俺は4番のゲートに入る。
今回は俺とファーストの3人の合わせて4人。
併走トレーニング以外だとこんな少ない人数で走るのは久しぶりだ。
…中山レース場に、一瞬の沈黙が広まっていく。
「…よしっ」
その空気を味わいながら、俺は頬を叩いて気合を入れる。
…そして。
…ガタンッ!
ゲートが開き、レースがスタートする。
俺はいつの通りのゆったりとしたペースでスタートを切る。
…が、いつものレースとは様子が違った。
「…へえ、そうしてくるか」
俺の前と左をしっかりガードするようにクラヴァットとフェニキアディールが走っていた。
…恐らくは最後までこの態勢を維持して、今飛び抜けているドミツィアーナをそのまま逃げ切らせようとする戦い方だな。
「…なあ、クラヴァット、アディール。お前らはこの作戦でいいのか?
お前らだってドミツィに負けたくねえだろ?」
俺はそう二人に話すが、2人は走り方を変えてはこない。
「…私たちが個人で戦ったら間違いなく負けます。…でもチームなら!」
「今回は個人よりチームの勝利が最優先!
ドミツィが勝つなら、それでいい!」
二人がそう話す通り、ドミツィアーナはいつもより速いペースで先頭を快走している。
俺のスピードはまだノッてない。
…あの作戦、やれるな。
一か八かの作戦ではあるが、やる価値はあるだろう。
俺は勝負に出る。
「え…!?」
クラヴァットとアディールの2人が驚きの声を上げる。
…俺は一気にスピードを落とす。
「さあ、こっからが本番だぜ!」
俺はそう話し、ほとんど0に近づいたスピードから一気に加速する。
…道がないなら自分で作るまで。
長いレース生活の中で俺はそう学んでいた。
俺は完全に前が空いたコースを一気に加速し、トップスピードになる。
そして俺を後押しする応援歌の前奏が終わり、スタンドから大声援が俺の耳に飛び込んでくる。
…俺が封印した幻の応援歌、ハンターチャンス。
何者かに追跡されるかのような焦りと不安を相手に与えていく。
Huntersの大声援が俺の脚をさらに早くさせる。
最終コーナーに差し掛かり、俺と先頭を走っていたドミツィアーナとの差はほとんどなくなってきていた。
「さあドミツィ、一騎打ちと行こうぜ!」
「くっ、ハンターさん…!でも、負けてたまるか…!」
俺の言葉にそうドミツィは返してくる。
ホームストレートに入り、ドミツィアーナは俺に負けじとスピードを限界まであげていたが、俺はトップスピードになっていた。
「…さあ、俺についてこれるか!」
中山の坂で俺は一気にドミツィアーナを抜き去っていく。
「嘘、でしょ…?」
ドミツィアーナはそう声を上げる。
俺はゴールを通過しながら、そのまま右手を頂点に突き上げた。
今回の使ったのは横浜ベイスターズの『ハンターチャンス」。
演奏機会も非常に少なく、『幻のチャンステーマ』と呼ばれる曲です。
…というかなんで今も公式サイトには残ってるのに演奏しないんだろ…。