「ハンター!」
柵に手をかけて動けなくなっている俺にシービーが近付いてくれた。
どうやら一通り観客に挨拶をし終えてからこっちに向かってくれたみたいである。
そして、トレーナーも俺の元へと近づいて来ていた。
「…すまねえ、シービー。
肩貸してくれないか?」
「うん、分かった」
シービーはそう話しながら俺の左腕肩にかけてくれる。
「…ハンター!なにがあったんだ?」
そう話してくるトレーナーに俺は答えていく。
「いつも通り加速していこうって思った時に痛みを感じたんです。
加速したら間違いなく競争人生にかかわってくると思ったので。
トップスピードになる前だったんで、スピード落とすこと出来ましたよ。
後ろに誰もいないってこともありましたがね」
そう俺が答えていくと、遠くから救急車の音が聞こえてきた。
「…ハンター、一度病院で程度見てもらえ。
まずは状態を確認することが先決だ」
「了解しました」
「シービー、お前はしっかりウイニングライブ終了させて来い。
それがこのレース勝ったお前がすべき仕事だ」
「おっけーだよ」
トレーナーは俺とシービーにそう話していった。
◇ ◇ ◇
その後、俺は病院へ運ばれて検査を受けた。
診断結果は左足首関節外果損傷。
…どうやら今までのレースとトレーニングの中で骨にヒビが入っていたみたいである。
だが、まだ軽い方ではあった。
ホント、トップスピードで走ってないときでよかった。
骨折とかの大けがなら競争人生に大きく影響を与えてしまう。
とりあえずはその診断結果とギプスをつけて俺は東京へと帰った。
…そして。
「…どうっすか?」
俺はシンボリ家の屋敷でシンボリ家の担当医の方に負傷箇所を見てもらっていた。
俺とルナ、そしてシリウスは小さいころからこの人にずっと診てもらっている。
「…ちゃんと、話してたことはしてたみたいで良かった。
この程度で済んだのは、カサマツに行ってからも君がしっかりケアしてたからだよ。
これならギプスが外れるのは4・5週間ぐらいじゃないかな」
「…ってことは」
俺がそうつぶやくと、担当医さんは「うん」と続けてくる。
「宝塚にはギリギリ間に合うと思うけど、天皇賞春は諦めてもらうしかないね」
…やっぱりか。覚悟はしていたが…。
俺は屋敷の天井を仰いで、後ろにいるルナに向けて話す。
「…だそうだ、ルナ。
対決は宝塚まで持ち越しだな」
ルナは「そうか…」とつぶやき、改めて話していく。
「…ハンターは宝塚には間に合うんですね?」
「本当に順調に行けば…だけどね。
ただ治ったとしてもリハビリの期間は読めない。
多分間に合うだろうけど…」
担当医さんはそう話してくる。
俺は大きく息を吐く。
そしてルナは俺に話してくる。
「…ハンター。
今は怪我を治すことに集中してくれ。
会長も『今は生徒会の仕事は気にせず、ゆっくり休め』と話していたよ。
宝塚記念で万全の状態で共に走れることを待っているよ」
「僕もできる限りのサポートをさせてもらうよ。
君たちの体のことは僕が一番知ってるからね。
ハンター、君がなるべく早くターフの上に戻れるように全力をつくす。
頑張ろうね?」
「…分かりました」
俺は担当医さんにそう言葉を返した。