「おー、やってるなー…」
俺はターフを見ながらそう話す。
沖野さんからリギルの東条トレーナーに話を伝えて欲しいとのことであるため、リギルが練習している時間を見計らい俺はスタンドに来ていた。
「えーと、…東条さん、ちょっといいですかー?」
「…ハンターか。どうしたんだ?」
俺に気づいた東条さんは俺に近づいてくる。
「沖野さんから、『ハナさんにこれ渡しといて!』とのことで」
俺は手元から「果たし状」と書かれた封筒を取り出す。
「…果たし状?これ書いた本人はどうしたのよ」
「今スペシャルウィークの特訓で外に出てます。ちょっと忙しいから代わりにって」
俺は苦笑いしながら東条さんに話していく。
「…ふーん、タイキシャトルとスペシャルウィークの併走ね…」
タイキシャトル、短距離なら日本一と言ってもいいウマ娘だ。
ピッチ走法のいい手本にもなってくれるだろうし、最終実践として申し分ない相手だろう。
「…どうか、お願いできませんか?」
俺がそう話すと東条さんはタブレットでスぺの情報を見ていく。
「…いいわ、そっちの話に乗ってあげる」
「あ、ありがとうございます!」
東条さんは「…日程とかは直接伝えるわ」と話していった。
…そして。俺がスピカの部室へと戻ろうとした時である。
「エル!今からハンターとの併走行くぞ!」
「了解デース!」
…ちょっと待って?
「あのー、東条さん。これはどういう…」
俺がそう聞こうとすると東条さんは気にせずに話していく。
「ハンター、距離は中距離、セイウンスカイ並みの逃げで走ってくれ。できるだろ?」
「いや、まったく理解が出来てないんすけど!?一応走れますけど!」
俺がそう話していくと東条さんは俺にこう返す。
「…ここに、こう書いているわよ」
俺が東条さんから見せられた果たし状の中身にはスぺとタイキの併走への要請以外にもう一つ、「追記:ハンターは自由に使ってもらってかまわねーぜ!」と書かれていた。
「…やりやがったな、あのバ鹿トレーナー…。
スタンド行くのになんで練習用シューズ履いていけって言うのかおかしいと思ったんだよ…」
俺の表情を見て東条さんはあきれた表情を見せる。
「…知らされてなかったみたいね。どうするの?もどってくれても構わないわ」
東条さんは俺の状況を察してそう話してくれるが…、まあ乗り掛かった舟だ。
「いや、やりますよ。あんまりこんな機会ないですし、久々に芝の感覚も持っておきたいですしね。
それにそっちがウチに手伝ってくれるっていうのにそっちが何も得がないっていうのは申し訳ないですしね」
俺はそう話しながらターフへと降りて行った。