追求しようとすれば、まわりの男たちが鋭い視線を向けてくるから困りものだ。
突き刺さる視線たちを咳払いで意識の外に追い出し、椅子の肘掛けに頬杖を付く少女へ視線を戻す。
ついでだから、聞いておくこともあるのだ。
「あー。では、今の手違いに対して情報を一つ教えていただきたい」
「何?」
「街の娘が、一人捕まっている様ですが。どちらに?」
質問の意図がおかしいかな? とも思わなくはないが、これでわかれば上々。
わからなかったとしても、この後は逃走あるのみなので知った事ではない。放っておけば、趙雲たちが助け出すだろう。
案の定。少し首を傾げた少女は、隣の優男へ視線を向ける。
怪訝な表情になっていた優男も、こちらを探る様な目付きで睨みつけ。しかし、不意に何かを理解したように納得顔となった。
そのまま少女へ耳打ちをして、彼女へも納得顔が伝染する。
果たして返って来た言葉は。
「それ、私」
は? と間抜けな声が漏れた。それも二つだ。
発生源は戒李と威羅。言葉の意図が掴めない二人は、一番説明力のありそうな優男へ視線を向ける。
返って来たのは、嫌そうな顔。
こちらが嫌いな事はヒシヒシと伝わってくるのだが、事今回の話題に関しては説明が欲しい。
根気強く視線を向ければ、仕方ないと言った風に口を開いてくれた。
「お嬢は、もともとふらふらと街に行く癖があってな。それを俺達が連れ戻した時に、そう言う噂が立ったんだ。まあ、悪名はあっても困らないから放置していたんだが」
そう言う事は、やめとけって言う忠告なら無駄だぞ? と優男が付けくわえる。
どうやら、さっきの質問を注意喚起と勘違いしたらしい。
その好意的な解釈は嬉しいのだが、むしろ一気に来た脱力感で戒李も威羅も膝から崩れ落ちた。
縛られた手を地面に付き、深く深く溜息を付く。
「もうさ。お嬢って呼ばれてるとか、あの娘が単語でしか言葉を作らないとか。色々言いたい事はあるんだけど」
「ええ。とりあえず、我々の仕事が終了した事を喜びませんか? 他の色んな事は棚上げして」
そうだな、威羅君と戒李が言葉を返したのに合わせ、彼の袖から幾らかの小さな球体が零れ落ちた。
コロコロと転がったそれは、煙を噴きながら辺りへ散らばり。
同時に、あーあと紡がれる戒李の声が気だるげに響く。
「ちょっと落としちゃったな。威羅君、そっちの準備は?」
「はあ。袖の中で火を起こすって、実はかなり難しくありません?」
じゃあ、いっそ袖ごと種火にしちゃえよ。それだ!! 的なやり取りを経て、辺りへ煙を噴く球体がばら撒かれた。
なっ?! と驚く黄巾党の一同を前に、くっと喉の奥を鳴らす様な笑みで答える戒李。
口から出る言葉は、文字通り笑いを含んだものだ。
「まあ、原料は狼煙の物だが。量が量だから火傷には気を付けるよーに」
はい、撤収!! と戒李の声が響くのと、大洞窟の中が煙で一杯になったのはほぼ同時。
あとはただ、煙に巻かれるのみである。
調整間違えて、最後ががっつり短くなってもうたん……