アズールレーンの異端者(はぐれもの)たち   作:睦月透火

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第8話 セレスティアルの台所事情

 セレスティアル島は元々無人島であった……そこへ軍事施設や軍港、生活基盤等を増設していった結果が今の姿である。

 だが、この島には無人島時代からの動植物がまだ数多く残されているのだ……

 

――――――――――

 

「…………」

 

 鬱蒼と生い茂る雑木林の中で、1人息を潜める狩人……いや、彼女はロイヤルKAN-SENのハンター。

 彼女の目線の先には、丸々と肥え太った雄のイノシシ……彼女は愛用の猟銃を携え、イノシシ狩りを行っていたのである。

 

(……コレで3頭目)

 

 ガゥンッ!!

 

 独特な発射音と共に放たれた鉛弾がイノシシの頭を撃ち貫き、イノシシの身体がグラリと傾く。発射から僅かに差を付けてハンターの傍らに控えていた猟犬(シェパード)が飛び出し、イノシシの側に駆け寄って獲物を確認する……

 

「さすがはハンターさんです……この短時間で3頭を仕留めるなんて」

 

「……このくらいは、当然……」

 

 少し離れた場所からハンターに声を掛け、寄ってきたのは同じくロイヤルKAN-SEN、メイド隊のサフォークだ。

 サフォークの褒め言葉に、ハンターは素っ気ない返事を返す……が、同時に帽子を被り直していた為、照れ隠しである事はバレバレだ。

 

「向こうの岩場では、ジャベリン達が釣りをしているそうです。大物が釣れてると良いですね〜」

 

「ん。大物に期待……」

 

 

 セレスティアル島の軍港は島の西部から南部にかけて存在し、その両端は火山性の岩礁が広がっている。もちろんこの岩礁は活火山時代の名残であり、海洋生物達の理想郷を海中に作り出している……

 

 そしてその岩礁付近では、ジャベリン達仲良し駆逐艦4人組が釣りに興じていた……

 

「ジャベリン、ベルファストさんに頼まれた量はコレで足りますか?」

 

 埠頭の端から繋がる岩礁付近で、釣り竿を振るジャベリン……彼女は足場のしっかりしたコンクリートの防波堤の上から海へ向かって釣り糸を垂らし、獲物が掛かるのを待っていた。

 そこへ、分担して確保していた分を持ってきたZ23が合流……分量が足りているかを訪ねたのである。

 

「えっと……多分あと大きめのが3匹くらいあれば大丈夫かな?」

 

 Z23の覗き込むクーラーボックスの中には、大小様々な魚たちが結構な量になっている……ロイヤルメイド隊のベルファストからの依頼。という事は、この魚たちは今夜の食材となるのだろう……

 

「そうですか。なら、もうひと踏ん張りですね……」

 

 Z23はそう言って、足元に置いていた釣り竿を再び握り直した……と、その直後。

 

「ジャベリン。コレは食べれる、ですか?」

 

 岩礁を移動してきた綾波が、釣り上げた獲物をジャベリンの視界に入れる。それは赤くてヌルヌルしていて、ウネウネと未だに動き続ける……紛う事なき()()であった。

 

「ッ?! 綾波ちゃ……」

 

 視界にタコが入った瞬間、ジャベリンは嫌な予感に綾波の名前を呼ぶがもう遅い……

 

 ぶしゃっ!!

 

 綾波が捕えていたタコは、視界に入った敵……ジャベリンへと自衛手段をお見舞いする。タコは身の危険を察知すると黒い液体……蛸墨を敵に向かって噴射し、怯んだ隙に逃げるという習性がある。綾波の持っていた網に入っていたタコは、視界に入った敵……ジャベリンへと蛸墨を噴射。顔面に直撃したジャベリンは「ふぎゃっ?!」と顔を顰める。

 

「あ、ジャベリン……ゴメン、で「へぶっ?!」す……!」

 

 ぶしゃっ!!

 

 事態に気付いた綾波は、すぐにタコの入った網をジャベリンから遠ざけて謝る……が、その網を動かした方向が悪く、なんとZ23の顔面へと超接近……

 

「……綾波。ちょっとソコに座んなさい……」

 

「ニーミ、どうしたので……ヒッ?!」

 

 唐突に呼ばれた綾波がZ23の方を向くと、そこにはジャベリンと同じく顔面に蛸墨を喰らい、更に頭にタコが絡み付いたまま鬼の形相をしているZ23……

 

 ……つまり、激おこモードであった。

 

「……ジャベリン。ラフィーも釣れた……」

 

 それから数秒後というタイミングで、艤装を展開したラフィーが戻って来た。

 

 何故か巨大なミナミクロマグロを担ぎ上げて……

 

「目がぁぁぁ……目がぁぁぁ〜〜〜」(ジャベリン)

 

「ガミガミガミガミガミガミガミガミ」(Z23)

 

「ゴメンナサイごめんなさいゴメンナサイ」(綾波)

 

「……。……何、この状況……?」(ラフィー)

 

 しかし、突然この状況が視界に入れば……誰だって困惑するよね。

 

――――――――――

 

 所変わって、ココはセレスティアル基地内にある中庭……にある「ビニールハウス」。何故中庭にそんな物が建てられているのかというと……

 

「……お、もう花を付けてる。順調みたいだね」

 

「はい♪ 源泉から引いているパイプのお陰で、中の気温は常に亜熱帯の気候に保たれてますから……許可してくれた指揮官にも感謝です」

 

 セレスティアル島の中央には火山が存在している。その影響で基地の一角には温泉の源泉が湧き出る場所があり、基地へ引いて温泉施設に利用しているのだが、源泉の温度は平均で70℃近く……そして湯量も膨大であり、温泉施設のみの利用には些か勿体ない状態であった。

 

 しかし、異世界KAN-SENアークエンジェルが「基地内に畑を造りたい」と提案し、その一環で亜熱帯の植生環境を整え、バナナやパイナップルのように、今まで外部から購入していた果物などを自給できるようにしようとしているのである。

 

「……初めはマリューが馬鹿な事を言っているとしか思えなかったが……こうして実現には近付いている状態を見ると、よく考えついたものだ」

 

「あら、私はいつだって真面目よ? ナタルももう少し柔軟な発想を持てば、このくらいすぐに思い付くわよ」

 

 遠回しに褒めているドミニオンではなくあったが、当の発案者であるアークエンジェルは普段のお返しとばかりにマウントを取ろうとしている。だがしかし……

 

「ほぅ……いつも真面目なら、普段の書類整理くらいこなせるはずだが?」

 

「ゔっ?!」

 

 相手が悪すぎたようである……

 

「まぁまぁ……でもマリューさんのお陰で、食料品の支出も抑えられる様になるし、駆逐艦の娘達やスイーツ好きのグループも、ココの管理を手伝ってくれるって言ってるから、初収穫まで持っていければ安泰じゃないかな?」

 

「でしょでしょ? やっぱり私のお陰よね〜♪」

 

「……指揮官。マリューは褒め過ぎるとロクな事にならない、と忠告するわ」

 

「酷いわよナタルぅ!」

 

「あはは……相変わらず仲が良いね、2人共」

 

 戦場では見られない、彼女達の素の一面を見て……指揮官は己の決意を改めて深めるのだった。

 

――――――――――

 

 その日の夕食は海岸に併設されたバーベキュー設備を利用した立食パーティーとなり、各所から収穫されてきた材料をふんだんに使用した様々な料理が所狭しと並べられ、手の空いた者達が入れ代わり立ち代わりで料理を食べて行った。

 

 それからしばらくして片付けも終わり、ほとんどの人員が寝静まった頃……執務室で1人、指揮官は収支報告書に目を通していた。

 

(……アークエンジェルのお陰で、高価な輸入食材の一部は自給の目処が建った。他にも一部の食材は近海や島内で調達できると報告も上がってきたし、食費はもう少し抑えられそうだね)

 

 セレスティアルは孤島とはいえ、火山や近海の魚礁……森林地帯にも潤沢な資源が眠っていた。

 今回は食料事情だけだったが、火山があるので鉱物資源もあるだろうし、島内はまだまだ未開発だったり、先の事情で放棄された後まだ復旧されていない設備も数多く残っている……

 

 旧設備の復旧が終わり、新規開拓にも目処が建てば……恐らくは完全自給自足も夢ではないほど、この島は恵まれた環境である……

 

 今回得られた報告から、指揮官はそう確信していた。

 

(……最悪、全ての支援を断たれる前に、この島で自立できる様になる必要があるかもしれない……)

 

 指揮官が懸念しているのは、先の事件で負傷したロイヤル司令とユニオン大統領の件……

 

 アズールレーンの一部ではレッドアクシズ側の暗躍だと囁かれているが、当のレッドアクシズ側の中央に席を置くビスマルク達は関与していないし「そんな事をして、一体何の得がある?」と逆に聞かれる始末……

 

 レッドアクシズ側の中央にも人間は居るが、その大半は()()()()()()()で集まった者達なので、今更その程度の営利を求める輩は居ないし、仮に居たとしても、見つかれば速攻で粛清される……レッドアクシズの人間達はそういう集団だとグラーフ・ツェッペリンからも聞かされている。

 

 ……となると、やはり犯人はアズールレーン内部にいるのだろう。

 

 求心力も高く、何より若手から慕われているロイヤル司令や、一般の認知度や支持率の高いユニオン大統領。政敵という観点で相手を数えれば無いはずもなく、やりそうな人物も少なくはない。

 現にその一部には不穏な動きもある、とロイヤル司令の補佐官からも情報提供があったし、ユニオン大統領の補佐官からも「お気を付けください」という警告文が届いていた。

 

(もしかしたら……異世界KAN-SENを擁する我々を、個人的な管理下に置きたがる者が現れなくもない……か? ないとは思いたいが……)

 

 最悪の想定……多くの者達を抱える上の人間は、そういう事も考えて動かねばならない。

 

 少なくとも、可能性は「0」じゃないのだから……




セレスティアルを預かる指揮官は、ロイヤル総司令の期待の星であり、ユニオン大統領補佐官もそんな彼の幼馴染だったりします。
後半きな臭くなりましたが、セレスティアル島の現状と日常回でした。

ラフィーやジャベリン達は絡ませるといつもこんな感じになりますね……
なんか消化不良なので次回も日常回にします(強制)
特に鉄血とかアイリス、ヴィシアや北方陣営をまだ描いてないので。

ではでは、感想よろしく〜♪

次回のスポットは?

  • 北方連合
  • アイリス・ヴィシア
  • 重桜
  • 鉄血
  • 異世界KAN-SEN
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