もしも、アズールレーン学園に入学したら   作:白だし茶漬け

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前書きのネタが思いつかないのでもうこのまま行っちゃうぜ!


かごなし

 

差別というのは、人々に不安という物がある限り無くなりはしない物だろう。

 

例えば、肌の色が違うだけでその人の事を異端視し、その人の事を知ろうともせずに迫害したりする歴史があった。

 

きっかけはほんの小さくて、些細な不安だったのだろう。自分とは違う、普通とは違う、周りから違う。それだけで人々の不安は駆られ、その結果起きるのは迫害であり、その収縮されたのが……いじめだ。

 

_かごなしが!お前なんか仲間じゃない!

 

_髪で耳を作るなんて……出来ないように切っちゃえ!

 

_耳が無いやつは悪い奴なんだ、皆でやっつけちゃえ!

 

痛い、辛い、怖い……助けて欲しい。

 

もう学校なんて……行きたくない。

 

どうして僕は他とは違うの?

 

他と違うだけで……何でこんなに痛いの?

 

……助けてよ、誰か

 

___

__

_

 

「……っ! 」

 

汗をかきながら布団から飛びだすように起き上がる。

 

激しい運動をした後のように呼吸が荒く、汗も身体中に出て寝巻きが少し濡れており、気持ち悪い目覚めになってしまった。

 

「……昔を思い出しちゃったな 」

小さい頃、俺が天城母さんに会う前の頃の事だ。最近は思い返せずにいたが、こうして急に夢に出てくるとなると心の中では気にしているんだろう。

 

重桜では、獣の耳や鬼の様な角が生えて生まれくる人が多く、それが重桜の人と認識される印となっていた。だから、頭の上に何かが生えている=重桜の人が世界の認識だ。

 

だけど、たまに重桜には頭に耳や角が生えてこずに産まれる物もいる。それが【かごなし】と言われている。

 

そんな俺もその1人だ。頭の上に垂れ耳の様な物があるのは髪であり、昔からのくせ毛見たいな物だ。このくせ毛を弄りながら体を起こし、窓の外の太陽の光を浴びて今日も一日が始まる。

 

「優海ー?ご飯が出来ましたよ〜 」

 

「今行くー! 」

 

さて、今日のご飯はなんだろうか?

 

 

 

 

今日のご飯は目玉焼きにウィンナーと少し軽めだった。まぁいつも多いからこのくらいがちょうどいいかも知れない。

 

皮はパリッと中はジューシーなウィンナーを噛むと肉汁が溢れ出し、朝からいくらでも食べれそうだった。

 

「優海が入学してから2週間が経ったのですね。最初は心配で心配でしたが、慣れて来た感じですね 」

 

「うん。皆良い人だし、顔見知りも多いから安心したよ 」

 

「本当に成長しましたね。 小さい頃は人との付き合いを断っていたのに…… 」

 

「……うん、そうだね 」

 

セイレーンに元いた場所を壊されて居場所を失って、そうして出会ったのが天城母さん達だけど、それだけじゃない。

 

他に出会ったのは……迫害だった。

 

耳が無いからと新しい学校では虐めを受けられ、俺はまともに友達が出来ずにいた。何とか小学校は卒業したけど、中学校からはほぼ学校には行けなくなった。

 

次はどんな事されるか分からない恐怖で身体も震え、外に出ることすら出来なくなった時期もあった。

 

……いや、この話はもうしないでおこう。朝から辛気臭い気分にはなりたく無いし、話していても楽しい事じゃない。

 

「ご馳走様。じゃあ行ってくるね 」

 

いつも通り鞄を背負い、いつも通り学校に行く。今日の授業は空母クラスでの授業だ。空母クラスって他と違って航空戦術とかあるか結構大変なんだよなぁ……

 

 

 

 

 

「……で、あるので空から攻める際は3次元的に空間を把握する必要があります。下からの対空砲や、同高度での機銃を同時に対処するのは難しいので、まずは爆撃機を使っての掃討を…… 」

 

ユニコン空母であるレンジャー先生の授業を聞き、ノートに書き込んでいると授業終わりのチャイムが鳴った。丁度キリが良かったのかレンジャー先生も丁度授業を終え、挨拶を済ませた。

 

「あら、もう時間なのね。では今日はここまで。ちゃんと復習するのよ 」

 

「あ、待って下さいレンジャー先生。ちょっとこの辺り質問なんですけど…… 」

 

俺はノートを持ってレンジャー先生に分からなかった所をの質問をすると、レンジャー先生は口頭だけではなくノートの端に分かりやすい図式を使ったアドバイスもしてくれた。

 

「この場合は……この隊列を使って攻めた方が空母も動きやすいと思うわ 」

 

「ふむふむ……なるほど、ありがとうございます。レンジャー先生 」

 

「確かこの前の授業もこうして質問してくたわよね?前の学校でもそんな感じだったのかしら 」

 

「うっ…… 」

 

レンジャー先生の言葉に後ろめたさが溢れてしまい、思わずレンジャー先生から目を逸らした。

 

「すみません、俺中学あんまり行ってなくて…… 」

 

「え?それはどうして……あっ 」

 

レンジャー先生は何かに気づいたのか、申し訳無さそうにしていた。多分だけど、指揮官だからそれなりに俺の経歴を記載されている書類とか目を通しており、そこに書かれていた事を思い出したのだろう。

 

「ご、ごめんなさい。貴方って…… 」

 

「いいんです。昔みたいにはなってないし、俺自身もうそんなに気にしてませんから。じゃあ、帰ります。質問、ありがとうございました 」

 

こうは言ったがやはり心に引っかかりが残ってしまい、上っ面の笑顔で教室から出ていった。

 

気分も心なしか重くなり、それが足取りを重くさせた鉛の様に俺の足を引きづらせた。

 

「はぁ……朝から変な夢も見るし、気分転換にあの人のお店にでも行こうかな 」

 

昔ながらの店に顔を出す為に早く帰りの船に乗ってそのまま家がある所とは違う島まで乗ることとなった。

 

揺れ動く船の中の手持ち無沙汰は変わらず、折角だからノートを開いて今日の授業の復習をする。レンジャー先生の教えもあって今日はかなり捗りそうだ。

 

船の揺れもこうして集中すれば案外いい物だ。海の潮の香りも集中力を持続させているし、船の中の勉強も悪くなかった。

 

「……ねぇ、あの人って 」

 

「あの制服……噂の指揮官じゃない?何でかごなしが指揮官になれたんだろ 」

 

「他の陣営を退いて指揮官になれたのは良いけど……何でかごなしなんでしょうね。カミの加護を得れてない呪われた存在なのに…… 」

 

(聞こえてるんだけどな…… )

 

反対側の席から重桜陣営らしき人達の小さな声が聞こえ、かごなしである俺が指揮官になった事の不満について語っていた。

 

もしかしたら聞こえるように言ってるかも知れない。思わず目を合わせるとその人達はまるで汚いゴミを見たかの様に嫌悪の目を浮かばせ、その席から移動してしまった。

 

「……はぁ 」

 

少しずつだけど重桜は変わって来ている。新しい神子が変わった2年前、かごなしに対する偏見は間違っていると宣言してくれたあの日から、昔のようにかごなしが迫害される事は無くなった。

 

だが、こんな風に小さな迫害は無くならずにいた。それはそうだ。こんな偏見は間違っている。するべきでは無いと偉い人が言っても一人一人の感性までは変えられない。

 

昔からずっとあるこの偏見や迫害は思っている以上に人々の心に根強いているのだから、これを取り除くとなれば、相当な時間をかけるか或いは……

 

『次のニュースです。重桜の神子様である長門様が迎桜(けいおう)の儀の準備が完了したとの事、今カメラにはその会場が映し出されております 』

 

「まぁ、もうそんな時期なのね 」

 

「今代の神子様はどの様にして迎春の儀をするのか楽しみだわ〜 」

 

迎桜の儀式……重桜に古くから伝わる伝統行事の1つであり、大体的に行事の1つだ。

 

重桜は他の陣営と違い、桜が年中枯れず咲いてるいるのが特徴の1つであり、最初にそれがカミの恵みだとされており、重桜にとって桜は身近でありながら象徴的な物の1つとされている。

 

重桜ではカミという絶対的な信仰の対象が存在し、それを崇める為の儀式の1つが迎桜の儀だ。

 

迎桜の儀は主にその桜の加護に感謝……言わば、最初に恵みをくれた事に感謝し、今後ともその恵みが続きますようにと願う儀だ。

 

夏には海の恵みに感謝して願う迎海の儀、秋は豊作を願う迎豊の儀、冬は雪と共に今年の恵みに感謝し来年の恵みを祈る迎祈の儀と年内で4つある。

 

それを代表してカミに祈りを捧げるのがカミの声を聞けるという神子様……今は変わったから長門という子になっている。

 

ちなみに……彼女もKAN-SENだ。KAN-SENが神子になるのは初めであり、皆も注目している。

 

「……頑張ってるな、長門 」

 

テレビには巫女服を来た少女が映り、彼女が長門だ。……また会える日が来るかな。

 

「あれー?指揮官じゃん、こんな所で奇遇だね 」

 

船の奥から女性から声をかけられ、振り向くと見知ったグループが目に映った。

 

「あ、コンコード。それに……マーブルヘッドと熊野もいるんだ 」

 

「やっほー指揮官、お久しぶりでーす 」

 

「ちーす 」

 

「ち、ちーす? 」

 

「お、指揮官ノリが良いですね〜 」

 

マーブルヘッドの挨拶にぎこちないにしろ合わせ、コンコード達は俺の周りの空いてる席へと座り、熊野が俺の隣に座った。

 

「熊野はいいとして……コンコードとマーブルヘッドって確かユニオンの出身だよね?重桜に何か用なの? 」

 

「熊野の話で〜重桜にすっごく美味しい和菓子がある店があるからって気になったんですよ〜 」

 

「そうそう、だから一緒に連れてきたってわけ! 」

 

「そのお店って、鳳翔さんがいるお店? 」

 

「そうそう……って指揮官知ってんの!? 」

 

「うん、しかも常連だよ 」

 

誇らしげに言うと熊野は食いつくように羨ましがってくれた。

 

「えー!?じゃあ常連さんの裏メニューとかある訳でしょ?熊野最近知ったからまだ頼め無いんだよね〜チラッ? 」

 

熊野だけじゃ無く、コンコードとマーブルヘッドも両手を握って上目遣いで目を輝かせ、俺に裏メニューの提供を願っていた。

 

「ねぇ指揮官〜?お ね が い♡ 」

 

「ダメだよ、ちゃんとお店のルールは守らないと 」

 

「指揮官ってやっぱり真面目だねー 」

 

「指揮官だからね 」

 

『まもなく〜重桜 ーー島〜 』

 

「ん、着いた見たいだね。それじゃあ折角だから一緒に行く? 」

 

「さんせー! 」

 

後から合流したが、目的が一緒だから折角なので熊野達と一緒に鳳翔さんのお店へと足に出向く。

 

何だかこういうの漫画見た青春の1ページ見たいで何だかニヤニヤしてしまう。友達と一緒に放課後どこかに遊びに行く……こういうのは初めてだから心がウキウキしてしまう。

 

笑みを零しながら船を降り、そのまま商店街の方まで行くと、辺りはかなり盛況していた。

 

「おお〜なんか盛り上がってるね〜 」

 

「多分だけど迎桜の儀の影響だと思うよ。この時期はかなり盛況になるし、重桜も5日間休みになるしね 」

 

「5日も!?……って、じゃあ学園はどうなるの? 」

 

「授業の遅れに差が出るから休みだよ。ほら、学園アプリにも書いてある 」

 

「おお〜本当だ!これは重桜様々だね 」

 

「それにしても5日間も休みだなんて、そんなに大掛かりにするんだねー 」

 

「5日かけてやるからね 」

 

迎春の儀は一日では終わらない。というより、準備中含組めて5日やるのだ。

 

まずカミに祈りを捧げる為の準備に1日。これはカミを迎え入れる準備の意味合いを兼ねているらしい。

 

次にカミを迎える時のおもてなしの為の祭り。カミが飽きない様にする為に皆で最後の日まで盛り上がる。これで2日目。

 

次にカミの声を聞き、その声を神子が伝えるのが3日目。

 

次にカミに感謝の気持ちを抱きながら、カミを労う祭りをするのが4日目。

 

そして最後に……神子が神木【重桜】に祈りを捧げ、カミを見送り、魂の安らぎを与えるのが最終日だ。

 

大分大雑把に迎春の儀を説明し、あまりの大行事にマーブルヘッドとコンコードは関心を超えて驚愕していた。

 

「へぇ〜凄いね、重桜。あれ?なんか重桜って言葉が出てきたけど、重桜って陣営の名前じゃないの? 」

 

「確かに重桜は陣営の意味もあるけど、俺達にとっては、あの大きな桜の木が重桜なんだ 」

 

ここから見え程巨大な桜の木に指を指した。指の方向にある桜の木は天を貫く程大きく、重桜の陣営内ならどこでも必ず見える程大きな木だ。

 

あれが神木【重桜】。重桜の中心にあり、決して枯れることも無く、花びらがちっても直ぐに花びらが再生する不思議の木だ。一説によると、あそこにカミが住んでるらしい。

 

「わぁ……おっきい 」

 

「枯れない木……気になりますね! 」

 

「不思議な木でしょ?どんなに研究されても原因不明だから、ちょっと怖い気もするけどね 」

 

「そんな事より早くお店行こうよ! 」

 

「それもそうだね。じゃあ付いてきて 」

 

商店街を案内しながら熊野達を案内し、これから和菓子を食べると言うのに、熊野はその辺の店から団子やら八つ橋を買っては食べ、コンコード達も同じ様な事をしていた。

 

「全く、お腹いっぱいになっても知らないよ? 」

 

「指揮官〜知ってる?デザートは別腹って事!んー美味しい〜! 」

 

「もう、気をつけ…… 」

 

後ろに振り返った瞬間、前に歩いてきた男性と肩がぶつかってしまった。

 

「あぁ!ごめんなさい! 」

 

「ちっ、気をつけろよな……かごなしが 」

 

男性は吐き捨てる様に言うと俺を睨み、謝りもせずに去っていった。この光景を見た熊野達はぶつかって来た男に対して嫌悪に満ちた目で睨んだ。

 

「なにアイツ、感じわるー 」

 

「指揮官、あまり気にしない方が良いよ。あんなヤツの頭が硬いだけだから 」

 

「いや、大丈夫だよ熊野。慣れてるから 」

 

「慣れてるって…… 」

 

「……ちょっとね。ささ!もうすぐで鳳翔さんの所だよ! 」

 

胸に針が刺さり続ける痛みを堪え、商店街の坂道を登った所に1軒のお店が目に入った。あそこが鳳翔さんのお店だ。

 

知る人ぞ知る風貌を漂わせており、茶屋にしてはとんでも無いほど美味しく、料理の腕は天城母さんにも引けを取らない腕前だ。

 

久しぶりに入る店の扉を開けようとすると、脇道の方に何か不穏な気配を感じた。

 

「ちょっと……離してよ! 」

 

脇道の茂みに目線を向けると、何やら数十人規模で2人の女性を囲んでいた。その状態を維持するようにそのまま森の奥まで移動し、ますます不穏な空気が流れ出た。

 

「ん?指揮官、どうしたの? 」

 

「ごめん、先に店に入ってて 」

 

熊野に荷物の全てを預け、茂みの奥に足を踏み入れ、薄暗い森の中を静かに進む。結構深い森のせいで視界も悪く、しかも夕暮れだから周りをよく見ないと迷いそうだ。

 

(何だか懐かしいなぁ……昔こんな風に探検して迷子になって、それから…… )

 

あの子と出会ったんだ。でも今はそんな風に考えている余裕は無い。森を探ると不自然に枝が折られている木を発見した。その木を観察すると、意図的に手で折ったのでは無く、不意に体に当たって折れた痕跡だった。折られた枝が風化してない事から、かなり近い筈だ。

 

「この……離して! 」

 

「……!かなり近い 」

 

女性の叫び声の方向を頼りに森に進み、少し開けた所に女性2人を囲んだ多くの男性がいた。数はざっと12人……どうやら仲良く遊ぶという雰囲気では無さそうだ。

 

男性達に囲まれているのは……白髪の長髪の女性に茶髪のポニーテールの女性……いや待て。あの2人、見た事あるぞ。確か名前は……そう、翔鶴と瑞鶴だ。

 

重桜の空母であり、同じ一年だけど姉妹って聞いた事がある。同じ重桜出身で話な事もあり、それなりに仲は良い……とは思う。そんな彼女達が一体どうしてここに……

 

「貴方達、こんな所に連れ込んで、ナニかする気何ですか? 」

 

「ご想像通りだよ。あんたらKAN-SENなんだろ?KAN-SENはいい女が多いって聞くけど本当だなおい 」

 

「わぁ、最低ですね。いい加減そのくっさい口を閉じて下さいよ 」

 

こんな状況なのに翔鶴の毒舌は止まらず、それに怒りを覚えた男性の1人が翔鶴の顔を右手で殴った。

 

その光景の一部始終を見た俺は、ある光景を思い出すと同時に、胸の奥から怒りの火が込み上げつつあった。

 

「翔鶴姉!あんた達、翔鶴姉に何するの! 」

 

「その女が減らず口を叩くからだ!何だ?それとも抵抗すんのか?KAN-SENが善良な一般人に危害を加える気か?あぁ? 」

 

「くっ…… 」

 

(なるほど、そういう事か…… )

 

翔鶴達は、あの男達に無理矢理連れてこられたんだ。KAN-SENは一般市民に危害を加えてはならない。これはKAN-SENが守るべき規律でもあり、制約見たいな物だ。

 

もしもKAN-SENが一般市民に危害を加えたら、その艤装は解体され、中にあるメンタルキューブの因子を取り除かれてしまい、学園を退学させられてしまう。

 

勿論、こんな風に正当防衛や明らかにあっち側が悪い状況なら抵抗が許されるけど、ここでは証拠が無い。

 

携帯で現場を撮って証拠として残す事をしようとしたが、ポケットの中に携帯が無い。

 

……そういえば、熊野に携帯も荷物も全部預けたんだった……!俺の馬鹿っ!

 

「そ れ に、かごなしに抵抗の権利があると思ってんのー?大人しく俺達に身を預けなよ 」

 

「……何それ、頭の上に耳が無くて、尻尾が無いからって他とは違う何かに扱っても良いって訳!?冗談じゃないよ!私達も同じ重桜で生きてるの!」

 

「はぁ〜めんどくさ、かごなしの癖に偉そうにしちゃって。おい、口とか塞げ 」

 

「ちょ……いや!離し…… 」

 

「やめなさい!瑞鶴は……んつ 」

 

「かごなしの癖に!お前らなんか誰も助けねぇよ 」

 

「いや、いるよ。ここに 」

 

「っ!誰だっ!? 」

 

男性全員が俺の方に顔を向け、俺は木の影から姿を見せた。今、俺の顔はどうなっているんだろう。分かることと言えば……凄く、いや……物凄く怒っていると言うことだ。

 

「んー!んんん! 」

 

「あぁ?お前誰だよ 」

 

「待ってくれ。あの男の制服……アズレン学園の、ということはアイツまさか 」

 

「そう、その子達の指揮官だ 」

 

指揮官と名乗ると男性達はざわめき始めた。今の世界にとって、指揮官という存在は大きくもなければ小さくも無い。

 

だが、いずれはKAN-SEN達を率いてセイレーンを倒す中心人物になるから、それなりに影響力はある。言うなれば世界を背負う卵みたいな物だ。

 

それなりのサポートは手厚く受けられるし、かなり優遇されてると言えばされる。その為、指揮官というステータス目当てでなる人間は少なからずいた。

 

「くく、まさかお前の方から出向くなんてな 」

 

すると奥から何やら風貌が少し違う男が出てきた。このグループのリーダーだろうか……?その割には随分と身なりが良すぎる様な気がするけど。

 

「久しぶりだな 」

 

「……ごめん、誰だっけ? 」

 

「ぐっ……貴様と同じ指揮官選抜に出てたんだ!この顔を見ろ! 」

 

と言われてもな……あの時指揮官になる為がむしゃらだったからほとんど顔を覚えてないのが現状だ。しかも、あの時は重桜以外にも全ての陣営の人が集まってたから、いちいち顔なんて気にする暇も無かった。

 

「……ごめん、本当に覚えてない。それよりも、君がこの人達をまとめてるの?だったら瑞鶴達を離してほしいんだけど 」

 

「かごなし如き、僕に指図するな。だが、当初の目的の手間が省けてなによりだ 」

 

男達は数人で俺を囲い、残りの数人は瑞鶴と翔鶴の傍に残った。

 

「最初はこいつらを餌にしてお前の事を釣ろうと思ったが、まさかお前がここにいるとは好都合だよ 」

 

「目的が俺なら2人を離しても良いんじゃないの 」

 

「いや、あのかごなしKAN-SENには使い道がある 」

 

リーダー格の男が指を鳴らすと、奥の男達は瑞鶴と翔鶴の顔に瑞鶴が持っていた竹刀を奪い、それの先を瑞鶴の頬に向けた。

 

「こいつらは人質見たいな物だ。抵抗すればこいつらがどうなるかな〜?まぁ、かごなしのこいつらはどうなってもいいが」

 

「っ……!そこまでして、俺に一体何をさせたいんだ……! 」

 

ここまでくると怒りが抑えられない。握った拳に血管が浮き出し初め、眉間にはかなりのシワが寄っているのだろう。自分でも驚くぐらい体が震え、今なら痛みさえあまり感じられない程頭に血が上っているのが分かる。

 

そんな俺を見てリーダー格の人は少し気圧されつつも、傲慢な態度を示してある事を言ってきた。

 

「決まってるだろ。お前から指揮官の椅子を下ろさせる為さ。おい、やれ 」

 

リーダーが合図すると竹刀を持った男が瑞鶴の腹に突きをすると、瑞鶴は声にならない叫びを上げた。

 

「〜〜!!! 」

 

「お前っ……!! 」

 

「おっと、俺達は何もしてないぞ?やるならアイツにしてくれよ。まぁ、行きたいのならこの場にいる全員を倒さないとな〜?何もしてない奴を倒したらどうなるかなー? 」

 

リーダーの奴は携帯を向けており、どうやらこの様子を録画しているのだろう。男の狙いは俺を指揮官から下ろさせるという事から、暴力沙汰をさせたいのだろう。

 

指揮官が何もしていない一般市民に暴力をさせた……という体で言えば、証拠が無い今俺に弁明の余地は難しい。

 

それにリーダーの風貌からして重桜でもまぁまぁ上の立場の人間……発言を握りつぶすのは容易だろう。

 

つまり状況はこうだ。瑞鶴と翔鶴を助けたければ、この人達を倒せという事だが、もしそうなったらあっちの言い分で俺は指揮官から下ろされる。

 

指揮官のままで居たいならば、ここの人達に気の済むまで殴られ続けろ……という事だ。

 

「ははは!かごなし風情が指揮官になるのは間違っているんだよ!かごなしは黙って日陰にでもいろってんだよ! 」

 

「……黙れ 」

 

「ふん、負け犬の遠吠えだな。あぁ、でも耳がないからそれ以下か。……やれ 」

 

俺を囲む男達は徐々にその円を狭めるように笑いながら近づいてきた。……どうやら、この人達もかごなしに対しては何とも思ってないのだろう。

 

「へへ、かごなしだからいくら殴ってもいいのはスカッとするぜ。最近嫌な事ばかりだからな……ストレス発散させろや! 」

 

「……ごめんだけど、殴られるつもりは無いよ 」

 

後ろから殴り掛かる男の右ストレートをノールックで交わし、横に通った腕を掴み、そのまま背負い投げで男を地面に叩きつけた。

 

地面に叩きつけられた男はろくな受け身を取れずに凹凸な地面に背中から脳に向かって衝撃が受け止めきれず、気絶した。

 

「なっ、お前……!し、指揮官を……その地位を捨てるのか!? 」

 

「捨てる 」

 

たった3文字の言葉で周りの人達はギョッと驚き、動きを止めた。

 

「ば、馬鹿な……指揮官だぞ!?将来全ての陣営のKAN-SENを支配し、英雄になれるかも知れないんだぞ!?それを……捨てるだと!?」

 

「俺は瑞鶴と翔鶴を守りたい。それだけだ。指揮官を捨てるだけで助けられるなら、いくらだって捨てるよ! 」

 

瑞鶴と翔鶴達に向かって俺は走り、その進路上にいる男の股をすり抜けるように股下をスライディングし、そのまま一気に竹刀を持った男に向かって飛びかかる。

 

「くそっ……なんだコイツの動きは! 」

 

竹刀を持った男はダメ元で振り回していたが、そんな雑で遅い攻撃を当たる通りは無い。竹刀を振り下ろした瞬間を見極め、竹刀を蹴り上げると竹刀は回転しながら森の奥へと行き、武器を失った男は混乱した。

 

その隙に男の顎に拳を突き上げ、男は下からの攻撃に踏ん張りきれずに宙に浮き、一発で気絶した。

 

「2人共大丈夫!?」

 

急いで瑞鶴と昇格の縛った縄を解き、同時に口に突っ込まれた布を取り出し、瑞鶴と翔鶴は自由となった。

 

「ケホケホ……し、指揮官、どうして?私達、貴方とあまり話した事無いのに…… 」

 

「関係ないよ。助けられる人を助けないと、俺は俺を許せないから 。かごなしだろうと、他の陣営だろうとそれは関係ないから 」

 

「指揮官…… 」

 

「早く逃げて! 」

 

「でも…… 」

 

「良いから!俺、結構強い……と思うから 」

 

「逃がすと思ってるのか? 」

 

いつの間にか男達が俺たちを囲み、逃げ場を完全に失ってしまった状態になった。

 

「あーあ、これは行けないな〜指揮官が善良な市民に暴力を振った動画が取れたな。これをアズールレーン上層部に報告すれば……お前は終わりだな 」

 

携帯には俺が男を背負い投げしたり、瑞鶴の近くにいた男を殴り飛ばした動画が映し出されていた。

 

「そんな嘘の動画、直ぐにバレるに決まっている! 」

 

「いーやどうかな。僕の父さんは結構良い立場にいるんだ。きっと分かってくれるさ 」

 

「あらあら〜パパがいないとなーんにも出来ないなんて、指揮官になれないのは当然ですねー 」

 

「この女っ……!」

 

図星をつかれた彼は激情に駆られるように怒りを顕にした。

 

「指揮官、瑞鶴と一緒に逃げてください。この人達はそれ程強く無いので、私だけで行けますよ 」

 

「そんな!翔鶴姉、私も…… 」

 

「貴方がKAN-SENを捨ててまで出る必要は無いわ。指揮官も、赤城先輩や他のKAN-SENと仲が良いですから、きっと弁明はできます。だから早く! 」

 

「翔鶴姉っ! 」

 

「大丈夫、お姉ちゃんに任せて 」

 

心配させまいと翔鶴を笑顔を浮かべたその時、奥の方から男の悲鳴が聞こえた。

 

「な、なんだコイツ!? 」

 

「この野郎……ぐぁっ!」

 

突然奥の方の男が吹き飛ばされ、誰しもが異変が起きた方向に顔を向けると、奥の方からゆっくりと歩く人影が現れ、その人影の左手にはさっき蹴り飛ばした瑞鶴の木刀を持ち、顔を隠すような狐の面を被った黒コートの男が歩いてきた。

 

「だ、誰だっ!? 」

 

たじろぐ男に顔を向けると、木刀を構え、狐の面を被った男はこういった。

 

「通りすがりの狐さん……かな? 」

 

狐の面の裏の口の口角が上がり、男の人は優しく笑っていた。




アズールレーン学園設定事項

・かごなし

重桜には頭の上に耳や角が生えて産まれて来るのが一般的だが、稀に耳や角が生えてこずに生まれる者がいた。

人々はそれが重桜の加護を受けられず、呪われた存在だと畏怖し、呼ばれた蔑称が【かごなし】と言う。

長い事かごなしは迫害を受けてきたが、最近になってその認識が改められた。

しかし重桜ではまだ根強くかごなしに対しての否定的な見方が少なからずいるのが現状。

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