この虚言の魔術師に王冠を!   作:玉砕兵士

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5話

(これはヤバいかもしれませんねぇ。)

 

 

カズマの卑劣な罠に咄嗟とはいえ、マホロアの加入を私自身が認めてしまうとは。

 

ジトーっとした目でカズマを見るマホロアと必死になって周りの冒険者やドン引きするアクアにこれは事故だと釈明に追われているカズマ。

 

紅魔族の我が力にマホロアが及ぶとは思えませんがそれでも謎の宇宙人。私の常識が通用しないような宇宙の魔法を使われてもし圧倒されてしまったら。

 

 

ヒソヒソと女冒険者の人達がさりげなくカズマから離れていく様子を見てもう手遅れになってしまったと辛い現実に打ちのめされたカズマ。

 

 

無理矢理とはいえカズマは私を仲間に入れてくれたというのに、もし、もしカズマが私を……あ、あわわ。ど、どうすれば

 

頭の中に悪い考えが充満していきパニックになりそうなめぐみんは不安そうな目でアクアやカズマをついつい見てしまう。

 

 

 

 

「緊急クエスト!緊急クエスト!!全冒険者の方々は至急武装して街の正門に集まって下さい!!」

 

 

大音量のギルドからの警報にその場にいた冒険者達は、何事かと思いながらも指示どうりに手際よく装備を整えてゾロゾロと街の正門に向かうために移動を開始するも数日前に冒険者になったばかりのカズマやマホロアは少しの間ボーッと見つめていたがその間に準備を整えていたダクネスや復活したアクア。パンツを取り戻していためぐみんにせかされて街の正門に向かう冒険者達の列へと続いていく。

 

 

マホロアは横目で街の正門に向かう冒険者達と逆方向に逃げるように駆けていく人や家の中に入り戸締りをする住人達を見て何かただことでは無い様子だけを感じ取って横で走るダクネスに聞く

 

 

「チョット、チョット!一体コレはなんの騒ぎナンダイ?」

 

「うん?何ってこれは…あぁそうかマホロアは知らなくて当然だったよな。少し時期は早いがこれはおそらくだがキャベツの収穫のクエストだ。」

 

「エ?キャ、キャベツ?」

 

「そうだ!この時期のアクセルで採れたキャベツはカエルと同じく名産になるくらいに美味しいんだ。」

 

 

収穫は分かったが、それとこの騒ぎは一体何の関係があるのかと聞きたいのにまるで通じてない事にマホロアは困惑してはいたが放送にあった街の正門に着いてからはダクネスに繰り返し問いただす前に『私は皆を守る壁になってくる!』と鼻息荒く興奮したような様子で先にいた冒険者達の中に消えていった。

 

 

先程のギルドでの特殊性癖的な発言を聞いていたマホロアは興奮した様子のダクネスにこれ以上聞きたく無かったから彼女について行くことはしなかった。

 

少し遅れてアクアとめぐみんがやってくるが、カズマはギルドから走ってきて息を切らしている様子だったがマホロアの疑問を人混みに消えていったダクネスの代わりにアクアとめぐみんが解消してくれた。

 

 

「全くカズマはちょっと走っただけですぐにバテテしまいますね。それではこの後の収穫の時にキャベツの反撃にあって怪我をしてしまいますよ。」

 

「ゼェ、いやお前の言ってる事が意味わかんねえよ。冒険者にキャベツの収穫やらしてる時点でおかしいのに反撃にあって怪我をするってもはや理解できねぇよ。だからもう一回説明してくれ。」

 

「全くおバカなカズマさんはしょうがないわねぇ。いい?この世界のキャベツは収穫の時期になると空を飛んで簡単に食われてたまるかとばかりに反撃してくるのよ。」

 

「やっぱり理解出来ないから、馬小屋に帰っていいか?」

 

アクアの説明をカズマの隣で聞いていたマホロアも理解に苦しむ事を説明されて何言ってんだコイツ?と言わんばかりの微妙な表情でアクアを見る。

 

 

「来たぞ!」

 

帰りたそうなカズマをアクアが逃げないように掴んでいるところで冒険者の誰かが発した大声に振り向くと遠くから緑色の何かの大群がすごい勢いで飛翔してこちらへと向かってきていた。

 

「マ、マサカ。アレって。」

 

近づくにつれて鮮明になる空飛ぶ物体に、顔が引き攣りそうになるマホロアと目が点になるカズマであったが理解できない光景にたまらずに絶叫する。

 

「なんじゃありゃー!!」

 

マホロアもキャベツの大群が葉っぱを羽ばたかせて飛んでくる光景にカズマのように叫ぶ事はなかったが心中で仰天していた。

 

 

「皆さん!今年もキャベツの収穫の時期がやってまいりました!今年のキャベツは出来が良く一玉一万エリスでの交換になりますので出来るだけ多く収穫できるように頑張って下さい!」

 

ウオオォォォ!っとギルド職員からの説明に歓声で反応する冒険者達にマホロアとカズマはやっぱりキャベツなのかと否が応でも理解する。

 

 

フダンならキャベツなんて見てもナントモ思わないけどアンナにいっぱいコッチに飛んできたら怖いネェ。コンナ時いつもならダレカに押し付けるトコロダケド。

 

 

チラッと横目で迫ってくるキャベツにおっかなびっくりにショートソードを構えるカズマとロッドを構えるアクアを見て、2人に聞こえないようにめぐみんにある提案をする。

 

「ネェネェ、めぐみん。」

 

「なんですかマホロア?貴方をパーティーに入る事をカズマが認めても私は認めてませんのでボッチなあなたは分かったら早くあっちへ行って下さい。」

 

「エ!?サッキちゃんとナカマに入れてくれたじゃないか!」

 

「あ、あんな脅迫まがいの事をされたら女の子なら誰だって屈してしまいますよ!ですから私はあんな不正を使った仲間入りなんて認めません!むしろあんな不正行為で仲間になって恥ずかしくないんですか!!」

 

 

とめぐみんはカズマとのカエル討伐クエストの帰り道で無理矢理にカズマパーティーに入った事実を棚に上げてマホロアをシッシッと手を振って邪険にする。まあそんなことなど知るよしもない不満そうな顔をしていたが、マホロアはケロッと不敵な笑みを浮かべながらある提案をする

 

 

「ソンナに言うならショウブしようヨォ。」  

 

 

ギルドでの不安がまた渦巻く。

 

 

「…ギルドでこの私にあっけなく負けたと言うのに懲りずにまた勝負を仕掛けてくるとはいい度胸ですね。」

 

「ククッもしボクよりもキャベツをめぐみんが多くシュウカク出来たらカズマのパーティーに入るのは潔くアキラメル事にするヨォ。」

 

「勝手に話を進めて勝負をしようとしないで下さい。私はあなたと違ってとても急がしいので勝負はしません!」

 

 

キャベツとの戦いに備えてなのか、ブンブンと杖を素振りしながら此方を相手にしないめぐみんを見てギルドでの事といい本当にこの少女は魔法使いなのか疑い始めたマホロアだがとりあえずツッコまずに話し続ける。

 

 

「マァ、確かにめぐみんは急がしいヨネェ。ボクがホンキを出したらカズマはめぐみんのことなんて、モウいらなくなっちゃうかもしれないからネェ。」

 

「……ほぅ。」

 

内心の焦りをマホロアに悟らせないように必死なめぐみんは冷や汗をかきそうになる。

そんなめぐみんを知ってか、知らずかマホロアは迫るキャベツの群れに突撃を行う

 

「パーティーに入る前にボクを頑なにミトメヨウとしないめぐみんにホンキのチカラをミセテあげるヨォ。ついでにカズマにボクがキミよりもスゴイってコトもネェ!」

 

 

キャベツの群れの多くは前に出張っている冒険者達が引きつけてはくれているようだが数が数だけに撃ち漏らしやすり抜けていくキャベツがまだまだ沢山飛んでくる。

 

アクアも言っていたが、タダではやられようとしない生命力溢れるキャベツの癖に生意気な野菜達は考えなしに突っ込んできたように見えるマホロアに狙いを定めてようで5体程が体当たりをしようとしているらしい。それに不敵な笑みを浮かべながらマホロアは一旦減速しつつ魔力を込めて充分に引きつける。

 

キャベツ達は下手なモンスターよりも知恵が回るようでマホロアの攻撃を見越して、マホロアから見て一列に並んで1度目の攻撃を先頭の仲間が命と引き換えに受けた後に残った4匹が無防備なマホロアをタコ殴りにする算段らしい。

 

 

知恵はマワルようだけど、お見通しダヨォ。

 

 

レボリューションソウル!

 

 

マホロアの手から撃ちだされた2つの魔力球がお互いにつかず離れずクルクルと回りながら飛んでいき、先頭にいたキャベツに見事命中して役目を果たした物言わぬキャベツとなる。

残った4匹は敵を撃つべくそれぞれが左右に飛び出してマホロアを包囲しようとするが、

 

 

(!!?)

 

身体が硬直して動くことができなかった。痺れるような身体の硬直に無防備なキャベツ達は驚く間も無く続けて放たれたマホロアの魔力球に次々と撃ち落とされていった。

 

あっという間に5匹を撃ち落とされて、周りで冒険者に一撃離脱の体当たりを仕掛けていたキャベツ達もマホロアを優先ターゲットに変更して今度は最初から包囲して何処へもかわされることが出来ないように一斉に体当たりを仕掛けていく。

 

「ワワッ!」

 

周りをキャベツに囲まれて、目を丸くして驚くマホロアに打ち倒された仲間の仇とばかりに容赦の無い必中の体当たりをするキャベツ達。

 

ククッ、程々にチエは回るようだけど所詮はキャベツ。ソレジャア、ボクに叶うわけないヨォ。

 

先程のマホロアの油断を誘った行動にまんまと引っかかってくれたキャベツに向けて一瞬笑みを浮かべるのを見た包囲していた一部のキャベツは突撃を敢行していた仲間に制止を呼びかけることはできなかった。

 

 

クアッドキルニードル!

 

 

急ブレーキを掛けていた彼以外のことこどくが、マホロアまであと少しのところを地面から突き刺すべくして生えてきた攻撃に串刺しにされてしまう。

 

しかし彼以外にも幸運にも生き残った仲間は、みんなモンスターの蔓延る山や平原を幾つも乗り越え、時には撃退してきた歴戦の猛者だ。

 

しかも、また仲間のキャベツを倒したあの憎きマホロアまで突撃を敢行した分だけ直ぐそこまで近づいているのだ。

 

 

 

生き残りの4匹程のキャベツ達にわざわざ鳴き声で呼びかける必要はない。

 

予定通りではないが、直ぐにキャベツ達は飛翔して急上昇からの急降下の体当たりを示し合わせたかのように仕掛けていく。

 

串刺しにされた仲間達の中心にいた憎きマホロアは急降下するキャベツを見て魔法が間に合わないと考えたのかすかさず腕を交差してガードをしようとする。

 

 

 

前衛職でもない限り防御力に特化しているわけではないこの世界の魔法使いは基本的に相手からの攻撃に弱い。

 

特に今のマホロアのようにプリーストに防御魔法を付与されておらず、前衛のクルセイダーやソードマスターに守られてすらいない魔法使いはいかなキャベツと言えど運が悪ければ骨折してしまう。

 

だがそれは運が良ければの話。

今のマホロアは、周りに助けてくれるクルセイダーもソードマスターもいない。小回りもきいて素早いキャベツにここまで近づかれて一度受けたら後は間髪入れずにの連続攻撃。このままでは袋叩きにされてしまう。

 

 

 

しかし、そのチームワークを活かした攻撃が当たることはなかった。

 

 

「まだ攻撃はオワッテないヨォ!」

 

交差した腕の隙間から覗き見るマホロアは既に物言わぬ急降下していたキャベツ達。

 

マホロアは一度目のキルニードルから更に枝分かれするようにニードルを伸ばして隙をついたと思っていたキャベツ達の更に隙をついて他のキャベツ達同様に串刺しにしていたのだ。

 

マホロアの周りは黒に近い濃い紫色の魔力で出来た剣山と化しており剣山の先の方には緑色のキャベツが刺さっているのを見ると、クリスマスツリーの色違いのように見える。

 

 

アクセルの街に襲来したキャベツ達との戦いはまだまだ続いているがこの中ではマホロアは異色の経歴の新参者ではあるがこの街に妙に多い古参冒険者達にも引けを取らない強者の1人という風に見られる。

 

 

 

(………)

 

 

めぐみんはキャベツ達を鮮やかに蹂躙していくそんなマホロアの様子を見て冷や汗を流しながらも慎重に爆裂魔法を放つ好機を見定めていようと心の中では考えていたが

 

 

「流石に啖呵を切るだけのことはあるようですね。しかしあの程度では私の爆裂魔法には遠く及びません。えぇどんなにカッコよくても私の爆裂魔法程ではありません!」

 

 

 

そんな感じでついついマホロアが気になってしまうめぐみんであった。

 

 

 

 

時と場所は戻ってマホロアは戦闘には他の冒険者達よりも先頭近くには立っていたものの、孤立しないように付かず離れずの距離を意識して近づく無数のキャベツ達を蹴散らしながらその合間で回収も行ってはいたが打ち取ったキャベツを回収できる籠の限界があるので撤収しようとしていた。

 

 

「コレは流石に数がオオイヨォ。」

 

 

一体一体のキャベツならばどうってことないのだが、個体の弱さを充分に補う数の多さにマホロアは一度退却する事に決めたがふと目に入ったのが戦闘前に冒険者達の中に消えたダクネスがキャベツに群がられてタコ殴りにされて嬉しそうに悶えているところであった。

 

状況的にどうやら後ろの冒険者を庇っているようだが、そのついでにキャベツの攻撃を受けて顔を赤くして嬉しそうだ。もっと、もっとだ!とここまで嬉しそうな声が聞こえてきそうな様子。

 

キャベツの収穫ではあるが命懸けの戦いに公私混同挟むダクネスの様子に、ここまでくると病気か何かを疑うようなダクネスの性癖にそのまま無視してキャベツを正門まで持って行こうとしたマホロアだったが、ここで妙案が閃く。

 

 

 

ココでダクネスを無視してもイイけど、ボクがダクネスを助ければカズマはあんまりカツヤクできなかったダクネスをパーティーに入れない口実が出来てカツヤクしたボクを喜んで迎えてくれるはずダヨォ。

 

 

「ダクネス!イマ助けてあげるヨォ!」

 

 

少々危険ではあるが、援護くらいは出来る。

 

籠を近くに一旦置いてマホロアはダクネスの後ろに近づいて魔力球をキャベツに向かって連続発射する。

 

 

「あ、あぶな〜い!」

 

なんともウソくさい棒読みのセリフを言ったダクネスは極度の被虐趣味か天性のクルセイダーの能力を無駄遣いした故かダクネスのデコイはキャベツに放たれたマホロアの魔力球を残らず自身の方へと誘導させた。

 

 

「な、ナニヤッテンノォ!?」

 

「…くぅ!援護は感謝するがマホロア。もっとやっ……今とても良いところなのだ邪魔しないでくれぇ!」

 

 

「ジャマしたのはダクネスの方でしょう!ナンデボクの魔法まで吸収しちゃうんダヨォ!!」

 

 

「それは流れ弾が他の冒険者に当たっては危ないから防御力の高い私が代わりに受けたのだ。それよりも怪我をした他の冒険者をたすけてやってくれ。」

 

 

「イヤ流れ弾って…キミより前にダレもい」

 

 

「クルセイダーは背に誰かを庇っている時は引くわけにはいかないんだぁ!」

 

 

 

 

 

頭が痛くなりそうなダクネスの奇行と言葉にマホロアは言われたように一旦怪我した冒険者を下がらせようとしたが、既にダクネスの邪魔にならないようになのか後方へと下がっていた。というか、他の冒険者達もみんな必死に走って後方へと全力疾走をしていた。

 

 

嫌な予感がしてふと上を見ると、大きな魔法陣と肌を泡立出せるような魔力が唸って今にも爆発しそうな光景であった。

アァ、だからミンナあんなに必死に走ってタンダネェ。魔法陣の向きからして照準は自分ではないが確実にそれに巻き込まれるほど近い位置では慌てるなという方が無理であろう。

 

「ワァァァァァァ!?ダクネス!ダクネス!!」

 

思わず叫びながらマホロアはリフバリアによる防御よりも全力での退避を優先した。

 

異空間バニッシュを発動しようとするも、それよりも早く空の複雑で巨大な魔法陣が発動した。

 

「…………!!」

 

 

 

襲いくる爆風に吹き飛ばされないように目を瞑って体を固くしているが思ったよりもあんまり痛く無い。

 

なんというか守られている様な感じなのだ。

 

ハッとして目を開けると何も見えなかった。体を何かに掴まれて身動きも取れないが、だからこそ自分をあの爆発から誰かが庇ってくれたのだと知った。その誰かとは無論考えるまでも無いがあの状況で近くにいたのはダクネスだけだ。

 

 

「…ダ、ダクネス!」

 

ダクネスの腕の拘束から抜け出して、端正な彼女の顔を見るが眠っているようにピクリとも動いていない。一見大丈夫そうだがあれだけの爆発では流石のクルセイダーといえども無傷のはずがない。

 

前衛職でもなり手が少なく、トップクラスの防御力を持つクルセイダーだから魔法使いのマホロアを庇ったのだろうか?

そしてあの切迫詰まった状況で異空間へと自分1人だけ逃れようとした事をダクネスは知らないだろうから無理はないが、ダクネスはまず自分よりもマホロアを助けることに優先してくるとはマホロアにはとても理解できなかったし、信じられなかった。

 

これではついさっきまでは被虐趣味の頭のおかしい女騎士と馬鹿にしていたが、あの状況で自分の身を挺して守るとは思いもしなかったマホロアはそんなダクネスを一瞬だけ震えた様な手を伸ばすも引っ込めて

 

 

 

 

 

 

…マッタク、ジブン以外のダレカを庇ってケガをするなんてとんだおバカさんダネェ。

 

命よりもダイジなものなんてこのセカイにもボクが旅した宇宙にもあるはずないんだから。

 

ボクを助けるよりもスキルを使って防御力を高めたり、ニゲレバよかったのに

 

……………デモマァ、ボクを助けてくれたコトには感謝するヨォ。

 

それにしても、マッタク。このボクにあんなアブナイを事を起こした犯人にはジブンが何をやったのかコウカイサセナキャネェ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ついでにキミの仇もとってアゲ

 

 

 

「マホロア大丈夫だったか?」

 

「ワワッ!?」

 

マホロアは何事もなかったかのようにケロッとした様な感じで起き上がっていたダクネスに気絶しているものと思っていたのでギョッとしてしまう

 

 

「ダ、ダクネス。大丈夫なのカィ?」

 

「…マホロア?…そんなにジッと見つめてどうしたのだ?もしかして私にさっきの攻撃を当ててくれるのか?」

 

 

とちょっぴり期待していたらしいダクネスはこっちの声が聞こえていなかったらしくマホロアは一周回って呆れた。

 

 

「とりあえず守ってくれてアリガトネ。…それにしても直撃しなかったトハイエ無傷とはスゴイネェダクネスは。このホシのクルセイダーってヒトはミンナカタインダネェ。」

 

「いや私は不器用すぎて攻撃が当たらないからな、だから防御のスキルしか取ってないお陰でこの街で一番硬い自信がある。」

 

「ナ、ナルホドそれはカタイ訳ダネェ。キャベツはさっきのバクハツで散り散りになっちゃったし、ココにいたらまたバクハツするかもしれないからボクはもう先に戻ってるネェ。」

 

ギルドでのアクアやめぐみんとの一悶着にキャベツ襲来と船から出て以降マホロアは一日中ずっと振り回されていたからか、それとも無事とはいえダクネスに危機を助けられてホッとしたからか一気にどっと疲れが押し寄せてきていた。

 

それに心の内で陥れようとした相手から心配されるのもするのもなんだかモヤモヤとして早く離れてしまいたかったマホロアは、もう十分に活躍できたから良しとしようと考えてキャベツの収穫を切り上げて早くギルドへと戻ろうとした。

 

 

「そうかなら一応、怪我をしてないか見てもらった方がいいかもしれんな。……いや待ってくれ、マホロア。」

 

 

そのままモヤモヤしながらも離れようとしたマホロアに、ダクネスが待ったを掛けてきたマホロアはそのまま離れようと思っていたが一応助けられた手前あまり無下にも出来なかったマホロアはダクネスの方へと振り返る。

 

「ンン?ナンダイ?ダクネスも一緒に戻るのかい?」

 

「…あぁ。戻りながらでいい少し聞きたいことがあるのだ。」

 

 

今日初めてマホロアはダクネスに出会った訳だが、今の何処か真剣そうな顔の中に少しばかりの此方を探るような油断ならない視線に唯の被虐趣味のきしと決めつけていたがどうやらダクネスへの評価を変えなければならないようだ。

 

此方も疲れている所にここにきて、まさかの相手との腹の探り合いとは妙に疲れる一日だと思いながらも顔は平静を装う。

 

 

「聞きたいコト?」

 

「アルダープとは一体どういう関係なんだ?宇宙船の事については知っているが気をつけた方がいいぞ。あの男は私にとっては悪くない男だが他の者からはお世辞にも良いとは言えない男なのだ。」

 

「フゥーン、そうなんだネェ。関係って言っても、周りから聞いている通りアルダープはボクの船を直してクレル。ボクはアルダープにそのお礼をするってだけだからボクにとってアルダープは親切にしてくれた良きトモダチってところダカラなんの心配も必要ないヨォ。」

 

「…そうか、だったらなおのこと気をつけた方がいい。アルダープは根っからの悪徳領主と言われていて過去に何度も王都からの調査団が証拠を見つけるために派遣されたが、依然として一度も見つかってないのだ。関わったものは皆語ることが出来ないほどに不幸な目にあっている。」

 

「……」

 

「初耳だったみたいだな。…だからもう一つ聞かせてくれ、アルダープについて何か知らないか?」

 

 

 

やはりあの無礼な男は評判が悪いようだ。

だが、それにしても妙だ。何度も調査団が派遣されて疑われてるのに証拠の一つも出ないなんておかしすぎる。あんないかにも頭が悪そうなオークの親戚みたいな男がここまで疑われるというヘマを犯しているのに?

 

まぁ、邪魔にならない限りはボクにとって関係ない話だ。

誰が不幸になろうと、誰が不幸であったとしてもネェ。

 

そんな有象無象のことよりも君について気になってきたヨォ。何故だかアルダープよりもアルダープのやっていることに興味津々で詳しく知りたいようダネェ。どうして虐げられる事しか出来ない領民のフリをしているのカナァ?話をしていた君はそんな弱い領民にはとても見えなかったヨォ、ダクネス。

 

 

 

「残念だけどそういったショウコなんてボクは知らないヨォ。デモ教えてくれてありがとうネェ、気をつけることにするよダクネス。」

 

「…そうか分かった。」

 

 

そうして何か大切な事を忘れているマホロアとそんなフワフワと宙に浮いているマホロアを思い詰めた様な顔をしながら見つめていたダクネスはキャベツの収穫いや襲穫(しゅうかく)を終えた2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっはっはっは!!あそこまで啖呵を切っておきながら口ほどにもありませんでしたねぇ!この私の勝利ですよ、マホロア!!」

 

「ウグゥ、あのバクハツさえなければテンサイのボクなら余裕で勝てたのニィ。バクハツさえなければこの中でイチバン収穫できてたのニィ」

 

 

時は進んで夜のギルドでマホロアは、カズマ達と合流して結成したパーティー初めての夕食を食べていた。

 

冒頭でめぐみんとキャベツの収穫対決をしていた事を思い出したマホロアは急いで自分の籠を取りに戻っていくも爆発の影響なのか籠は壊れており周りを見渡してもキャベツが一個しか残されていなかった。

そんなこんなで事情を話してどうにか対決自体を有耶無耶にしようと頑張ってはいたが自分で言い出してさらにめぐみんを煽った手前無かったことには出来ず、めぐみんの知能の高さによる口八丁で勝負はマホロアの負けとなった。

その後騒ぎを聞いたカズマがやってきてめぐみんを説得してマホロアをパーティーに入れる代わりに負けた代償としてめぐみんはマホロアに夕食を奢らせた。

 

 

 

「天才?それは勝者であるこの紅魔族最強のめぐみんにこそふさわしい称号なのですよマホ…数多の宇宙を巡りし者よ!」

 

「ナンで言い直したの!昼間のコトをまたからかっているんだね!」

 

「何を言うんですか、ちゃんと褒めているではありませんか。貴方の二つ名は宇宙からの来訪者だけでも紅魔族の琴線にビリビリきているといるんですよマホロア!」

 

「ボクは大勢のホカの冒険者の前で恥ずかしいコトをして過去のジブンを呪ってるヨォ」

 

 

昼間の事を思い出して顔が熱くなるような感覚に赤い顔をせめて見られまいと机に突っ伏すマホロアを見て次にカズマはジトーっとした目でめぐみんを見ながら話しかけた。

 

 

「なぁ、めぐみんさっきのマホロアが言ってたバクハ」

 

「カズマ。一度は解いたパンツの誤解を脅されたから仕方なくと言って騒いでもいいんですよ?」

 

「なぁ、落ち着けよ。俺が言いたかったのは成長期のめぐみんに、この爆発するほど美味いカエルの唐揚げを分けてやると言いたかったんだよ。だから間違っても騒がないで欲しいんだ。」

 

 

 

 

若干の震え声でカズマがめぐみんに唐揚げを自分の皿からめぐみんの皿にのせていく。

 

それを見ていたアクアがカズマにコッソリとバレないようにカズマの皿に載っていた唐揚げを一口でパクッと頂いて幸せそうにモグモグしていた。

 

めぐみんに唐揚げを渡し終えたカズマが自分の皿を見てアレッ?とした感じで不思議そうにしていたが結局気づくこともなくそのまま食事を再開しようとしたところで悶えていたマホロアが復活する

 

 

 

「ネェカズマ。ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「うん?どうしたマホロア。さっきも言ったが負けたからって奢らなくていいぞ。ここの食事代は割り勘にするから心配するな。」

 

「イヤそうじゃなくて、実はダクネスをこのパーティーに入れてくれないかなって思って。」

 

「えぇ、お前までなんでまたあの変態を?」

 

「モチロン助けられたオレイってだけじゃなくて、見たところこのパーティーにはゼンエイがいないから前でモンスターを足止めする人が欲しいなぁって思ったからなんダヨォ。攻撃はデキナイにしても防御力に関してイエバ、キャベツの時のクルセイダーのダクネスはスゴかったヨォ。」

 

 

 

色々とダクネスをパーティーに入れた時の利点を並べては見たが、それをゼロどころかマイナスにしかねないダクネスの性癖と攻撃が当たらないのに突撃する癖もあるためマホロアは説得は難しいと思っていた。

 

 

そんな意外なマホロアからのお願いに暫く難しい顔をしていたカズマだったが、元々貧弱な自分ではあんな怖い思いをしながら前衛なんて務まらないと思っていたからダクネスのような上級職のクルセイダーは貴重だ。特にカエルにさえ苦戦して結局ヌルヌルにされためぐみんとアクアの事を考えると前衛はどうしたって必要になる。

それにキワモノであるめぐみんとも楽しそうに話をしているダクネスを見て決心した。さっきまでアクアもダクネスに芸を披露していたところから、アクアとも仲は良い様子のようだし問題も無い……とは言えないがそれはおいおいなんとかしよう。

 

 

「しょうがねえなぁ。」

 

「アリガトウ、カズマ!」

 

「おーいめぐみんとダクネス!それから……てめぇ何勝手に人の唐揚げ食ってんだ!なんか少ないなと思ったらお前が食ってたのか!食った分だけでも代わりに寄越せ!」

 

 

ニッコリと要求が通って嬉しそうな様子のマホロアは、そのまま唐揚げを死守しようとする『ゴメンなさい!』と叫ぶアクアの必死の防戦も虚しく取り上げられるも何個かは残しているだけカズマは慈悲深いのだろうと思った。

 

 

 

ダクネスはカズマとアクアの様子を見てめぐみんと一緒にくだらないことではあるが仲良さげに戯れ合っているようで微笑ましいものを見る目で苦笑していた。

 

 

「まったく2人とも喧嘩をする割には、不思議と仲が良さそうに見えますねダクネス。」

 

「あぁ、私もそう思ってたところだ。」

 

 

 

ダクネスがジーッと見つめているのをめぐみんは、仲間になりたそうなその様子に不安になっているのかと思いカズマと出会う前の自分と重なる所に思うところもありダクネスへ声を掛ける。

 

 

 

「……心配しなくても私はダクネスもこれから過ごす同じ仲間として歓迎しますからね。たとえカズマやマホロアがどう言ってもこの天才たる我が説得して見せますよ!」

 

 

「…フフッ、ありがとうめぐみん。」

 

 

ギュッと手を握る小さくも温かいめぐみんの手に不思議と心が安らんでくる。こんなに小さな子に心配される事に少々恥ずかしくなってしまうが純粋に自分のことを心配して声をかけてくれるめぐみんの言葉をダクネスは好意的に受け止めていた。

 

 

「ソノ心配は必要ないヨォダクネス。」

 

めぐみんとダクネスの手にその横からからスルリと重ね合わせるようにマホロアの白い手が置かれてきた

 

 

「「マホロア?」」

 

「めぐみんが説得なんてするヒツヨウなんかないヨォ。このボクがチョーッとオネガイして説得したらカズマはココロヨク、ダクネスを仲間に入れてくれるってサ!ネッカズマ。」

 

「ん?あぁまあそう言う事だ、これからよろしくなダクネス。」

 

 

後ろでベソをかいているアクアが気になる所だがおおかたいつものようにアクアの自業自得だろう。そしてあっさりとカズマの許しが出て拍子抜けしていためぐみんとダクネスの2人であったが、マホロアの手をがっしりと掴むとお礼を言ってきた。

 

 

「先程めぐみんにも言ったが素性の知れない私の為に本当にありがとう!マホロア。お礼と言ってはなんだが、もしむしゃくしゃした時には私に魔力弾を撃ってイライラを発散させていいからな。」

 

「ククッ、どうだいめぐみん?キミにはカズマを説得できるだけの知能は無かったみたいだけど天才なボクはカズマを説得できたヨォ。クヤシイカィ?」

 

 

あからさまにハァハァと赤い顔のダクネスからのお礼を無視してマホロアは昼間の仕返しとばかりにめぐみんを煽る。

 

 

「……」

 

「隣で魔力弾を撃っていいと声を掛かけているにもかかわらず放置プレイとは…くぅぅ!!アクアにめぐみんやカズマといい私はなんて良い仲間に恵まれているのだ。」

 

 

 

さっきから思うがダクネスは本当は仲間じゃなくて虐めてくれる人を欲しているだけなのでは?さっきから被虐心を満たそうとしているだけじゃないか!しかもコトもあろうにまだ何もしてないボクをカズマのように悪魔と同じように扱うんじゃ無いとダクネスに心の中だけでマホロアはツッコむ。

 

 

「マホロア。」

 

「ウン?ナンダイめぐみん?自称紅魔族随一のテンサイが説得したこのボクに負け惜しみの言い訳でも言うつもりカィ?」

 

「この私にかかれば今のカズマに少しお願いすれば容易く仲間として認めさせられたでしょう。まぁ、ダクネスの事を仲間に入れてもらうようにカズマを説得してくれて私からもお礼を言いますよ。マホロア。」

 

 

マホロアは怒りに我を忘れて狂犬もとい凶猫の如く襲いかかってくるだろうめぐみんの予想に反したアッサリとお礼を言ってくる様は予想外の出来事であり気恥ずかしさから無意識にフードを深く被り直す。

 

 

「…マァ。……ベツにボクもダクネスには助けられたし、防御力ダッテ高いからパーティーの盾役にイイなぁとオモッタダケダカラネ。」

 

「フフフ。最初は紅魔族のセンスを理解できない失礼な宇宙人かと思いましたが、仲間思いで見た目通りのカワイイ反応もするではありませんか?」

 

「……マアネ。」

 

 

目深にフードを被っていき遂にはほとんど下を向いていくマホロアを見て私は全て分かっているんですよと微笑むめぐみんを見て状況を見守っていたカズマとダクネスはニヤニヤと揶揄っているような目で仲直りした2人を優しく見る。状況が分かっていないアクアは隙ありとばかりにカズマの唐揚げを一個口に放り込むと記念とばかりに花鳥風月を酒場の喧騒にも負けない大声で盛大に披露した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニヤァ

 

 

 

 

 

 

 





い、一万字になってしまった

挙げ句の果てに考えれば考えるほどに、投稿が遅れてしまう

誰か助けてぇ!!
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