ゆるふわ芦毛のクソかわウマ娘になってトレーナーを勘違いさせたい   作:へぶん99

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125話:ひまわり畑の誓い/独白

 

 ――7月。ヨーロッパに来てから3ヶ月が経過し、待ちわびた夏が訪れた。日本のジメジメした茹だるような暑さとは違い、こちらの夏は乾燥した空気に包まれている。

 そんなヨーロッパの夏風の中、私達はとある撮影のために某所のひまわり畑にやって来ていた。

 

「ひまわりってこんな時期からも結構咲いてるものなんだね〜」

「日本と海外とじゃ勝手が違うのかもな。もしくは品種の違いとか……」

 

 海岸線近くにあるひまわり畑での撮影。いつもより高く澄み渡って見える空には、宮殿のような入道雲が大きく裾を広げている。空の上で奔放に成長する入道雲を見つめていると、何故か涙が滲みそうな懐かしさを覚えてしまう。頭に思い浮かぶのは遠い故郷と何でもない夏休みのひと幕。雲ひとつで日本(故郷)への思いが強まってしまうのは、私が弱い証拠なのだろうか。

 私は夏の象徴たるひまわりの花びらに触れながら、とみおと一緒に気が済むまで畑を探索する。遠くの方でテントを張っているスタッフさん達は、準備が整うまで自由な行動をして良いと言ってくれた。今はその自由行動中である。

 

 最近は忙しくて2人でゆっくりお出かけする時間もなかった。スタッフさんが気を利かせてくれたのかもしれないが、実質デートを取り付けられたようなものだ。2人で取り留めのない話をしながら、ひまわり畑を当てもなく歩いていく。

 ひまわりの全長は数十センチから3メートルほどとなっており、ヒトやウマ娘よりも遥かに背が高い。ひまわりから見下ろされているような感覚に陥るため、近距離でも非常に迫力のある眺めである。花の直径は40センチ以上になる個体もいるため、間近で見るととてつもなく大きい。真ん中の黒っぽい部分は『管状花』の集合体で、花びらのように見える黄色の部分は『舌状花』の集合体となっており、真ん中の部分だけまじまじと観察すると割とグロいかも。

 

「今日は暑いな……」

「んね、茹で上がっちゃいそう」

「ふふっ……」

「え、何?」

「いや、ちょっと面白くて」

「何がよ〜」

「頭の中に“茹でアポロ”って単語が()ぎって、ついな」

「その言い方、何かいやらしい……」

「ええっ! どうして?」

「……なんとなく」

「そういうこと考える君の方がいやらしいんじゃないか?」

「はぁ? うっうるさい! 変態!」

「はははっ」

「何笑ってるのよ! もうっ、ばか!」

 

 『青空に浮かぶ入道雲とひまわり畑』なんてまさしく夏のイメージだが、実際にそういう場面・場所に出くわすことは少ない。私達は縦横無尽にひまわり畑を探索し、思い思いの会話を繰り広げる。

 

「あ、てんとう虫」

「ナナホシテントウだな」

「かわい〜」

「あれ、アポロは虫とか大丈夫なんだ」

「クモとかゲジゲジとかじゃなければ」

「あー」

「てんとう虫をじっくり観察するのは久しぶりかも!」

 

 そんな中、日本でもよく見るナナホシテントウが葉っぱに止まっていた。軽く触ろうと手を伸ばすと、てんとう虫が高く飛び立って私の鼻先に止まる。「わわ、ついちゃった!」と慌ててとみおの方に駆け寄ると、彼はそれを面白がってニコニコしているだけだった。それどころか彼はカメラを構えて「笑って笑って」なんて言っている。

 くすぐったいから取ってほしかったのに。結果的にはくしゃみと同時にてんとう虫が飛んでいって事なきを得た。「酷いよぉ」と彼の胸を軽く叩くと、「ごめん、可愛かったから」と返ってきて返答に窮する。彼のワイシャツの裾を摘んで、形容しがたい感情を視線で伝えることしかできない。

 

「後で写真送っておくから。そろそろスタッフさん達の所に戻ろっか」

「う、うん……」

 

 そのまま私はモヤモヤを抱えたままスタッフさん達の元に戻り、車の中でメイクをしてもらってから再び外に出た。

 今日ここにやって来た理由はポスター及びCM撮影のためで、その内容とはスポーツドリンクの広告。舞台として夏らしいイメージのひまわり畑が選ばれたわけだ。ポスターの写真撮影とCM用の映像撮影がメインではあるものの、撮影裏の風景を動画サイトやSNSにアップして宣伝するらしいので案外気が抜けない。というか、CM撮影なんて初めてだし小芝居をするのも初めてだ。ほぼ間違いなく素人の棒読みになるだろうけど、そこら辺はいいのかなぁ。

 

 今日の私の衣装は、純白のウエディングドレス風勝負服――ではなく、首元や二の腕を存分に曝け出した白いワンピースに麦わら帽子を被るという如何にも清楚な格好である。私のファンの衣装スタッフさんが事前に送ってくれた服装で、何とこの衣装を貰ってもいいらしい。

 あからさまな『清楚』すぎて私じゃ選べなかった格好だ。まぁ適当な私服で撮影するわけにはいかないから、私としては提示されたものを着るしかないんだけどね。

 

 蚊に刺された箇所も服の汚れも特になく、髪の毛や帽子の角度、服のシワなどを整えてもらって撮影へとスムーズに移行していく。影ができないように光量高めの照明が当てられ、カメラマンから様々な指示が飛んでくる。

 ひまわり畑の中の撮影ということもあって、ひまわりの大輪を写した構図が多い。私は手渡されたスポドリのペットボトルを頬元に寄せ、自然な笑顔を心がけて白い歯を見せた。

 

「う〜ん良いね! 良いよぉアポロちゃん! もっとあざとく首傾げてみようか! あ゛あ゛あ゛良いね! 上目遣いのアポロちゃんも見たいな! ……お゛お゛〜……スゥ……最高!」

 

 カメラマンの指示に従って様々なポージングを取り、あっという間にポスター用の撮影を終える。「はぁいオッケーです!」という声が飛んだので時計を見ると、想定よりもだいぶ早い時間に終わってしまったようだ。せっかくスムーズに進行したんだから映像撮影の方も終わらせちゃいませんか、とプロデューサーに問うと、快い返事が返ってくる。というわけで、私達はそのまま映像撮影に移ることになった。

 事前に渡された台本では『ひまわり畑を走る』とあったが、色々な理由で変更となった。走るのが速すぎて帽子が吹っ飛ぶだろうし、髪や服が乱れるのだから当然だろう。ヒトのカメラマンは追いつけないだろうし、せっかく沢山咲いているひまわりを活かせないし……何より走ることにガチな私は、多分CMに使えないような表情をしてしまうはずだから。……プロデューサーさんは「それはそれで……」と言っていたけど。

 

 代わりに渡された台本には、「ひまわりの花の後ろから隠した顔を出す」「スポーツドリンクを飲む」「“商品名・新発売”と言う」などと書いてあった。……1番最初のやつは古い恋愛小説でも見ないようなベターなやつだ。まあ分かりやすい夏のイメージってやつか。白ワンピースと麦わら帽子着させるくらいだし。

 これらのカットの他にも色々な動きを撮るので、結構時間がかかりそうな感じだ。日が昇って暑くなってくる前に終わらせちゃおう。

 

 時々休憩を挟みながら、プロデューサーやカメラマンの要求に応えていく。そして最後のワンカットを撮影し終わったかと思った次の瞬間、カメラマンがこんな発言をしてきた。

 

「う〜ん良いね! それじゃぁアポロちゃん、カメラに向かってとびきりの笑顔で『大好き!』って言ってみようか!」

「あ、分かりまし――」

「そうだなぁ、『大好き』は日本語で言っちゃおう! 大切な人の顔を思い浮かべて〜!」

「えっ」

 

 一瞬、『大好き』『大切な人』というワードが脳内で複雑に絡み合う。視線が泳ぐ。()()()と目が合う。束の間、カメラマンから声が飛ぶ。

 

「どうしたのアポロちゃん! ほら言ってみて!」

 

 簡単に言うと、テンパった。こっちを見ているトレーナーが不思議そうな顔をしていて。でも大きな声で「大好き」と言わなければいけなくて。冷静に考えたら、その商品に対して「好き」を伝えるだけで済む話なのに――私が練り上げた恋心は行き先を見失い、見事なまでに感情の着地地点を見誤った。

 

「――すっ、すすっ、だいすっ、…………だいす、……き…………です」

「カァーーーーット!! アポロちゃんどうしちゃったのぉ!? アポロちゃんの『大好き』が聞こえないよぉ!」

 

 カメラが向けられているというのに、私は尻すぼみな言葉を零して両手を顔で覆ってしまう。スタッフさん達の前でド派手な失敗をしたことはもちろん、彼への想いが溢れてきて耐え切れなくなってしまった。二重の意味で恥ずかしい。

 私は傍に落ちていたひまわりの花で顔を隠して、カメラから隠れるようにしゃがみこんでしまった。それを見たトレーナーがプロデューサーにタイムをかけ、私の元に駆け寄ってくる。そのまま私は少し離れた所に連れて行かれ、真っ赤になった顔を撫でられるのであった。

 

「大丈夫? 緊張しちゃったね」

「……んぅ」

 

 私の感情がバグったのは誰のせいだと思っているのか。全面的に私が悪いのは分かっているけど……当人に諌められるのはちょっと納得できない。

 

「……急に顔が真っ赤になったけど、何があったの?」

「え、それは……」

「言いにくいこと?」

「……まあ、それなりに」

「そっか、次はちゃんとできそう?」

「頑張ってみる……」

「あ、ちょっと待って」

 

 語気の弱い言葉を零すと、彼は私の肩に添えた手に力を込めてくる。撮影現場に戻ろうとした私を逃さない形だ。鎖骨辺りを露出するタイプのワンピースなので、素肌を直に触れられている緊張感と恥ずかしさで心臓の鼓動が早まった。

 

「……俺はアポロの『大好き』が聞きたい。トレーナーとしてはもちろん、ひとりのファンとしても君の魅力を全世界に伝えたいんだ。ほら、この前話しただろ? 『最強』になるためには()()()が必要だから、もっと皆から愛されるウマ娘になってほしいって」

 

 いつだったか、とみおと『最強とは何か』という議論をしたことがある。その際、とみおが「最強になるためにはある程度の知名度が必要だ」と言ったのである。逆に言えば、知名度が高いほど実力派であるとも言えるか。

 例えばオグリキャップが有名になったのは、笠松(地方)からやってきた()()が中央のウマ娘相手に連戦連勝をしたからだ。つまるところ――()()()()()()()()()()。物語性は後からついてきたもので、彼女には有名になるだけの実力があったわけだ。

 

 強い者が出てくると話題になるし、話題になるということは強い者が現れているという証拠。常識破りの怪物は知名度だって段違いなのだ。

 とみおは私を最強ステイヤーにするという夢がある。その『最強』を確固たる地位にするためには、もっともっと知名度が必要だと考えているのだろう。

 

 ……でも。私が大好きを言う相手は、あなただけが良いんだよ。

 この気持ちはバレたくない。……いつかは打ち明けるつもりだけど、きっと今じゃないから。

 

 ああ、いっそのことCMを利用してこの人に告白してやろうか。私の本気の『大好き』を聞いて堕ちない生命体はこの世に存在しないだろうし、結果的にファンを増やすことはできるだろう。

 ……その場合、後悔することになるのはトレーナーの方だ。私が初めて口にする本気の『大好き』を独り占めできなくなっちゃうんだから。……後悔しても知らないぞ?

 

「……分かった。気持ち切り替えて本気でやってみる」

「あぁ。それにこのアイデアは、もしかしたらアポロとのトレーニングに活かせるかもしれないし……」

「……は?」

「いや、何でもない」

 

 トレーニングに活かせるかもしれないって何よ。あーあ、怒っちゃった。どれだけ私があなたのことを好きか、世界中に分からせちゃうからね。もう止めても無駄だから。本気で私のことを狙う人が増えても止めらんないからね。覚悟してよ。

 

 

 

 

 桃沢とみおにとって、そのウマ娘は唯一無二の存在だった。

 まさしく運命の出会い。初めての担当ウマ娘がオープンクラスに昇格した時点で「これは運がいいぞ」と喜びを噛み締めていたくらいなのに、何と彼女はG1を勝ち負けし、それどころか最高の栄誉たる日本ダービーを勝つまでに至った。その後クラシック二冠に加えて暮れのグランプリ、海外重賞や海外G1まで制覇し、歴代最強ステイヤーと呼ばれるほどの名声を得て――唯一無二と言わずしてこれを何と形容するのだろう。

 

 つまり――あまり表には出さないものの――桃沢とみおはアポロレインボウに対して強烈な感情を抱いていた。むしろ、少なからずの好意を抱かない方がおかしかったのだ。

 桃沢とみおはアポロレインボウのことを間違いなく好いている。ただ、保護者としての責務と夢のウマ娘に対する憧れが難雑に絡み合った結果、己の好意を表に出すようなことは決してしないだけだ。

 

 自分にできることは、ウマ娘の健やかな成長を遠くから見守ること。夢を追って走り続けるウマ娘に寄り添い、時には背中を押してあげること。あくまでも主役は青春時代を生きるウマ娘達で、トレーナーがスポットライトを受ける必要はない。大人が彼女達に対して深すぎる介入もするべきではない。

 そう思って一定の距離を保ちつつトレーナー業をしていたはずだったのに――強烈に入れ込んでいるのはアポロレインボウではなく、むしろ桃沢とみおの方になってしまっていた。

 

 絶え間なく担当ウマ娘の好意に当てられたせいなのだろうか。それとも、その好意は学生流の“少し過剰な”スキンシップというだけで、自分は勘違いさせられているだけなのだろうか。

 ただのウマ娘であれば桃沢とみおも勘違いはしなかっただろう。しかし、アポロレインボウは類稀な実力のあるステイヤー。サブトレーナーを経験してG1に勝つことがどれだけ難しいかを知った後なら、尚のこと彼女に入れ込んでしまうのは仕方のないことだったのかもしれない。

 

 カメラマンの指示に従って様々なポージングをする担当ウマ娘をじっと見つめる。彼女はスタッフが撮影した写真を確認している数秒の間に、いちいち潤んだ視線を向けてはにかんでくるのだ。

 撮影中で()()。心臓が壊れてしまいそうだ。ちなみにトレーニング中にアピールしてくることは無いが、2人きりのトレーナー室で暇を潰している時はもっとあざとい。ダンスレッスンやボーカルトレーニングなんて、自分の可愛いを知り尽くした彼女の合法的なアピールの場に他ならないから――彼女の一番のファンでトレーナーたる桃沢は、彼女と一緒に過ごしているうちに得体の知れない胸の高鳴りを覚えるようになった。

 

(…………)

 

 君の横顔が好きだ。トレーナー室のソファに座りながら、窓の外の風景を眺める穏やかな表情が好きだ。トレーニング中の鋭く研ぎ澄まされた視線が好きだ。柔らかそうな頬、小さな鼻、リップの塗られた唇……まるで作り物のようだとさえ思える。

 

 君の瞳はとても綺麗だ。時々笑って細められるアメジスト色の瞳が好きだ。頑張りすぎてその目に涙を浮かべてしまうのは、トレーナーとして少し心配になってしまう。レースやトレーニング中に炎を宿す双眸は、この心を掴んで離してくれない。吸い込まれそうなその瞳を永遠に眺めていたい。

 

 感情が分かりやすく出る君の耳は面白い。落ち込んだ時はしょぼんと萎れ、びっくりした時はピンと反り返り、嬉しい時はもちもちと跳ねる君の耳は見ていてとても面白い。個人的には耳の大きさもポイントだ。

 

 君の小さな背中は心配だ。あまりにも大きなものを抱えているのではないか、いつか重責に耐えかねて崩れ落ちていくのではないかと懸念することがある。しかし、緑のターフを走りながら遠くなっていくその背中は、不思議にも不安とは全く断ち切られた姿のように思えるのだ。

 

 揺るぎない君の精神(こころ)は気高く美しい。どんな困難にも屈しない誇り高さを持っていて、それでいて年頃の少女然としたあどけなさがあって――守りたい、守らなければならないという使命感さえ感じてしまう。

 君の全てが言いようもなくかわいらしく、愛おしいのだ。

 

 桃沢とみおは清楚可憐な白ワンピースを着たアポロレインボウを見て、ふと眩しそうに目を細めた。

 何てきれいなんだろう。まるで夏の妖精ではないか。

 

(……気持ち悪いな、俺。ニヤニヤしちゃってるし)

 

 トレーナーとウマ娘が専属でやっていくには、少なくとも二人の関係が険悪であってはいけない。尊敬や好意、友情があって初めて上を目指していけるのだ。

 ……最悪、ウマ娘側がトレーナーに対して恋情を持つのは問題ない。大人であり保護者であるトレーナーは、その好意を受け流し続ければいいのだから。しかしトレーナー側が恋情を持つのは好ましくない。歯止めが掛かるならいいが、それに抗えずトレーナーを退職する者が出てしまうこともある。

 

 この感情は恋情なのか? ただの好意なのか? 桃沢とみおは時々考えることがある。しかしその実、彼が抱える感情はそのどちらでもない。そんな単純な感情ではないのだ。

 彼がアポロに向けている感情の名前は『恋情』などという軽いものではない。尊敬の念はもちろんあるが、それだけではないのだ。彼女のことを思うのであれば、全てを尽くそう、身を引こう――そう思えるくらいの、深い愛情。一言では言い表せぬ至上の愛。努力する者に向けられる心底の尊敬と、親が子に与えるような無償の愛と、ひとりの男が異性に抱く情念と、人間として持ち合わせる夢への憧れ――桃沢とみおは、それらが絡み合った名も無き激情を深々と抱えていたのだ。

 

 アポロには今まで以上に羽ばたいてほしい。皆が知る最強で最愛のウマ娘になってほしい。それに見合うだけの努力をしてきたと知っている。もっともっと強く、高く、澄み渡った場所へ辿り着いてくれることを願ってやまない。

 ……そんな感情とは裏腹に、アポロが遠くに行ってしまうことを寂しく感じる自分がいた。棟の端っこのボロいトレーナー室で、夕陽のオレンジが部屋に射し込むまでレースの作戦を語り尽くしたあの日。グラウンドが空いていないからと、川沿いの堤防を走る彼女を自転車で追いかけたあの日。小ぢんまりしているような、でも心の中で確かな存在感を放つ何でもない日常が、ゆっくりと遠のいていく気がした。

 

 彼女の栄光への歩みを止めるつもりはない。寂しいという感情があるだけで、ちゃんと喜びの感情もあるのだから。

 

「――『大好き』!」

 

「…………」

 

 そしてCM撮影が再開され、彼女の口からとびきりの『大好き』が飛び出したその瞬間――ほんの少しだけ苦い後悔が過ぎった。それと同時に自分の担当ウマ娘が最高であることも再確認できて、彼はゆっくりと目を伏せるのであった。

 

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