チートギアス ~反則のルルーシュ~   作:ベルゼバビデブ

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第九話です。


第九話 カレンとリフレイン

「ルルーシュ。みんなを助けてくれて、ありがとう」

 スザクの声にあの日のような硬さはない。俺がゼロであると知りながら、人質を救ったと言う一点にのみ目を向けた心からの感謝の言葉なのだろう。

「何言ってるんだスザク。お前が地下トンネルで相手の注意を引いてなかったらあんなにうまくいってないさ」

 勿論嘘だ。だが、スザクに礼を言われっぱなしと言うのはなんとなく気持ちが悪い。

「これからも俺とお前、協力すれば出来ないことなんて無いさ。」

「そうだね。」

 今はまだ、黒の騎士団とブリタニア軍、敵同士だが、戦場以外にその話は持ち込まない。それにいずれスザクは黒の騎士団に引き入れる。それまではこの関係を維持したい。

「それにしてもルルーシュ、犯罪者を取り締まりたいならなんで警察に入らなかったんだい?」

「…お前なぁ…本国では死んだことになってる俺が警察になんてなれるわけないだろ。」

 あぁ、そうか。と掌に拳をポンと乗せる様を見るに、深く考えて言った訳ではないのだろう。悪気はないのだ、そう…あれだ。運動能力に力を注ぎすぎて考える力が若干不足してる…それだけの事だ。そして俺はその逆なのだからあまり人のことは言えない。

「でもルルーシュ。僕は中から変えていくよ。この国を」

 強い意志の篭った目に俺は向き合う。今はその時ではない、まだスザクを説得できるだけの手札が揃っていない。だが、この場でこれだけは言っておきたかった。

「…気が変わったら俺を頼れ。俺には中から変える方法は思い付かないが、外から変えるなら思いつくだろうからな。」

 スザクは何も答えなかった。シャーリーが部屋に入ってくるとスザクは用事があるからとドアへ向かっていく。

「じゃあ、僕は軍に行かなくちゃいけないから。」

 行かなくちゃいけない…か、スザクの戻る場所は何処なのだろうか。俺やナナリーのところだろうか。まだ聞く決心はつかなかった。

「あのさ、ルル。今度時間が合ったらで良いんだけど…」

 シャーリーの誘いを断らなかった。断る理由がなかったからだ。

 

 待ち合わせ時間5分前、カレンは既に待っているようだ。

「済まない。待たせたようだな。」

「…まだ待ち合わせ前よ。気にしない。」

 内心俺は焦っていた。リフレインの売買は徹底的に潰した。それなのに、何故…

「呼び出して済まなかったな。これが最近情報提供のあったリフレインの取引現場だ。」

「嘘…」

 カレンは驚きのあまり写真を落とす。大体予想できていた事態なので手早く拾い集めるが、無理もない。そこに写っているのはカレンの母親なのだから…。またこれだ。今回は予算審査とは訳が違う。徹底的にリフレインを潰した。なのにこの出来事は避けられなかった。何か見落としているのだろうか。このままではまずい。カレンには悪いが、カレンの母親が薬物中毒になろうと構わない。だが、この出来事を避けられないと言う事実が問題だった。これより先に避けなければならない事態が幾つかある。その中で最も避けるべきはユフィの日本人虐殺だ。シャーリーの父親の件はまだ避けようがなくても仕方がない。何故ならナリタではなくても、それ以外の何処かで巻き込まれて死んでしまう可能性は否定できないからだ。だが、どう考えてもユフィが日本人を虐殺したいように変化するとは考えられない。そんな事を起こせるのは俺のギアスだけだ。今回のようにそれが避けられないと言うのならば俺はユフィを歪めることになる。そうなればスザクは手に入らないだろう。なんとかしなくてはならない。救えなければ、なんのための力なのだろう…

 カレンは病弱設定を忘れて走り去ってしまった。途中まで追いかけようとしたが、10秒を過ぎた時点でカレンの背中が豆粒ほどになったので諦めた。そもそもこれ以上他人が踏み込む話ではない。願う事はただ一つ。カレンが黒の騎士団を辞めないことだけだ。

 

 結果から言うと、カレンは母親の薬物使用をギリギリで止められたらしい。母親の部屋に突入すると今まさに使用する瞬間だったらしく、それを手で弾くとカレンは母親の事を罵ったらしい。しかし今、隣にいるカレンの表情は晴れやかだ。何があったかは聞いていない。本人に言う気がなければ聞く必要もないだろう。

「…私、お母さんのことがずっと嫌いだった。昔の男に縋って、媚びへつらって…でも、お母さんが言ったの。ずっとそばにいる為だって。それで…分かったんだ。お母さんはずっと戦ってた。お父さんは居なくて、お兄ちゃんも死んじゃって、残ったのは私だけ。そんな私とずっと一緒にいる為なんだって、お母さん言ってたの。」

 本当はもっと根深い事情があるのだろうが、探る必要は無いだろう。

「…そうか。」

 心底安心した。この様子なら黒の騎士団を辞めるとは言わないだろう。

「ま、リフレインは全部捨てて…一発引っ叩いてやったわ。今度やったら許さないとも…でも、なんか色々スッキリしたわ。」

「カレンのビンタか、それは痛そうだな。」

 カレンはフフンと笑うと試してみる?と手をひらひらさせながら言ってきた。カレンは知らないだろうが、俺は既に経験済みだ…あれは痛かったな。遠慮するよと手で制すると、カレンはこちらをみないで照れ臭そうに

「ありがとう。」

 と言った。恐らく母親の事を言っているのだろう。あの場でリフレインの事を教えなければ手遅れになっていたのだから。

「ふっ…間違っているぞカレン。今回の件、お前の母親だったのは偶々だ。俺は何もしていない。母親を救ったのは君自身だ。嫌いだ何だと言いながら母親の元に全力で走ったじゃないか。」

「それは…あの時は、ただ許せなかっただけよ。そんなんじゃない。」

 相変わらず照れ臭そうだ。

「ルルーシュ、私…頑張るから。お母さんと一緒に暮らすために…日本を解放するために、私…頑張るから!」

 お母さんと。それはとても羨ましい言葉だった。ただ、残された家族という意味では俺にとってのナナリーなのだろう。誰かの為に目的を為す、俺はナナリーの為に日本解放を、世界を変えようとした。それならばカレンは歪んだ家族を正す為に、母親の為に俺に力を貸してくれるはずだ。そう思えば、きっとこれはカレンに必要な事だったのだ。精神的な成長と言うべきなのだろうか。

 

 ジェレミアとヴィレッタを適宜ギアスで操り、ディートハルトに情報をリークする。そしてディートハルトが黒の騎士団に情報をリークしてきた。何という自作自演なのか、何より前回ディートハルトに情報を聞いておいて正解だったなと思う。なにせ前回と今回でジェレミア達の置かれている立場は大きく変わっているのだ。自由にさせていたら情報提供などしなかったかもしれない。無論、ナリタの事は俺だけは知っている事なので無くても問題は無いのだが。仕込みは終わっている。団員達に指示も出している。あとは決戦の日を待つだけだ。

 時間は夕方と夜の間といったところから、シャーリーとの待ち合わせまでまだ時間がある。ふと、生徒会室に電気が付いていることに気がつく。

「誰だ?こんな時間まで…」

 扉を開けると中にいるのはニーナだった。そう言えば前回、確率論を込みでニーナに教えて貰おうかとも思っていたんだったか…良い機会だ。暇ならば教えて貰うとしよう。

「ルルーシュくん…」

「やぁ、ニーナ。遅くまで実験かい?」

 ニーナ、正直コイツに必要性を余り感じない。前回の記憶を辿る限り、大した影響は無いだろう。

「うん…他にやる事もないし…」

 ニーナの頭が良い事は知っている。少々…いや、大分か?コミュニケーション能力が低い事以外は特に問題は無いだろう。そう言えば良く実験をしているとは聞いているが、具体的な内容は知らなかったな…いや、俺が他人に興味がなかっただけだろう。今回、未来の記憶があるからこそ余裕がある。余裕があれば視野が広がるのは当たり前だ。

「どんな実験してるんだっけ?見ても良いかい?」

「うん…分かるかは分かんないけど…」

 実験を見て驚愕した。この女、大人しい外見に反してなんて物を実験してるんだ…。ウランだと!?核兵器じゃないか!

「ウランか…」

「分かるの!?」

 な、なんだこの食いつき…。いけない、この女を放置しておくのは危険だ。このままただの女子生徒なら良いが、どこかの兵器開発者の目に留まりでもすれば…

「なぁ、ニーナ。お願いがあるんだ…」

「何?ルルーシュくん…」

 齧るように画面を見つめてウランの核分裂とウラン濃縮の可能性について饒舌に語っていたニーナが不満そうに振り向く。

 

「俺に協力してくれないかな?」

 

 

「ごめんシャーリー、待ったかな。」

「遅いよルル!何してたの?」

 ニーナに協力してもらったとは言えない。誘ってくれた女性を前に他の女性の名前を出すのが失礼な事くらい俺にでも分かる。「ほう?成長したな、童貞坊や」ええい…脳内にまで出張ってくるな!

「ちょっと着替えるのに手間取ってね。悪かったよ。」

「ふーん?じゃぁ行こ!」

 

 シャーリーとの用事を済ませ、自室に帰るとさもそこが当然の居場所かのように振る舞うC.C.がベッドの上に陣取っていた。ご丁寧に俺の布団をベッドの上に敷くという手間隙をかけて。

「おかえりルルーシュ。」

「ただいまC.C.」

 C.C.はあいも変わらずいつものニヤニヤとした笑みを浮かべている。

「ルルーシュ、今日は童貞坊やにしては中々激しい女遊びをしてたじゃないか。」

「チッ!見ていたのか?趣味が悪いな」

「なんだ。当たってたのか。」

 まんまとやられた…!腹立たしい、カマをかけられまんまとそれにしてやられたのだ!クソ…!他の物事はうまく行くのにコイツにはやられっぱなしだ、実に忌々しい。

「ま、お前の体力じゃ三人は無理だろう、諦めて一人に絞るんだな…まぁ、一人でも体力が持つか怪しいがな」

 目を細め口を手に当てわざとらしくププッと笑うC.C.に俺の我慢は限界だった。繰り出した拳は枕に止められたが、吐き出す言葉は止まらない。

 

「ええい!一人分の体力ぐらい…いや何を言わせてるんだ!このピザ女!!!」

 




〜言い訳〜
カレンってそんなにお母さんのことあっさり許すの?→許しました。描写不足です。最初は徹底的なリフレインの撲滅でイベントのスキップも考えたのですが、それをやるとシュタットフェルト家が永久に修羅場になるので…
関係ないですが、カレンの私頑張るからってシーンの顔可愛いですよね。

ニーナの研究→ロイドに見られる前にルルーシュに見られたと言う設定。ルルーシュくんは研究内容のヤバさに気が付いてハラハラしてます。

ニーナとルルーシュが喋る時の口調→適当です。リヴァルのことは呼び捨てでしたけどなんかルルーシュにはくんって付けてそう。逆にルルーシュは誰でも呼び捨てっぽいよね。R2とは立場違うし

シャーリーとの用事→原作ではルルーシュがしれっとスルーしてましたけど、二週目ルルーシュは余裕があるのでシャーリーのお誘いも受けちゃいます。

毎話最後に(半ば無理矢理)入れている「ピザ女!」byルルーシュor「この飲んだくれ!」byカレン)について、正直…?

  • 面白い。今後も続けてほしい。
  • 面白い。でも二度とやるなクソが。
  • 面白くない。でも今後も続けて欲しい。
  • 面白くない。二度とやるなクソが。○ね。
  • 普通。好きにして欲しい。
  • どうでもいい。
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