理事長や佐岳さんと話した次の週末。
俺はドリームトロフィーリーグの予選が行われる京都レース場へと足を運んでいた。
俺が誘う予定のウマ娘の状態を見るためである。
さすがに怪我持ちのやつを連れていくわけにはいかないし。
…ちなみにだが、理事長と佐岳さんからも「そのウマ娘なら大丈夫」というお墨付きは得ている。
あと、今回俺が見届けるのはスタンドではなく、その上の関係者席。
ルナやブライアンは違う場所でのレースに出場するため、今回は不在。部屋の中にいるのは俺一人である。
レース前のざわめきは未だ衰えを見せない。
ダートで導入されたサポーター・チャントシステムは芝の方でも正式導入された。
だんだんトゥインクルや未デビューのウマ娘のウマ娘たちから、「あの応援をターフの上で受けてみたい」と奮起する声も増えてきた。
導入を決定した俺とファル子としてはうれしい限りである。
そして、スタジアムの放送で出走するウマ娘たちがコールされる。
…俺のお目当てのウマ娘は1枠1番である。
「…1枠1番、サクラローレル」
そのコールと同時に、地下バ道から『大輪の遅咲き桜』、サクラローレルが顔を見せ、スタンドに向けて頭を下げた。
◇ ◇ ◇
高らかにローレルへの応援歌がリズムよく歌われ、2フレーズ歌った後、改めてコールリーダーの声でもう一つのチャントが歌われていく。
これはヴィクトリー倶楽部出身のウマ娘たちに歌われる曲だ。
チヨノオーも試合前にはこの曲が歌われており、スプリントではあるがバクシンオーにもこの曲が使われている。
「…俺の目の前で情けない走り見せないでくれよ、ローレル?」
俺は観客に手を振るローレルに向けてそうつぶやいた。
◇ ◇ ◇
…試合は難なくローレルが勝ち取った。
クラシック戦線には怪我の影響で出走することがあまり出来なかったが、その同期が三冠を取ったブライアンである。
たまにやっている併走でも、ローレルとブライアンはいいライバル関係を築けており、ぶっきらぼうで孤立しがちなブライアンのいい友人である。
…まあ、そういうわけでアイツの実力は問題ない。
それと、彼女を選んだ理由はフランス出身であり、フランス語がある程度話せるという点だ。
幼少期に日本に来たため、あまりフランスでの記憶はないらしいが、その憧れは強いらしい。
そう言う面でも俺はローレルを連れていきたいと思った理由だ。
…俺は関係者席からローレルのいる地下へとやってきていた。
俺はウイニングライブを控えたローレルの控室へとやってきていた。
「…ローレル。
入らしてもらってもいいか?」
俺が扉越しにそう話すと、部屋の中からは「どうぞ~」という声が返ってくる。
「…来ていたんですね」
「まあな。まずは勝利おめでとう、ローレル」
俺がそう話すと、ローレルは「ありがとうございます」と頭を下げる。
「ブライアンちゃんも勝ってるみたいだし、ここで負けるわけにはいかないので」
「そうか」
俺はローレルにそう返して、彼女の横に座る。
「…それでよ、ローレル。
フランス、来てくれるか?」
実はローレルには理事長たちと話終わった後、すぐに「お前を連れていきたいんだ」と伝えた。
さすがにその日は「今すぐには…」と言われたので「ゆっくり考えたらいい」と話して…、今に至るというわけである。
「…そうですね、あの後自分なりにも考えたんですが、ドリームトロフィーのタイトルを取りたいという気持ちもありますし…」
ローレルはそう話して下を向いた後、俺の目をサングラス越しに見つめてくる。
「…でも、フランスのさまざまなことを経験できるのであれば、ドリームトロフィーを一度休んだとしても十分におつりがくるかなって。
私の経験がほかのウマ娘や自分の更なる成長につながるのであれば、こちらからも『行きたいです』と大きな声で言わせてください」
…やっぱりそういってくれたか。
「ああ、お前ならそうだと思ったよ。
しばらくの間、よろしくな?」
「はい!これからよろしくお願いします、ハンターさん!」
ローレルは俺にハキハキとした彼女らしい声で俺に話してきた。
はい、というわけでL’Arc編のハンターの相棒はスタブロ主人公のローレルです。
1人で行くか、それともエルやシリウスといったウマ娘を連れていくことにするか…直前まで悩みました。
…まあ。この章のタイトルである「勝利を告げる桜」から予想していた方も多かったとは思いますが。