「…それじゃ、入るか」
放課後、俺は生徒会室の前に立つ。
シービーやエースと話し合い、生徒会に入る決心をした俺。
…荘厳な雰囲気を醸し出す生徒会室の前で、俺はふうっと息を吐く。
その後俺は生徒会室をノックする。
中からは「どうぞ」という声が返ってくる。
「…シンボリハンターです。
失礼します」
そう言いながら俺は生徒会室の中へ入る。
部屋の中では作業をしているルナ、そして生徒会長の2人の姿があった。
「…ハンター?
どうしたんだ一体…?」
部屋に入ってきた俺の姿を見てルナはそう呟く。
「…ちょっとな。
今回お前に用はねえよ」
俺は一番奥の机で作業をしている生徒会長の前で止まる。
「シンボリハンターだったね。
中央デビュー戦、見事な勝利。
さすがはルドルフの妹だね」
…やっぱり、この人も俺のことはルナの妹だから…って感じか。
「そりゃどーも。
少しあなたに聞きたいことがありましてね。
…生徒会の執行部は会長とルドルフの2人だけですか?」
俺がそう聞くと、会長は「そうだね」と返してくる。
「…以前までは4人体制で仕事をしてたんだけど、そのうちの2人が卒業しちゃってね。
今は私とルドルフの2人だけで回してるんだ。
この春、希望者を募ったけど誰もいなかったから、しばらくは2人体制かな」
そう話す会長に向けて、俺は「それなんですが…」と話していく。
「俺をこの生徒会執行部に、入れてもらうことは可能ですか?」
俺がそう話すとルナが驚いた表情で駆け寄ってくる。
「は、ハンター!?
どういうつもりだ一体…!?」
「…訳を聞こうか?」
ルナに続いて会長がそう話してくる中、俺は「はい」と答える。
「…るn、ルドルフと同室なんですけど、最近のこいつ、明らかにやつれてるんですよ。
俺もマッサージとかでサポートはしてますけど、いずれは限界が来てしまいます。
俺もルドルフも、競走人生はこれからです。
もちろんルドルフだけではなく、会長あなたもですよ。
2人ともこのままいけば心身共に壊れる可能性が高いかなと思います。
俺は中央のことはまだ良く分からないですけど、単純作業とかだけでもやらせてもらうことができれば2人の負担は確実に減るかと」
俺は更に続けていく。
「…それにです。
俺はルドルフの妹っていう肩書こそありますが、それ以前にカサマツという地方出身のウマ娘です。
スカウト組を1人入れることで、考え方の幅を広げるというのも悪くないのでは?」
「確かに…、一理あるな」
俺の言葉に、会長はそう話してくる。
「…だが、私とルドルフはしっかりトレーナーに管理してもらっている。
壊れてしまう可能性は少ないと思うが?」
会長の言葉に臆することなく俺は話していく。
「…今のままではそうだと思います。
ただ、クラシック真っ最中の俺とルドルフはこれからトレーニングの負担が増えると思っています。
他のウマ娘がトレーニング量を上げていくのに、俺達がなにも変わらなければさっさと抜かれてしまいますからね」
俺は会長の目を真っすぐに見つめる。
「…しかしだな、お前はこの学校に来たばかりだ。
そんなウマ娘が執行部に入るとなれば…」
ルナがそう俺に話してくるが、俺は「関係ねえよ」と返していく。
「生徒会執行部に任命されるために必要なのは、この学校に学籍を置いているということ。
何もルールから逸脱したことじゃねえよ」
俺はそのまま続けていく。
「そもそも、募集したけど集まらなかったんですよね?
それなら自分から入りたいと言ってきている俺は知識こそ少ないとはいえ、数少ない優良株ではないですか?
他のウマ娘は、そもそも入りたいって思ってないんですからね」
俺はそう話して、「…これでも、俺を断る理由はありますか?」と会長に告げる。
「確かに、無いな」
会長は俺の言葉にそう話した後、「だが」と続けてくる。
「君には大事なものが欠けている。
何か分かるか?」
大事なもの…、そういうことか。
「…中央での、実績…、ですか?」
俺がそう話すと、「その通りだ」と会長は返してくる。
「君のカサマツでの活躍、そして圧倒的なデビュー戦での実力は知っているよ。
君のスカウトはルドルフからの推薦もあったとはいえ、私が主導させてもらったんだからね。
…ただね。
そんな実績、こっちに来てしまえば何の価値もない。
こちらでの実績しか意味はないのだからね。
…そう簡単に中央で勝てると思わない方がいいよ。
君の姉を含めて、この学校はそんな化け物たちが鎬を削り合う場なんだからね。
君は、そんな化け物になれるのかな?」
会長は真剣な目で、サングラス越しに俺の目を睨みつけてくる。
生徒会室全体が震えているような気がする。
俺の全身にピリピリと緊張感が襲い掛かってくる。
…引いてしまえばゲームオーバー、歯向かえばさらなるハードモードに身を投じること決定。
…なんだ、ハードモードなんて、いつものことじゃねえか。
「…なってやりますよ、そんな化け物に」
会長は「ほう?」と返してくる。
「ルドルフの上に行くために化け物になれって言うなら、喜んでなってやりますよ。
俺の覚悟、そんな生半可なものじゃねえっすよ?」
ルドルフのためなら、俺の体はどうなってもいい。
そのために学校を支える台になれというなら喜んでなってやる。
…それが俺の思いだ。
…俺は鋭い視線で会長を睨み返す。
「ははっ、面白いね。
なあルドルフ。
実に君の妹らしいじゃないか?」
笑い声をあげる会長にそう言われてルナは「恐悦至極です」と返す。
「では私に見せてくれ、ハンター。
その化け物になる姿をな。
私も、君のスカウトに関わらせてもらったものとして、期待しているよ」
会長はそう話し、俺は「ありがとうございます」と返す。
そして会長は表情を緩めた後、改めて「…とはいえだ」と続ける。
「…今の生徒会執行部は猫の手も借りたいほどの状態だ。
学校に生徒は大量にいるが、君のような希望者は数少ない。
とりあえずは生徒会執行部の一員として君を迎え入れよう。
ただし生徒会執行部として、みっともない走りを見せた場合、私の権限で容赦なく外させてもらう。
いいね?」
「…はい、もちろんですよ会長」
俺は会長にそう答えた。