もしも、アズールレーン学園に入学したら   作:白だし茶漬け

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キツネの助言

 

「通りすがりの狐さんかな 」

 

森の奥深くでそう名乗る男がいた。彼は狐のお面を被って顔を隠しながらも、その隠しきれない強者の風格を漂わせていた。

 

「流石に3人に対してその大人数は無いだろ 」

 

「だ、誰だお前! 」

 

「そっちは名乗ってないのに名前を言う義理は無いね 」

 

狐の面の男は俺達を守るように前に立つと、ポンと俺の肩を叩いた。

 

「もう大丈夫。ちょっと見てたけど、君はやっぱり凄いね。指揮官を捨てるなんてそうそう出来る事じゃ無いよ 」

 

「え……あぁ…… 」

 

「だけど指揮官を捨てる必要は無い。ここから先は、俺一人で充分だ。あ、そうそう、この剣借りてるけど良いよな? 」

 

狐の面の彼は瑞鶴に向かって竹刀を今更ながら借りようとしており、瑞鶴は戸惑いつつも首を縦に振った。

 

「うん、ありがとう 」

 

「何ごちゃごちゃ言ってんだ!! 」

 

「危ない!後ろ! 」

 

「大丈夫 」

 

狐の面の男の背後に石を持った男が両手を持って振り下ろしたが、狐の男はそれを振り返りもせず交わし、左手に持っていた竹刀を叩きつけるように振り回し、男の顔面に直撃した。

 

「よっと 」

 

軽々とした態度で竹刀を振り、易々と男を吹き飛ばした狐の男は竹刀の使い心地を確かめるように回した。

 

「おぉ、これ意外と使いやすな。そんじゃ、行くか 」

 

颯爽と男達の集団に狐は走り、軽やかな動きで男達の攻撃を交わし、次々と竹刀を振っては一撃で男たちを倒し、気絶させた。

 

「この……やろっ! 」

 

掴みかかってくる男を飛び越えて踏み台にして高くジャンプし、落下の勢いを使って狐はかかと落としを繰り出した。

 

野生の動物の様な軽やかな動きは、本当に狐が人の形をしたかの様に思えた。……まさか、本当にキツネさん?

 

「凄い……無傷であの数を軽々と…… 」

 

何十人いたのか分からなかったのに、あの男……なんて戦闘能力だ。間違いなく普通の人類の中では最強の部類に入るだろうし、艤装を展開してないKAN-SENにも引けを取らないレベルだ。一体何者だ……?

 

「お、お前ら!囲め!囲んだら流石に手が出せないはずだ! 」

 

男たちは狐を囲み、じりじりと距離を詰めて行った。あれでは1人ずつ倒してもキリがない。

 

すると狐の人は竹刀を力強く両手で握り、腰を落として竹刀を肩に乗せるようにして構えた。

 

「今だ!一斉にやれ! 」

 

リーダー格の男の指示で男達は全員狐の人に向かって飛び交ったその時、狐の人は腕を伸ばし、竹刀を力強く体ごと振り回した。

 

自身を軸として振り回した勢いは凄まじく、竹刀を振った所に男達が吹き飛ぶ程の風圧が生まれ、囲んでいた男達は全員吹き飛び、その風圧は俺たちがいる所まで届いた。

 

「凄い…… 」

 

その強さを間近で見たせいか、リーダー格の男は冷や汗をかき、腰が引けていた。

 

狐は竹刀を身体の一部の様に使いこなし、あれだけいた男達は全員倒れ、残りはリーダー格の男だけとなった。

 

「あとはお前だけだな。そんな安全な所でふんぞり返って無いで、お前も戦って見せろよ 」

 

「ふ、ふざけるな!指揮官がそんな前線に出るもんかよ! 」

 

「来ないならこっちから行くぞ 」

 

岩の上にいたリーダー格の男を追い詰める為、岩肌の僅かの足場を見つけては躊躇無く飛ぶと、その僅かな足場を滑らせること無くトランポリンの様にリズム良く飛び、リーダー格の男の前に立った。

 

「よっと、さて……どうしようかな 」

 

「ひ、ひぃ!なんだお前は! 」

 

「そんなに驚くな。ただお前にはちょっと行くとこ行ってもらうだけだ 」

 

狐の男はリーダー格の男に携帯を見せると、そこには俺が見てない一部始終の映像が映し出された。

 

瑞鶴と翔鶴が連れ去られ、殴られた映像を見たリーダー格の男はついに腰が抜けるように倒れ込んだ。

 

「KAN-SENを連れ去り、更には暴力と……これはダメだな 」

 

「ぼ、僕は知らない!僕はたまたま見ただけだ! 」

 

「まぁ別にそれならそれでいいんだが 」

 

「こ、こんな所にいられるか! 」

 

リーダー格の男はものすごい逃げ足でこの森から去り、狐の男は疲れたのか大きなため息を吐いて俺たちの元まで軽々と飛んだ。

 

「やぁ、大丈夫かい。優海君 」

 

「は、はい。……って、なんで俺の名前を……!?」

 

「そりゃあ、君の事を知ってるからさ 」

 

そう言って男は狐の面を外すと、そこには海のような髪と目をした男……マーレさんがいた。

 

「ま、マーレさん!? 」

 

「やぁ、優海君。久しぶりだね 」

 

「指揮官、知ってる人? 」

 

「うん、ちょっとね。だけど鉄血に行くって言ってたのに…… 」

 

「いや〜ちょっと野暮用というかなんというか 」

 

すると突然誰かのお腹の虫が大きく鳴り、鳴らした張本人が照れ隠しをするように笑った。

 

「あ……あはは、ごめん俺だ。あぁ〜この近くに食べられる所ってある 」

 

「えぇ。まぁ……一応。そうだ、瑞鶴と翔鶴もおいでよ。傷の治療とかも出来るところだし 」

 

「……うん、わかった 」

 

「断る理由はありませんね 」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまーっ!やっぱり重桜のご飯は美味しいな。ウチのロイヤルとは大違いだ。あ、この白だし茶漬けってやつおかわり! 」

 

(さりげなく自分の陣営の料理の悪口言ってないか…… ? )

 

「良く食べるわね〜優海君と同じ顔だから最初に見た時は驚いたけど、いい食べっぷりで作りがいがありますね 」

 

「ほ、鳳翔さん!私何か手伝いましょうか? 」

 

「大丈夫ですよ〜貴方達はお客様なんですから 」

 

瑞鶴が手伝いを名乗り上げたが、鳳翔さんは笑って断り、テキパキと食べ終えた皿を取り下げ、新しい白だし茶漬けを作った。

 

「まさか鳳翔さんのお店があるなんて……知らなかった 」

 

「……えーと、鳳翔さんってそんなに有名な人なの? 」

 

「指揮官知らないの!?鳳翔さんは初の空母KAN-SEN何だよ! 」

 

「俺が小さい頃から結構お世話になったけど……知らなかった 」

 

「えぇぇ!? 」

 

瑞鶴は机に乗り出す勢いで俺に鳳翔さんの凄さを延々と聞かされた。

 

「それにしてもかごなしですか〜古臭い人種差別ですね 」

 

「ホントそれ。角が無いなら私達も呪われた存在って訳でしょ?大きなお世話だってーの 」

 

コンコードが抹茶パフェを食べ続け、ここにはいないかごなしに対して批判している人に向けてそう叫んだ。

 

「最近では長門ちゃ……長門様がかごなしに対する偏見が間違っていると言ってから風当たりはマシになったけど…… 」

 

さっきみたいに差別をしている人はやっぱりしており、かごなしに対しての嫌悪はまだまだ拭い切れてなかった。

 

現に、かごなしの癖に指揮官になっているのはおこがましい。って言われたばっかだし……

 

「指揮官、どんな事言われても熊野達が守ってみせるから!KAN-SENは指揮官を守るのも大事な事だし 」

 

「そうっすよ指揮官、私達にドーンと任せて下さいよ〜

 

「そうそう。あ、抹茶パフェおかわり〜 」

 

「……うん、ありがとう 」

 

まだ2週間程度の学園生活でここまで言っくれるのは本当にありがたい。心なしか涙まで溢れ出そうだった。

 

「ささ、瑞鶴と翔鶴も食べてみてよ。ここの団子は美味しんだよ 」

 

「ではそうしましょうかね。瑞鶴は何食べる? 」

 

「じゃあ……この魚雷天ぷら大盛りで! 」

 

瑞鶴と翔鶴も徐々に元気を取り戻しつつあった。色んな注文に鳳翔さんは涼しい顔で注文を聞きつけ、テキパキとパフェや団子、そして天ぷらが次々とテーブルに並べられた。

 

……何で魚雷の周りに天ぷらがあるんだろう。明らかにKAN-SEN様だけどこれ……食べれるの?

 

「おぉ〜美味しそう!いっただきまーす! 」

 

瑞鶴が揚げたての魚雷天ぷらを一口食べると、ここからでも衣のサクサクという食感が聞こえ、美味しそうに食べていた。

 

……うん?あれって中身魚雷……だよね?え?食べた?中はどうなってるんだ?様々な疑問が浮かび上がり、もしかしたら人間でも食べれるのでは無いかという飛躍した考えに至ってしまい、俺は魚雷天ぷらについて考えるのを止めた。

 

「白だし茶漬けおかわり!あと釜飯と……ん?カレーうどん?カレーにうどんってどういう事だ?それも追加で! 」

 

「マーレさんよく食べますね……というか、鉄血に行くって言ってたのに、なんで重桜に? 」

 

「ん?あぁ、もうすぐ迎桜の儀があるだろ?それを見に来たって訳だ。去年は見れなかったから、今年こそはと思ってな 」

 

「それで重桜に……じゃあ、さっきの仮面は? 」

 

「あぁ〜それは…… 」

 

「ロイヤルのマーレ……もしかして、マーレ・テネリタスじゃないすか? 」

 

「え、よく分かったねマーブルヘッド。そうそう、この人のフルネームはマーレ・テネリタスで…… 」

 

「その人……もしかしたら、ロイヤルの中でも結構偉い方だと思いますよ 」

 

「……えっ? 」

 

「はーい、白だしと釜飯とカレーうどんお待ちどうさま〜 」

 

マーブルヘッドがとんでもない事を口走ってもマーレさんは食べる手を止めなかった。

 

「おっ、来たきた。頂きまーす 」

 

偉い人と言われた人が今呑気にカレーうどんをフォークとスプーンで食べてるんだけど……

 

「ん?どうしたんだい皆? 」

 

「マーレ・テネリタス……その人、ロイヤルの英雄の家系ですね 」

 

「ふぉ〜ほふひっへるなー(おぉ、よく知ってるなー )」

 

「食べながら喋るのやめませんか? 」

 

そう指摘するとマーレさんは慌てて麺をすする事をせず、一旦麺を噛みちぎって口の中にある麺を飲み込んだ。

 

そう言えば重桜意外の人って、麺をすするという事はあまりしないんだっけ。

 

「……ゴクン。あぁ、まぁ一応その英雄の末裔だけど 」

 

「そんな人がなんでカレーうどんを食べてるんですか…… 」

 

「まぁまぁ、良いじゃないか。細かいこと気にするの 」

 

細かい事って……まぁ、今は気にする事じゃないか。

 

「狐の面は記念に買っておいたもので、その後そこの瑞鶴の叫び声が聞こえて追いかけたら……集団で虐められると来たものだ。助けようと思ったその時…… 」

 

「俺が出てきたと 」

 

「そ、俺達は別人だけど顔は同じだ。もし俺が突っかかって動画を取られ、俺が君に成り代わられてあれやこれやと言われたら君に迷惑をかける。そこで出たのが、通りすがりの狐の面の人って訳だ 」

 

ようはマーレさんが暴力沙汰を起こしたら、同じ顔の俺に飛び火がかかる事を防いだ訳だ。もしそうなっていたら、あの男のように俺は見覚えのない罪で指揮官から下ろされていた事だろう。

 

「それにしても、貴方凄いね。相手の動きを全部避けたり、囲まれた時にはもう全員剣の風圧だけで吹き飛ばすなんて 」

 

「人間の俺が出来るんだ。KAN-SENだったら楽勝だろ 」

 

「人間にしては、随分と次元が違う動きでしたけどね 」

 

「テネリタスってロイヤルの伝説らしいですからね。一人で戦争を終わらせたり、誰にも死なせずに戦争を終わらせたとか 」

 

「凄いの次元を超えてような気がするけど……本当なの?マーブルヘッド 」

 

「さぁ、私も本で見ただけっすからー 」

 

そのなりで本を見ると言われると違和感が凄いな……マーブルベッド。

 

だけど、マーレさんの動きを見たからかその話はすんなり信じられる様な気がする。人間の筈なのに、それを超えた動きのマーレさんは颯爽と敵を倒し、危なげなく勝ち、まるで本当に出てくるおとぎはなしの王子様のようだった。

 

「それにしても、かごなしって古臭い人種差別で見てるこっちが嫌になりますよ 」

 

「そうそう、なーんでこんな事になってるんだろうね 」

 

「簡単さ、偉い人がそう言ったからさ 」

 

マーブルベッドと熊野の答えにあっさり答えたマーレさんはうどんを完食し、食べる手を止めた。

 

「そもそも差別自体は他の陣営でもやってきた事だ。ユニオンは肌の違いを、ロイヤルは貧富の差の立場で、鉄血は戦いに負けた場所の産まれだけで差別を行ってきた。そして、それは指導者が不安を駆られ、民衆にその思考を強要させたからだ 」

 

マーレさんの言葉に皆は手を止めて耳を傾かせ、静かにマーレさんの言葉を聞いた。

 

「人は偉い人の立場の言う事は正しいって思い込んでしまう生き物なんだ。この人がそうだから、そうに違いないとか、この人は有名だからこの情報が正しいって、人だけで判別してしまう。根拠より人って感じだね 」

 

「でも、間違いは間違いだって気づくはず! 」

 

「その通り、実際ユニオンでも肌の人種差別は小さな積み重ねで人権を勝ち取ったし、ロイヤルと鉄血ではまぁ……革命見たいな感じだけど自由を勝ち取ったしね 」

 

「じゃあ、重桜も力を合わせたら…… 」

 

「いや……それはちょっと難しいかもしれない 」

 

「え、ど……どうして 」

 

「他陣営から見ての意見だが、この差別ははっきりいって異常だ。俺もかごなしの事について質問した事があるが、その人はなんて言ったと思う? 」

 

マーレさんは湯呑みにある茶を飲むと、こう言った。

 

「前の神子様がそう言っていた。つまり、カミがそう言っていたから従うだけだって 」

 

「何それ。てことは神様の言うことは絶対ってこと?」

 

「その風潮がここ重桜ではかなり大きい。だけど、そこにこのかごなしに対する偏見が無くなるかもしれない 」

 

「どういう事? 」

 

「もうすぐで迎桜の儀が始まる。そこで今の神子様がかごなしに対する差別を無くす事を言えば、急には無理だと思うが、風当たりはマシになるはずだ 」

 

確かに……迎桜の儀という重桜全体でやる大規模の場所なら皆の耳にも届きやすい。

 

「でも問題は、その神子さんがそれをしてくれるかどうか…… 」

 

「言ってくれますよ。あの子なら 」

 

「ん?随分と確信めいた事言うね。神子さんと知り合いかい? 」

 

「え。あ……いや!そんなわけ無いじゃ無いですか!

 

俺は笑って誤魔化しながら慌てて三色団子を食べ進め、この話から逃げた。

 

「まぁ、つまりは迎桜の儀で全てが決まる……って感じかな。……ふぅ、うどんおかわり!」

 

この人まだ食べるのか……結局マーレさんはその後茶碗30杯とうどん10杯。団子に至っては40本ぐらいをペロリと平らげ、俺達はマーレさんの胃袋に若干ドン引きした。

 

それを見たせいなのか分からないけど、俺達も程々に満腹になり、店から出ようと勘定をしたが、マーレさんが全てのお金を払ってくれた。

 

流石英雄と言われる家系なのか、マーレさんの財布の中身には、溢れるばかりのお札が大量にあった……しかも万札……この人、色んな所で凄いな。

 

「ん〜美味しかった!マーレ、奢ってくれてありがとう!」

 

熊野やマーブルヘッド達がマーレさんにお礼を言うと、マーレさんは気にしない素振りで熊野達に笑った。

 

「いいよいいよ。俺も美味しもの食べれて良かったし、皆はもう帰るのかい?」

 

「俺は家に帰りますけど、皆は学園の寮かな?」

 

「私と翔鶴姉は家があるからそこだよ」

 

「私達は寮だから……船で別れそうだね」

 

「マーレさんはこの後どうするんですか?」

 

「とりあえず適当なホテル……いや、旅館に泊まるかな〜」

 

どうやら全員バラバラの様だ。陽も傾きつつあって、寮の帰宅時間も迫っている今、熊野達は急いで帰らないとまずそうだ。

 

その事に気づいたのか、普段余裕そうな態度を持ったコンコードもこればかりは焦っていた。

 

「ヤバっ!もう帰らないと!じゃあね指揮官〜!」

 

他の2人もコンコードを追いかけるように走っていってしまった。あの速さなら多分船に間に合うだろうし、心配する事は無いだろう。

 

「それじゃあ、俺はこの辺で失礼するよ」

 

「はい。今日は本当にありがとうございました」

 

「気にしないでくれ。じゃあ、俺はこれにてドロン!なんちて」

 

忍者のような口寄せをしつつも陽気にマーレさんは重桜の街へと消えていき、最後の最後まで海のようにおおらかな人だったなぁ……

 

「じゃあ俺達も帰ろうか。家はどの辺なの?」

 

「ここから少し歩く所だよ。指揮官は?」

 

「うーん、ちょっと遠いぐらい。まぁでも歩ける距離だよ。そこまで一緒に帰ろ」

 

「わーお、指揮官って見かけによらず大胆なんですね〜」

 

翔鶴がニヤニヤしながらそう言っていたけど、俺には何が何だか分からなかった。

 

「え……もしかして指揮官、下心とかそんなの無い感じですか?」

 

「下心……?俺は2人と帰りたいから誘っているだけだよ?」

 

当然のことを言うと翔鶴が頭を抱え、ふらついた足取りで瑞鶴の肩を持った。

 

「ねぇ瑞鶴、私あの人が赤城先輩の弟なの信じらないわ……」

 

「それは流石に言い過ぎだよ翔鶴姉……」

 

「だって!あの愛が重くて周りの人達全て焼こうとしている赤城先輩の弟がこんな純粋無垢な訳ないでしょ!」

 

「ん?赤城姉さんの事知ってるの?」

 

「それは当然ですよ〜あの人の悪名は私達空母の間では有名ですから」

 

「えぇ……」

 

「何やってるんだ赤城姉さんは……」

 

いや、でも何となくわかる気がする。赤城姉さんは思い込みが激しい所もあってすぐ行動に移すから、結構そんな想像が出来るのが怖い。

 

「まぁ、でもそれが赤城姉さんだから仕方ないかもね」

 

「達観してるね指揮官」

 

「家族だからかもね。それに赤城姉さん、根は良い人だからそれなりの理由があるのが大半だし」

 

まぁ、それで被害が出てるって言うのは本末転倒みたいだけどね……

 

「だけどあれでも凄い空母だからね!私も負けないように強くなって、今度は私が指揮官と翔鶴姉を守ってみせるよ!」

 

「うん、頼りにしてる」

 

「そうこうしてる内に家に着いてしまいましたね。では指揮官、私達はこれで失礼します」

 

瑞鶴と翔鶴の家らしき和式の家に辿り着き、ここで2人とはお別れだ。何かの縁だと瑞鶴と翔鶴から連絡先を交換し、俺も帰路へと歩く。

 

帰り道を歩いていると、小さな子供達が空き地で少人数でのサッカーをしており、その中の1人がかごなしだった。

 

今日の事があったからか気になってしまい、サッカーの行く末を見届けたが、虐めとかそんな雰囲気はなかった。むしろ、皆笑っており、楽しくサッカーのボールを蹴っていた。

 

「よーし行くぞー!」

 

かごなしの男の子がボールを蹴ると、ボールは後から書かれた跡がある白線の内側に当たり、見事ゴールを決めた。

 

「おぉ〜すげー!」

 

体が成長した俺にとってはそれほど強いシュートではなかったけど、小さな子供達にとってはプロのサッカー選手の様なシュートに見えたのか、みんなかごなしの子を囲んでシュートの撃ち方をせびていた。

 

一瞬、あの囲みは俺が体を蹴られたり殴られたりする集団リンチの光景と重なってしまったが、今の光景はそんな事は一切無かった。

 

普通に遊んで、普通に隣にいる。そんな当たり前の光景は俺には眩しく見え、羨ましくも思った。俺も、あんな風に友達と遊べたら、今頃同年代の友達が出来たのかなと思ってしまった。

 

そんな事を思っていると、ボールが足元に転がってきた。どうやら誰かひとりがシュートに失敗してこっちに飛んできた様だ。

 

「すみませんー!ボールこっちに蹴ってくださーい!」

 

「分かったー!」

 

ボールを蹴ろうとした瞬間、小さい頃1人でリフティンをしたり、壁当てで遊んでいたのを思い出した。今でもリフティング出来るかなと試しに蹴る前にボールを足で浮かし、落ちてくるボールを足だけじゃなくて太ももを使って落とさないようにリフティングを続けた。

 

(おぉ、意外と続く)

 

その光景を見た子供達はおぉと歓声を上げ、満足した所で大きく手を振った子供にボールを渡した。

 

「ありがとうお兄ちゃんー!」

 

「うん、皆仲良くね」

 

俺の言うことに子供達は元気よく返事をし、仲良くボールをけったり、俺のようにリフティングしたりもした。本当に仲睦まじくて何よりだ、願わくばこんな光景が当たり前だと願いながら、夕陽で茜色にそまる空の下の帰路を歩いた。

 

 




アズールレーン学園設定事項
・迎桜の義について

重桜では毎年決まった時間に大掛かりの儀式が4つあり、そのうち春にやるのが迎桜の義である。

迎桜の義は5日間でやる儀式であり、年中枯れない桜はカミの賜物だという風習から、それに感謝する事を目的としている。

最終日に関しては、神子がカミから聞いた言葉を民に告げる事になっているため、今年がどうなるか左右する重大な出来事となっている。
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