ゆるふわ芦毛のクソかわウマ娘になってトレーナーを勘違いさせたい   作:へぶん99

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66話:もうひとつの結末

『アポロレインボウが1着でゴオォォルッ!! 2着はセイウンスカイ、3着にスペシャルウィーク! なんとなんと3000メートルの菊花賞で逃げ切ってしまったぞアポロレインボウ!! トライアルレースを踏まずに挑んだ長距離という不安要素を吹き飛ばし!! その実力を遺憾なく発揮したっ!!』

 

 絶頂を迎えたまま、緩やかに菊花賞の幕が下りる。私の常識を覆すかのような激走に、観客からは絶え間ない拍手と地鳴りのような大歓声が送られてくる。

 

「アポロちゃ〜ん!! おめでとぉおお!!」

「この瞬間を見るためにここまで応援してきたんだ!! おめでとうアポロレインボウ!!」

「あぁ〜〜! あ〜〜〜! あぉ〜〜〜!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「おめでとうアポロレインボウ!!」

「頑張ったなぁアポロちゃん! お疲れ様!!」

 

 ゆっくりと速度を落として、絶え間ない声に応えるように大きく両手を上げる。超満員のスタンド前を横切りながら満面の笑みでひとりひとりに手を振り、何度もありがとうと口ずさんだ。

 

「ありがとう――みんな、ありがとうっ!」

 

 立ち止まって拳を突き上げると、唸るような拍手喝采が巻き起こった。ウマ娘には結構きつい爆音だけど、今はこの容赦のない刺激が心地良い。興奮の坩堝(るつぼ)と化した京都レース場、その注目を一身に集めることでようやく現実を実感できた。

 

 私は勝ったんだ。まだふわふわしていて足元が覚束ないけど、ようやく冷静になってきた思考がレース結果を受け止め始めた。

 

 細かい差は分からないが――25バ身ほどの大差勝ち。ダートの2400メートルで31馬身もの差をつけたセクレタリアトはどうなっているんだという話だが、とにかく勝った。菊花賞でここまでの差がついた決着というのは、過去の記録を振り返ってもちょっと思い浮かばないレベルだ。

 

 私は電光掲示板に振り向いて結果を待つ。まだ『確定』の文字は灯らない。審議のランプがついていないから、1位は揺るがないのだろうが――

 

『今情報が入ってきました!! 信じられません、そのタイムは2分58秒5!! 2分58秒5とのことです!!』

『世界レコードを5秒以上更新……しかも3000メートルを2分台で走ったと言うことですか? ちょっと意味が分からないですね……』

 

 電光掲示板に映された結果は、1着アポロレインボウの大差勝ちというものだった。レコードの文字が堂々と輝いて、2:58.5という紛うことなき結果が示されている。

 

 観客からは大きなどよめきが起こり、先程とは雰囲気の違う喧騒がスタンドを包んだ。私自身信じられない。確かに大差勝ちこそ達成したけど、まさか京都の3000メートルを2分台で走れてしまうとは。

 その場で呆然と佇むしかできない私の元に、セイウンスカイやスペシャルウィーク、キングヘイローが駆け寄ってくる。

 

「おめでとうアポロちゃん。強すぎてセイちゃんドン引き〜」

「3着のスペシャルウィークさんまでレコードですって。……ちょっと意味が分からないのだけど」

「次は絶対負けないからね!!」

「みんな……」

 

 3人は清々しい顔をしていた。それどころか、他の14人も「参ったなぁ」という苦笑いさえ浮かべていた。肩を叩いておめでとうと言ってきたり、あんな走りをして脚は大丈夫なのかと心配してくるウマ娘達。ひとりひとりの声に応えている間に、彼女達は静かにターフを去っていく。

 

「…………」

 

 残された私が辺りを見渡してみると、観客ひとりひとりの顔が見えた。歓声が轟きになって、京都レース場全体の空気が渦を巻くように上昇していく。

 私はふと空を見上げた。そして自然と湧き上がる感情のまま、スタンドに向かって深々と一礼する。そのまま巻き起こる喧騒を背に、私は控え室に向かった。

 

 地下道を通って軽快にステップを踏む私の足。コンクリートを踏み付ける蹄鉄の乾いた音が一定間隔のもと刻まれる。コツンコツンとリズムを踏んで、数十メートル程度進んだ時。腕を組んで腕時計を気にする彼の姿があった。

 

「トレーナー! ただいま!」

 

 薄暗い通路の中で呼びかけると、トレーナーが顔を上げる。私の姿を確かめると、彼は普段の落ち着きをどこかに吹き飛ばしてこちらに走り寄ってくる。

 

「アポロ! おかえり!」

 

 とみおが大きく両腕を広げ、私を力強く抱擁した。成人男性の体躯が思いっ切り私の身体にのしかかってきて、かなり息苦しい。背筋が反り返って姿勢も辛くなってくる。

 

「ちょ、くるし……!」

「アポロ……2周目の坂ではどうなるかと……」

 

 とみおの力がいっそう強まり、更に体勢がきつくなる。しかし子供のように震える彼の身体を肌に感じて、私は抵抗をやめた。腕の中にすっぽりと収まって動きを止め、彼の好きなようにさせてやる。

 

 日本ダービーと逆である。とみおから抱きついてきたあたり、相当精神的に追い詰められていたに違いない。むしろ私よりもストレスを溜めていたのではないか。

 彼の胸にかき抱かれながら、おずおずと彼の背中に手を伸ばす。一本の樹木の如く固く抱擁し合った私達は、しばらくお互いの温もりを感じていた。

 

「私のこと見てた?」

「うん」

「世界レコードだって」

「分かってるよ」

「あなたのおかげだよ? もっとこう、心配するだけじゃなくて嬉しそうにするとかさ……ないの?」

「そ、そんな。俺は喜んでるじゃないか」

「え〜……ま、いっか」

 

 抱きしめられながら顔だけを上げて、そのままの姿勢で会話する。ちょっと唇を突き出せばキスできるような――というかキスする寸前みたいな体勢だ。わざと転んで勢いのままちゅーしちゃおっかな……と思わないでもないが、さすがにやめておこう。

 

「……俺はアポロが無事に帰って来たことが一番嬉しいよ。勝利っていう結果も大事だけど、君には将来があるからね。……とにかく菊花賞おめでとう。頑張ってきた甲斐があったね」

「……ん、いっぱい頑張ってきた」

「うん。俺が一番知ってるよ。ずっと見てきたからね」

「っ……」

 

 とみおの優しい言葉に涙腺が刺激されたが、何とか堪えて彼の手から逃れる。

 

「……もう。ばか」

「えっ、何で?」

「いいから控え室行こ。ウイニングライブの準備しなきゃ」

「それもそうか。ライブ、楽しみにしてるよ」

「可愛いアポロちゃんから目を離さないでよね?」

「自分で言うなよ」

「いーじゃん減るもんじゃないし……」

 

 私達は鼻水を啜り上げて笑い合うと、お互いの歩く速さに合わせるようにして控え室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 アポロレインボウが菊花賞を制してから1週間後。

 東京レース場、G1――天皇賞・秋にて、サイレンススズカはターフへと続く道をトレーナーと共に歩いていた。

 

「スズカ……俺が何度も言ったように、()()()()()()。いつも通り2000メートルを全力で走るだけでいい。そうすりゃ、この不安の種からもおさらばだ」

「はい……」

 

 トレーナーの言葉を聞いてサイレンススズカは頷く。いや、どちらかと言うと頷くことしかできなかった。サイレンススズカは未知の領域とかフクキタルの占いだとか、そういうスピリチュアル的なことに疎かったのだ。ピンと来なかったと言ってもいい。

 

 ただ漠然と自分の身が危険にあることを何となく理解しているだけで、トレーナーやスズカ周りの人間が何故ここまで心配しているのだろう――と、トレーナーやアポロレインボウが聞いたらビックリするようなことまで考えていた。

 

 無論、何も備えてこなかったわけではない。トレーナーに言われたことはきちんと守ったし、これからも守るつもりでいる。「フォームを崩さず」に、「急ブレーキをかけず」、「誰とも競り合わない」ようにゴールまで走ればよいのだ、と。

 サイレンススズカは大レース寸前であることを思わせない堂々たる立ち振る舞いであった。……或いは、プレッシャーとは無縁な天然さから来るものか。もちろん、()()()()()()()()サイレンススズカを見るトレーナーは気が気ではない。

 

 沖野トレーナーは内心緊張と不安で胸が潰れそうな気分だった。彼は先週の菊花賞で見たアポロレインボウの走りを思い浮かべる。

 アポロレインボウがスズカと同じ壁にぶつかり、それを乗り越えて驚異的なレコードを出したことは記憶に新しい。それからアポロのトレーナーである桃沢と話す機会があったのだが、桃沢曰く「菊花賞はずっと生きた心地がしませんでした」とのこと。

 

 サイレンススズカの大逃げを見る時、沖野トレーナーはずっと幸せな気分だった。ウマ娘が理想とする走りそのものだ。沖野自身ずっと見ていたいと思ってやまない、最高にして唯一の走り――

 しかし、この天皇賞・秋だけは――どこか嫌な気分でスズカの走りを見守っていなければならないらしい。彼女を信じていないわけではないが、それはそれとして莫大な恐怖が奥底で蠢いている。

 

 サイレンススズカが怪我をしたらどうしよう。未知の領域へと至ることが叶わず、増幅した出力(パワー)によって骨折したら辛すぎる。沖野トレーナーの不安は拭えない。

 

 サイレンススズカは沖野トレーナーにとって特別なウマ娘だ。チームを持っている沖野は全てのウマ娘に厳しく優しく接し、ある程度自由奔放にさせてきたが……サイレンススズカだけは他のウマ娘と違い、どうも特別な感じがした。

 

 別に貴賎をつけたわけではない。目を離すとすぐに走り出して、そのまま永久に戻ってこないんじゃないか――スズカの儚い後ろ姿には、そう思わせる()()があったのだ。

 

「スズカ」

「はい?」

「……いや、呼んだだけだ」

「何ですか、それ」

 

 秋の天皇賞のパドックが終わり、いよいよ本バ場入場となる。少し前にいるウマ娘達は元気にターフへ飛び出していて、スズカに順番が回ってきそうだ。

 

 これがレース前に交わす最後の会話だ。沖野トレーナーは何を話そうか少し迷った後、棒付きキャンディーを口から取り除いて彼女に向き直った。

 

「スズカ。俺はお前と約束した“景色”を見たい」

「……!」

「対策は練った。アポロレインボウとそのトレーナーがやったように、俺達はとことんやった。……あと俺がやれることと言ったら、スズカの背中を押すことくらいだ」

 

 だから、と沖野トレーナーは前置きして息を吸い込む。サイレンススズカの優しげな瞳と視線が交わったのを確認して、トレーナーは拳を握り締めて喉が張り裂けんばかりに叫んだ。

 

「――思いっ切り走ってこい!!」

 

 最後の言葉は、サイレンススズカに向けての激励だった。その言葉に含まれた意味は、信頼と愛情。愛する教え子が迎えた晴れ舞台、送り出す存在であるトレーナーは彼女を信じて見ていることしかできないのだ。

 

 トレーナーは覚悟を決めていた。その覚悟が伝わったのか――サイレンススズカの目付きが変わった。緩やかに開かれた瞳が真剣味を帯び、眉がキリリと吊り上がる。

 

「――分かりました。思い切り、駆け抜けます」

 

 私もトレーナーさんを信じていますから――サイレンススズカはそう言い残して、東京レース場のターフへと駆け出そうとした。しかし、「やべ、言い忘れたことがあった!」という沖野トレーナーの声に尻尾を掴まれて、その足を止める。苦笑しながら再び目を合わせると、沖野トレーナーは両手を合わせて謝罪した。

 

「悪い。少し締まらないが、もうひとつ約束してくれ。……必ず俺の元に戻ってくるって」

「……もちろんです。トレーナーさんの“想い”、受け取りました。私は必ず1着であなたの元に戻ってきます――」

「待ってるぜ」

「それじゃ、行ってきます」

「……行ってらっしゃい」

 

 トレーナーの姿を一瞥すると、サイレンススズカの栗毛が揺れる。そのままいつものように走り出したサイレンススズカは、光の中に消えていった。残されたトレーナーはキャンディーを咥えてから微笑する。

 

「……待ってるからな」

 

 こうして幕を開けた天皇賞・秋だが、1枠1番1番人気のサイレンススズカは圧倒的な支持を受けており、早くも1強ムードが漂っていた。現地でエアグルーヴやマチカネフクキタル、アポロレインボウやスペシャルウィーク達が見守る中、サイレンススズカはスタートと同時に圧倒的な大逃げを開始する。

 

「うわ〜! スズカさんやっぱり凄いなぁ!」

「アポロの走りも大概だったけどね」

「小言はいいから、とみおもスズカさんに念を送るの! ほら早く!!」

「えぇ……」

 

 サイレンススズカの大逃げは東京レース場に押しかけたファンを魅了した。1000メートルの標識を通過した時点で後続に圧倒的な大差をつけている。そして、そのタイムが超ハイペースの57秒4ともなれば――観客のボルテージは更に爆発した。

 

 サイレンススズカの大逃げは速度を落とさない。なおかつ、最終コーナーを抜ければ2回目の加速を控えている。まさに()()()()()究極形のレース運びをするのだ。

 誰もがこう思う。『サイレンススズカは勝った』と。いったいどれだけの着差で、どれだけのタイムでゴールを通過するのか。サイレンススズカを応援する声が、怪物の唸りのように大きくけたたましくなっていく。

 

『先頭を走るサイレンススズカが今、大欅(おおケヤキ)に差し掛かります!!』

 

 東京レース場にいる者全員の想いを受け、先頭を突き進むサイレンススズカ。そんな彼女は、大欅の領域に足を踏み入れた途端――左足に強烈な違和感を覚えた。

 

「!?」

 

 瞬きした直後、サイレンススズカは闇の中にいた。フォームは崩していないし、急ブレーキをかけるようなこともしていない。いったいどうしたと言うのだ。サイレンススズカは闇の中で辺りを見回す。

 

 闇の中では“景色”を見られない。トレーナーと約束した景色を見せられないではないか。ふと目の前に輝いた閃光を追おうとするが、運命と強烈に結びついた左足がサイレンススズカの動きを封じ込める。

 

「なっ……!?」

 

 現実世界のサイレンススズカにも異変が起こる。左足に結び付けられたマチカネフクキタルのミサンガが弾け飛んだのである。

 

 サイレンススズカの脳裏に、やけに慕ってくる後輩のアポロレインボウの話が()ぎる。アポロはスズカにこう言っていた。

 

『私、菊花賞の第3コーナーで1回崩れかかっちゃったんですけど。その時……なんて言うかこう、上手く言えないんですけど……自分の心の中の風景が暴走? して左足が動かなくなって。でも、みんなの声がしたかと思ったらブアーッてなって。なんやかんやあって動けるようになりました!』

『そ、そう……』

 

 正直なところスズカにとってその話はよく分からなったのだが、今直面している状況は()()と似通っているぞと思い至った。サイレンススズカの精神は動揺し、その精神に呼応するように背後から襲ってくる闇が増幅する。

 

「っ……!」

 

 そして闇に呑まれる寸前、サイレンススズカはトレーナーの声を聞いた。必ず俺の元に戻ってこいと言った彼の顔が思い浮かぶ。彼との思い出さえ想起され、その想いがサイレンススズカを闇から救う光となっていく。

 

 沖野トレーナーの想いだけではない。エアグルーヴ、マチカネフクキタル、スペシャルウィーク、メジロマックイーン、トウカイテイオー、アポロレインボウ、アグネスタキオン、ファンの人々――色々な人の強い光が、サイレンススズカの左足に纒わり付く呪いを解き放っていく。

 

「――――」

 

 スズカ自身、完璧な理解をしていたわけではなかった。しかし、確かに湧き上がる温かな想いがあった。闇を振り払い、光に向かって進むサイレンススズカ。

 

「見に行かなくちゃ」

 

 沈黙の日曜日を超え、その先の“景色”へと彼女は走り続ける。

 

「トレーナーさんが……みんなが待っている景色を!」

 

 闇を超え、光を超え、大欅を超えたサイレンススズカはゴールに向かって疾走する。

 

『サイレンススズカ、大欅を超えて最終コーナー回って直線に入る!!』

 

 ――【先頭の景色は譲らない…!】

 

 サイレンススズカは()()()()()

 最終直線に入って、彼女を脅かす者は誰ひとりとしていない。影さえ踏ませぬ圧巻の走りが、東京レース場を夢の舞台へと昇華させていく。興奮がとぐろを巻き、誰もが栗毛のウマ娘に目を奪われる。

 

 誰もが思い浮かべる『レースの絶対』があった。

 それは圧倒的ペースで逃げた後、二の足を使って再加速すること――つまり、『逃げて差す』こと。

 これを実現するウマ娘がいたなら、きっと生涯無敵だろう。難攻不落だろう。あまりにも完璧で、どうやって勝てばいいのだろう。そうやってたまに議論されるくらいには、その作戦は絶対とされている。

 

 誰もが思い焦がれる夢があった。

 それは、例えばそんなウマ娘が現れて世界で輝いてくれること。

 

 

 そして、ここにいるみんなの夢がサイレンススズカというウマ娘だった。

 

 

 サイレンススズカは()()()()()

 誰もが夢見た最高の走りを、ターフという緑のキャンバスに(えが)き出していく。春のグランプリ(宝塚記念)で見せてくれた夢の続きがそこにあった。

 

『サイレンススズカが先頭!! サイレンススズカが先頭!! まさに逃げて差す!! 誰もが待ち望んだ最高の走りだ!!』

 

 そして、サイレンススズカ自身も夢を見る。

 わたがしのような雲と、遠く澄み渡る青い空の下――雪が溶け、緑生い茂った遥かなる草原を走る夢。

 ただただ楽しくて、夢中になって、疲れ果てるまで原っぱを駆けていた子供の頃の記憶だ。瞳に映る景色はどこまでも爽快で、果てしなく、永遠のように思えた。

 

(……あぁ)

 

 これが……私達の“景色”――

 

 サイレンススズカが『未知の領域(ゾーン)』を発現させる。それは彼女の心象風景にして、誰もが望んだ夢の景色だった。

 

『先頭はサイレンススズカ!! 後ろからは何にも来ない!! サイレンススズカ!! サイレンススズカだ!! 多くの人達の夢と想いを背に受け、サイレンススズカが先頭でゴーールッッ!!』

 

 空気が張り詰め、観客の大歓声によって切り裂かれる。誰もがサイレンススズカを祝福していた。

 サイレンススズカはゆっくりと速度を落としながら、今まで味わったことのない歓喜に打ち震える。

 

『栄光の日曜日の主役となったのはサイレンススズカ!! 第4コーナーの向こう側から見事盾の栄誉を勝ち取りましたっ!!』

 

 終わってみれば、サイレンススズカの大差勝ち。異次元の逃亡者が遂に『未知の領域(ゾーン)』へと到達し、奇しくもアポロレインボウと同じ第3コーナーで襲いかかって来た試練を乗り越え、2000メートルの天皇賞・秋を大差で勝利したのだ。

 

 サイレンススズカ自身、己の成長を感じると共に――自分を応援して支えてくれるファンやトレーナー、友人や後輩達の大切さを知ることとなった。

 ウマ娘というのは、背中に“想い”を背負って走る――今日のレースは間違いなく、()()()と一緒に走ったから勝てたのだと。サイレンススズカは涙ながらにそう思った。

 

「私が……私達が夢見た景色――」

 

 

 ありがとう――

 

 

 

 




【果ての銀雪、月虹が照らす先へ】
最終コーナーまで全力全開で先頭を走り続けた時、みんなの強い想いと絶対に諦めない心が背中を押し、強烈な威圧感を振り撒きながら加速し続ける


【挿絵表示】

適当にもほどがある 様に素晴らしい絵を頂きました。泥に汚れても美しいアポロちゃんです。ありがとうございます。
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