噛斬(かみきり)演舞   作:焼きポテト

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      その5

 追求しようとすれば、まわりの男たちが鋭い視線を向けてくるから困りものだ。

 突き刺さる視線たちを咳払いで意識の外に追い出し、椅子の肘掛けに頬杖を付く少女へ視線を戻す。

 ついでだから、聞いておくこともあるのだ。

 

「あー。では、今の手違いに対して情報を一つ教えていただきたい」

「何?」

「街の娘が、一人捕まっている様ですが。どちらに?」

 

 質問の意図がおかしいかな? とも思わなくはないが、これでわかれば上々。

 わからなかったとしても、この後は逃走あるのみなので知った事ではない。放っておけば、趙雲たちが助け出すだろう。

 案の定。少し首を傾げた少女は、隣の優男へ視線を向ける。

 怪訝な表情になっていた優男も、こちらを探る様な目付きで睨みつけ。しかし、不意に何かを理解したように納得顔となった。

 そのまま少女へ耳打ちをして、彼女へも納得顔が伝染する。

 果たして返って来た言葉は。

 

「それ、私」

 

 は? と間抜けな声が漏れた。それも二つだ。

 発生源は戒李と威羅。言葉の意図が掴めない二人は、一番説明力のありそうな優男へ視線を向ける。

 返って来たのは、嫌そうな顔。

 こちらが嫌いな事はヒシヒシと伝わってくるのだが、事今回の話題に関しては説明が欲しい。

 根気強く視線を向ければ、仕方ないと言った風に口を開いてくれた。

 

「お嬢は、もともとふらふらと街に行く癖があってな。それを俺達が連れ戻した時に、そう言う噂が立ったんだ。まあ、悪名はあっても困らないから放置していたんだが」

 

 そう言う事は、やめとけって言う忠告なら無駄だぞ? と優男が付けくわえる。

 どうやら、さっきの質問を注意喚起と勘違いしたらしい。

 その好意的な解釈は嬉しいのだが、むしろ一気に来た脱力感で戒李も威羅も膝から崩れ落ちた。

 縛られた手を地面に付き、深く深く溜息を付く。

 

「もうさ。お嬢って呼ばれてるとか、あの娘が単語でしか言葉を作らないとか。色々言いたい事はあるんだけど」

「ええ。とりあえず、我々の仕事が終了した事を喜びませんか? 他の色んな事は棚上げして」

 

 そうだな、威羅君と戒李が言葉を返したのに合わせ、彼の袖から幾らかの小さな球体が零れ落ちた。

 コロコロと転がったそれは、煙を噴きながら辺りへ散らばり。

 同時に、あーあと紡がれる戒李の声が気だるげに響く。

 

「ちょっと落としちゃったな。威羅君、そっちの準備は?」

「はあ。袖の中で火を起こすって、実はかなり難しくありません?」

 

 じゃあ、いっそ袖ごと種火にしちゃえよ。それだ!! 的なやり取りを経て、辺りへ煙を噴く球体がばら撒かれた。

 なっ?! と驚く黄巾党の一同を前に、くっと喉の奥を鳴らす様な笑みで答える戒李。

 口から出る言葉は、文字通り笑いを含んだものだ。

 

「まあ、原料は狼煙の物だが。量が量だから火傷には気を付けるよーに」

 

 はい、撤収!! と戒李の声が響くのと、大洞窟の中が煙で一杯になったのはほぼ同時。

 あとはただ、煙に巻かれるのみである。

 




調整間違えて、最後ががっつり短くなってもうたん……
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