「それでヒシアマ、誰が候補なんだ?」
エアグルーヴと話した次の日、俺はヒシアマに連れられてターフへと向かっている。
「まあ、私の知り合いさ。
実績的にも、実力的にも、両方十分だと思ってるよ。
…ただね」
ヒシアマはそう俺に話してくる。
「なんだ?
本人に問題でもあったりするのか?
さすがにそういうことがあれば断らせてもらうぞ」
俺がそう話すと、ヒシアマは首を横に振る。
「まっさか、そんなやつハンターさんに紹介しないよ。
…ただ、あいつは走ること以外に興味がないみたいなんだよ。
結構難航すると思うよ?」
なるほど…ね。そういうタイプの奴か。
昨日のエアグルーヴはしっかりと下級生に指導したり、そのあたりに関しては心配はいらないウマ娘だ。
そのため、割と順調に話していくことができた。
だが、今回はそれが違ってくるということだ。
「…ま、それは俺が説得すればいいだけだな。」
「そうだね。
全く話を聞かないってやつじゃないし、そこはハンターさんの手腕だと思うよ」
ヒシアマは俺にそう返してくる。
…そうしていると、ターフで誰かが走っているのが見えた。
「…お、やってるね」
ヒシアマはそのウマ娘を見つけたようである。
「…ブライアン!ちょっとこっち来てくれないか?」
「…分かった」
そう言って俺たち二人の元に駆け寄ってきたウマ娘は、ナリタブライアンだった。
「なるほど、確かにこいつなら実績・実力ともに十分だな」
俺がそう話すと、ヒシアマは「だろ?」と返してくる。
ナリタブライアン。昨シーズンのクラシック戦線でルナ以来となる三冠を達成したウマ娘だ。
同じチーム所属であるルナからもその実力は聞いている。
こいつの走りを表すなら、野性的という言葉が一番似合うだろう。
走り方からその荒々しさが溢れ出してくるのがブライアンだ。
「…よっ、確か初めましてだったよな」
「…シンボリ、ハンター…だったか?
私に何か用か?」
…ブライアンはそう俺に話してくる。
「ああ、単刀直入に聞かせてもらうぜ?」
俺はそう言ってブライアンに聞いていく。
「…ブライアン、生徒会に興味はないか?」
「…生徒会、だと?」
ブライアンはそう聞いてくる。
「ああ、生徒会執行部はルドルフと俺の二人で回してるんだけどな。
どうしても最近、人手が足りなくなってきててよ。
それで二人ぐらい新しく執行部に入れようって話になっててよ。
それでヒシアマに相談したら、お前を紹介されたってわけだ。
お前の実力はもちろん知ってる。
生徒会に入るにしても問題を言ってくるやつはいねえだろうよ。
…どうだ?」
俺はそう話すが、ブライアンは「なんの冗談だ?」と返してきた。
「私より向いてるやつがいるはずだ。
…私はただ走れればそれでいい」
ブライアンは無愛想にそう話してくる。
「…そうだな。正直、いるかもしれねえよ。
お前を誘ったのも、今回ヒシアマに紹介されたってことだけだからな。
…でも、お前ってことを知って、面白そうとは思ったんだよな」
ブライアンは「何?」と返してくる。
「…お前は俺やルドルフとは違ったタイプのウマ娘だ。
ルドルフの理想の中にはお前みたいなタイプのウマ娘ももちろん入ってる。
それを達成するためには、お前を入れるのは悪くないし、むしろいい具合に嵌ってくれると思うしな」
俺はブライアンにそう説明していく。
「…なあ、ブライアン。
俺たちに力を貸してくれねえか?
…その代わりって言っちゃなんだが、俺とお前の併走、増やしてやってもいいぜ?
うちのトレーナーと東条さんの話し合い次第ではあるけどよ」
俺がそう話すと、ブライアンは少し黙り込む。
「…少し待ってくれ。
考えておくことにする」
…ブライアンにしては、大分前向きな回答だ。
「ああ。俺とルドルフは基本的に生徒会室にいるからよ。
気の向いたときに来てくれ」
俺はブライアンの言葉にそう答えた。