「…ハンター、来てくれたか」
ルナは俺の姿を見て、そう話してくる。
その表情は明らかに喜んでいる。
「まあな、ようやくこっち来れたよ。
どうやら部屋同じみたいだし、これからよろしくな、ルナ」
「ああ、もちろんだとも」
少々回り道にはなってしまったが、ようやくスタート地点には立てた。
これからである。
「ハンター、こっちでは土と芝、どちらで走るつもりなんだ?」
「芝…かな。それでないとお前とバトれねえだろ?」
ルナの言葉に、俺はそう返していく。
「それなら、この後走らないか?
幸い、まだ外は明るい」
ルナは俺にそう話してくる。
「…あー、俺が使ってもいいのか?
それに俺、まだ予約とか取ったことないんだけど…」
俺がそう言うと、ルナは「大丈夫だ」と続けていく。
「来たばかりだろうが、お前はもうこの学園の生徒だ。
心配はいらないよ。
それに先ほど見て来たんだが、どうやら今日は芝コースは誰も使っていないみたいでね。
言えば使わせてもらえると思うよ」
ルナはそう話して、改めて続けていく。
「…何より、今のお前と走ってみたいと言うのが私の本音かな。
お前がカサマツに行ってから、一度も一緒に走っていないからな」
ルナにそう話され、俺は練習用シューズを取り出す。
「…分かったよ。
お前がそう言うならな」
俺はそう話し、ルナに連れられる形でグラウンドへと向かっていった、
◇ ◇ ◇
「ここからゴール板まで行けば、丁度2000mだ」
「了解」
グラウンドの上で、俺はルナからそう説明を受ける、
グラウンドを改めて見渡してみると、地面の芝と土はしっかりと整備されており、ホームストレートには小さいスタンドが設置されている。
カサマツだと土のコースでもここまで整備はされてなかった。
申請すれば足への負担も考えたウッドチップコースもできるようになるらしい。
…やっぱり、カサマツとは明らかに設備面が違いすぎる。
軽くストレッチを行い準備をした後、俺とルナはスタートの態勢に入る。
「よーい…、スタート!」
…ルナの言葉と同時に、俺達はスタートを切る。
ルナのペースは先行、最初のペースは俺よりも速い。
俺はペースは変えず、いつも通りのペースで走り出す。
…っていうか走りやすいな、この芝。
走りながらそう思いつつ、俺とルナの差が段々と開いていく。
…正直、ルナに勝てるとはまだ思わねえ。
俺が成長してると同時に、ルナも成長しているはずだ。
…この勝負は俺がどれだけルナに迫れるか、それを測るものだ。
そしてある程度俺とルナの差がついてきた頃、俺は心の中でタイミングを測っていく。
…3、2,1
「…ここっ!」
その瞬間、俺は一気にスピードを上げていく、
「…やはり、お前ならそう来ると思っていたよ、ハンター!」
ルドルフは嬉しそうな声でそう呟き、同じようにスピードを上げていく。
2人の間は徐々に縮まっていき、ホームストレートに入る時には1バ身もないほどまで詰まっていた。
「…こっからが、勝負だぞ!ルナぁ!」
「もちろん、そのつもりだっ!」
お互いがそう言いながら、…逃げるルナと追いつこうとする俺、2人のチェイスは激しさを増していく。
俺は懸命に追いすがるが、もうあと一伸びが来ない、足がこれ以上速く出てこないのである。
ルナは、追いかけてくる俺を何とか躱し切り、ゴール板の前を駆け抜けていった。
◇ ◇ ◇
「…はー、やっぱり勝てねえか…」
俺は芝に座り込み、ルナに向けてそう話す。
「…でも、カサマツに行ったのは正解だったみたいだな。
私との差がほとんどないところまで近づいて来ていたぞ、ハンター。
これなら、本番のレースも楽しみだ」
ルナは満足げに俺に話してくる。
「…ああ。次はダービーなんだろ?
シンボリ家の誇り、しっかりと見せつけて来よ、ルナ」
「ああ、分かっているさ」
そう話し、俺とルナは寮への帰途を歩いて行った。
そんな俺達を見ていた人影が二つ。
「…シンボリハンター、面白いウマ娘が入って来たな…!」
「ルドルフがあそこまで追いつめられるとはね…」
「…お、おハナさんいい目してるじゃん。
久しぶりに見たよ」
「ルドルフの敵はアンタんとこのエースとシービーぐらいと思ってたけど、ハンターもその中に入れる必要がありそうだわ。
トレーニング内容を考え直さないとね」
2人のトレーナーはお互いにそう話していた。