異世界KAN-SENの超絶戦力を知った各陣営の思惑とは……
数日前に上がってきた、セレスティアル指揮官からの報告書……その内容を知った各陣営は驚愕するしかなかった。
かねてから当該指揮官より打診されていた「異世界技術の導入計画」。その当初は異世界KAN-SENからの技術提供により、既存装備や現行戦力の更なる強化を目標としていた……
その頃は異世界KAN-SENも“アークエンジェル”と“ドミニオン”しか居らず、提供された情報や一部技術の解析にも多大な時間を要し、「現実的ではない」として有耶無耶になっていた……
だが、現行最大の異世界KAN-SEN……宇宙戦艦リーブラの発見と、それに呼応するように頻出し始めたセイレーンの威力偵察。そしてその度重なる迎撃に対し、幾度も多大な貢献をした“異世界KAN-SEN達”……
……加えて“リーブラ”の戦力調査で判明した驚異の能力と“ある傾向”に、各陣営の首脳陣は頭を悩ませた。
目下最大の悩み事は「当該指揮官以外の指示・命令において“人道的・常識的でない”と判断された場合、異世界KAN-SEN達は頑として受け入れない」事。
……つまり、言う事を聞かせられるのは本計画の立案者であり、異世界KAN-SENの発見者であるセレスティアル指揮官、つまり“彼”のみ……その他であれば、如何なる上位務官であろうと「意に沿わない」指示・命令は容赦なく突っぱねてくるのである。
本来なら“命令無視”として懲罰、あるいは収監され軍規違反による処分が下されるのだが、相手は従来KAN-SENからも隔絶した超絶戦闘能力を持ち、異世界出身という事もあって指揮系統に組み込まれていない存在。当然ながら軍規で縛れる訳もなく……下手に手を出せば逆に此方が命ごと刈り取られる。そしてそもそも異世界KAN-SEN達は“善意の協力者”という立場なので、“此方の意に沿わない”……言う事を聞かない方が当たり前なのである。
「……今回の報告書で、ますます頭が痛くなったわ」
「左様。単艦で敵包囲網を突破……量産艦とはいえ100を超える大部隊を撃滅しての突破など、如何なるKAN-SENであろうと不可能な筈だぞ?」
この報告書、絶対に捏造だろ? 誰かそうだと言ってくれ……そんな言葉を顔に張り付けた南部海域方面軍司令は異世界KAN-SEN「ミネルバ」に関する報告書をテーブルに放りながら毒づく。
セレスティアル指揮官は新規KAN-SENの報告書を、必ず週末までには提出してくる……
セイレーンの大規模攻勢が極端に希薄である現在において、各基地からの報告書はだいたいが近隣陣営との演習や長距離偵察、あるいは散発的なセイレーン艦隊との偶発戦の報告書だらけだ。
もちろん報告書の提出は軍人としての責務であり、多少の不備や誤差、体裁など……取るに足らない事でいちいち目くじらを立てる程、首脳陣も暇ではない。しかし、現状送られてくる報告書は大半が日常茶飯事的なモノであるためか、評価といっても「彼の地の指揮官が寄越す報告書はユーモアセンスに溢れている」だの「彼処のはいつもクソ堅苦しい挨拶から始まる」等々……
そんな中、ロイヤル領セレスティアル島を預かる彼の報告書だけは「要点はしっかり纏められつつも省かれた情報はほぼ皆無、そして内容は尋常でないモノがほとんどを占める」という具合であり、いろんな意味で“異彩”を放っていた。
「……諸君らは、彼の提唱する“異世界技術の導入”をどう思うかね?」
それまで沈黙を貫いていたアズールレーンの総司令、エドワード・G・エーカーが口を開いた。その問いは、件の“セレスティアル指揮官の提案”の是非……もし実現すれば、セイレーンとの絶望的な戦力差はほぼ完全に解消され、基地などの設備にも十分すぎる恩恵をもたらす。最大の利点は既存戦力への転用……特に“飛行戦力の大規模拡充”が可能となる点だ。
現状、セイレーンと戦う上で最も重要視されるのは「補給線の確保」と「航空隊・砲撃隊による支援 」……
前者は戦場のみならず世の中の常であり、生きる上で欠かす事の出来ない最重要課題……そして2つ目の支援は、主戦域外からの手厚い支援という意味である。
「……我々の今後を鑑みるに、彼の提唱はまさに“蜘蛛の糸”だ。現状、我々の状況は厳しいという言葉では片付けられない……いずれは世論とセイレーンの板挟みに合う事は明白である……実現は厳しいが、千載一遇のこの機会を画餅に帰す訳には行かぬのだと私は考える。……諸君らはどうかね?」
エドワード総司令は参加者全員を見据え、内に秘めた思いを打ち明けた。セレスティアル指揮官の提唱する計画が滞りなく行けば、間違いなくセイレーンを打倒できる事は明白……彼奴らの底は未だに見えないものの、異世界KAN-SEN等の持つポテンシャルや、僅かとは言え齎された超技術の数々はこの世界で疲弊しつつある人類に大きな光明を齎すだろう。
「我々ロイヤルは推進を希望する……私個人だけでなく、我が麾下の艦隊には
ロイヤル陣営は先の……セレスティアル指揮官が異世界KAN-SENと初の邂逅を果たした戦線において、部下の大半を救われた一人であった。あの戦線で最も戦力供出をしていたのはロイヤルであり、セイレーンとの激しい攻防で大きく戦力を削がれた事は記憶に新しい……それ故に、その窮地をたった二艦で逆転してみせた彼女等の秘めたポテンシャルを重要視していたのだ。無論あれ以降も、不定期とはいえアズールレーン全体に供出される異世界KAN-SENの技術や情報を精査するため、その技術に最も早く触れる機会が多い事も理由の一つなのだが……
無論、各陣営には現状の疲弊故に苦言を呈する者も一定数居り、実現を問題視する意見も少なくない。しかしロイヤル艦隊司令には、“勝利を求める確固たる理由”があった……
「我々はセイレーンの驚異から人類を救う為に集ったのだ! それを成す為、我々はあらゆる手を尽くさねばならぬ……現状噴出する多少の責など、セイレーン打倒の暁には後の世が“避けては通れぬ道であった”と証するだろう。
我々に止まる事は許されないのだ……真の平和と安寧を取り戻す為に!!」
ロイヤル指令はかつてのセイレーンの大規模攻勢の折、己の左腕と姉弟……そして妻子を失っていた。
セイレーンを恨むには十分すぎる理由だが、彼の本音はセイレーン憎しなどではない。
二度と己と同じ境遇の者を出さない為に……人としてこれ以上、大切なものを失なわない為に、彼はその辣腕を振るっているのだった。
おそらく反対派であろう自陣営の何人かを睨み付けながら「これから救われる命と、己の欲を天秤に掛け、怠惰を貪る時はとうに過ぎている」と付け加え、立ち上がっていた席に座り直す。
その場は数分に及び沈黙を続ける……そして、一人が称賛の意を込めた拍手を始めた。
それは、この世界最大の工業大国であるユニオンの現大統領……会場内で唯一の女性であり、神算鬼謀と素早い決断力でこの地位を手にし、国内外を問わず広い分野に深いパイプと絶大な影響力を持つ、妙齢の女傑であった。
「……ロイヤル司令、
誰しもが平和を求めている……我々は平和を取り戻す為に戦うと決め、この場にいるのだ。
「原初の誓いを忘れてはならぬ」というロイヤル司令の言葉に、ユニオン大統領は深い賛辞を述べ、比較的若い世代の支援者や当時の惨状を知る軍上層部の英傑達も一人、また一人と次々に拍手を始め、反対派の一部は人影に隠れながら、人望溢れるロイヤル司令を睨むのであった。
この会議から数週間後……ユニオン大統領とロイヤル司令は揃って凶弾に倒れ、両者ともに意識不明の重体となった事が世界中に知れ渡る事となる。
巨大組織の光と影……どの世界にもあるものです。
いずれこの闇の部分は、セレスティアルの彼にも降り掛かるはず……
さて、次回は再びセレスティアルから。
既存と異世界、双方から“癖の強い”キャラが出て来ますのでお楽しみに♪
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|д゚)チラッ
次回の主な内容は?
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日常的なヤツ
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セイレーン関連
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誰かさんが原因のドタバタ回