「…ジャパンカップ、そして凱旋門賞。
この2つを獲得することですね」
ハンターは真剣な目でそう話してくる。
(…ハンター、それって…)
そう聞き返すと、ハンターは「ええ」と続けてくる。
「まだ日本のウマ娘が獲ることが出来ていないタイトルの2つ。
これに勝つことができればルドルフの上に行くことが出来たって言ってもいいんじゃないか…。
そう思うんですよね」
ジャパンカップは近年創設されたタイトルだ。
日本のウマ娘が世界に通用するレベルに伸ばすために、作られたものであり海外のウマ娘も多数参加している。
…ただ、まだ日本のウマ娘が勝利することは出来ていない。
世界と日本の差を思い知らされる…、そんなレースになってしまっている。
そして、凱旋門賞。
フランスで開催されるヨーロッパ最大のレースだ。
こちらも日本のウマ娘が参加してはいるが、勝利することは出来ていない。
(…ルドルフ以上、いや世界の頂点を獲りに行く…か。
クラシック三冠は興味ないのか?)
そう聞くとハンターは「そこまでなんすよね」と返してくる。
「正直、三冠は俺が出なければルドルフがすべて獲ると思ってるんですよ。
それならルドルフにクラシックを獲ってもらって、その間に俺はしっかりと調整してジャパンカップで勝つ。
そしてその次の年の凱旋門賞で最後を飾る。
そうなるのが俺の理想ですね」
…とんでもない理想、いや野望だ。
正直、「三冠獲りに行きます」までは想像していた。
でも、その上を目指しているとは…、思ってもいなかった。
数々のウマ娘やトレーナーが目指しているダービーを捨てるなんてあんまり考えれないだろう。
それに、ルドルフ、そしてデビュー済みのミスターシービーやカツラギエースといった有力ウマ娘の面々とも相手取ることになる。
とにかくハード…それ以上の険しい道と言わざるを得ないだろう。
「俺が世界への扉を開けることができれば、トレセン学園に来る海外のウマ娘も増えると思います。
そして、俺という明確な目標が日本のウマ娘の向上心を上げることができる。
…正直、険しすぎる道だとは俺でも思ってますよ」
(…それなら、なんでそうしようと思ったんだ…?)
そう聞くと、ハンターは「決まってるじゃないですか」と返してくる。
「…少しでもルドルフの負担を軽減させる。その一心ですよ」
ハンターはそのまま続けてくる。
「ルドルフのやつ、考えすぎるところがあって。
たまにあんまり寝られていない時もあるんですよ。
ただでさえ、トレーナーからのスカウトや自分のトレーニングに忙しいくせに、生徒会やら色んなところと話をしなくちゃいけない。
最近は、どこかの会食に呼ばれたとかもあったかな。
…あいつも周りから『神童』だか呼ばれてますが1人のウマ娘です。
あのまま行けば、ルドルフは間違いなく心身ともに持たない。
何回、寮のベッドに突っ伏している所を見たことか…」
…確かに、ルドルフは学内だけでなく、学外でもたまに姿を見せる。
学外であったとしても、いつもと変わらない雰囲気を放ち続けている。
そんな彼女が唯一休めるのがハンターとの2人だけの空間である自室なんだそう。
「俺はルドルフにもゆっくり休んで欲しい。
アイツとともに楽しい学校生活を送りたい。
…俺はルドルフのようにはなれないけど、少しぐらいその負担を肩代わりすることならできるはず。
それが、ルドルフの妹としての思いなんです。」
ハンターはそう、俺に言いきってきた。