「…シンボリハンターだ。入るぞ」
俺はそう言いながらドロワ実行委員会の部屋の扉を開く。
「…はーい、どうかされました?」
部屋の中で待っていてくれたのはナイスネイチャである。
「委員長とドロワの運営について話したくってな。
ちょっと待たせてもらうよ」
俺はそう言って椅子に座る。
そんな俺が持ってきた書類をネイチャは見てくる。
「…何か、新しく導入するんですか?」
「ああ、ちょっとな。
ドロワでウマ娘たちがさらに楽しめるようにする一つの案だよ」
「その資料、極秘でなければ見させてもらうことってできます?」
ネイチャがそう言ってくるので俺は「別に構わねえよ」と返す。
資料に書いてきたのはDJタイム導入に関する様々な案だ。
とりあえず自分で調べ、ライブハウスで取り入れられている事例をもとに俺なりに考案してみた。
「うわー…、これ書いてきたんですか?
さっすがですねハンターさん…」
「まあな。これぐらいならどうってことねえよ」
ネイチャの言葉に俺はそう返す。
「そういや、ハンターさんって今年も姉妹ペアで出られるんですか?
去年はお2人とも凄かったですけど…」
ネイチャは俺にそう続けてくるが、俺は「今年は出ねえかな」と首を横に振る。
「ルドルフが出るなら出ようかなって思ってたけど、出ないって言ってるからな。
今年はこういった裏方に徹させてもらうよ。
…そういうネイチャこそ、出るつもりはなかったのか?」
「いやいや、私には似合いませんって。
第一、そんなことをしたい相手、私にはいませんから。
隅っこでのんびりやらせてもらうのが性に合ってるもんでね」
ネイチャはそう笑みを見せながら返してくるが、俺は「…嘘だな」と返す。
「…え、いやいや、嘘なんてついてませんって」
「…顔は笑ってるけど、目が少し泳いでる。
それぐらいわかるよネイチャ。
大方、『脇役の自分が主人公クラスのウマ娘と踊ることなんてできないよね…」ってところか?」
俺がそう答えると、ネイチャは「ははは…」と返してくる。
「やっぱ、ハンターさんには隠し事できませんね…。
一言一句その通りですよ…」
ネイチャはお手上げ…という表情を見せてくる。
「…そうなると、誘いたいって思った相手はテイオーあたりか?」
「ええ、その通りです…。
っていうかそこまで分かるんですかハンターさん…」
「ネイチャの周りのウマ娘を考えたらな。
…確かテイオーはマックイーンと出るんだっけか?」
「あー、確かそうだったはずですね」
俺はネイチャとそう話しながら、話を続けていく。
「確かに、テイオーは凄いウマ娘だ。
そろそろ生徒会執行部の一員として生徒会に迎えようかなって話も出てきてる。
あのまま行けばルドルフ…とまではいかなくても、それに準ずる位まではいくんじゃないかな」
「ですよね、やっぱり…」
俺の言葉を聞いてネイチャはそう肩をすくめる。
「…でも、お前が誘えば、テイオーなら乗ってくれると思うんだけどな」
「え…?でももうマックイーンとベストデート取りに行くって…」
「それじゃねえよ。
それに関してはさすがのテイオーもマックイーンの方を優先するはずだ。
…でもよ、ペアダンス後、自由にペアを組んで踊ることができる時間があるだろ?」
ドロワにはベストデートを争う審査時間のほかに自由時間がある。
この自由時間はペア以外のだれとでも踊っても構わない。
そもそもドロワの本質はこっちだろう。
「その時間に誘えば、何も問題はない。
テイオーなら、断らずに喜んで踊ってくれると思うけどな」
「え、でも…」
ネイチャはそう戸惑うが、俺は「…逆に聞かせてもらうぜ?」と続ける。
「…テイオーがずっと競い合ってきたライバルの誘いを断るような、そんなウマ娘だと思えるか?
…それはお前が一番知っているはずだぞ。ネイチャ」
俺はネイチャにそう告げていく。
そんな中、部屋へと歩いてくる気配がした。
「…実行委員長、来たみたいだな。
まあ参考程度に頭の中入れておいてくれよネイチャ。
やったことによる後悔より、やらなかったことに対する後悔の方が自分の中にこびりついて離れなくなるとは言っておくけどよ」
ネイチャにそう話した俺は、部屋の中に入ってきた実行委員長へDJタイムについて話を進めていった。
…というわけで、この世界線だとネイチャのあの決断にハンターも一押し加えてます。
ホント、あの場面は「テイオー!」と叫びました。