気分が乗って来たので再開することにしました。
いつか書いてみたいと思っていたキャラストーリー編から再スタートさせてもらいます。
頻度は相変わらず不安定ですが、またしばらくの間、お付き合いのほど、お願いいたします。
1話 姉妹というもの
…姉妹。
それは、何かと比較されることが多い家庭環境である。
姉が目立った活躍をすれば、妹が活躍できないと『なぜあいつの妹なのに出来ないんだ』と責められる。
姉がからっきしダメなのに妹が目覚ましいものを残せば『姉はダメだが妹の方は素晴らしい」と称賛される。
姉妹がお互いに切磋琢磨しながらお互いに上を目指していく…。
…そんなことをできるのは限られた姉妹だけだ。
批判される声を右から左へと聞き流し、賞賛の声に驕らずに自分を高めていく。
そんな心の強い2人が揃っているのは激レアケースと言ってもいいだろう。
◇ ◇ ◇
トレセン学園のレース場にある人だかりが出来ていた。
(…なんだ、これ?)
自分はその人だかりに誘われるように近づいて行った。
(…あの、何をやっているんですか?)
そう聞くと、自分の前にいた女性トレーナーが返してくれる。
「あの『神童』、シンボリルドルフが走るらしいのよ。
選抜レースの時にスカウトするにしても人は集まるだろうから、今の内に顔を覚えてもらおうと思ってね」
シンボリルドルフ。まだ新人トレーナーの自分の耳にもその実力は確かに届いている。
『神童』と呼ばれ、デビュー前にもかかわらずデビュー済みのウマ娘に模擬レースで勝利した、強すぎて一緒に併走するウマ娘に断られ続けたなどなど…。
その実力はトレセン学園内に確かに響いていた。
そんな中、ただでさえざわついていた一団が一気に声を上げた。
「お、出てきた出てきた」
「あれが、シンボリルドルフね…。
走る前から凄いオーラを感じるわ…」
トレーナーたちはそう各々声を上げていく。
自分もシンボリルドルフが放つ緊張感をピシピシと感じていた。
シンボリルドルフのトレーニングが始まった。
「…それでは、行かせてもらうとしよう!」
一団の後ろにいた自分は隙間隙間からしか確認できなかったが、そんな中でもそのフォーム、足捌き、迫力…、そのすべてがデビュー前のウマ娘とは明らかに違っていた。
そして、シンボリルドルフのトレーニングが終わると同時に、一団は彼女の元へと一気に駆けよっていく。
「…シンボリルドルフ、少しいいかしら?
あなたの実力はウチのチームでこそ輝くと思うの。
一考しておいてくれないかしら?」
「いや、君のような逸材はウチが引き取りたいね。
ウチにはGⅠを獲ったウマ娘が多数所属している。
そのノウハウを君にも教えることができるはずだ。
是非ウチに来てくれないか?」
…すげー。先輩方が血相を変えて1人のウマ娘に群がっている。
その場に取り残されてしまった自分は、立ち尽くすばかりであった。
◇ ◇ ◇
(やはり、どこかのチームのチーフトレーナーに頼んでサブトレーナーとして経験を積んでいくべきなのか…)
ぼーっとしながらそう考え事をしながら、自分はずっと歩いていた。
現に同期のトレーナーたちからは「サブトレーナーにならせてもらった」という声も多く聞こえてくる。
いつまでも担当ウマ娘がいない中、トレセン学園を放浪するわけには行かない。
新人トレーナーが専属契約を結ぶのはトレーナー側・ウマ娘側双方のリスクが大きすぎる。
そういう訳で新人トレーナーはどこかのチームに所属させてもらうのが通例となっている。
さっき話した同期からも「何かあれば協力するよ」と聞いている。
…まあどこかのチームに所属させてもらうことにしよう。
そう決意した俺は顔を上げる。
(…え)
俺の前に広がっていたのは全く知らない場所と蒼く広がる空だった。
(…ど、どこだここ…)
少なくともトレセン学園から出てないことは確かだが…。
トレセン学園は数多くのウマ娘を抱える巨大な学校だ。
その敷地はとても広大である。
自分は場所を覚えきれておらず、マップを見ながら移動することが多い。
(そうだ、たしかスマホに専用のマップが…)
俺はそう思いながら肩掛けバッグを引っ張り出す。
…だが、そこに自分のスマホは入っていなかった。
(そうだ、たしか充電切れで机に…)
そこまで遠くに行くつもりのなかった当時の自分にイラつきながら、辺りを見渡していると、あるウマ娘が倉庫らしい建物から出てきた。
「…とりあえず、ここの備品の確認は大丈夫…っと」
そこから出てきたウマ娘はさっきレース場で走っていたシンボリルドルフの姿とほぼ同じであった。