無限に広がる大宇宙。
かつて人類は地球平面論という世界の端は滝になっているという説を唱えて一定の支持を集めていたり。
しかし別の大陸では地球は楕円でその下には巨大な象が支えて、さらにその下には亀がいてその全てを支えているという説が論じられていた。
そんな大航海時代も始まったばかりから現在よりももっと地球の未知が解明されていなかったはるか昔から人類は数多くの未知に対して挑んでいた。
そしてそれはやがて今までの未知が船が地球を一周して元の場所に戻って来たときに解明されて既知となる。
今までの非常識が常識に溶け込み、逆に常識が非常識に移り変わってゆく
そして人類はかつての未知の大海原の舞台を宇宙に変えて地球という島から飛び出してまだまだ間もない頃。
その大海原の舞台となっていた大宇宙の人類が住む地球とは別次元のまた遠く離れた銀河系で全宇宙の支配を企む魔術師が敗れさろうとしていた。
「カ〜〜〜〜〜ビィ!!!」
この悲鳴の主は名前はマホロア。
虚言の魔術師とも呼ばれ、その呼び名のとおりに多くの者をある時は不安を煽り、ある時は偽物の同情を買わせての虚言で騙してきた。
さらに魔術師と呼ばれるように多くの魔術に長けており、並大抵のものでは簡単に蹴散らされてしまう。
そんなマホロアの目的いや、彼のあまりにも大きすぎる夢は野望という表現が正しいだろう。
マホロアは無限の力を持つと言われるハルカンドラの秘宝と呼ばれしマスタークラウンを手に入れて全宇宙を支配しようとしていた。
しかしその野望は星のカービィと呼ばれるとても平和な星ポップスターに春風と共にやってきた若き星の戦士にたった今打ち破られた。
いかに虚言の魔術師マホロアと言えど、数多の強敵を打ち破ってきた星の戦士にはマスタークラウンを持ってしてもついぞ敵う事はなかった。
カービィに敗れたマホロアは本来であればマスタークラウンを失いその身一つで
その後何やかんやとカービィと再会する数奇な運命を辿っていく。
が、しかしマホロアを飛ばした
そう別次元の宇宙に飛ばしてしまったのだ。
いったい何故なのかそれはマスタークラウンにある。
カービィによってマホロアが倒されるまではストーリーどおりであるが、マスタークラウンへの攻撃が中途半端であり半壊程度でマホロアが倒されてしまう。
なんと今回のマホロアを別次元へと飛ばした原因となったのはマスタークラウン。
長い年月を経たその王冠は意思を持ち始めていたのだ。
とは言っても、まだまだYES or NOという範囲内だ。
そして物に意思が宿るという現象は滅多にないがあり得なくはなかった。
マホロアの所有する宇宙船ローアにも実は意思というものが存在しており、船自身がほんの少しだけではあるが自立して動くのだ。
驚愕すべきは宇宙船ローアを筆頭にポップスターの秘宝と呼ばれる夢を生み出す夢の泉とスターロッド、願いを叶える機械仕掛けの大彗星ギャラクティック・ノヴァを創り出したハルカンドラの超文明であろう。
そう前述した通りマスタークラウンはハルカンドラが創り出した秘宝。
しかしこれも数ある可能性を示しただけで解答にならないかもしれないが日本人的に分かりやすく表現するとマスタークラウンの無限の力と長い年月が付喪神のようなものを創り出したことだろう。
さて、唐突ではあるがそんな意思を持つにいたったマスタークラウンに関わらず生き物がその生命の危機に危ぶまれる事態が発生したならばどうするだろう。
この場合であれば破壊される危機が発生したならばとりえる手段としては自らに害を及ぼそうとするものを退けるか、三十六計逃げるに如かずの二択。
まぁマスタークラウンの場合は、戦ったはいいものの負けそうだから途中で逃げたと言ったものだった。
話を戻すと
こうして暴走したマスタークラウンは共にカービィにやぶれたマホロアを引っ張る形で別次元へと引っ張ってしまう。
「………………ウゥゥン?こ、ここは?ドコ??」
変に寝違えたのか、目をゴシゴシこすりながら何故だか痛む身体を不思議に思いつつ何事かと周りをマホロアが目を覚まして見渡すとそこは見覚えのあるローアの船内ではなく、だだっ広い草原にいた。
「ナ、なんだココハ!ローアは!どこに行っちゃったの!?ハ、ハヤク戻ってきテェー!!」
ローアの自動操縦に任せて安心してベッドで眠っていたというのに起きたら草原にいるという全く訳の分からない状況に晒されたマホロアは酷く混乱してその場であたふたとしてしまう。
直前までカービィと戦っていたというのに船内でぐっすりと眠っていたと思っているマホロアのこの状態。
読者の皆様はもう違和感に気づいているだろう。
そう、このマホロア記憶喪失になったのである。
原因は意思を持ったマスタークラウンの暴走に引っ張られる形になった際に短い間ではあるが主人として多少は認められていたのかそれとも王冠だけの自分が逃げても意味がないと理解していたのか別次元へと逃げる際にマホロアを連れてったのだ。
そして力の暴走で王冠を被っていたマホロアの脳に少しばかり影響がでてマホロア単独でハルカンドラにいる守り神のランディアと戦う以降の記憶を失ってしまった。
つまりランディアに戦いを挑み敗れたこともカービィ達を利用してローアを修理してマスタークラウンを手に入れたことも、ポップスターを支配しようとしてそれを阻止しようとするカービィとの戦いもゴッソリ無くなっているのである。
そして気になるマホロアの混乱の元凶となったマスタークラウンは
「アイタ!な、何か身体にササッたヨォ。……ッてコレは!!マサカ!?マスタークラ………ウン?」
球体上の彼の体にお腹の部分や足下と言われてもよく分からない気がするが、マホロアは自身の足元の方に転がっているまさかのものに驚愕した後に疑問を持った。
「コレがあの伝説の無限の力をモツと言われるマスタークラウン?」
そう確かにマホロアの目利きどおり彼が拾ったものは紛うことなきマスタークラウンであるが、どうにも様子がおかしい。
いつものマスタークラウンは常にキラキラと黄金色に光輝いて、それでいて一国の国宝級の美しさを兼ね備えている正に芸術品と言われてもおかしくないもの。
何よりクラウンの無限の力は魔力を持ったものを一切の誇張なく史上最強の宇宙の支配者にさせるほどの力を持つ王にふさわしき常勝の武具、いや魔道具である。
しかし今のマスタークラウンは黄金色に光輝くこともなくむしろ
マホロアが調べた伝説とは全く異なっているその姿は何処かの観光地に売っているパチモンの王冠の方がいいように思えてしまう。
そして、なによりもマホロアが疑問を持つのは魔道具としての力は感じるがあまりにも伝説になったとは言えないぐらいの力の弱さなのだ。
「……………。」
自分が追っていた物がまさかの何の価値もなさそうなただの骨董品だったという事実に打ちのめされてしまい言葉が出てこないマホロア。
そして改めてここは何処なんだと訳の分からない状況に全く思い出せない記憶と本当にただの伝説だった
取り敢えず高値で何処かで売ってやろうと手を伸ばしたが、薄汚れた
シュン!!
「!!!」
消えた。
しかも驚くべきことにマスタークラウンの周囲の草は魔力球が掻き消えた時に
「マ、まさか!」
慌てて今まで骨董品だと思っていた物に近づいて、恐る恐る両手で慎重に持ち上げて改めてよく見る。
今度は注意深く、何も一つとして見逃すことがないように。
「……ハッ、はははは!間違いない。コレは正真正銘ホンモノのマスタークラウンダョ!!」
マホロアは手にとってようやくそれが骨董品ではなくマスタークラウンだと確信して、歓喜の声を上げる。
確かにマスタークラウンの魔力量は先程と変わらず伝説の魔道具と比べるべくもなく明らかに弱い物だが、手にとってようやく骨董品と勘違いしたかがわかったのだ。
その魔力容量は正に桁違いの伝説級だ。
まるでそれは宇宙船ローアからいつも眺める想像も出来ないほど無限に広がる漆黒の宇宙のように底が見えないのだ。
マスタークラウンは無限の力を持つ魔道具であり、それを伝説たらしめるのは圧倒的に無尽蔵で底の見えない魔力保有量。
例えるならば一般的な普通の魔法使いがジョウロでアリの巣穴を水責めにするならば、マスタークラウンは才あるものが使えば災害とも呼べる津波で街を飲み込んで建物を押しつぶすような物だ。
しかし喜んでばかりもいられない。
「デモ一体何でこんなに弱くなってしまってるんだろう?もしかしてボクの魔力球ヲ吸収したのと関係あるのかナァ。」
マホロアは暫くマスタークラウンをジッと見つめているかと思うと裏返したり、クラウンの縁や宝石をなぞったりポンポンと叩いたりすると試しに魔力を手から直にクラウンへと流し込んでいく。
魔力を送り続けて暫くしてからふぅーっとマホロアは一息ついた。
「ドウヤラ壊れたトコロヲ治すために魔力を吸収しているみたいダネェ。このままボクの魔力を与えてもまるでサバクに水を撒いてるみたいダョ。」
また暫くマホロアはマスタークラウンを服で擦ったりして調べているとマスタークラウンを調べてるのに夢中でさっき呼んでいた宇宙船ローアがまだ来ていないことを思い出した。
「アっ!ローアを忘れてたヨォ。」
マホロアが呟いたおかげか、
ちなみにマホロアには虚言の魔術師以外にも自称ではあるが天かける旅人という呼び名があり、これは宇宙船ローアをモチーフにした呼び名である。
虚言の魔術師がそのマホロアの本性だとするならば、天かける旅人マホロアは仮の姿と言ったところだ。
そんな天かける船ローアはゆっくりと上空で円を描きながら主人であるマホロアの元に降りようと降下を開始した。
よく見ると爆炎を上げながら宇宙船ローアのマストやウイング、部品をバラバラにしながら降下というよりも現在進行形で墜落をしていた。
そう呼び出したローアはマホロアは分かるはずもないがカービィ達とランディアの攻撃により沈められていたのだ。
幸いにも宇宙空間で爆発することはなかったものの、沈まんとする船の意思で応急修理中であったのだ。
そこでマホロアのSOSを受信したローアは無理を押して出航し、結果的に
そんなローアの忠犬もかくやという行動は残念ながら記憶喪失で知るよしもないだろう。
突然訪れた宇宙船ローアの緊急事態に呆然と立ち尽くすマホロア。
そのままローアはマホロアのいる草原にドゴゴゴゴゴゴ!と地響きを立てながら不時着した。
シューとまるで力尽きたかの様に船体から煙を上げるローアを見てマホロアは今度こそ頭を抱えた。