毎日お仕事する環境の改善は、重要な課題ですよね?
ヤマトと月光号が寄港してから、はや2週間が経った……
彼女達も例に漏れず「行く宛てが無い」と溢し、上層部に掛け合って参入許可を取り付けた……といっても「タダ」ではない。
「……2人の実力と、運用実績のデータを提出……その後の彼女らは本部預かり、か……」
どう見ても、過剰戦力を抱えていると見られている……まぁ、当然と言えば当然なんだけど?
ぶっちゃけるなら、それだけ本部にも余裕が出来てきた……その裏返しだ。
……まぁ、余裕が出たぶん「足の引っ張り合いも再開した」って事なんだけどね……
タダでさえセレスティアル港を本拠地とする僕の部隊……表向きは地方守備隊であり、極秘裏に異世界KAN-SENを指揮下に収めているのだが、本来の目的は「異世界KAN-SENのデータを取る」為の部隊……つまりはモルモット部隊なのだ。
他の軍港より物資などが優遇されるのも、僕の指揮下で彼女等が自由にやれているのも、この場所のセイレーン襲撃率が作為的にコントロールされているのも……全て仕組まれているから。
(今は良いさ……でも、彼女等の能力を過信したり、有用だからと言って無下に扱うのは許せない……それは既存のKAN-SEN達も同じ。
僕はこの部隊の価値を上手く使って、彼女達の処遇を正さなくちゃいけないんだ……その為にも、まずは僕自身が彼女達を大事にしないとね……)
そう言って、僕は近況と直近のスケジュール……そして今後のスケジュールを見比べながら、采配を組み立てるに思考を巡らせる。
「……ふむ、最近はロイヤルメイドの隊が案件対応する事が増えてるな、休日なのに臨時で短期業務に出ているも多い……」
クイーン・エリザベス率いるロイヤル艦隊……その中で最も多様な案件処理に秀でているのが旗下の「ロイヤルメイド」隊だ。
隊長の「ベルファスト」をはじめとするメイド達と元メイド隊勤務だった「サウサンプトン」はウチの古参メンバーでもあるし、所属歴も長いから分からなくはない……だが、どうしても彼女らでないとダメな案件は後を断たないのだ。
(コレは由々しき事態だな……)
ロイヤルは最も早期からこの実験部隊の意義を理解して参加を表明してくれたし、優秀な彼女達の強力なバックアップがあって
「……何とか、負担を軽減させてはあげられないだろうか……」
『……なるほど、そういう事なのね?』
「……え……っ?」
いつの間にか、執務室のデスクを挟んで資料を読み漁っていたプトレマイオス……癖の強い茶色の長髪と大きな胸を揺らしながら、彼女は僕に“ある提案”を持ち掛けてきた。
『多分だけど、私達なら……その負担を何とか出来るかも知れない……でも、その為にはちょっとだけ許可を貰いたいのよ……良い?』
何だか怪しそうな笑みを浮かべる彼女だが、僕にとっては渡りに船(KAN-SEN)……子細を聞くべく、僕は彼女の言葉に耳を傾けるのだった。
それから約2ヶ月後……セレスティアルの全基地施設は順次、既存の様式から新式への模様替えや設備の入れ換えが行われ始めた。
その主導はなんと異世界KAN-SEN勢……首謀者は勿論、プトレマイオスことトレミーだ。
新式への入れ換えは、まず各陣営のKAN-SENや異世界KAN-SEN達が共に過ごす共用部分から……どちらにも使いやすい様に配慮された「ユニバーサルデザイン」というモノを採用しているらしく、利便性と使い勝手を両立しつつ、コストパフォーマンスにも優れたモノになっているとの事。
勿論、多くは人間である僕や各部署のヒヨコ達も利用するものなので、そちらへの配慮も為されている。
なかなかに大規模な改修だが、今までに大きな混乱や戦いも無く……ほぼ順調に設備の改修は進んでいる……明日には大半の作業が終了するので、これ迄の無配慮や不便さとはオサラバという訳だ。
「……ありがとうトレミー、僕だけじゃココまで思い切った事はやれなかったよ」
『指揮官くん、それは貴方がまだ十分な経験を積んでないからよ? 色んな事を経験して、肌で体験して、積み重ねて……その経験が後の糧になる。君は機転が効くし理解力や判断力もあるんだから、しっかり経験さえ積めば立派な指揮官になれるわ』
「……やっぱり僕は、運だけは良いんだよなぁ……」
『運だって、その人の持つ立派な才能よ? それだけ運を味方に付けられる指揮官なんて、理想に一番近い人材じゃない? 私はそういう事、無かったからね……』
何故か自虐的な言葉を紡ぎ始めたトレミー……癖のある茶髪の前髪を弄りながら、何処か遠くを見る様にして発した雰囲気は、消したい過去や、逃れられない罪の十字架を背負っている様に僕は思えた。差し出がましいかもしれないが、トレミーの抱えるその辛さをいつか、僕がどうにか出来るなら……彼女の横顔を見ていると、何となくそう思える。
『……ごめんなさい、しんみりさせちゃったわね?』
「いえ……でも、その……辛い時は、僕で良ければ付き合いますよ。一応成人はしてますし」
ベルファスト達メイド組から、トレミーは大の酒好きと聞いている……酒の力に頼るというのはあまり誉められる手段じゃないが、彼女の不安が紛れるのなら、一度くらいは付き合うのも言いと思った。
『……あら、それじゃあその時は“トッテオキ”でも用意しようかしら? 期待してるわよ?』
酒の話へとシフトした事で一瞬キョトンとするが、その後急にニヤケ顔へと変貌していくトレミー。期待の眼差しでそう言い残し、ハロを伴って通路を去っていった。
(……異世界KAN-SENも、やっぱり戦争のトラウマ。ないしは重い過去を背負っている……)
「……メンタルケアも、指揮官の仕事だよね。頑張りますかぁ……!」
トレミーを見送った後、僕は過去に刻んだ決意を思い出しながら執務室への通路を歩き始めた。
トレミーが施した策は主に2つ……「基地内施設共有部の規格統一」と「通信系設備の拡充」だった。
1つ目の「基地内施設共有部の規格統一」は、初期から抱えていた問題である“旧式ロイヤル設備の使い勝手の悪さ”から来る“他陣営の不慣れ”で頻発していた破損やトラブルを根本から解決する見事な一手だった。
元々このセレスティアル島基地は旧ロイヤル領であり、過去の大戦時に破棄され棄てられていたのを数年前に奪還したばかり……僕が基地司令兼指揮官として赴任し、異世界KAN-SENの発見や基地施設の復旧を優先していた為、その後の改善はどうしても後回しにせざるを得なかった……
この数年間、僕の指揮下にいる彼女達からはとても信頼されているのか……トラブルこそ起きても不満は口にしなかったが、ストレスは少なからず抱えている筈だし、設備自体も老朽化が著しい箇所は多かった。
……その解決策として“独自規格”と“現行の既存規格”の両方の長所を取り入れた「ユニバーサルデザイン」で基地内設備を統一したのである。
元々は異世界KAN-SEN……アークエンジェル達の“本体”である艦内に入り、その圧倒的な内部機構の使い勝手の良さに感動していた一部のKAN-SEN達からの強い要望であり、各陣営の代表が協議を繰り返し「誰でも迷わない使い勝手の良い見た目」をデザイン……
機構そのものは異世界技術を活用し、既存規格にも対応した新たな規格……協議の結果を繁栄させた利便性最優先の新デザインで外装を統一した設備。
その効果は覿面で、古臭くて分かり辛かった旧規格に難儀していた重桜(主に駆逐艦の子達)や、最新技術に慣れすぎてイライラの募っていたユニオン陣営からは諸手で歓迎。これまで規格らしい規格も無く、慣れるのにひと苦労していた北方連合や、セイレーン技術の流用で独自のモノが多かった鉄血からも“すぐに使い方が理解できた”と太鼓判を捺されている。
耐久性や整備性も大きく改善されており、直接整備に携わるヒヨコ達とロイヤルメイド隊からも“以前に比べて作業効率が劇的に改善した”、“修理の手間もほとんど掛からない”と有難がられている。
2つ目の「通信系設備の拡充」もロイヤルメイド隊の負担改善に大きく影響しており、古臭い設備のせいで書類をアナログやり取りするしかなかった今までの業務内容を全て“デジタル化”という方式に置き換えた事で、書類をやり取りする度にメイドの誰かを呼びつけ、小間使いにする事も無くなって全体的な作業効率と時間が大幅に改善したのだ。
現在は基地内全域を網羅する超高速ネットワークが確立され、大容量無線通信技術に対応した個人端末を全員に支給……業務用には役職毎に専用端末も用意され、配置替えによる引き継ぎも簡略化。
個人端末は福利厚生の一環として、既存の映像作品の視聴やゲーム(課金は個人の範疇)等も可能。更に一種の“見守り装置”としても効果があり、一部のKAN-SEN達の“交流”や“防犯装置”としても大いに役立っているとの事。
兎も角、この2つ施策はロイヤルメイド隊の業務内容を劇的に改善し……彼女達だけでなく、皆の“”自身の休息”や“個人的な時間”を確保できる様になった。
それは良かったのだが……
「……あの……コレは……どういう状況なのかな? ベル」
暖かい部屋でパンツのみ履かされた僕は、ベッドにうつ伏せにされて何故か水着姿のシリアスに乗っかられていた。
『はい……御主人様は、プトレマイオス様と共に私達メイド隊の業務内容の改善に多大な貢献をして頂いた、と伺っております。ですのでその御恩を少しでもお返しすべく、御主人様の為に、アロマオイルを用いたマッサージを……と』
『はぁ……はぁ……如何ですか御主人様? シリアスのマッサージ……はぁ……っ』
何故か吐息が色っぽいシリアス……ちょ、何……こ、この感触はぁぁぁぁぁぁ?!
(マッサージの方は実に気持ち良いです、アロマオイルのマッサージとか初めてだから良さ的な事は全く分かんないけど、力加減とか、圧してる場所とか、その辺りは申し分無いです……しかしッ?! その見事な“たわわ”の感触はさすがにヤバいです!! 貴女の吐息が色っぽいのもついでにヤバいです!!)
背中に“コレでもか?!”と押し付けられる柔らかな2つの感触、妙に色っぽいマッサージ担当者シリアスの吐息……そしてその光景を「嗚呼、良い仕事した!!」的な満面の笑みを力業で押さえ付け、クールビューティーのポーカーフェイスを取り繕ってるベルファストさん。
立ち位置的にお互い顔は見えないが、壁に掛けられた鏡で僕からベルファストの顔が確認できた。……あっ、今一瞬だけと顔が崩れたぞ。
……ある意味天国だけど、ある意味地獄じゃないコレ? もし、これを赤城とかローン達に見られたら……
その数分後……加賀を伴って赤城が部屋に乱入し、勘違いして大暴走。
マッサージしていたシリアスと壮絶なキャットファイトを繰り広げ、騒ぎを聞き付け駆け付けた三笠に揃って拳骨を貰うまでがセットになりました。
なお、個人端末が持つ防犯機能……
最も効果が高かったのは、アークロイヤルに対するモノだという事をここに明記しておく。
感想よろしくお願いします!
次回書いて欲しい話題は?
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現行所属のKAN-SEN達
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新規の異世界KAN-SEN
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セイレーンとの戦闘
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ストーリー的なヤツ