孫悟空がいない世界線で地球に送られたサイヤ人です   作:山羊次郎

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第四話:亀仙人

 

「ふぁぁ……なんか、今まで一番よく眠れた気がする」

 

 早朝。

 俺はあまりの快眠にベッドから離れたくなくなっていた。

 この現象は現代人ならよくあると思う。誰か理解してくれる?

 まあ、かと言って寝たままなのもあれなので、起き上がって顔を洗う。

 

「さてと。そういやそろそろ、あの亀が出てくる頃か」

 

 亀、と言うのはもちろんウミガメだ。

 ただし野生の、ただのウミガメではない。

 なんと喋るのだ(ドラゴンボール世界で動物が喋るのはそこまで珍しくない)。

 俺は家を出て、小走りで周囲を捜索する。

 

「亀さん亀さんどっこかな~……おっ」

 

 やはりこんな何もない平野だと、海洋生物はかなり目立つ。

 やたらと疲れた様子の亀を発見したので、俺は急いで駆け寄る。

 

「おーい、大丈夫かお前?」

「……えっ? あ、あなたは? 私結構重いと思うのですが……い、いや、それよりも……すいません、塩水を一杯いただけないでしょう? できればワカメでも添えていただいて……」

 

 何回聞いても注文の多い亀だな。

 まあ連れて行かないと話が進まないので、俺は亀を抱えて家に戻る。

 亀は意外と重かったが、普通に持てた。さすがサイヤ人と褒めてやりたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その後。

 起きたブルマに事情を説明し、最初はごねた彼女にその方向にドラゴンボールがあるか確認してもらった。

 当然、海の方向には亀仙人がいて、そこにドラゴンボールがあるから反応は出た。

 と言う訳で、今現在俺たちは海に向かってる真っ最中である。

 

「うわー」

「へへへ、坊主。その亀を置いてとっとと失せな。命だけは見逃してやるぜ」

 

 俺たちの進行方向をふさぐ大岩のように大きな巨躯の獣人に、俺は首を傾げる。

 なんだこの典型的すぎる盗賊……こんなやつ……いたな。

 序盤の方の話は結構記憶に抜けがあるかもしれない。モブに関しては結構忘れてるわ。

 俺は亀を下ろすと、獣人に対し如意棒を構える。

 本来ならたぶん素手でも倒せるが、俺はぶっちゃけ知的生命体と戦闘をするのは初めてだ。

 なのでまずは全力を尽くす。戦い方とか手加減はそれから学ぶことにする。

 

 熊の獣人が動かない俺を見て、隙ありとばかりに右手に持つ剣を横薙ぎに振るう。

 迫りくる刃がスローモーションに見える。これが戦闘力の差なのか? 俺は跳躍し、刃の側面を足場にさらに飛翔。獣人の頭上に回る。

 即座に如意棒を丁度いい長さに調節し、渾身の力を込めて振り下ろす。

 獣人は俺が上を取っていたことにも気づいてなかったらしい。まともに俺の一撃を受け、白目をむいて気絶してしまった。

 ……結構本気で殴ったが、これでも死にはしないのか。

 

「ど、どう? やっつけた?」

「ん? おう。何とかなったぞ」

「よかったぁ……にしても、アンタってホント強いわね。もうアンタより強い人なんていないんじゃないの?」

「ンなことねえよ。少なくとも、前に会った爺さんは俺よりずっと強いぞ」

「えっ? それってあの、四星球と如意棒をくれたあの?」

「おう」

 

 強いはずだ。

 少なくとも、亀仙流の武術を学び、かめはめ波まで使え、悟空とタイマン張れる奴が弱いはずがない。

 推測だが戦闘力100前後はあるだろう。今の地球の中だと破格の数値である。

 まあすぐにインフレの波にのまれて置いてかれるんだろうけど。

 

 そうしてすぐに、俺たちは海へと辿り着いた。

 何気にこの世界の海を見るのは初めてだが、やっぱり滅茶苦茶綺麗だな。さすが二次元世界、三次元世界とはレベルが違う。

 亀も一年ぶりの海と言うことで号泣している。多分、俺も元の世界に帰れたら号泣すると思う。だからお願い、早く返して。

 と、亀が海に戻るのを見届けていると、お礼がしたいから待っていてほしいと言う。

 よし。とりあえずここで亀仙人とコンタクトが取れる。できればこの段階でかめはめ波を教えてほしい。

 筋斗雲? 多分俺は黒い奴じゃないと乗れないからいいや。

 

「あら、さっきの亀戻ってきたんじゃない?」

 

 亀が去って数分。

 意外と早めに戻ってきた亀と、その背に乗る老人の姿を視認し俺は僅かに口角を吊り上げる。

 

「ハロー」

「お待たせしました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言おう。

 筋斗雲には乗れなかった。

 分かってはいたが、割とショックだった。

 いや、言うほどショックではない。ただ、ブルマがその時「アンタ心が清らかじゃないんだって! ぷぷぷっ!」とか言ったのがクソ腹立った。

 まあ、そのあとあいつが乗って落っこちたの見て腹抱えて笑ってやった。ザマァ見ろ。

 ……こんなんだから筋斗雲乗れないんだなって。

 しかし、乗れないのでは礼にはならない。亀仙人が頭を悩ませたので、俺はドラゴンボールくれと率直に言った。

 本当はかめはめ波教えてほしかったが、そのイベントは後でやるし別にいいと思い直した。

 亀仙人も特にドラゴンボールに執着はないのであっさりとくれた。

 

「やったぁ! さ、もうこんなところには用はないわ! 次のドラゴンボール探しに行くわよ!」

「薄情だなぁ……あっ、そうだ。亀仙人の爺さん」

「ん?」

 

 そういえば、と俺は思い出す。

 

「この如意棒知ってる?」

「む、それは……少年よ、これをどこで手にしたのじゃ?」

「爺さんに貰った。パオズ山に住んでるな。亀仙人って人に会ったらよろしく伝えてくれって頼まれてたんだよ」

「ほう。あ奴がのぅ」

 

 亀仙人は髭を擦り、空を見上げて物思いに耽っている。

 もういいかな。俺はブルマについていこうとする――

 

「待ちんしゃい」

「ぐえ」

 

 ――が、亀仙人に見事に止められた。

 

「な、何だよ……?」

「ふむ。よく鍛えられておるの。お主、武術を習ったことはあるのか?」

「いや、ないけど」

 

 ふむ、と亀仙人は深く考え込む。

 な、何なんだいきなり……この人こんな感じだっけ? もっとスケベなのをイメージしてただけに、雰囲気がシリアスすぎて引いてるんだが。

 

「どうじゃ、お主? わしの弟子にならんか?」

「えっ⁉」

 

 今日一番の驚きの声が上がった。

 亀仙人はあまり弟子を取る人間ではない。

 彼は長年武術家として生きているが、その中で弟子を取ったのはたったの四人だけだ。

 しかもそのうちの一人であるクリリンは、悟空と競い合う相手が必要と言うだけで弟子入りをパスできただけと言う。

 そんな亀仙人が、弟子に勧誘……? い、一体何が狙いなんだ……⁉

 

「お、俺を連れてもブルマはついてきませんよ……?」

「えッ⁉ ……おっほん。別にピチピチギャルがついてこなくても構わんよ」

 

 平静を装ってはいるが、あからさまに動揺していた。ちょっと期待してたのかコイツ。

 亀仙人と言えば、やっぱりこのテンションだよなと不思議な感覚に陥る。

 

「え、えっと……俺、今ドラゴンボール集めで忙しいんで……」

「ならあその後でも構わん。どうじゃ、一考する価値はあると保証するぞ?」

「……か、考えときます」

 

 もはや怖い。

 亀仙人が何を考えているのかわからな過ぎて怖い。

 俺は急いでブルマのバイクの後部座席に跨る。

 

「あ、待て待て。最後にお主の名は?」

「……シータ」

 

 一応名乗り、俺は急いでバイクを出すようブルマに頼む。

 俺の圧に圧されたのか、ブルマはすぐにバイクを出してくれた。

 

「ねえ、本当に良かったの? あのお爺さん――」

「いい。と言うか、あの人何考えてんのかわかんなくて怖い」

「ふぅ~ん。アンタが怖いなんて言うなんてよっぽどね。まあいいわ。多分もう会うことはないだろうし」

 

 ブルマは意外と俺の気持ちを尊重してくれたらしく、それ以上何も聞くことはしなかった。

 亀仙人……こんななぞの多い雰囲気出す人物だったか? ちょっと嫌な予感がするな。

 俺は記憶の中の原作を読み漁りながら、この先の展開に備えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、あれがサイヤ人。地球を侵略しに来た宇宙人のう」

 

 亀仙人は一人、海の向こうを眺め呟いた。

 

「とてもそうは見えんかったぞ? 尻尾以外は人間そのもの、それに特別強い悪意は感じられんかったわい」

「ああ。みてーだな」

 

 言葉を返したのは、赤い服を着た青年だ。

 黒いインナーに青い帯、そして左右非対称の特徴的なハネのある髪型をしている。

 カメハウスの影に隠れ顔は見えないが、少しだけ嬉しそうに口元がニヤついている。

 

「ふむ。では、先ほどの忠告はいったい何だったんじゃ?」

「……」

 

 なぜか言葉に詰まる青年に、亀仙人は首を傾げる。

 そもそも、亀仙人はあらかじめこの青年に、尻尾の生えた少年は危険である、と言う旨の忠告を受けていたのだ。

 だからこそ、あのシータと言う少年には気を付けていた。

 筋斗雲に乗れなかった時はもしやと思ったが、孫悟飯に預けた如意棒を携えた姿を見て、疑念が生まれた。

 如意棒を授けたということは、孫悟飯はシータに何かを見たということだろう。

 

「いやあ、正直分かんねえ」

「……?」

「初めて見る奴だからな。オラにも、正直どっちに転ぶか見当もつかねえんだ」

「では、お主はわしに何を望むんじゃ?」

「教えてやってほしいんだ。亀仙流を」

 

 青年の言葉に、亀仙人は目を細める。

 教えてほしいということは、青年は亀仙流を知っているということ。

 しかし、亀仙人には青年の正体に心当たりがない。

 だが無論、別に教えることを拒否したいわけでもない。

 むしろ危険を孕んだ存在なら、自分が正しい道を教え導かねばならないとも思っている。だからこそ、シータに弟子入りを持ちかけたのだ。

 

「あんまりこの世界に介入するわけにゃいかないんだ。オラの立場上な」

「立場のう……」

「頼んだぜ、じっちゃん。世界の……未来のためによ」

「少々荷が重い気がするがのう……」

「これ、報酬の先払い。エッチな姉ちゃんの写真集」

「わしに任せろッッッ‼‼‼」

 

 やたらとやる気を出した亀仙人に、青年が苦笑する。

 すると、青年の体が光り輝きだした。

 

「どうやら帰りの時みてぇだな。じゃあな、亀仙人のじっちゃん」

「ふむ。最後に聞いておくが、お主、名は何という?」

 

 エロ本から目を上げた亀仙人の問い、青年は笑って答えた。

 

 

「■■■。それと―――――」

 

 




最後の男、いったい何者なんだ……⁉()
これひょっとしてタグ詐欺なんじゃ……
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