ゆるふわ芦毛のクソかわウマ娘になってトレーナーを勘違いさせたい 作:へぶん99
セイウンスカイの身体から黒い瘴気が噴出した。絶望の予感が脳髄を貫く。抗いようのない絶対的な豪脚が来る、と。刹那、彼女と私の間の空間が歪み始め、捻れ、壊れていく。
彼女の全身から生み出されたどす黒い瘴気が私の四肢を呑み込み、侵食し始める。途方もなく強くて、美しくて、激しい想い。やがて、闇の中から差し込んだ眩い光を通じて、私の中に彼女の激情が流れ込んでくる。
見せられる。魅せられる。セイウンスカイの心象風景。一面の大海原と雲ひとつない青空が瞼の裏に映り、現実を彷徨う意識と混濁する。いかだの上で大物を釣り上げんと釣竿を握るセイウンスカイは、どこか神秘的な輝きを帯びていた。
その場にいる全員の意表を突き、胸をすかすような大勝利を掴みたいというセイウンスカイの強い意志が、私の瞼の裏に焼き付けられる。早熟の予感から来る圧倒的な不安、大舞台で勝ちきれない絶望。『祖父』との深い絆。全ての事象、全ての激情が複雑に絡み合い、セイウンスカイの力となる。
――【アングリング×スキーミング】。
誰よりも勝利を欲する少女の末脚が爆発した。あまりにも眩い光が京都レース場の一角で輝く。セイウンスカイが前傾姿勢になり、ジャラジャラのスリップストリームから脱出する。1600メートルを通過し、向正面を走りながらのラストスパート。徹底的にスタミナ消費を抑えてきたのは、残りの1600メートルに全てを賭けるためだったんだ。
だが、心象風景を魅せたのは私も同じ。出し惜しみなどしていられない。彼女が迫ると同時に『
――【果ての銀雪、月虹が照らす先へ】
遥かなる雪原に
『おっと――セイウンスカイがここで上がってきた!? 恐ろしい勢いでアポロレインボウを猛追する!! 25馬身の差があった距離を瞬く間に縮めていくっ!!』
『遂にレースが動き出しましたね……!』
向正面に差し掛かって、驚異的な追い上げでセイウンスカイが2番手に躍り出る。スプリンターの走りを凌駕する加速。しかし、その走りには極限の苦痛という代償が付き纏う。セイウンスカイの表情はあまりにも苦しげに歪んでいた。
(――どうして、そこまでっ!)
ランナーズ・ハイに満たされながら、心の中で疑問を投げかける。だけど、セイウンスカイがここまでして勝ちたい理由を知らないほど、私もバカではなかった。最高のライバルが集うレースで、最高の結果を出したい。
向正面の中間、つまり1周目のスタート地点を通過して、25馬身ものリードは呆気なく消え去ろうとしていた。スプリンター並のスパートと『
あまりにも無謀なセイウンスカイの行動に、ふと疑問が生じる。思考回路が高速回転して、彼女の無茶ぶりの結末を導き出した。
――セイウンスカイの末脚は、いくら持続させようと
私の予想では――スタートから2800メートル。つまり最終直線に差し掛かるまでにセイウンスカイは力尽きるだろう。
それでもなお、彼女は勝算があるかのような薄ら笑いを浮かべて、全速力で追い上げてくる。その不気味さと言ったらない。彼女はハッタリだけで無茶を通すウマ娘ではないのだ。何かしらの勝算があって走っている。もっと逃げないと。
第1コーナーを展望して、その差は15馬身。セイウンスカイの常軌を逸した超高速の早仕掛けによって差は縮まったが、明らかに彼女はスタミナを燃やしすぎている。リスクとリターンが釣り合っていない。
彼女がここまでの無茶を通せるのは、天皇賞にかける想いの強さが故なのだろうと思った。私の
ならば、もっと力が要る。セイウンスカイに勝つために、限界を超える想いの力が――!
必死に答えを追い求める。セイウンスカイにあって私にない想いの力を欲して、心の奥に手を伸ばした。
――ダブルトリガーは答えない。
――簡単なことさ。セイウンスカイ本人に聞けばいい。彼女もお前と話したがっているよ。
――どういうことだ?
――時に、レースはチーム戦になることもある、ということさ。
ダブルトリガーの幻影が消える。彼女から受け継いだ光による加速は起きなかった。
意を決して、セイウンスカイの心象風景に意識を集中させ、極限状態での交流を試みる。すると、私とセイウンスカイの間の空間が輝いて、視界が暖かな白に包まれた。
――目を覚ますと、そこは大海原に浮かぶ
「――ねぇ、アポロちゃん。全力で戦うって、楽しいね」
両手を後頭部の後ろに重ね、眠そうな顔をするセイウンスカイ。私は息を荒くしながら彼女と正対する。その青く澄んだ瞳は爛々と燃え盛っていた。私はおずおずとセイウンスカイに声をかける。
「……セイちゃん。このままじゃセイちゃんは、3200メートルを迎える前に力尽きる。それなのに何故私に食らいついてくるの?」
「いきなりそれを聞いちゃいますか。いやはや、せっかちですなぁ」
セイウンスカイは大きな欠伸をした後、意地悪そうにこう言った。
「……天皇賞・春じゃなくて、
「!」
「そういうタイプじゃないんだけどさ。日本ダービーも菊花賞も有馬記念もアポロちゃんに負けちゃったから、今度こそ勝ちたいなって思ってさ」
「――でもっ! それは
「にゃはは、果たしてそうなのかな〜?」
「……!?」
意識外に
「――そういうこと。
「…………」
「ということで、ひとつお願いしたいことがあるんだけど〜。……私の想い、あげるからさ。――アポロちゃんの想いも、少しだけ分けてくれない?」
スペシャルウィークの追撃が脳裏を彷徨う中で、セイウンスカイがとんでもない取引を仕掛けてきた。
詰まるところ――私がダブルトリガーの想いを受け取ったように――『
「……セイちゃんはゴール前で力尽きる。でも、私は力尽きない。私がその誘いに乗る必要なんてないよ」
「――ううん。アポロちゃん。分かってるでしょ? スペちゃんの追い上げは明らかに異常だよ。私はもちろん、アポロちゃんだって抜かされる勢いだし。
確かに、スペシャルウィークの追い上げは常軌を逸していた。明らかに『
ごくりと生唾を呑み下す。苛立ちと畏敬の念が頭の中を回っていた。これは、お願いなんて可愛いものじゃない。脅迫だ。私が新たな走りの本質を必死に秘匿していたにも関わらず、
「――にゃはは、それじゃあ交渉成立ってことで!」
「勘違いしないでね。確かにこのレースも勝ちたいけど、私はこのレースの先も見据えてる。あなたの力を借りないと勝てないレースがきっとあるから、今は協力してあげる。それだけだから」
「素直じゃないですなぁ」
こうして私達は、奇妙な友情とライバル関係が紡ぐ『想いの継承』を始めた。
静かな波に揺れるいかだの上で両手を重ね合わせ、瞳を閉じる。額を伝って光が交換され、心の底の風景に互いの存在が優しく灯る。セイウンスカイの大海原には、晴れ模様にも関わらず微かな雪が。私の心象風景の一本桜は、大地を通してその幹にセイウンスカイの光を宿した。心が温かくなり、セイウンスカイの激情が流れ込んでくる。
異形の一本桜が
激しい雪に痩せ細っていた一本桜の幹に不思議な力が宿り、セイウンスカイの魂の支えによって幹に生命力が湧き上がる。因縁深いライバルの友情と腐れ縁が、歪な桜を真っ直ぐに成長させていく。
私達は至近距離で見つめ合いながら、そっと手を離した。2人が立ついかだの上に新雪が積もり始め、セイウンスカイは妖精のように舞う牡丹雪を手のひらに乗せた。
「……不思議だね。倒さなきゃいけない相手から力を貰うなんてさ」
「ま、そういうこともあるでしょ」
「……だね。そろそろ……スペちゃんが来るよ」
「……うん」
「それじゃ。……アポロちゃん、ありがとう」
「ううん。きっと、お互いに必要な事だったんだよ」
「……かもね」
戦いの中で語り合い、限界を超えた勝利を掴み取るため、私達は胸に宿る光を分け合った。そこには超越的な不可視の絆があった。互いに絶対に負けたくない相手だと知っているのに、だからこそ高め合いたいという願いがあって――
ダブルトリガーの光が宿った根の上――幹の部分にセイウンスカイの光が宿る。再び光に包まれたかと思うと、意識がいかだの上から解き放たれ、現実に戻ってきた。
咄嗟に背後へ意識を向ける。淀の坂を登る寸前、残り1000メートルを切ったその瞬間。スペシャルウィークが遥か後方から、鬼神の如き覇気を纏ってラストスパートをかけていた。
「――っ!!」
セイウンスカイの言った通り、スペシャルウィークはとてつもないペースで追い上げてきている。ダブルトリガーに加えて、セイウンスカイの想いを継承していなければ、間違いなくぶち抜かれてしまうような加速。
咄嗟に私の力を得たセイウンスカイを睨むと、彼女は凄みのある笑いを浮かべながらすぐそこまで迫ってきていた。セイウンスカイとの差は10馬身、スペシャルウィークとの差は20馬身。
極限状態のまま、私達は2度目の淀の坂を迎える――
『さぁ、アポロレインボウが一足先に淀の坂越えに挑む!! その表情が大きく歪んでいるが、果たして大丈夫なのか!? 大差をつけられているものの、2番手のセイウンスカイと3番手のスペシャルウィークが怒涛の追い上げを見せている!! 最後は同世代のクラシックウマ娘達の争いになるのか!!』
スペシャルウィークの『
途方もない密度で練り上げられた『
何処か分からない丘の上で、満天の星を見上げるスペシャルウィーク。そんな彼女の前で瞬いた流星が、スペシャルウィークの勝負服となって力を与えていく。
眩いばかりの真っ直ぐな想い。夢への憧憬と母への想いが彼女を突き動かすのだ。彼女の憧れは誰にも止められない。
――【シューティングスター】
爆発した感情に任せて、スペシャルウィークの身体が躍動する。先頭争いから程遠い位置にいた彼女が、驚愕の追い込みで私とセイウンスカイを射程圏内に捉えた。
私とセイウンスカイもまた、己の夢への衝動に身を任せて疾走する。スペシャルウィーク、セイウンスカイ、そして私。命を燃やした魂の削り合いが始まろうとしていた。
『アポロレインボウ先頭!! 8馬身遅れてセイウンスカイが2番手、更に5馬身の差が開いてスペシャルウィークが3番手!! 4番手以下は遥か彼方に沈んだ!! 最後は3人だけの世界だ!!』
第3コーナーに到達して、淀の坂を登り切った私達。いよいよ下り坂に向かう。それぞれの想いを抱いて、なけなしの
下り坂を利用した再度の加速。しかしセイウンスカイもスペシャルウィークも無理な早仕掛けと速すぎるスピードが祟ったか、その顔は真っ青に変色してしまっている。きっと私もそうだ。狂気的な加速で距離を詰めてくる2人のウマ娘に追い立てられて、酸素不足に陥っている。
スプリンターの最高速度をずっと保ってきた。動揺することこそあったが、私の走りはずっとバクシン的ステイヤーそのものだ。そんな走りを続けていた上、本番特有の予想外に晒されたせいか、全身の末端の感覚が消失していた。頭の中に鉛が詰められたかのようにぼんやりして、顎が重すぎて開口してしまう。
全力投球の運動を数分間続けていたせいで、茹だるような灼熱に包まれている感覚だった。ハロン棒が何重にも分裂して、距離感覚が段々と覚束なくなっている。乾燥しきった喉奥から、鼻をつんと刺激するような味がせり上がってきた。
軽くえずきながら、セイウンスカイとスペシャルウィークを睨む。スプリンターの最高速度を超える走りをしなければならないとあって、2人もさぞかし辛いだろう。だけど、私だって辛い。笑えてくる。一体誰が望んで、こんな辛い戦いをしようとしてしまったんだろうか。全くもって、嫌になる。でも、これが私の思い描いた夢の景色に違いない。
極限の消耗戦の中で紡がれる激闘。絶望さえ感じてしまう体力消費の中に見える僅かな光明と、勝利への希望。最高だ。こんな戦い、きっと二度と味わえるものではない。
狂乱に似た悦びに打ち震え、酸素不足と疲労のせいで正気さえ失いそうになる。精神はとっくの昔に狂い、まともな思考を回すことができない。セイウンスカイやスペシャルウィークも瞳孔を開いており、彼女達も同じくまともな状態とは思えない。
そんな中、セイウンスカイが最後の力を振り絞って大きく加速した。背後の競り合いもまた過熱している。スペシャルウィークが驚いたような表情になって、大口を開けて咆哮していた。
「――……――――ッッ!!!」
第4コーナーを曲がりながら、消耗戦の終わりが微かに見えてくる。霞んだ光の向こうにゴール板が見えた。地鳴りのような大歓声を受けながら、私だけが最終コーナーを曲がって最終直線に差し掛かった。
『最終コーナー曲がってアポロレインボウが最終直線に入る!! 2番手セイウンスカイと3番手スペシャルウィークは僅差の争い!! およそ6馬身の差を保ってセイウンスカイとスペシャルウィークが追い縋っているぞ!!』
25馬身あった差は既に6馬身まで縮まった。常識外れの超高速で走っていたはずが、それ以上の速度を叩き出した化け物が2人。
だが、2人のスタミナはもはや風前の灯。究極のスピードに身を任せた代償は、早すぎる体力切れという形で現れようとしている。私は何とか持ちそうだが、スペシャルウィークとセイウンスカイはゴール前に力尽きてしまいそうだ。それでも、歳頃の少女がやってはいけないような苦悶の表情を晒しながら、力強い足取りで一直線に向かってくる。
ゴールまで残り400メートル。激痛を訴える脇腹と、酸欠による混乱で前後不覚になりそうな思考回路を抱えたまま、私は泥人形のように走り続けた。最終コーナーの終盤で
気を抜けば間違いなく気絶してしまうだろう。2番手との距離は分からない。今この瞬間世界を満たしているのは、己の呼吸音と心臓の音だけだった。魂から絞り出した体力さえ底を尽きて、根性と惰性だけで栄光を目指している状態。
そんな中、白黒の視界にトレーナーの姿が映った――気がした。客席の最前列で拳を振り上げるスペシャルウィークのトレーナー。祈るようにレースを見守るセイウンスカイのトレーナー。そして、大声を張り上げて私を応援する桃沢とみお。
「スペえぇぇぇっ!! 全部出し切れぇぇぇっっ!!!」
「アポロおぉぉっ!! 頑張れえええぇぇぇっっ!!!」
「スカイっ、信じてるぞぉぉっっ!!!」
聞こえない声のはずだった。聞こえるはずがなかった。でも、確かにその声は私達の鼓膜を震わせて――燃え尽きた身体に再び焔を点した。
三者三様、最も信頼するパートナーの声を受けて、私達は再び限界を超える。極限のデッドヒート。スタンドに押しかけたファンのボルテージが最高潮に達し、京都レース場が揺れる。
――【シューティングスター】
――【果ての銀雪、月虹が照らす先へ】
――【アングリング×スキーミング】
2度目の『
5馬身後ろには、青空と流星が追い縋っている。瞬きするごとに空の色を変えながら、3人の心が火花を散らして激突していた。
『残り200メートルを通過して、先頭はアポロレインボウ!! 少し後ろにはセイウンスカイとスペシャルウィーク!! スペシャルウィーク僅かに抜け出して、セイウンスカイが咆哮する!! そのままスペシャルウィークが2番手に――いや、セイウンスカイが驚異的な根性で差し返したっ!? スペシャルウィークとセイウンスカイが並んだまま、アポロレインボウを追い詰める!! その差は5馬身!!』
残り200メートルを通過して、微かな冷気が鼻を突いた。私の心象風景から発現した牡丹雪が見える。セイウンスカイから、微かな雪の香りがした。私から継承した光を使って加速したらしい。ただ、2度目の『
後ろを気にする余裕はない。たた我武者羅に、ひたすらに、一歩一歩を刻んでいく。それを繰り返し、最速を求めて突き詰めるのだ。
『残り100メートルを通過して!! アポロレインボウとの距離が縮まらない!! スペシャルウィークが叫んでいる!! セイウンスカイが懸命に腕を振る!! それでも――それでも5馬身の決定的な差は埋まらない!! 最初から最後までアポロレインボウがハナを死守したまま終わってしまうのか!!』
右足。関節を柔らかく保ち、地面と衝突する瞬間に力を込める。そのまま足裏で掻き込んで、地面を抉る勢いで
両手は脱力して、綱を引くように腕を振る。肘から先をスピーディに
理想のフォームなんて、機械的でいい。ただ
痛みも苦しみも超えて、精神は悠久の静寂を迎えていた。穏やかで、波立つこともなく、緩やかな絶頂だけが支配している。心象風景が瞼の裏に染み渡り、世界が拡がって見えるほど。
まるで全知全能だった。スプリンターの最高速度とか、領域による再加速とか、それがどうでも良くなるほどの全能感だった。
突然、全身の感覚が鋭敏になって、一瞬で世界が拡がるような衝動に襲われる。ランナーズ・ハイの中で突如現れた全能。地面に植えられた青い芝が踏みつけられ、蹄鉄で吹き飛ばされていくのが何故か
絶対に
違和感は無かった。幻視とも思わなかった。
『
残り100メートル。せめぎ合っていた空の色が銀の月光に満ち、暖かな雪が降り注いだ。残り5馬身まで迫ったスペシャルウィークとセイウンスカイは、それ以上の差を詰められない。
2度目の『
これだ。スプリンターの最高速度さえ超えるこの走り。掴みどころのない、中途半端にも見える完璧な疾走。
その走りは、ステイヤーともスプリンターとも取れるような、奇妙な走りに思えた。フォームを変えたわけではない。突然、フォームではない何かが変わってしまったのだ。
興奮はしなかった。ただ、そこにあるものを再び発見しただけのような。極々ありふれたものを見つけただけのように感じた。
でも、私の心の中に生まれた
『残り50メートルを通過して、アポロレインボウだ!! スペシャルウィークもセイウンスカイも届かないっ!!』
ゴール板まであと少し。天皇賞・春の栄光まであと少し。残り50メートルもない。スペシャルウィークもセイウンスカイも、なんにも来ない。私だけの景色。私だけの、栄光――
私は最後の力を振り絞って、胸をいっぱいに反らして、3200メートルを告げる最後の一歩を踏み締めた。その瞬間緩み切った身体は、更なる一歩を踏み出すことさえ許してくれなかった。
『アポロレインボウだ!! アポロレインボウが2番手に7馬身もの差を見せつけてゴールインッッ!! 2着にスペシャルウィーク、3着にセイウンスカイ!! そして――アポロレインボウは3分06秒1の世界レコードを更新!! 新たな大逃げ伝説が日本の古都に刻み付けられましたっ!!』
ターフに倒れ込み、空を見上げる。雲ひとつない空の向こうには、薄い三日月がこちらを覗いていた。