この虚言の魔術師に王冠を!   作:玉砕兵士

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2話

マホロアは突然訪れたその状況に困惑していた。

 

 

 

さっきまでローアの船内に居たはずなのに、いきなり檻に入れられてるかと思ったらその周りにいた兵士に槍を突きつけられていた。

 

その兵士に守られているようにいた人間は豚みたいに不健康にブクブクと太っており部屋の奥には男を模したような純金の銅像やら高そうな美術品やら家具やらが置いてありそのせいでやたらと部屋中がピカピカとして無駄に眩しい。

 

正に成金の部屋そのものといった感じだった。

 

 

「……君は一体誰ダィ?」

 

 

「ワシはアルダープ様だ!何だか弱そうなモンスターが召喚されてしまったな。だがまぁ良いこれから貴様はワシのものだ。感謝するが良い。」

 

 

 

 

なにやら険悪な状況になっているがそれを解説するために話は少し遡ってマホロアがまだローアにいた時、つまるところローア墜落から数日ほど経った頃。

 

 

 

 

 

ローアの惨状を見て暫く頭を抱えていたマホロアだったが、いつまでもそうしていられなかったマホロアは墜落したローアの修理を行っていた。

 

だがウイングやマスト等を欠落して更にボロボロになっていたローアを完全に修復することは出来ないでおり、これからどうやって部品を回収すればいいかとウンウン唸って悩んでいた。

 

 

「ウーンどうしよう。ローアが飛べないんジャア、マスタークラウンを手っ取り早く直す方法をハルカンドラで調べられないしなぁ。コレジャア宇宙へ飛ぶドコロかこのホシから飛び立つもできないヨォ」

 

「虚言の魔術師とヨバレシこのボクでもこの辺りにいるヒトはミンナボクのコトを『モンスターだっ!』って言って話も聞かずに襲ってキテルンジャア利用……協力サセラレナイシナァ。」

 

「マッタク!ボクをモンスターと勘違いスルナンテ失礼シチャウヨ!!」

 

 

 

思い出した怒りを発散させるようにイスに座ってグルグルと周りながら手に持ったクラウンに魔力を込めつつ思案する。

 

 

「シカシ一体どうやって、ユウコウテキなアプローチをすれば良いかナァ。モンスターから守って助けてアゲヨウニモそんな都合のイイ展開も全然来ないシナァ。」

 

 

ローアのできる限りの修復を終えてからマホロアはこの星の住民に接触をしようと辺りを飛び回っていたが、襲われない様に近くの茂みから様子を伺うも住民を助ける様な展開もなかなか訪れなかった。

 

ちなみに留守番をしているローアは魔物に襲われないかと言われればハルカンドラの超文明が創り出したローアの力を恐れて知能が低く弱い魔物は自分から近づいては来ない。

 

他にもはたからみればローア自身がただの宇宙船ということもあって来ないこともある。

 

 

「デモ地道にヤッテイクのも飽きてキチャッタナァ」

 

 

なんとも気分屋なマホロアがそうしてグルグルグルと回っていたら偶然にもアルダープの所有するランダムにモンスターを召喚する神器に召喚されてしまったのである。

 

 

「どうした?なんとか言わんか!この低俗なモンスターめ!」

 

 

いきなり召喚されるという予測不可能な事態で、さらにこの失礼な物言いにあったら普通だったら怒ったり慌てたりするのは必定。

 

だが魔術師として知能が元から高いマホロアは素早く状況を理解すると激昂するどころかむしろ喜んだ。

 

自分にかかればこんな槍を構えて脅す兵士程度軽くあしらって逃げられるという自信と余裕もあった。

 

何せやっとこの星の住人とまともに話し合えるのである。今までは見ただけで襲いかかって来るような相手ばかりだったので、内容は最悪だが1番に話を仕掛けてくる相手ならば虚言の魔術師の出番。利用出来るまで利用してやろうとそう思えば目の前の相手の失礼な物言いにも多少は我慢してやろうと思った。

 

しかも初めて話をすることができる住人が喋り方はともかくとして見た感じ中々に強そうな権力を持った貴族であり、さらに言えば頭が悪そうで実に騙しやすそうだ。

 

 

「エェ〜モノだなんてヒドイナァ。それにボクはモンスターじゃないヨォ。それよりもボクと友達!そうフレンズになろうヨォ。そうしたら友好のアカシにキミが、いやアルダープ様がホシイ物をあげるカラァ。」

 

「黙れ!このモンスター風情が!!貴様を召喚して使役しているのはベルゼルグ王国の貴族であるアルダープ様だぞ。そんな事すらも分からんのか?やはり最初に思ったとおり低俗なモンスターだな。」

 

 

まさに聞く耳持たず。

 

マイペースに話しかけてくるマホロアに唾を吐き散らしながら怒鳴るアルダープ。

 

召喚した主人に素直に命令を聞くどころか馴れ馴れしくも話しかけてくるマホロアをハズレの低級モンスターとみなしたアルダープはすぐに殺してまた代わりのモンスターを召喚しようと考え直して近くにいる兵士に命令しようとする。

 

そんなアルダープの不穏な空気を察知したのかいつでもマホロアに槍を突き出そうと臨戦状態に入る兵士たち。

 

だが次の瞬間にマホロアが懐から取り出した物を見てアルダープは目の色を変えた。

 

 

「まぁまぁ、ハナシを聞いてヨォ。アルダープ様にはこんな物なんてドウカナァ?」

 

 

懐から取り出したマホロア手の上には綺麗な宝石や純金のブレスレットに腕輪と価値の高そうなお宝があった。

 

 

「なっ!おいそれを早くワシによこせ。ワシのものだ!」

 

「モッチロン!友好のアカシだからアルダープ様にあげるヨォ。」

 

 

やはり成金のこの部屋を見た時から思っていたとおり金に汚い人間のようだ。扱いやすそうで実に好ましい。

 

今にも椅子から飛び出して行きそうなアルダープの様子に兵士が慌ててそれを制して檻のそばにいた兵士がマホロアから腕輪や宝石を受け取ろうとしたその時

 

 

「大丈夫ダョ。ジブンで渡すカラァ。」

 

 

そう言った後にパッと檻の中からマホロアが消えた瞬間にアルダープの前の机にいきなり現れてお宝を置いた。

 

 

「!!?なわぁ!?貴様どうやって!」

 

「瞬間移動サッ!ドウ?ドウ?気に入ってクレタァ??」

 

 

律儀にアルダープからの質問に答えるマホロアの事はもう頭に入っていなかったようで机に置かれた宝を引ったくるように手に取って夢中になって眺める。

 

マホロアが檻から瞬間移動した事に慌てた兵士は移動してすぐに槍をマホロアに構え直す。

 

暫く眺めた後にマホロアをジロっと見下すような目と顔でアルダープはマホロアを見ると

 

 

「おい。まだ何か持っていないのか?ワシは貴様のご主人だぞ。全部ワシによこせ。」

 

「ザンネンだけど、今はソレしかモッテナイヨォ。でもボクのホシには同じモノがいっぱいあるヨォ!」

 

「そんなに大量にあるのか、それに何だと?ホシだと?どこだそれは?早く持ってこい。」

 

 

いまいちアルダープと話を聞いていた周りの兵士達は『ホシ』という単語が宇宙にある星だとわからず疑問に思っていたがその『星』を分かっていない様子を見て腹の中で笑うマホロアは表面上は愛想のいいニコニコ顔で質問に答える。

 

 

「ソウ!ウチュウ船に乗ってウチュウからこの星にやってキタンダァ!」

 

「な、何だと!?まさかあの夜空にある星からか!」

 

 

見た目から今までモンスターだと思っていた目の前の相手が驚愕の宇宙からの来訪者という出来事に思わず大声をあげるアルダープ。

 

予想外の出来事に固まってしまう兵士達。

 

 

「そうだヨォ。デモ。」

 

 

今までマイペースに喋って行動していたマホロアが急にしょんぼりとした様子になり不思議そうにアルダープと兵士は注目する。

 

 

「ココに来るときにウチュウ船のパーツがバラバラになっちゃってホシに帰れなくなっちゃったんだ。助けをモトメヨウと近くにいたヒトに近づいたら襲われそうになったりシテ。もうダメだとアキラメテたらボクのハナシを聞いてくれるアルダープ様が現れたんだヨォ!だからオネガイシマス!アルダープ様!ボクと一緒にウチュウ船のパーツを探してホシインダ!」

 

 

マホロアの話を聞いて暫くじっと考えていたアルダープは分かりやすい悪い笑みを浮かべた。

 

その笑みを見たマホロアもニッコリとアルダープに笑い返す。

 

 

釣れた

 

 

「おお、それはそれは可哀想だなぁマホロアよ。愚かなお前の為にワシもその船のパーツとやらを一緒に探してやろうではないか。そしてお前がパーツを探せるようにこのワシがアクセルの街のギルドに取り計らってやろう。」

 

「ホントウカィ!アリガトウ!アルダープ様。ウチュウ船が直ったらぜひアルダープ様をボクのホシに招待シテ沢山のゴチソウとオタカラをあげるヨォ!」

 

 

そう言ってアルダープの両手を取ってブンブン振って喜ぶマホロア

 

いつもであれば下賎な者が触るなと怒鳴るアルダープも、そのマホロアの追加のダメ出しに言いたい事を言ってくれたと更に悪い笑みを深くして気分が今までになく良いアルダープは全く気にならなかった。

 

(馬鹿なモンスターめ。ワシは全て(・・)自分の力でこの国の貴族まで登り詰めた聡明な頭脳を持つアルダープ様だぞ。宇宙船とやらが直って貴様の星にある宝を全部もらったら貴様を殺して宇宙船もこのワシのものにしてやる。)

 

 

 

アルダープがそう思案しているときにマホロアも心の中で腹黒い笑みを通り越して大爆笑をしていた。

 

ちょっと欲を刺激して愛想を振りまいて知りようもない奇想天外な嘘をバラまいただけでここまで上手くいってしまうとは本当に愚かな人間だ。

 

こんなにも騙しやすい奴は初めて見た。

 

 

かくしてマホロアは宇宙船のパーツを探してもらう友好的な関係(笑)をアクセルの街の領主であるアルダープと築き、さらにこの星の人間に友好的に接する手段を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

「えーと、あのアルダープ様がおっしゃっているのは………つまりそこにいる人(?)は宇宙人でバラバラになった宇宙船のパーツを探している可哀想な宇宙人だから当ギルドに冒険者登録をして欲しい。ついでに宇宙船のパーツを探す依頼も出すという事でしょうか?」

 

「そうだアクセルの街の領主であるアレクセイ・バーネス・アルダープ様からの直々のご命令だ。二回も言わせるな。」

 

 

あのアルダープより控えめではあるがそれでも高圧的な口調の兵士とチラリといま話題になっている一見して新種のモンスターのようなモノが奥の椅子に座っているのを見て困惑した様子のギルド職員。そしてその様子をニコニコと行儀よく椅子に座って眺めているマホロア。

 

 

場所はアルダープの屋敷から変わってここはアクセルの街のギルド。

 

 

 

 

に向かっているマホロアとアルダープからの命令を受けた兵士を乗せた馬車。

 

兵士はアルダープと別れてから憐れむ様な目を最初マホロアにむけていたが、馬車に乗るときには気持ちを入れ替えたのか仕事の顔に戻っていた。

 

マホロアはその憐れんだ目を自分のウソの境遇に対してなのか、それとも食い物にされた人を見てきたからなのか、それともその両方なのかは分からないが、心の中で『ボクはそんなのお見通しだヨォ』と呟きながら馬車に乗り込んだ。

 

ガタガタ揺れる馬車にマホロアが顔をしかめて座席から宙に浮いて外の景色を眺める。

 

兵士はそれをチラッと見て揺れる馬車に尻の痛みを思い出したのか腰の辺りをさすりながらも命令文を熟読する作業に入る。

 

マホロアもそんな真面目な兵士の様子を見て窓の方に顔を戻す。ゆっくりと進む馬車が最初は平原が広がっていたが景色が林からまた平原になり暫く経つと街の城壁を越えた頃にこの星にやってきて初めて見る街に夢中になった。

 

 

 

ウンウンイイヨォ、とてもイイヨォ。

 

オモッタとおり城壁の中にマチを作ってモンスターから身を守っているミタイダネェ。

 

魔法をクワシクまだミテナイから結論を出せないケド、ヤッパリ知らない土地をミテ回るのはタノシイネェ!

 

知らないモノ。よく分からないモノでいっぱいだヨォ。

 

パーツを探すトチュウで少しでもこのホシの魔法を調べればハヤクマスタークラウンを直せるかもしれないヨォ。

 

マァ、アルダープの気がカワッタラ、このホシからオサラバしなくちゃいけないけどデキレバ見てマワリタイナァ

 

 

ソレニ

 

 

ミンナこの馬車を避けたりヒソヒソ話したりシテルネェ、女の人はもっと過敏に反応してるけど思ったとおりアルダープの評判はワルイミタイダネェ。

 

いまさらだけどアンナ愚かなニンゲンがこの街の領主なんてチョット信じられなくなってキタケド調べた方がイイカナァ?

 

 

 

「着いたぞ。アクセルの街のギルドだ。」

 

最初は兵士が降りて慌てて来たギルド職員思わしき人間とボクの事を話しているのか声は聞こえないがだいぶ時間がかかっている。兵士がこちらに手招きをしてくるのでそれに従って馬車から飛び出した。

 

 

事情を話してもらえたようで何よりだ。

 

 

これでもう『モンスターだ!』と失礼な事を言われることもいきなり襲われることも無いだろう。

 

それにしても先程から建物の奥の方でやって来たギルドの男性職員と同じような制服の女性が慌てて引っ込んで行くのが見えた。

 

よほど好色であるようだ。モンスター並みにあの人間は嫌われているらしい。

 

 

「ヤァ!ボクの名前はマホロアダョ!皆んなヨロシクネェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だぁ!遂に悪魔が街に入り込んだあぁ!!」

 

マホロアは大騒ぎになったギルドの前で殺到してきた大勢の冒険者にあわや討伐されそうになった。

 

一体そこで何の話をしてたんだと兵士に怒りたくなったが、次々と四方八方から飛んでくる魔法や矢を避けるのに大変でまずは生き残るのにマホロアは必死であった。

 

 

 

 

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