噛斬(かみきり)演舞   作:焼きポテト

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前回の3行あらすじ!

主人公がアクロバットダイブ!
まさかの歴史の武将がTSしてて思わず白目!
落し物はなんですか、見つけにくいものですか……


2超逃走劇 その1

 辿り着いた街は活気がある、とは少し言いづらい微妙な感じの街だった。

 活気がないわけではないが、盛り上がっているとも言いきれないような残念さがある。これも前にいた世界と文明のレベルが違うからか? と首を捻る戒李はとりあえず刃物屋の前にいた。

 武器屋へも寄ってはみたが、残念なことにそれほどいい物は揃っていなかったのである。

 仕方なく大中小トリオから『譲り受けた』武器を売って二束三文にし、こうして選り好みする事無く刃物全般へと視野を向けているわけだ。

 当然だが、鈍らな剣を使うよりは中華包丁を使う方が攻撃力は高い。変なプライドさえ気にしなければ、こちらの方が使い勝手もいいだろう。

 

「と言う事で、その大鉈と手斧を貰おう」

「へい、ありがとうございます。ところでお兄さん、山へでも行く気で?」

 

 手斧っていうかトマホークっぽいなあと思いつつ、渡された2つの刃物を革で作られた鞘に収めつつお金を払い。そこで戒李は、ん? と首を傾げた。

 まあ、木こりかと聞かれたなら似た様なものだ、とでも答えて流すつもりだったが。しかし、今の質問には意図が見えない。

 まるで、山へ向かう事そのものを疑う様な質問である。

 

「あー、いや。山へ行くつもりは無いと思うが。いかんせん旅の途中でね。世事に疎くなりつつある。この辺りで何かあったのか?」

 

 戒李の言葉に納得した店主は、成程と答えてお釣りを差し出しながら話しだす。

 つまりは、こういうことらしい。

 最近、各所で黄巾党の動きが活発になってきた。

 更に、あろうことかその黄巾党の一部が近くの山の中へ潜伏しているらしい。

 その山は過去に鉱山として使われていた山らしく、到るところに横穴が空いていて攻めにくい様子。

 黄巾党が根城にしている正確な位置が判然としない為、この街の領主殿も手を焼いているとか。

 主に、山越えをしようとする人の荷物を狙って出没するようだ。

 

「へぇー。世の中は物騒だなぁ」

 

 本当ですよと苦笑いする店主と別れを告げ、戒李は街の中をぶらりと歩きだした。

 特別目的地があるというわけでもないが、趙雲を待っていなくてはならない。

 何やら挨拶をしてくる、とかいう一言を残して消えてしまったわけだが。本当にどこへ行ってしまったのやら。

 と言うよりも、いったい何処へ挨拶に行ったというのか。

 

「まあ、考えるだけ無駄なんだろうし。向こうが見付けてくれるらしいから、俺は自由行動出来るわけだが」

 

 差し当たり、何処へ行こう? と言うか腹減ったから飯だな。そう決断して、戒李は歩を進める。

 何処でもいいが、出来るなら美味い物を食べたいというのが本音だ。

 さて? と匂いを頼って歩を進め、あっちへこっちへと行ったり来たり。

 行く当てを定めずに食堂系の店が立ち並ぶ区画を歩きまわって、いい匂いのする場所を探す。

 

「ん? これはいい感じの匂いが……」

「ふむ、匂い? そんな物で、何を探しているのだ?」

「あー……うん。いや、美味い飯屋を探していたんだけれども。心臓に悪いから、気配を消して近付くのやめてくれ」

 

 不意に背後から来た声に、戒李はゆっくりと振り向く。

 そこにいたのは、先程挨拶がどうこうと言って消えた少女の姿。吐息して、頭を掻きながら身体ごと振り返った。

 視界に映る愉快気な趙雲の姿は、間違いなく性質が悪いと評していいものだろう。

 やれやれと首を振って、戒李は呆れた風を装って見せた。しかし、嫌味すらも通じないらしい趙雲は更に愉快気な笑みを濃くする。

 

「まあ、いい。とりあえず、要件とやらは済んだのか?」

「いや、まだだ。これから、その要件を済ませる為に行く」

 

 はい? と戒李は首を傾げた。

 ここにいるというのは、つまり挨拶が終わったという事を意味するのだろう。

 そこは間違いないはずである。

 では、それで用件も終わりじゃないのだろうか? それ以外にも、更に用事があると? と首を捻って、しかし彼女の事情を知らない戒李に答えが出せるわけもない。

 ここは、素直に事情を問うのが吉だと判断する。

 どんな用事だ? と戒李の口が動く前に、彼は首根っこを趙雲に掴まれて引き摺られていく。

 疑問を持つ間もなく連行。事情もさっぱりわからない状況で、何処へなりとも連れ去られる。

 

「まあ待て。ちょっと落ち着け趙雲殿。何故、俺は人攫いに遭っているのか?」

「人攫いとは人聞きが悪い。これから近くの山に潜むと言う賊を退治しに行くから、付いて来いと言うだけのことだ」

 

 何でそう言う流れになった? と問いたい戒李ではあるが、鼻歌交じりに歩く趙雲がそれを聞き入れてくれる気が欠片もしない。

 山に潜む賊というのは、先程の刃物屋が言っていたそれで間違いないだろう。

 確か、拠点がはっきりしないとか言っていたはずだが? と首を傾げながら、戒李は的確な回避の方法を思いつけないでいる。

 出来るなら、面倒事であって欲しくないなぁ。そう思う抗議の意思は、どこまで神さまとやらに聞き入れてもらえるのだろう。

 そもそも、神がいるならこういう流れを作ったことを呪いたい気持ちで一杯だが。

 もろもろを吐息一つに押し込んで吐き出し、戒李はズリズリと引き摺られていく。

 

 

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