弥生から一か月ぐらい経って。
スぺの皐月賞当日である。
「…さあ、どうなるかな…」
俺はスタンドからスぺの方を見つめる。
…スぺが入ったのは8枠18番という大外。中山の大外はきついんだよな…。
全ウマ娘がゲートに入り、中山に一瞬の静寂が訪れる。
そして今、ゲートが開かれレースがスタートした。
スぺは後ろから…4番手くらいか?の位置で足を貯めている状態。
問題はスぺではなくスカイとキングの二人だ。
少し前に学校で話した時は調子が悪そうな素振りはなかったし、作戦を負けた弥生のままで来るわけないだろうし。
そんなことを考えているとレースは後半の第4コーナーに差し掛かっていた。
そろそろ仕掛ける時間だな…と思っていた時だった。
…ここでスカイが抜け出した。
坂に入る数10m前、外に広がり一気にスパートをかけた。
スぺはそれにつられるようにしてスピードを上げる。
そして最後の急坂、スカイは弥生とは違いスピードを下げる気配はなかった。キングの方を見ても同様である。…しっかり対策してきたな。
スぺは坂を登った後、スパートをかけていくが追い付かない。
スカイにつられたことで弥生と違うペースになっちまったのがな…。
そのまま皐月はスカイが1位、キングが2位、スぺが3位という結果になった。
この時点でスぺの3冠への夢は終わったのである。
◇ ◇ ◇
「…あ、はい。そういう感じで大丈夫です。こちらが送った要領を守っていただけるのであれば…。はい、それじゃ当日、よろしくお願いします」
スぺの皐月賞から戻ってきて俺はサポーターの代表の人たちとオンラインミーティングをしていた。
元ネタは俺発案だし、生徒会副会長としてもこれは俺の仕事だ。
ドリームトロフィーダート+これから来るであろうトゥインクルシリーズ所属のウマ娘全員が納得する形で制作したチャントシステム導入案。
サポーターの方達からも賛同がほとんどで、既に合意済み。
あくまでこの会議はレース直前の最終確認である。
俺はパソコン画面を閉じ、ヘッドホンを外す。
「…あー、終わったー…」
俺は椅子にもたれかかるようにして大きく伸びをする。
こういう堅苦しいのは苦手だがレースをスムーズに運営するために必要なものだ。しっかりこなさないと。
俺は生徒会室の隣にある会議室から生徒会室へと戻った。
生徒会室にいたのはエアグルーヴだけだった。
「ハンターさん。会議終わったんですね?」
俺はパソコンを片付けながらエアグルーヴに返す。
「ああ。悪いな静かにしててもらって」
エアグルーヴは「なんてことないですよ」と俺に返す。
「…でもホントにやるんですね。これが成功すれば…」
「間違いなく変わるよ、ドリームトロフィーダートはな。
他のドリームトロフィーやトゥインクルに波及する可能性も十分にあるよ」
俺の言葉に少し時間をおいてエアグルーヴは話す。
「…ハンターさんのレース、私たち3人も見に行きます。ハンターさん、情けない走りは見せないでくださいね?」
「言われなくても分かってるよ、エアグルーヴ。俺を誰だと思ってるんだ?」
俺はそう笑顔でエアグルーヴに返した。