「…どーよファル子。そっちは」
テイオーがスピカの面子にダンスを教えるという約束をした後。
俺は栗東寮のファル子の部屋に来ていた。ちなみに同室のエイシンフラッシュは不在である。
「んー、こっちもイマイチかな…」
スマートファルコン、通称ファル子。俺と同じダートを主戦場とするウマ娘だ。
「…相変わらずか。あそこからさらに発展させるにはどうしたらいいんだろうかな…」
『ドリームトロフィーダートを活性化する』という名目で始めたこの会議。
会議で話が出た中で最も大きいのが『サポーターシステム』だろう。
分かりやすく言えばごちゃごちゃ混ざって応援するのではなく、応援したいウマ娘ごとに分かれて応援するというシステムだ。
こうすることで塊の中で共通認識が生まれて応援もしやすくなる。
俺達が走る前にスタンドを見ていても、応援したいウマ娘ごとにカラーが分かれているスタンドは壮観だ。
とはいえ全てを分けるのではなく、どのウマ娘を応援してもいいミックスエリアを作っておいたりして初心者の方でも入りやすくしたりしており、俺が危惧していたサポーター同士の喧嘩などは今の所は入ってきていない。ひとまずはこれでいいだろう。
ちなみにだが、俺のサポーターグループの愛称は「Hunters」、ファル子は「ファル子親衛隊」だ。もちろん俺たち以外のウマ娘もそれぞれのサポーターグループを持っている。
「…あ、そうだ。私一つ思ったんですけけどいいですか?」
「ん、どうした?」
ファル子は俺の言葉に続けていく。
「…この前、ハンターさんが一回提案してた、あの、なんでしたっけ」
俺が提案した…?…ああアレのことか。
「チャントのことか?」
「そう、それ!私、アレいいなーって思ったんです!周りのみんなが全員声を揃えて力を届けて、まさに私たちが求めてるものじゃないですか?」
チャント、サッカーなどで観客が声をそろえてかける掛け声や応援歌。スポーツ応援において最も用いられてると言ってもいいものであり、一度俺も提案したが、最終的に撤回した。
「確かにな、チャントはいいよ。
…ただ「グループ数の問題があるからやっぱやめとく」って言ったろ。
サッカーとかの応援は2つだけど俺たちのレースになりゃ軽く10は超えてくるぞ」
俺が撤回した理由がコレだ。いかんせんグループが多すぎる。
チャントが使われているサッカーなどはチームスポーツでありチーム同士のタイマン勝負。応援グループはそれぞれ1チームに1つ、両チーム合わせて二つだ。
だが、俺達のやってるものはチーム戦ではなく個人戦だ。1レースでそのグループは10を越えてくる。だから俺は提案した後に撤回した。
俺はそう撤回した理由を話すがファル子はそれに気にせずに話す。
「そう、それで思ったんですけど、今って10グループ以上ぐらいあるのにちゃんとそれぞれのファンの声って私たちに届いてるじゃないですか。
なら、導入しても私たちに応援の声はちゃんと届くんじゃないですか?たとえ10グループ以上あったとしても。
むしろ応援の声がチームごとに統一されるから私たちに届きやすくなるんじゃないかなって」
…そういえば、そうだな。うん。
「…確かにそうだな。ってか撤回した理由なくなったわ。別にやってもいいじゃん、チャント」
「ってことは…」
ファル子はキラキラとした瞳を俺に見せてくるが俺はそれを冷静に抑える。
「いや、ファル子。まだやるって決まってないからな!?
…サポーターの人たちがしたいかにもよるし、用具の準備もあるだろうし。
生徒会含めて学園の方にも話しておかないといけないだろうし。
それにサポーターがチャントを考える時間や覚える時間も必要になってくるだろうから少なく見積もっても1か月はかかると思うぞ。
…とりあえずファル子、あくまでこれは俺達での話だ。他の奴の話も聞かねーと。
ダートのメンバーに連絡して導入するかどうか話し合うぞ」
「はーい!」
ファル子は元気よく返事してくれる。
…ファル子がこう言ってるとはいえ、他の面子で「いやだ」という奴が一人でもいるなら俺は再び取り下げる予定だ。
俺達だけで進めるのだけは絶対にやってはいけないことである。俺たちは対等な関係でいたい。
…サポーターへの連絡は確定してからだな。
俺はそう思いながら他のダートを主戦場とするウマ娘たちに連絡を取っていった。