レース前日、スピカの部室にて。
「えー、ここからスタートして、ぐるっと回ってここがゴールだ」
沖野さんはスペシャルウィークのデビュー戦の会場である阪神レース場の見取り図をホワイトボードに書きながら説明する。
「あっはい」
「んで、スペ先輩の作戦は?」
「そんなの逃げに決まってんでしょ」
「内からゴーインに突っ込むべきだな」
スぺがそう返す中、ウオッカの言葉にスカーレットとゴルシがそう返し、俺も続けていく。
「…どうするんですか?特徴的なコースで有名な阪神ならガン逃げよりぶっ差すのがセオリーって言いますけど」
俺の言葉に沖野さんは首を振って話していく。
「…いや、作戦は………なし!!」
「「はぁ!?」」
俺たちの驚きの言葉の後に、ウオッカが沖野さんにチョークスリーパーをキメるが、そんな中スズカが口を開く。
「…ないのが、…作戦?」
…そう言うことか沖野さん。
「そうそれ…、だはぁ…!」
沖野さんはウオッカから解放される。
「…確かに、トレーニングで追い込みとか差しとか、そのあたりの練習してなかったっすね。…スぺの自由に走らせるってことっすか」
沖野さんは俺の言葉に頷く。
「その通りだハンター。…スペシャルウィーク、駆け引きしようなんて思うな。好きなように走れ」
確かにこっちに来て間もないスぺに作戦を仕込んでいくのは難しい。
…なら作戦という縛りを無くせばいい。俺達スピカはそんな自由な連中が集まったチームだ。
「好きなように…」
スぺがそう呟いた後に、沖野さんは話を続けていく。
「前方だろうが後方だろうがどこでもいい、自分がここだ!っていう気持ちのいいタイミングでスパートをかけて、先頭のウマ娘を抜け!」
…スぺはその言葉を聞いて、少し不安そうな表情だ。
「うっ…、ここだって分かるかな…」
「まぁ、それは経験もあるし、生まれ持ったセンスもあるし。やってみないことには…な?」
沖野さんの言葉に続けるように俺もスぺに話す。
「スぺ、お前に言えることは一つ。
…自分の直感に身を任せろ」
「自分の直感に…」
スぺに続けるように俺は話す。
「俺達、ウマ娘ってもんは直感に従えばうまくいくことが多い。どういう訳かは知らないがな。
周りに惑わされるな、自分の決断を信じろ」
俺がそうスぺにアドバイスして、ミーティングは終わりを告げた。
◇ ◇ ◇
次の日、レース当日。駅にて。
「…アレ、ハンターさんはあの車で移動するんじゃないんですか?」
俺の姿があることを不審に思ったのか、ウオッカが俺に話しかけてきた。
「…結構遠いんだよ阪神まで。何時間も運転してたらさすがの俺でも疲れる。趣味のドライブじゃねーしな。
それに学園が金出してくれるならそっち使わねーと。
車だと事故らないように気を付けないといけないけど、電車ならそんなこと気にせず移動できるからな」
俺がそう話すとウオッカは納得してくれたみたいだった。
そして俺達スピカの面々は電車に乗り込んで、阪神レース場へと向かっていった。