ゆるふわ芦毛のクソかわウマ娘になってトレーナーを勘違いさせたい   作:へぶん99

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64話:衝突!菊花賞!その2

 京都レース場第9レースである3勝クラスの桂川ステークスが終わり、いよいよメインレースたる第10レースの菊花賞が始まろうとしていた。

 

 昼下がりの淀の地に集結した優駿の数は18人。スタミナ自慢の伏兵や、トライアルを好走してきた上がりウマ娘に、世代を代表するG1ウマ娘など……錚々たる顔ぶれが並んでいる。

 

 そしてこの18人の中にはきっと、これまで走る舞台が限られて鬱憤が溜まっていたステイヤーも混じっているのではないだろうか。例えば6番人気のジョイナスは、2600メートル以上じゃなきゃやる気が出ないという生粋のステイヤーである。

 

 彼女は月刊トゥインクルなどのインタビューでこう答えていた。短距離・中距離競走はジュニア級から賑わっているのに、どうして本格的な長距離競走はクラシック級の暮れまでお預けを食らわなければいけないのか……と。これはステイヤーならではの赤裸々な悩みだ。

 

 確かにもっと早い時期から長距離を走りたいという気持ちは分かるが、ステイヤーというのは基本的に晩成型である。いくら長距離への適性が高くても、長い距離を走るための心臓を作るためには長期的かつ長時間のトレーニングを日々積み重ねていかなければいけないのだ。

 

 とみおはジュニア級の早い時期からインターバル形式の有酸素運動を施してくれた。その結果私の心肺機能は飛躍的に成長したが、やっぱりかなりの時間がかかった。

 

 また、自分がトレーナーだったとしよう。そんな時、担当するウマ娘が早くから沢山のレースを選択して走れる短距離〜中距離適性のある子と、ステイヤーとしての素質はあるが晩成型で大レースを勝つようになるまで慎重にレースを選んで何年も待たなければならない子なら、大体のトレーナーは前者を選ぶだろう。

 

 トレーナーとて人間だ。ウマ娘を育てる機械ではない。担当するウマ娘が活躍すればするほど、ボーナスとして入ってくる給料も増える。しかし長距離レースは数が少ない上、賞金もそこまで高くない。となれば、短距離から中距離を走るウマ娘を育てたいと思うのは当然のことだ。とみおのような『古き良き』という感じのトレーナーは例外中の例外なのである。

 

 だからこそ菊花賞のような長距離レースを走るにあたって、純正ステイヤーの間には共通した裏目標がある。それは長距離レースとステイヤーの地位向上。自分のレース人生を中心に考えた上で、それでも譲れないもうひとつの夢である。

 

 ファンの人気が高まることによって長距離レースやステイヤーの需要が増え、例えば新たなレースが創設されるようなことになれば、それはもう()()の勝利だ。ジョイナスや私はレース選択でかなりの苦しみを強いられてきた。今後生まれてくるステイヤーが苦しまないために戦うのも、ある意味私達の使命と言える。

 

「スゥ――……」

 

 この菊花賞は、今後の私達のためにも絶対に負けられない戦いになる。無論、負けてもいい戦いなどないが……ステイヤーの私がマイルや中距離で負けるのと、本命の長距離で負けるのとでは意味合いが違いすぎる。

 

 私の目標は『長距離無敗』。菊花賞を勝ち、ステイヤーズステークスを勝ち、そして暮れの有にも勝つ。長距離への注目度を上げるためにも、この要素は欠かせない。

 

 こうして考えると、勝たなければならないモノが多すぎるな。未知の領域とか、運命とか、菊花賞とか、セイウンスカイとか、スペシャルウィークとか、キングヘイローとか、その他諸々。

 

 あぁ、燃えるじゃないか。困難苦難が待ち構えているほど、怒りに似た闘志が噴出してくる。長い地下道を歩き、パドックに向かって一歩一歩踏み締める度に胸が熱くなる。先程からの興奮も相まって、()()()寸前のギリギリの所まで心が煮え立った。

 

 かつて未知の領域へと至ったウマ娘達も、こんな落ち着かない気分だったのだろうか。「早く走りたい」とトレーナーにぼやいて前掻きすると、「落ち着いて」と頭を撫でられて無理矢理落ち着かされる。逆に別の意味でドキドキもしたりするが――そんなことを繰り返して気持ちを乱高下させていると、いよいよパドックに18人のウマ娘が集結した。

 

 京都レース場のパドックは真円である。ただそれだけのことだけど、私はその形を非常に気に入っていた。そういう微妙なところまで好きになれるあたり、やっぱり淀の地は私に合っているのかもしれない。

 

 1枠1番のジュエルスフェーンがパドックに姿を現すと、観客が大いに沸き立つ。彼女は漆黒の勝負服を自慢げにアピールすると、両手を大きく振って大衆に向けてアピールし始めた。

 

『1枠1番ジュエルスフェーン、9番人気です』

『素晴らしい迫力ですね。人気はそこまでですが、条件戦を連勝してきた勢いのあるウマ娘ですよ。クラシック最後の舞台で一発に期待しましょう』

 

 順番が飛んで、続いてはクラシック6強の1人――セイウンスカイ。

 

『2枠4番、セイウンスカイ。3番人気です』

『前走ではシニア級のウマ娘を相手に圧勝劇を演じてくれましたが、ゲート再審査のため少し人気を落としてしまいました。クラシック二冠に向けて気合いは十分と言ったところでしょう』

 

 セイウンスカイは自由気ままだ。何にも縛られず、本心を隠し、飄々と振舞っている。それは菊花賞のパドックにおいても同じことであり、彼女の調子を断定することはできなかった。

 

 しかし、『大したことないですよ〜』的な雰囲気を漂わせている時のセイウンスカイは、決まって調子の良い時だ。明らかに調子の悪かった日本ダービー以外や、調子の良すぎた皐月賞以外はこんな感じ。

 

 メイクデビューや前走の京都大賞典はまさに()()だった。目の前に観客がいるというのに、アピールは控えめ。視界に入った小鳥を目で追ったり、のほほんと眠そうに瞳を細めたりして、パドックに殺到したファンやライバルに「こいつ大丈夫か……?」と思わせて注目度を落とすのが多分彼女の作戦だ。

 

 しかし、彼女は皐月賞を制したG1ウマ娘だ。実力は誰もが知るところなため、ライバル達からは邪推深い視線を受けている。そろそろその作戦も通用しなくなっているのではないか……?

 

 加えて、彼女は史実で菊花賞を世界レコードで制した二冠馬だ。調子も身体も完璧だったはずのスペシャルウィークを押さえ込んで、あっさり逃げ切り勝ちしたと私は記憶している。試走だったら私も3000メートルの世界レコードを記録できたが……彼女に競りかけられるであろうレース最後半にどうなるか。私の爆逃げが通用するかは、未知の領域次第といったところ。

 

 セイウンスカイの次は私、アポロレインボウの番だ。パドックのステージ上に上がって深呼吸し、上着を弾き捨てる。秋晴れの空に舞った上着はそのままトレーナーの手元に舞い降り、私はドヤ顔で鼻を鳴らした。

 

『3枠5番、アポロレインボウ。2番人気です』

『絶大な人気を誇るダービーウマ娘の登場です。休み明けでぶっつけ本番の菊花賞であることと、長距離を走れるか疑問なところがありますが……彼女なら歴史に残る史上初の“大逃げによる菊花賞制覇”を果たしてくれるかもしれませんね』

 

 私が手を振ると、その方向の観客が悲鳴のような絶叫を上げる。迫真すぎる様子にちょっとビビったが、人気の高さはありがたい限りだ。しかし、中には懐疑的な目線や心配そうな表情をした人も混じっていた。

 

 ただ、そういう態度を示す人とて私を応援していないわけではないのだろう。単純に私が勝てるかどうかに疑問を持っているとか、長距離適性がないんじゃないかと思っているのだ。

 

 ならば、その疑念さえ超えていくだけのこと。私は両腕を胸の前に組み、自信を示すように仁王立ちになった。『領域(ゾーン)』の片鱗を噴出させ、周囲のウマ娘と観客を威圧する。もっとも、それを感じられた観客は数少ないだろうが……それでも感じるものがあったのか、パドックの周りから声が上がる。

 

 セイウンスカイ、スペシャルウィーク、キングヘイローと目が合う。他のウマ娘の圧に呑まれ気味だった日本ダービーの時とは違う。私が敵を威圧している。情報戦でも距離適性でも優位に立てている。これまでのように相手を狙い撃ちする側ではなく、私は他のウマ娘から狙われる立場にあるのだ。大逃げのレースよろしく、『追ってこい』と言える。

 

 彼女達の背後からそれぞれ完成しきった『領域(ゾーン)』が顔を覗かせるが、私の雪の結晶は彼女達の雰囲気を容易く呑み込んだ。スペシャルウィークが少し怯えたような目線でこちらを見てくる。私はそのまま視線を切って威圧感を引っ込め、パドックのお披露目台から去った。

 

「アポロレインボウは調子が良さそうだが、菊花賞を走り切れるのかな」

「どうした急に」

「これまで彼女が選択していたレースはどれも2000から2400……それがトライアルも踏まずにぶっつけ本番じゃないか。日本ダービーから丸々5ヶ月にプラスして600メートルもの距離延長、不安に思わない方がおかしいと思うぜ」

「現実的なことを言うとその通りなんだが……彼女の自信を見ろよ。何も無策で挑むつもりではないようだけど」

「……まあ、それもそうなんだよな」

「とみおさんは6強の3人相手にも勝機があるから、この菊花賞に自信をもってアポロレインボウを出走させたんじゃないか。彼女の自信満々の表情には確実に裏があるぞ」

「菊花賞への参加表明もかなり遅らせたもんな。これはアポロレインボウが大本命になるか……?」

 

 私の後に続いて出てきたのは、前走で強烈な勝ち方をしたキングヘイロー。5枠9番の4番人気。調子を前走よりも上げてきて、絶頂にあると見える。

 

『5枠9番のキングヘイロー。4番人気です』

『彼女もトライアル競走からの参戦です。ジュニア級から王道のクラシック路線まで皆勤するその丈夫さには頭が上がりませんね。世代最強の末脚とパワーを果たして初の長距離で発揮できるでしょうか。彼女のスタミナには要注目です』

 

 前走・セントライト記念の勝ち方を自信にしたか、キングヘイローの顔色は非常に優れている。警戒対象として頭に入れておかざるを得ないが……後ろの方でやり合って消耗してくれるとありがたい。完璧なレース運びをされたなら、私の大逃げが決まったとしても差し切られる可能性がないでもないからね。

 

 最後は8枠17番という外枠のスペシャルウィーク。

 

『8枠17番、スペシャルウィーク。1番人気です』

『2人目のダービーウマ娘が堂々登場です。王道を行く彼女への期待の高さが窺えますね。圧倒的なフィジカルとスタミナから繰り出される自慢の末脚が炸裂するでしょうか。私イチオシのウマ娘ですよ』

 

 相変わらずスペシャルウィークの正統派な雰囲気には見惚れるものがあるが……彼女は神戸新聞杯で夏の上がりウマ娘ジョイナスを叩きのめしたウマ娘だ。可愛い顔して油断できないぞ。スペシャルウィークといいオグリキャップといい、この世界では大食いウマ娘は強いという法則でもあるのだろうか。

 

 スペシャルウィークは眉毛をキリッと吊り上げて、私の方を見てくる。本来であればダービーウマ娘という称号は彼女ひとりが占有するはずだった。それが同着まで持ち込まれたとあって、思うところがあるのだろう。多分私のことを一番に意識している。

 

「私達の作戦は後ろを気にせず思いっ切り爆逃げすることだけど……やっぱりスペちゃんキングちゃんセイちゃんは怖いね」

「……後ろを気にしすぎるなよ? 君は長距離のサイレンススズカになれる逸材なんだから、もっと調子に乗ってほしい」

「って言われてもなぁ……この性格が完璧に直ることはないかも」

「そっかぁ……まぁ、君の良いところのひとつと言えばそれまでだけど。今は未知の領域を超えることと、菊花賞を勝つことを考えよう」

 

 パドックが終わると、地下道を通ってターフに向かうことになる。このコンクリートで舗装された道が私達を京都レース場のターフに導いてくれる。そして、ここで交わす言葉がとみおとの最後の会話だ。

 

「……菊花賞、楽しみだね」

「…………」

「あれ、私変なこと言った?」

「……いや、アポロの口からそんな言葉が聞けるとは思ってもなくて」

「頼もしくなったでしょ、私。嘘は言ってないよ? ほんとに楽しみなんだ。これまでずっと頑張ってきたじゃん。ちょっと怖いこともあるけど、ワクワクが抑えられない感じがして、こう……うずうずしてる」

「そうか……強くなったな」

 

 とみおに頭を撫でられる。優しい手つきだった。唯一の不安である自滅もマチカネフクキタルによるミサンガが守ってくれるとあれば、恐れるものなどあんまりない。

 

 私達が地下道の出口前にやってくると、自然と互いに向き合う形になる。そのまま数秒間見つめ合った後、どちらともなくニヤリと白い歯を見せる。

 

 とみおも何だかんだ言って自信満々なんじゃないか。一瞬、私を心配するような表情が見えたけど……そもそもレースに出るということは怪我の危険に曝されるということだ。私の身を慮って表情が曇るのも、この菊花賞に限らず当然のこと。

 

「アポロ――行ってらっしゃい」

「うん。行ってきます」

 

 彼の言葉に背中を押されて光の中に駆け出した私は、京都レース場の大歓声に包まれてターフの上に足を踏み入れた。

 

 光の正体は、からっとした秋晴れから来るものだった。10月も暮れになるというのに、気温は20度を超えている。ターフはバッチリ乾燥していて、サクサクと芝を踏み締める感覚からすると絶好の良場と言っても良い。

 

 そんな京都レース場のコースは、阪神レース場や中山レース場と同様に、内回り・外回りの大きな2つの周回から成る。この菊花賞の舞台では外回りしか使用されないから、今回は内回りについては無視して良い。

 

 京都芝コース最大の特徴は、高低差4.3メートルにもなる第3コーナー地点の坂。『淀の坂』と呼ばれるこの丘は長いレイアウトから構成されており、向正面半ばから第3コーナーにかけて上り、第4コーナーで下りが待ち受けている。逆に淀の坂以外は高低差のない平坦なコースとなっているので、結構特殊なコースと言えるかもしれない。

 

 菊花賞は向正面終わり・第3コーナー寸前からのスタートだ。スタート直後に淀の坂が待ち受けているので、ゲートから見える景色は緑一色で結構エグいことになっている。まさに壁が目前に聳え立っているような圧迫感を受けるのだ。高さ4.3メートルと言ったら、キリンとか二階建ての建物くらいデカいからね。

 

 スタートして1度目の坂越えをしたら、200メートル程度走れば第3コーナーがやってくる。つまりスピードがつき始めるくらいの頃合にカーブが存在するので、外枠のウマ娘はちょっと……いや、かなり苦戦を強いられるかもしれない。外を回らせられる上に、他のウマ娘よりもきつい角度でカーブを曲がらなければならないため、ロスが生まれやすいのだ。

 

 第4コーナーを回って1周目のホームストレッチにやってくると、全力で走る彼女達に興奮した観客が決まって大歓声を上げる。迫力とか盛り上がりを受けてファンの人がそうなっちゃうのは仕方ないけど、それが原因でかかっちゃうウマ娘もいるので注意しなければならない。気合いが入りすぎた子は8割引っかかってスタミナロスするから、耳栓でもしておこうかしら……。

 

 そのまま平坦なスタンド前、第1コーナー第2コーナーを通過すると、2度目の坂越えが待ち受けている。ここがクラシック級の私達に対して鬼門として立ち塞がってくるのだ。1度目はスタート直後ということもあって易々と越えられるが、レース終盤になって襲いかかってくる4メートル超えの坂というのは伊達じゃない。

 

 長距離適性の乏しい子はここで脚とスタミナを削られて末脚を発揮できないし、たとえ長距離巧者であっても容赦なく心肺の余裕を削ぎ落とされる。

 

 かつては『ゆっくり上ってゆっくり下る』のが鉄板とされた淀の坂だが、最近はレーススタイルの変化を受けて、ゆっくり上った後、坂の下りでつけた勢いそのままに最後の直線を走り抜ける戦法が定着している。ということで、坂の頂上付近である残り800メートル付近からペースを上げるウマ娘が多い。

 

 私は爆速で坂を上って超爆速で坂を下るつもりだが、あの悪夢がどこかチラつく。淀の坂はフォームと足元に注意して走ることにしよう。

 

 ……2度目の坂越えを経ると、最後の直線に入る。その長さは400メートル。3000メートルの長期戦において最終直線に入ると、ウマ娘の様子は極端に分かれる。スタミナ不足であったり力のないウマ娘は早々に1着争いから後退し、末脚を使うことなくレースを終える。ここで元気のあるウマ娘は、最終コーナーで好位につけて決着をつけにかかる。

 

 そもそも菊花賞は前目の作戦を取るウマ娘が不利とされ、標準レベルの場であれば末脚勝負になりやすいのだ。レース展開が高速であれば逃げ切り勝ちも有り得るが……。

 

 また、コースの幅員が最大38メートルとかなり広いことも見逃せない特徴だ。コース幅が広いことと、内回り・外回りの分散によって負担が分割されることもあり、場の痛みが他レース場と比べて進行しにくい。つまるところ、皐月賞のような極端な枠不利やグリーンベルトの生成が生まれにくいということである。

 

『京都レース場に集まった観客の数は12万9547人! 返しウマを始めるウマ娘達に拍手喝采が送られます!』

『おや、いつも爆走しているアポロレインボウですが……今回は元気がありませんね。全力疾走を抑えて控えめの軽いランニングです』

 

 今日の返しウマは控えめだ。ぶっちぎって走るのはレースが始まってから……今は準備運動の意味合いで走るだけでいい。それに、もう身体を騙す必要は無いからね。今から走るのは本来の適性である長距離だから。

 

 返しウマが終わると、向正面に用意されたゲート前にやってくる。ウマ娘が背筋を伸ばしたり軽くジャンプしたりする中、遠くからファンファーレが鳴り響いた。ファンファーレとちょっとズレた手拍子が聞こえたかと思うと、演奏の終わりと同時に沸き立つ大歓声が上がる。

 

『雲ひとつない秋晴れの空のもと、京都レース場で“最も強いウマ娘”を決める戦いが始まります』

『クラシック最後の舞台に相応しい晴れ模様となりましたね』

 

 向正面とあって歓声は遠くから聞こえたが、それでもターフが震えるくらいの大音量だ。私は鋭く呼吸しながらゲートインする。

 

『2番人気のアポロレインボウ、今ゲートイン』

『日本ダービー以上の自信が窺えます! 要注目ですよ』

 

 鋼鉄のゲート内から見える景色はいつも以上にクリアだ。胸の内に秘めた情熱はダービーの時以上に燃え盛っている。身体の状態も良い。足元がふわふわして軽い。もう何も怖くない。

 

『これで全てのウマ娘がゲートイン、発走準備が完了しました』

 

 ――いける。フォームを崩さずに走り切れば勝利は頂いたも同然だ。私は呼吸を止めてスタートの構えを取った。

 

『クラシック三冠目、菊花賞が今――スタートしました!』

 

 





【挿絵表示】

はるきK 様から素晴らしい絵をいただきました。ありがとうございます。

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