霜明「む?どうかしたでござるか?ディルック殿?」
ディルック「いや、少し気になることがあったんだが、なんだか物語のセリフや流れが微妙に違う気がするんだが・・・」
霜明「なるほど。作者曰く、拙者の存在でそれらが微妙に変わっているらしいでござるよ?」
ディルック「覚えられていないだけじゃないのか?」
霜明「どうなのであろうな?まあ拙者としては滞りなく進められればいいらしいのだが。」
(覚えられてないですゴメンない)
悩み、それは自我があれば誰しもが抱えるものであろう。試験があるのに勉強していなかった。酒の飲みすぎで怒られてしまった。約束を忘れてしまっていた、などなど人の数だけの悩みというのが存在するのであろう。そんな悩みを抱えるものはここモンドにも、
霜明(・・・・・・・・・)
彼が何を悩むか、それは当然先程のこと。騎士団から聞かされた天空のライアーなる風神に関連する神器とも呼ばれて差支えのないものが盗まれてそれを行ったのが十中八九数日前にできた異邦人の友、空であるからだ。そしてその共犯者であろう吟遊詩人はそんな霜明は意に返さずカウンター席に置いてあるボトルを吟味していた。
ウェンティ「どれにしよっかなー。」
ディルック「手に持った酒をおけ。」
しかしそれを当然見逃すディルックではなかった。仕方ない、というようにボトルを話すとウェンティは踵を返しディルックと向き合う。霜明は席を立ってゆっくりと入口付近にもたれかかった。
ウェンティ「ははっ、逃げる気なんて更々無いよ?」
霜明「それを信用するかは、これからの2人の態度次第でござるな?」
ウェンティ「うーん、ごもっともだね。」
手に顎を添えまぁいっか、時楽そうに言うと再びディルックと顔を合わせる。
ディルック「ふむ、まあ先に言わせてもらうと、ライアーを盗む度胸は気に入った。君たちがバカだとしても、かなり珍しいタイプのバカだ。」
パイモン「ま、まて!オイラ達は盗んでないぞ!真犯人は他にいる!」
ディルックの盗んだ、という言葉に反応するようにパイモンが空の隣に現れた。それに同乗するようにうんうんと空も頷いている。
霜明「む?しかし金髪と緑色の2人などモンド中をかけ回れば今現在その2人はお主ら以外にはいないと思うぞ?」
パイモン「そ、それはそうなんだけど、うぅ」
空「ちゃんと理由があるんだ。」
霜明「理由、か。」
少し下を向き考える。ディルックの言うことが本当だとすれば金にもならない、しかも警備が厳しかった位置にあるライアーをするなど余程の理由があるものが余程の頭の悪い愉快犯しかやらないだろう。
ウェンティ「じゃあ、真実の物語を演奏したら信じてくれるかい?」
ディルック「いいだろう。」
霜明「・・・拙者は物語しだいでござるな?」
ウェンティ「ふふ、2人からはいくら出して貰えるのかな?」
2人は目を合わせてお互いに異論がない、ということを確認すると頷いてウェンティの方を向いた。
ディルック「報酬は、5モラから天空のライアーだ。」
霜明「報酬は、5モラから天空のライアーでござる。」
全く同じ回答を2人が同時に返すと可笑しそうにあははっと笑い上機嫌そうにもう一曲追加する、と高らかに宣言しライアーを奏で始めた。そこから語られる物語は想像を絶するものだった。数百年前、モンドを守る戦争の時に風魔竜トワリンが毒血に犯されてしまったこと。数百年の眠りにつき目が覚めた時にアビスの魔術師によって更なる呪いを植え付けられてしまった、そして四風守護を外れてしまったこと。神話の話から照らし合わせても全く持って矛盾のない説明だった。
ウェンティ「・・・・・・どうかな?」
霜明「・・・・・・」
ディルック「・・・これは、重大な秘密だったはずだ。なぜ僕にみせた。」
ウェンティ「なぜだろうね?うん、風向きが変わろうとしているからだね。どうかな?ディルック?」
そう聞くとディルックは口の端にを微かに上げふっと笑った。
ディルック「面白い。少し時間をくれ。僕の方でも情報をまとめよう」
ウェンティ「それなら良かった。そこの稲妻人は?」
霜明「実に聞き心地が良かったでござるよ。ここまで重大なことを教えてくれたのだ。協力するのが筋というものであろう?」
ウェンティ「それは良かったよ!」
ディルック「それなら異邦人、吟遊詩人、君らは指名手配が出てるからこの酒場からは出ない方がいいだろう。」
霜明「いや、空殿は平気であろう。彼はジン殿から栄養騎士の爵位を賜っておる。金髪だからといってまず疑われることはないであろうな。」
ディルック「栄養騎士・・・そうか、君が。流浪した稲妻人と異邦人がこのモンドを助けてくれるなんてな。やはり君たちが騎士にいるのは勿体ない。」
空「それって・・・」
ディルック「なんでもない。僕の話だ。それじゃあ夜にまたここで会おう。吟遊詩人は酒場から出ないようにな。」
ウェンティ「大丈夫!ボクは酒場が大好きだからね!」
そういうとウェンティは2階席に戻って行った。
ディルック「さて、これから君はどうする?僕はツテで情報を集めて回るが・・・」
霜明「ふむ、それよりも、いいのでござるか?拙者やあの2人を信じても。」
そうクスッと笑うように問いかけるとウェンティが上った2階席、そしてたった今酒場を出た空を一瞥してからこちらに向き直った。
ディルック「奇想天外なことを言う吟遊詩人、どこから来たともしれない異邦人。なんの目的があるかしれない稲妻から来た新人騎士、正直不確定要素が人物像の時点で多すぎるが、あの詩人が言うことの話は通っている。だが君たちがなにか怪しい動きをすれば僕はすぐに君たちを潰さなくては行けない。」
霜明「あっはは、そうかそうか。本音が聞けて良かったでござるよ。それでは拙者が何も無く、この件が終わったらまた酒を飲ませてくれるのだな?」
そういうとディルックはムッと言うように目を見開いてすぐに無表情に戻った。
ディルック「・・・まあそういう事だ。それじゃあまた後でな。」
霜明「うむ、またあとで。」
そう言うと2人は外に出て各々別方向にいった。
桜坂霜明
おはよう
「ふむ、朝の日差しが心地よいでござるな?今日も一日頑張ろうか?」
こんにちは
「そろそろ昼食の時間であるな?ん、拙者か?拙者は自分で弁当を作ってるでござるよ。1口いかがでござるか?」
こんばんは「夜は良いでござるな。全てが幻想的で、綺麗に映るでござるよ。」