつい嬉しさ余って教えられた通りのシュートを撃つが、僅かに軌道がそれでゴールの縁に当たり、そのままボールは跳ね返って俺の頭へとぶつかってしまい、思わず情けない声を出した。

 

「ぐぇっ! 」

 

「お前、バカなのか? 」

 

「何も言い返せない…… 」

 

「あはは、ドンマイドンマイ!さて……そろそろかな? 」

 

自業自得とはこの事。情けなさで涙を流している所をクリーブランド先輩に背中を叩かれて慰められているその時、奥の方の扉が開かれた。

 

開かれたドアの先には茶髪のショートヘアに、右側だけ少し三つ編みしているのが特徴の人がかなり大きなカバンを持って現れた。

 

「あ、ボルチモア!いきなり呼んでごめんな 」

 

「いや、こっちもちょうどバスケがしたいと思ってたところだから気にしないでくれ。おや?そこにいるのは……噂の指揮官君かい? 」

 

扉を開けたKAN-SENがこっちに近づき、グイッと顔を近づけた。

 

春の暖かさと運動した直後の熱さでボルチモアと呼ばれた彼女の制服は汗ばんみで透けており、中にある下着が透けてしまっている。思わず顔ごと目を逸らすとボルチモア先輩は直ぐに逸らした方向に回り込んで無理やり目を合わせた。

 

「ん?どうしたんだ?いきなり顔を逸らすなんて 」

 

「いや……その……えと 」

 

下着見えてますよと言える訳が無く、口ごもって言おうにも言えない状況が続いてしまったが、ボルチモア先輩は自分の服の状態を見て悟ってくれた。

 

「あぁなるほど。指揮官君も年頃の男の子って訳か 」

 

ボルチモア先輩はクスリと笑い、シャツの1番上と2番目のボタンを留めた後、制服の上着を羽織って透けていた下着を隠すようにし、俺は安堵しながらも女性の胸元を意識していた事がバレてしまって恥ずかしい気持ちが込み上げた。

 

「自己紹介が遅れたな。私はボルチモア。2年生だ。よろしく、指揮官君 」

 

やはり年上の先輩だった。ぎこちない握手を交わした後にボルチモア先輩はクリーブランド先輩の方に足を運び、要件を伝えた。

 

「それで?私が呼び出しだ理由は何だ?助っ人……は、クリーブランドがいるから無いと思うけど 」

 

「そうそう、実はさ……ミニゲームやろうと思うんだ。3対3で!でも1人足りないからボルチモアを読んだわけ だ。そっちも指揮官を一目見たいと思って読んだ訳だけど? 」

 

「こっちは構わないが、チームはどうするんだ? 」

 

「えーとね…… 」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 」

 

いきなりチーム戦をする流れでついていけず、思わずクリーブランド先輩とボルチモア先輩の間に割って入り、クリーブランド先輩の話をとめた。

 

「ち、チーム戦ってどういう事ですか?俺バスケやったの初めてなんですけど!? 」

 

「まぁまぁ、ミニゲーム感覚だから良いじゃん良いじゃん〜。それに指揮官センスあるから意外といけるかもよ? 」

 

コロンビアが呑気に風船ガムを膨らませながらそう言い、他の皆もうんうんと頷いていた。

 

いやこっちとしては不安でたまらない。多分他のみんなはバスケ経験者だし、センスがあると言われてもまだ全然バスケの事知らないからそこで不安が募ってしまう。

 

「なに、心配するな。初心者の君には、クリーブランドと私が入る。安心してくれ 」

 

「そういう事、ちゃんと指揮官のサポートはするよ 」

 

男勝りのかっこいいウィンクをしたクリーブランドとボルチモアを見た周りのKAN-SENは黄色い声援を上げ、俺に対して羨ましいとの声も上がっていた。

 

そしてその羨みはモントピリアに対しても感じられ、モントピリアに対してはその圧がとてつもなく怖く、獲物を狙うライオンのように鋭い目だった。

 

「よし、それじゃあやろうか!あ、指揮官は服はどうする?制服の上着を脱ぐだけじゃ動きずらいならバスケウェア貸すけど。KAN-SEN用だけど 」

 

「……いえ、制服でやります 」

 

もはやバスケをやらない選択肢は無いと悟り、制服の上着を脱いで外のバスケコートに移動した。

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春の日差しは少し強いせいか、それとも緊張と不安のせいなのか俺の首元や頭に汗が流れ、心臓も飛び出す程早くなっていく。

 

「じゃあ、試合時間は5分ぐらいで良いかな。ルールは普通のバスケと同じ、OK? 」

 

「問題ないよ姉貴! 」

 

「よーし、じゃあやりますかね〜 」

 

「よし……やるか 」

 

相手チームであるテンバー、コロンビア、モントピリアはバスケウェアに着替え、同じチームのクリーブランド先輩とボルチモア先輩もバスケウェアに着替えている中、俺だけ制服って浮いてないか?

 

でもKAN-SEN用ってつまり女子用って事だろ?それ着るのもなぁ……まぁこれに関しては仕方がない。

 

「ねぇねぇ、あれ指揮官じゃない? 」

 

「え!?嘘!しかもボルチモア先輩がいるじゃん。指揮官ってバスケ部に入るの? 」

 

コートを囲む外網の向こうに放課後で暇を持て余したKAN-SEN達が集結しつつあり、間もなくギャラリーも集まってしまった。しかもそこにはこの前出会った軽巡の面子も目に入り、ますます緊張しすぎて吐きそうになる。

 

(こ……これは下手な事出来ない……! )

 

「リラックスだ指揮官。ほら、深呼吸深呼吸 」

 

ボルチモア先輩から背中を叩かれ、言われた通り深呼吸をした。

 

「何度も言うが私が君をサポートする。安心してくれ 」

 

「は、はい! 」

 

「それじゃあ、始めようか。そっちボールで良いよ 」

 

クリーブランド先輩はデンバーにボールを渡し、あっち側からスタートする様だ。

 

「よし、それじゃあ……初め! 」

 

クリーブランド先輩が合図を送ると試合開始のブザーが鳴り、モントピリア達はいきなりこっちに攻めてきた。それはそうだ。攻めないと点数は取れないのだから。

 

「デンバーこっち! 」

 

「了解! 」

 

デンバーからコロンビアからボールが渡され、コロンビアは真っ直ぐ俺の方向にドリブルしてきた。バウントするボール目掛けて腕を伸ばしてボールを取ろうとしたが、コロンビアは体を回転させて俺を突破し、そのままゴールに向かった。

 

「指揮官素直すぎるよ〜? 」

 

去り際にコロンビアはそう言いながらシュートの体制に入り、早くも1点……いや、バスケって確か2点と3点しか無かったから、2点入るかと思われたが、コロンビアがシュートをした瞬間ボルチモア先輩は凄まじいスピードでシュートしたボールを掴み、先制点を防いだ。

 

「ふふ、そう簡単には取らせないよ 」

 

「ヒュー、やっぱりやりますな〜 」

 

『一気に攻めるよ!指揮官君上がって! 』

 

「は、はい! 」

 

言われて相手コートまで走り、それを見たボルチモア先輩は思い切りボールを俺に向けて投げてきた。

 

迫ってきたボールに気づいて咄嗟にボールを掴み、バスケボールの大きさと重さでついつい手を離してしまいそうになるもしっかりとボールを掴み、相手ゴールまでドリブルをしようとした矢先には、モントピリアがゴール下を守っていた。

 

「通さない 」

 

「うっ…… 」

 

まずい、突破する技術がない今1体1は確実に負ける。ボルチモア先輩はまだ近くにいないし、クリーブランド先輩はマークされている。

 

「やるしかない……! 」

 

下手なりのドリブルで突破しようとしたが、モントピリアはすぐ様俺のボールを奪い去った。

 

「そんな動きで突破出来ると思うな 」

 

「ですよね……! 」

 

「ドンマイ指揮官!切り替えていこ! 」

 

「くっ……! 」

 

がむしゃらにモントピリアを追いかけてボールを奪おうとしてもモントピリアのドリブルに追いつけずにボールはデンバーに渡され、そのまま流れるようにシュートするとボールはゴールの中に吸い込まれるように入り、先制点はモントピリアのチームに入った。

 

「流石クリーブランドの妹達だ。良い動きをする 」

 

「えへへ、相手にするとちょっと手強いね 」

 

確かに一人一人の動きは良いし、何よりも姉妹特有の凄まじいコンビネーションが凄い。こっちの即席チームには無いものだ。

 

「……すみません、何も出来なくて 」

 

圧倒的な腕の前に無力感が生まれてしまったが、クリーブランド先輩達はそれを慰めてくれた。

 

「ドンマイドンマイ!これからだよ! 」

 

「あぁ、諦めたらそこで試合終了だ。諦めずに行こう 」

 

「……はい! 」

 

そうだ、将棋も途中で諦めたらその時点で投了するのと同じであり、それは対戦相手に失礼だ。このバスケ……いや、スポーツだってそうだ。諦めながら戦ったら相手にも、自分にも失礼だ。弱気な自分を叩き、改めてこの試合に望んだ。

「よし!行きましょう! 」

 

シュートされたボールを拾い、ドリブルで相手陣地に侵入すると今度はデンバーが立ちはだかる。

 

「通さないよー! 」

 

「クリーブランド先輩! 」

 

1体1だと無理だ。だからそこは避けてとにかくボールを2人に渡すことに専念しよう。幸いクリーブランド先輩はフリーだったからボールを渡し、クリーブランド先輩は颯爽とドリブルでゴールに近づいた。

 

「ナイス指揮官! 」

 

「姉貴でもここは通さない! 」

 

クリーブランドに立ちはだかったのはモントピリアだった。

 

「悪いけど、通させて貰うよ! 」

 

クリーブランド先輩はジグザグにドリブルをして進行方向を読ませない動きをし、モントピリアはそれに翻弄されつつもしっかりクリーブランドの動きについて行った。

 

ドライブという動きをクリーブランド先輩はしてもモントピリア先輩は食いつくようについて行き、中々引き離せなずにいたが、モントピリアは失速し、クリーブランド先輩はゴール下で綺麗なフォームでボールを投げ、見事ゴールを決めた。

 

(ん?今のモントピリア、わざと失速したような……? )

 

足の捻挫がまだ響いているのかと声をかけようとしたが、バスケの試合は止まらずに再開してしまい、声をかける暇さえ無かった。

 

攻撃と防御が入れ替わり、ハーフタイムを告げるブザーが鳴り響き、前半が終わった。

 

止まっている暇が無い試合に疲れに疲れ、ベンチに全体重を預けるように座った。

 

試合の結果は30対26で若干こっちが負けている状態だ。

 

「づ、疲れた…… 」

 

「まぁ、制服だからそれもそうだろう。お疲れ、指揮官君 」

 

汗だくのボルチモア先輩からスポーツドリンクを貰い、お腹が冷えそうだけど思わずごくごくとカブのみしてしまう。

 

「ぷはぁ、すみません足でまといになってしまって 」

 

「そんな事ないと思う。指揮官君はパスが上手いから周りを見ている証拠だ。流石と行ったところだ 」

 

「うんうん、パスをやる度にどんどん上手くなっていってるから足でまといなんかじゃ無いさ! 」

 

み、身に染みる言葉で涙が出そうになる……!じーんとした感動を噛み締めていると、クリーブランド先輩はある提案をした。

 

「そうだ、後半から指揮官が戦術立ててよ! 」

 

「へ? 」

 

「それは良い。それで?後半はどんな風にやるのかな? 」

 

「いや、いきなりそう言われても…… 」

 

無理だと言える雰囲気では無く、2人は期待の眼差しでじっと見つめていた。こうなってしまえば引くには引けず、恐れながらも後半の攻めの考えを提示した。

 

「じゃあ……こんなのはどうですか? 」

 

俺は考えた戦術をノートに記し、2人に見せると驚きの顔を見せてくれた。

 

「わお、指揮官君本気かい? 」

 

「おぉ……面白そうだけどちゃんと反応できるかな〜? 」

 

「なるべく合図は出します。あと、クリーブランド先輩。ちょっとお願いしたいことがあるんです 」

 

「え? 」

 

俺はクリーブランド先輩にある事を話し、その後の作戦を練ると後半開始の合図が鳴った。後半のボールはこっち側からのスタートであり、最初にボールを持つのは俺だ。

 

「よーし!後半もガンガン行くぞー!」

 

「ちょっと待って?指揮官……センターにいない? 」

 

そう、コロンビアの言う通り俺がいる位置はクリーブランド先輩とボルチモア先輩を挟む位置、いわゆるセンターポジションにいる。

 

バスケにおけるセンターポジションは主に点数を奪う為のポジションな為、バスケの技量や経験の無い俺がまず絶対に居ては行けない場所なんだけど、敢えて俺はここにいる。

 

別に目立ちたい訳でも点数を取りたい訳では無い。ただ無い知識を絞ってこれが最適と考えた。

 

「どう考えてるかわかんないけど……ボールは取らせて貰うよ! 」

 

デンバーが真っ先にこっちに近づき、ボールを奪おうとするのを見た瞬間、ボールをボルチモア先輩の方向にパスをした。ボールは誰もいない方向に飛んでおり、パスミスと誰もが思っていた。

 

しかし、ボルチモア先輩の俊敏な動きによりボールは見事ボルチモア先輩に抱かれ、そのままのスピードでボルチモア先輩はシュートを決めた。

 

「よし、いいパスだ指揮官君 」

 

「よーし!このままドンドン行こう! 」

 

時間と共にドンドン点差は縮まっていき、終盤だけど味方2人の動きもわかってきた。いきなりされるパスにも慣れ始め、キャッチミスも殆ど起きなかった……が、流石にまだ1体1に勝てるほど甘くはない。

 

「指揮官! 」

 

クリーブランド先輩からパスを渡された瞬間にデンバーがボールを取ろうと襲いかかり、すかさずもう一度クリーブランド先輩にパスを渡す。その際フェイントをかけるようにボルチモア先輩に目線を向けながらした為か、デンバーは見事俺の目線に引っかかった。

 

「うぇっ!?そっち!? 」

 

これでボールはクリーブランド先輩に渡され、モントピリアとの1対1になった。

 

「よーし!勝負だ! 」

 

「……! 」

 

モントピリアは通さないとブロックしたが、クリーブランドは軽々とモントピリアを突破し、シュートを決めた。その一連の流れを見た俺は、最初に感じた違和感が確信に変わった。

 

「あの、タイムって……バスケありますか? 」

 

「タイムアウトの事かい?作戦変更? 」

 

「いえ、ちょっとモントピリアに聞きたい事があって 」

 

「モントピリアに?じゃぁ、呼んでくるね。おーい、モントピリアー!指揮官が呼んでるよ! 」

 

クリーブランドに呼ばれたモントピリアはこっちに走り、何か用と言うように少し険しい目付きを見せた。

 

「ちょっと2人は離れててくれませんか?2人で話したいんです 」

 

「分かった。でも、スパイ行為はダメがらね? 」

 

「分かってますよ 」

 

2人は快く席を外し、向こうのベンチに座って俺を待った。

 

「……それで、僕に何の用だ 」

 

「ねぇモントピリア。もしかして……手を抜いてる? 」

 

「なに……? 」

 

するとモントピリアは刃物の様な鋭い眼光を向け、その後直ぐに目を逸らした。手を抜いてると言っても、俺やボルチモア先輩に対しては手を抜いてない。ただ、クリーブランドに対しては明らかに動きが鈍っていた。

 

「大して知らない奴が僕の何が分かるんだ 」

 

「少なくとも動きは分かると思うよ。指揮官だからよく観察しろって母先輩から言われたから、ここだけはちょっとだけ自信あるんだ 」

 

試合を通して出来る限り見てきたかつモントピリアの態度から間違いない。そしてその理由は多分……

 

「憧れが無意識に動きを鈍らせてるのかな。そんな感じがしたんだ。だから…… 」

 

「それを言ってお前は僕に何をさせたいんだ。それに僕は全力で姉貴に対抗している 」

 

「本当に?目を合わせてないけど、その言葉をもう一度目を見て言えるの? 」

 

「っ……、何なんだ!指揮官だからってなんでもかんでも命令を聞くと思うな! 」

 

「命令じゃないよ。……高雄先輩に言われたけど、どんな理由があろうと相手に対して手を抜くのは侮辱と同じって言ってた。モントピリアは今、憧れのクリーブランド先輩を侮辱しているのと同じなんだよ 」

 

「侮辱……?僕が姉貴を侮辱する訳が…… 」

 

「だったら本気でやって。憧れは崇拝とは違う。それとも、モントピリアの憧れの人は手心を加えないと輝けないの? 」

 

「それは…… 」

 

「これ以上は何も言わないよ。じゃ、残り時間精一杯頑張ろうね! 」

 

ちょっと説教ぽかったような気がするけど、言わずにはいられなかった。ちょっと状況が違うけど、昔俺は高雄先輩との鍛錬中、どうせ負けるからと手を緩めた時があった。

 

そして、それを直ぐに見抜いた高雄先輩からの喝をくらい、さっきと同じような説教……というか、何時間も正座させられたのは良い思い出だ。

 

だからモントピリアの事を昔の自分に重ねていたからこう言ったかもしれないし、何よりも放っておけなかった。でも勿論モントピリアは俺なんかじゃない。答えはきっと、次のプレイで分かる筈だ。

 

残り時間も10秒程、点数は同点。試合再開のホイッスルが鳴り響き、ボールはモントピリアの手に渡った。

 

「よし…… 」

 

「通さないよ!モントピリア 」

 

直ぐにクリーブランド先輩がモントピリアに仕掛け、俺とボルチモア先輩はデンバーとコロンビアにマークされて動けない。完全にモントピリアとクリーブランド先輩の一騎打ちの形になり、このプレイで勝敗が左右する状況だ。

 

「姉貴……! 」

 

ジリジリとモントピリアは詰められ、パスする手段も無い。ここで勝ちたければモントピリアはクリーブランド先輩を突破さぜるおえない。

 

僅か数秒後、クリーブランド先輩が仕掛けて先に手をボールに伸ばし、モントピリアはそれに反応してボールを後ろに回した。しかし突破はせずに立ち位置は変わらず、モントピリアは逃げの体制でクリーブランド先輩から離れようとも、クリーブランド先輩はしっかりと追いついてきた。

 

「逃がさないよ! 」

 

「くっ…… 」

 

パスはさせない。むしろそのようにしたからだ。パスを出させては俺がモントピリアに言ったことが無駄になる。さぁどうする……モントピリア。

 

(僕は姉貴の事を尊敬してる。姉貴の言う事は正しいし、誰にも負けないぐらい強いと思ってる )

 

モントピリアの足が止まり、クリーブランドはすかさずボールに手を伸ばした。

 

(誰かに負ける姉貴は見たくない。……だけど )

 

モントピリアは咄嗟に左手でバウントしていたボールを右手に向けてバウンドさせ、電光石火の如くクリーブランドを突破した。

 

「僕が憧れている姉貴は、全力で戦って、誰よりも輝かしい海上の騎士の姉貴だから……! 」

 

「動きが変わった!?やるね、モントピリア! 」

 

モントピリアの顔がなにか吹っ切れた様な顔だった。どうやらもう心配する必要は無さそうだ。

 

クリーブランド先輩を突破したモントピリアはそのままゴールに向かうが、クリーブランド先輩も猛スピードでモントピリアに追いつき、またもや目の前に立ちはだかる。

 

「通さないよ! 」

 

「勝負です。姉貴! 」

 

数秒の間に激しい攻守が行われ、その中でもモントピリアはボールを離さないながらもしっかりとクリーブランド先輩の動きを目で追っていた。

 

残り10秒。1秒が1分にも感じる中でついに決着は訪れた。左から右にモントピリアはドライブどクリーブランド先輩を突破し、すかさずそのままゴールに向けてボールを投げた。

 

放物線軌道のボールはそのままバスケのゴールの縁に当たるものの、その縁の上でボールが回り……そして、ボールはネットの内側に入った。そして俺は、その瞬間ボールに向かって走った。

 

ゴールが決まった瞬間ギャラリーは大盛り上がりになり、モントピリアもデンバーもコロンビアも安堵の表情を浮かべ、一瞬だが勝ちを確信していた。それはそうだ、残り時間もあと3秒。もはやボールを持ってゴールの所まで走れる時間じゃない。だけど、バスケのルールには試合終了のホイッスルがなってもボールが空中にあり、それがゴールに入れば得点になるブザービーターというのがある。

 

地面の少ない摩擦でズサーと地面と靴が擦れる音を出しながらボールを拾い、この時点で残り2秒。あとはこの少し重たいボールをあのゴールまで投げるだけだ。

 

「指揮官君!? 」

 

「最後まで諦めないのが俺なんでね! 」

 

右足を踏み出し、腰を回し、体を回して腰に思い切り力を入れ、最後に右腕を振り下ろした。

 

初めてのバスケで無理をしたのか少し右腕に痛みが走ったけどボールは無事ゴールに向かって飛んでいき、上手く行けば得点になる。

 

(頼む、入ってくれ……! )

 

だがその願いは届かず、ボールはゴールの縁にちょうど当たってしまい、ボールがゴールに入ることは無かった。終わったと諦めたその時、茶髪のKAN-SEN、つまりボルチモア先輩が太陽を背に弾かれたボールに向けて高く飛び、流れでた汗が煌めいて絵になる構図だった。

 

「ナイストライだ。指揮官君 」

 

高く飛んでボールを持ったボルモア先輩はそのままボールをゴールに叩きつけ、力強いダンクシュートが決まった。この数秒の時間であまりの出来事が起きすぎてボルチモア先輩以外は全員呆然とし、ギャラリーのKAN-SEN達もそうだった。

 

そしてその瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響き、得点は……60対61。つまり、俺達の勝ちが決まった。

 

「か、勝った……?」

 

勝った事を認識したギャラリーは黄色い声援をボルチモア先輩に向け、ボルチモア先輩は慣れた表情でギャラリー達に笑顔を振りまいていた。

 

「す、凄いや……ボルチモア先輩は 」

 

「いや、指揮官君のあのシュートが無ければこうはならなかったさ。ありがとう、指揮官君 」

 

ボルチモア先輩はバスケの疲れで座り込んだ俺に手を差し伸べ、俺はその手を握って立ち上がった。

 

「いや〜お疲れ様2人とも!ミニバスケだったけどいい試合だったよ。指揮官には是非ともバスケ部に入って欲しいぐらい! 」

 

「えっ?あ、ありがとうございます……でも俺、男ですけど、大丈夫なんですかね? 」

 

「いや、私達の学園はちょっと特別でね。指揮官君が入っても問題ないさ 」

 

「へ、へぇ……まぁ、考えておきますね 」

 

「ふふ、楽しみしてる! 」

 

クリーブランド先輩は笑顔で握手の手を伸ばし、俺もその手を握った。だがその直後、モントピリアが間に入ると、俺とクリーブランド先輩を引き離した。

 

「姉貴に気安く触るな! 」

 

「うぉ、モントピリア。最後の動き良かったよ。俺の話を聞いてくれてありがとう 」

 

「……ん、別にお前を認めた訳じゃ無い 」

 

「じゃあ認めて貰えるように頑張らないとね 」

 

「ふん…… 」

 

「あれ?モントピリアと指揮官っていつの間に仲良くなったの? 」

 

「で、デンバー……!別に僕と指揮官は仲良くなってなんか…… 」

 

「んんー?でも顔が赤いぞ〜? 」

 

「えっ?本当に? 」

 

コロンビアの言う通り、モントピリアの顔は少し赤く、熱があるのかとモントピリアの額に触れた。

 

「ちょっと熱いね。熱があるんじゃ…… 」

 

その行動に何故かギャラリーの人達はキャーと恥ずかしがりながら声を上げ、コロンビアもヒューと言いながら風船ガムを膨らませた。

 

「え?なになに?一体何が…… 」

 

「ぼ、僕に触れるなぁぁぁぁぁ!! 」

 

「ぐぇぇぇ!?何でぇ!? 」

 

何がなんだか分からずにモントピリアの右ストレートが俺の顔面に炸裂し、そのまま俺は吹き飛ばされた。思ったより力があって殴られた頬が痛く、思うように立ち上がれなかった。

 

「はぁはぁ……!お、お前なんか……認めるもんかー! 」

 

「ちょっとモントピリア!?指揮官に謝らないとダメだってー! 」

 

「あ、姉貴ー!待って下さいよ! 」

 

「あちゃ〜これはついて行かないとダメかなー。あ、ボルチモア先輩、指揮官頼めますか? 」

 

「あぁ、任せてくれ 」

 

モントピリアを追いかけるクリーブランド先輩達を目にし、俺はそのまま気を失った。

 

___

__

_

 

「ん……んんー……あれ、ここは? 」

 

起きたら白い天井が目に入り、周りには白いカーテンが外の風景を遮断し、俺は白いベットの上で寝転がっていた。

 

「おや、起きたようだね。指揮官君 」

 

反対方向に目を向けるとボルチモア先輩が寝ている俺を見ていた。

 

「ボルチモア……先輩?ここは…… 」

 

「保健室さ。君はモントピリアに殴られて気を失ったんだ。まぁ、俺は指揮官君がちょっと悪い部分もあるけどね 」

 

「えーと……俺、何かモントピリアにしましたかね……? 」

 

「あぁ〜……そうか、指揮官君はそういうタイプか。いや、悪くは無いけどね。うん 」

 

「???? 」

 

ボルチモアさんは何かを察した様な顔をしていたが、俺は何が何だか分からずに頭に疑問の『?』マークで埋もれた。

 

「さて、荷物や上着は私が預かっている。ほら 」

 

「ありがとうございます。って、もうこんな時間なんですね。そろそろ帰らないと…… 」

 

「そうだね。なら、私も一緒に行こう。ちょうどユニオンの寮も近いしね 」

 

「分かりました。じゃあ少しだけよろしくお願いします 」

 

こうして俺はボルチモアさんから上着や荷物を返して貰い、保健室のヴェスタル先生に挨拶をしてから帰りの船に向かった。

 

「そういえばボルチモアさんって、何か部隊に入ってるんですか? 」

 

「私かい?私は入ってはいないな。ただ、助っ人として活動しているだけさ 」

 

「へぇ〜でも大変なんじゃありませんか?バスケとかサッカーとか色々 」

 

「そうでも無いさ。私がやりたくてしてる事だからな 」

 

「凄いですね、ボルチモア先輩。俺もそんな風に頼りになる指揮官になれるように頑張らないと! 」

 

「はは、その時が来るのを楽しみにしているよ 」

 

そんな談笑を交わしながら歩いていき、帰りの船乗り場にたどり着いた。ちょうど船も来る時間となっており、ボルチモア先輩とはここでお別れという時になった時、ボルチモア先輩から少し切羽詰まった様な顔をして俺に一言言ってきた。

 

「なぁ、指揮官君。帰る前に少しだけ頼み事を聞いてくれないか? 」

 

「ん?なんですか? 」

 

ボルチモア先輩は少し引け目になりながらも、声を上げ、この時の波は俺の心情を表すかのように一際大きかった。

 

「少し私の親友を助けて貰いたいんだ。男である指揮官君にね 」




校則設定

・部隊(部活)の指揮官制度について
アズールレーン学園の部隊は人類の部活と同じように活動し、例と特例して一般の大会にも出場出来る。また、指揮官はどの部隊にも所属が可能であり、その活動内容に伴って活動する事も可能。
つまり、監督になる事も、選手になる事も可能である。
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