混ぜるなキケン!!~2人が奏でる滅びの序曲?!~   作:かなた@FANKS

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第19話 エレジオールの真実

それなりの広さのある部屋。

 

そこにエレジオールはいた。

 

そこかしこにある調度品は、どれも高級であると一目で分かる上に、成金にはなし得ないセンスを感じるものばかりだ。

 

髑髏を刻んだ悪趣味な玉座も、主が座せば品の良い装飾品にしか見えなくなるから不思議だ。

 

――魔王の、部屋?

 

玉座に座る男のそばには、シェリィ「だった誰か」が控えていた。

 

「お帰り。私の愛しい子、エレジオール。」

 

??!!

 

玉座の主は開口一番そう言うと、ゆらりと立ち上がった。

 

「あんたが魔王…?」

 

エレジオールの問いに、

 

「いかにも。」

 

余裕を崩さない男が答える。

 

「魔王サマに愛しい子呼ばわりされるおぼえはないけど?」

 

「いずれ思い出すさ。」

 

「ふざけたこと言わないで!!」

 

激昂するエレジオールに、魔王は続ける。

 

「ふふっ、ならば思い出させてやろう。」

 

魔王がそう言ったかと思うと部屋が突如暗くなり、壁に映像が映し出された。

 

魔法の研究室のような雰囲気の部屋の両脇に、いくつもの巨大なガラスのシリンダーが並んでおり、液体に満たされたその中には人間の女性のような生物が眠っている。

 

部屋の中央には一際大きなシリンダーが置かれていて――その中には。

 

瞳を閉じた銀髪の少女が眠っていた。

 

映像の中で魔王は高らかに笑いながら、言った。

 

「遂に!!完成だ!!この世で最も美しく、強き我が最高傑作にして、世界を甘美なる滅びへ誘《いざな》う究極魔法の鍵となる存在!!」

 

――?!これ、は、私?!

 

シリンダーから液体が抜かれ、その蓋が開くと、魔王は眠れる少女を腕の中に抱きとめ、眠り続ける彼女の頬に口付けた。

 

「さあ、目覚めよ、愛しい子!!その名は…!!」

 

そこで一度言葉を切った魔王は、魔力を込めた声で続けた。

 

『エレジオール!!』

 

エレジオールと呼ばれた少女はゆっくりと目を開く。

 

意識があるようには見えないが、ゆっくりとした動作で魔王に跪いた。

 

――嘘、でしょ…?!

 

「嘘じゃないさ。お前は私が作り出した最高の兵器にして究極魔法発動の鍵。お前が勇者と巡り会い、勇者を誘惑して触れ合う事こそが我が究極の呪いをこの世に撒き散らす合図。勇者の愛とかいう実にくだらんが強き力を、我が呪いに書き換えるための鍵。それがお前なのだ。」

 

「…私はエミルを誘惑なんかしてない…!!」

 

「まあ細かいことはいいじゃないか。結果は同じなのだからな。多少の誤差は想定内だ。」

 

再び明るくなった部屋で、魔王は続ける。

 

「監視者兼計画の遂行者であるシェリィと共に、お前をサリーシャに送り込んでかの国を追い詰めたのも、お前の魅力と力を試すため。ついでに邪魔な魔法大国を潰すという一石二鳥の策でな。実によくやってくれたよ。お前は私の自慢の傑作だ!!」

 

――い…やだ…!!

 

それ以上聞くことを拒絶するように全身が震える!

 

「しかし…私の計画によれば、鍵であるお前は究極魔法の起動に成功した時に消滅するはずだった。――しかし、お前はここにいる。何故だろうな?」

 

……。

 

沈黙するエレジオールを後目に、ふっ、と笑う。

 

「まあそんなことは些細なことだ。エレジオール、愛しいお前に最後の仕事をやろう。」

 

そう言って残忍な笑みを浮かべた。その迫力に、エレジオールの背筋が凍りつく。

 

そして、言った。

 

「勇者エミルを殺せ、エレジオール。」

 

まるで子供をあやす様な優しい口調で。

 

「さもなくば私がお前を殺す!」

 

しかし、確かな殺意の籠った声で。魔王はエレジオールに囁いたのだった。

 

◇◇◇◇

 

「これはこれは勇者様。そんなに慌ててどうなされました?」

 

エレジオールがシェリィと消えた後。

 

すぐに助けに行こうとしたエミルを、セリスは止めた。

 

誰がエレジオールをさらったのか。なんのために?

究極魔法とは?入力キー…はどうやらエレジオールを指しているようだったけれど…。

 

如何せん情報が少なすぎる。

 

ここは情報収集をすべき、というセリスの提案をエミルは渋々ではあるが承諾したのだ。

 

「実は…。」

 

戻ってきた魔界の村で、長老の問いに現状を説明するエミル。

 

「!!なんですと?!エレジオール殿が消えた?!」

 

長老は深く考え込んだ後、首を左右に振った。

 

「私には犯人の目星も、エレジオール殿の居場所も皆目見当もつかないですな…。お役に立てなくて申し訳ない。一応村のものにも聞いてみてくだされ。何か知っているものがあるかも知れませんので。」

 

エミルとセリスは村人の一人一人、子供も含めて全員に手がかりを求めて聞き込んだ。

 

そう人数も多くない村だ、時間はそこまでかからなかった。

 

しかし、有用な情報も何一つ得られなかった。

 

肩を落とす二人。

 

しばし流れる沈黙。

 

エミルは手持ち無沙汰にコンパスを手の中で弄ぶ。

 

それをなんとはなしに眺めていたセリスは、突然ひらめいた!

 

「!!このコンパスが願いに反応するのなら…エレジオール様の居場所を念じればたどり着けるかもしれません!!それが魔王城なら乗り込むまでですし!!」

 

「確かに!!その手があった!!」

 

「お気をつけて!!究極魔法がなんなのか、どんな効果をもたらすのか…犯人が魔王なら、ろくな事にはなりますまい。発動まで時間も限られております。お急ぎくだされ!!」

 

長老の言葉に背を押されるように、2人は駆け出した!

 

コンパスに、エレジオールへの強い想いを乗せて…。


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